空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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墓建立のため“土地探し”騒動す

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京の町で巻き起こる、妙ちきりんな奮闘──
京に戻った新八は、早速「墓を建てる土地」を探し始めた。
だが、これがまた一筋縄ではいかぬ。
■1:役人屋敷での交渉劇
──新八、役人に翻弄されるの巻
新八は町奉行所に赴き、役人に頭を下げた。
「近藤さんと歳さんを祀るための土地を、
どこぞに分けてもらいたいんや。」
役人は帳面をめくりながら、
鼻眼鏡をクイッと上げて言った。
「永倉殿、空き地はございますが……
場所により“お値段”が変わりますゆえ。」
新八「お値段……?」
役人
「こちら、川のそば。
景色は良いが、たまに氾濫します。」
新八
「墓が流されたら本末転倒やないか。」
役人
「こちら、町はずれ。
静かですが、野犬が多くて……」
新八
「墓守どころか、わしが食われるわ。」
役人
「そしてこちら──京の外れの丘の上。
風景絶佳、日当たり良好、風通し抜群──」
新八
「それええやん。なんでこんな余っとる?」
役人
「……幽霊が出るそうで。」
新八
「歳さんが“怒って化けて出る”なら歓迎やけど、知らん幽霊はいらんわ!」
役人は苦笑いした。
■2:町人とのやり取り
──妙に商売っ気のある連中が集まる
噂を聞きつけた町人たちが、次々と声をかけてくる。
魚屋「永倉はん! ええ土地ありまっせ!
うちの裏庭、今なら目玉価格!」
新八「墓の横で魚さばく匂いはちょっとなぁ……」
豆腐屋「永倉どん!
うちの店の前の空き地、五百文でどない?」
新八「安すぎて逆に怖いわ。」
米屋「永倉はん! うちの蔵の跡地なら…」
新八「墓参りのたびに米俵運ぶ人に間違われそうや!」
町人たちの商売魂に押されて、
新八はヘトヘトになった。
■3:孫、意外な提案
──足で探して見つけた“ある丘”
御所の近くを歩いていた時、
孫がふと指を差した。
「じっちゃん、あの丘……なんかええ感じちゃう?」
そこは、
風がよく通り、京の町並みが見渡せる、
静かな小高い丘だった。
新八は立ち止まり、しばし風に吹かれた。
「……どこか、歳さんの故郷・日野の風にも似とる。
そんで近藤さんの、まっすぐな息遣いも感じる。」

「じっちゃん、ここがええんちゃう?」
新八
「そうやな……ここや。」
■4:だが、そこには“地主じいさん”が
──またしてもクセ者あらわる!
新八「すまん、この土地、譲ってもらえへんやろか?」
地主じいさん
「おお、それはかまわんが……条件がある。」
新八
「条件?」
地主じいさん
「うちの猫を毎月墓参りにつれていくことじゃ。」
新八
「なんちゅう条件や!」

「じっちゃん……猫連れて参る墓……ちょっとかわいい。」
地主じいさん
「それとな、猫は“まる”と言う。
まるは気難しいで。
気に入らんと引っかく。」
新八
「歳さんでもよう飼いならすん大変やわ…!」
しかし、その土地は
新八が探し求めていた静けさと気高さを兼ね備えていた。
新八は深く息を吸いこみ、
「……よし、や。
まるが誰を引っかこうと、ここに二人を祀る。」
地主じいさん
「おお、話が早い。気に入った!」
こうして、土地は無事に決まった。
■5:決まった土地で、新八の胸に宿るもの
新八はその丘に立ち、空を見上げる。
「近藤さん……歳さん……
長い旅やったけど、ようやく見つけたで。
ここなら、あんたらも静かに眠れるやろ。」

「じっちゃん……ええ場所やね。」
新八
「これでまた一つ、わしの務めが果たせる。」
京の風は優しく吹き、
どこか遠くで、若き日の三人の笑い声が
聞こえたような気がした。
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