空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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永倉新八、決意の資金集めの旅へ出立す

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「わしら三人の墓は、わしが建てる」──
冬の朝。
京の街に霜が降り、障子越しの光が薄く差し込む。
新八は旅支度を整えていた。
古びた羽織の肩をトントンと払うと、孫が目をぱちくりさせて立っていた。
「じっちゃん、ほんまに行くん?」
「ああ行く。
近藤さんと歳さんの墓を祀るんは、
わしの“剣の道”の締めくくりや。
そのための銭、わしが集めてくる。」

「じっちゃん……何すんねん?
バイトか? 大道芸か?」
新八
「バイトってなんや。
わしはまだ武士や。
大道で転ばん程度の芸はできるけどな。」
実は前日、庭で滑って受け身を取った新八は、
孫に大笑いされたばかりだった。
■旅の目的は“剣術指南”と“義理の頼み”
新八は腰に木刀、袋に僅かな路銀を入れて出発した。
「まあ、どこ行ってもわしの名を聞きゃ、
剣術の一つでも教えてくれと言う奴はおるやろ。」
しかし旅は、想像以上に過酷だった。
■その1:とある宿場町の剣術指南
──子どもたち、まさかの“木刀乱舞”
宿場町に着くと、村人が寄ってきた。
「もしかして……永倉新八さまか?」
「おう、そうや。」
「剣術教えてつかぁさい!」
嬉々として集まったのは──
なぜか子どもたちばかりであった。
「ほんで、この子らに剣術を?」
「はい!力強いチャンバラを!」
新八
「チャンバラちゃう!武芸や!」
しかし子どもたちは言うことを聞かず、
新八の木刀を見て大はしゃぎ。
「じっちゃん強そうやなー!」 「ほんまに新撰組なん?」
その瞬間、
子どもたちが一斉に木の棒を持って新八に突撃!
「わーっ、新選組ごっこやー!」
「やめんかい! うわっ、こら耳は引っ張るな!
そこは急所や言うたやろ!」
宿場町の大人たちは大笑い。
だがそのおかげで、新八へのお礼は予想外に多かった。
「こないにもろてええんか?」
「子どもらのいい遊び相手になってくれただけで十分で!」
新八
「……これは指南料というより、慰謝料やろ。」
■その2:道中の山里での“講談会”
──新八、なぜか語り部として稼ぐ
次の村。
村の寄り合い所で新八は“新撰組の昔話”を語ることになった。
村の長
「永倉どのの口から聞けるとは、これ以上の娯楽はない!」
新八
「娯楽やったんか……まあええけど」
語り始めれば村人たちは目を輝かせる。
「池田屋の夜……あれはな──」
村人「おお……!」
「歳さんはな……ああ見えて実は優しい男でな──」
村人「おお~~……!」
孫のような村の子が質問する。
「永倉じっちゃん、沖田さんはそんなに強かったん?」
「そらもう、“前のめりに倒れながら斬る男”やった。」
村人「どういうこっちゃ!?」
新八「知らん。あいつは気がついたら前行って斬っとった。」
大爆笑が起こった。
その晩、新八は思った。
「わし……講談師やないでな……
なんでこんなにウケとるんや……」
それでも、村の者が包んでくれた白銀(しろがね)は、
墓を建てる資金の大きな助けとなった。
■その3:とある武家の家での指南
──新八、気合いを入れたが“床が滑って”大惨事
さらに旅を続け、武家屋敷で剣術を頼まれた。
「永倉殿、どうか指南を!」
新八
「任せとき。しっかり学べよ。」
張り切った新八。
しかし、床があまりにも磨かれており──
スッ……
新八
「……あっ」
ドーーーーン!
派手に滑って大の字に転がった。
武家の若者
「あっ……永倉さま、大丈夫でございますか!」
新八
「……今のはな、
“滑りながら敵を誘い込む極意”や……うむ……」
若者たち
「おお~!さすが永倉さま!」
孫の声(心の中)
「じっちゃん、誤魔化すの下手くそやな……」
だが、武家の者たちからは
「貴殿の心意気に感服」と多めの礼金が出た。
■そして旅の終わり──集まった金を手に新八は立つ
京に戻るころには、
袋はずしりと重くなっていた。
新八
「……近藤さん、歳さん。
わしはようやく、“建てる”覚悟を示せるだけの銭を持って帰ったで。」

「じっちゃん……!」
新八
「これで二人の名を、
正しく後の世に残せる。
わしの務めは、まだ終わっとらん。」
冬の空に、
新八の後ろ姿はどこか若い頃の凛々しさを取り戻していた。
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