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意外すぎる来訪者
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新八が近藤勇・土方歳三の墓を建立し、
初めて孫と一緒に訪れた静かな初春の朝。
丘の上に吹く風は、まだ少し冷たいが、
京の街を見渡せるその場所は、凛として美しかった。
新八は、そっと手を合わせた。
「……兄弟分よ。
ようやく、あんたらを祀れたわ。
遅うなってすまん。」
孫
「じっちゃん、お線香立てとくね。」
新八
「おう、頼む。」
そのとき──
カサ……ッ
草むらの向こうから、人影がゆっくり近づいてきた。
新八
「ん? 誰や?」
孫
「じっちゃん、なんか来るで。」
薄茶の着物を着た老人。
しかし、その歩き方には妙な風格がある。
目は鋭く、姿勢はまっすぐ。
そして、胸には古びた“まるい徽章(バッジ)”のような飾り。
老人
「……永倉新八殿、でござるか?」
新八
「そうやが……あんた、何者や?」
老人は一礼し、震える声で名乗った。
■「わしは……会津のものです」
新八
「……会津?」
会津といえば、新選組が最後まで支え合い、
そして討ち死にも多かった“盟友の地”。
老人は続けた。
「わしは、あの戦の折……
近藤さま、土方さま、
そして永倉殿の戦いぶりを遠目に見とった者。
あの頃のことを、どうしても忘れられず……
墓が建ったと聞きまして、
無理をしてでも来とうございました。」
新八は、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「……そうか。
あんたら会津のもんには、
わしらはよう助けてもろた。
わしら、いっつもあんたらの覚悟に支えられとった。」
老人
「新八殿……
あの日、土方さまが見せてくださった“背中”のこと、
今でも忘れられませぬ。」
その声は震え、
目尻には涙が光った。
■さらに“もう一人”意外な来訪者が
その時、また草むらが揺れた。
新八
「え、まだ誰か来るんか?」
孫
「じっちゃん、今日はにぎやかやな。」
現れたのは──
なんと、旅の途中で出会ったあの地主じいさんの猫・まるだった。
「にゃあ。」
地主じいさん
「永倉どん~! まるが勝手に走ってしもうての!」
新八
「なんで猫まで墓参りしとんねん!」
孫
「じっちゃん、猫も悲しいんかも?」
まるは墓の前でちょこんと座り、
砂利をひっかきながら、しばらく動かなかった。
まる
「……にゃあ。」
どこか、しんみりとした声に聞こえる。
会津の老人が笑った。
「……猫でも、魂のある場所はわかるもんですな。」
新八
「おう。こいつ、ようできた猫や。」
■そして最後の意外な来訪者
──新八の胸を揺さぶる人物が現れる
風が一段と強く吹いたとき、
丘の下から足音が響いた。
新八
「また誰か来よったな?」
現れたのは──
武家風の若者。
まだ二十代そこそこ。
しかし姿勢は剣士のそれ。
若者は深く頭を下げた。
「永倉さま……
わたしは、近藤勇先生の“縁者”でございます。
どうしても、お墓に手を合わせたく……
今日まで探しておりました。」
新八
「……縁者、やて?」
若者
「はい。
先祖から、
“新撰組局長・近藤勇の血を継ぐ”と聞かされておりました。」
新八は思わず、
胸の奥をぎゅっとつかまれたような気がした。
「……そうか。
あんたも……あの人の血を継いどるんか。」
若者
「永倉さま……
ありがとうございます。
祖を祀ってくださり、
心より……感謝いたします。」
新八は深く頷き、
墓石に手を置いた。
「近藤さん……
あんたの血は、
ちゃんと未来へ残っとるで……」
孫はその光景に胸が熱くなった。
■最後は全員で静かに黙礼
新八、孫、会津の老人、若き縁者、
そして“まる”。
誰も言葉を発さず、
ただ静かに墓へ頭を下げた。
新八は心の中でそっと呟く。
「兄弟よ……
わしの務めはまだ続いとる。
けど、今日のこれは……
ほんまにええ日や。」
京の春の風が、優しく墓の周りを吹きわたった。
初めて孫と一緒に訪れた静かな初春の朝。
丘の上に吹く風は、まだ少し冷たいが、
京の街を見渡せるその場所は、凛として美しかった。
新八は、そっと手を合わせた。
「……兄弟分よ。
ようやく、あんたらを祀れたわ。
遅うなってすまん。」
孫
「じっちゃん、お線香立てとくね。」
新八
「おう、頼む。」
そのとき──
カサ……ッ
草むらの向こうから、人影がゆっくり近づいてきた。
新八
「ん? 誰や?」
孫
「じっちゃん、なんか来るで。」
薄茶の着物を着た老人。
しかし、その歩き方には妙な風格がある。
目は鋭く、姿勢はまっすぐ。
そして、胸には古びた“まるい徽章(バッジ)”のような飾り。
老人
「……永倉新八殿、でござるか?」
新八
「そうやが……あんた、何者や?」
老人は一礼し、震える声で名乗った。
■「わしは……会津のものです」
新八
「……会津?」
会津といえば、新選組が最後まで支え合い、
そして討ち死にも多かった“盟友の地”。
老人は続けた。
「わしは、あの戦の折……
近藤さま、土方さま、
そして永倉殿の戦いぶりを遠目に見とった者。
あの頃のことを、どうしても忘れられず……
墓が建ったと聞きまして、
無理をしてでも来とうございました。」
新八は、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「……そうか。
あんたら会津のもんには、
わしらはよう助けてもろた。
わしら、いっつもあんたらの覚悟に支えられとった。」
老人
「新八殿……
あの日、土方さまが見せてくださった“背中”のこと、
今でも忘れられませぬ。」
その声は震え、
目尻には涙が光った。
■さらに“もう一人”意外な来訪者が
その時、また草むらが揺れた。
新八
「え、まだ誰か来るんか?」
孫
「じっちゃん、今日はにぎやかやな。」
現れたのは──
なんと、旅の途中で出会ったあの地主じいさんの猫・まるだった。
「にゃあ。」
地主じいさん
「永倉どん~! まるが勝手に走ってしもうての!」
新八
「なんで猫まで墓参りしとんねん!」
孫
「じっちゃん、猫も悲しいんかも?」
まるは墓の前でちょこんと座り、
砂利をひっかきながら、しばらく動かなかった。
まる
「……にゃあ。」
どこか、しんみりとした声に聞こえる。
会津の老人が笑った。
「……猫でも、魂のある場所はわかるもんですな。」
新八
「おう。こいつ、ようできた猫や。」
■そして最後の意外な来訪者
──新八の胸を揺さぶる人物が現れる
風が一段と強く吹いたとき、
丘の下から足音が響いた。
新八
「また誰か来よったな?」
現れたのは──
武家風の若者。
まだ二十代そこそこ。
しかし姿勢は剣士のそれ。
若者は深く頭を下げた。
「永倉さま……
わたしは、近藤勇先生の“縁者”でございます。
どうしても、お墓に手を合わせたく……
今日まで探しておりました。」
新八
「……縁者、やて?」
若者
「はい。
先祖から、
“新撰組局長・近藤勇の血を継ぐ”と聞かされておりました。」
新八は思わず、
胸の奥をぎゅっとつかまれたような気がした。
「……そうか。
あんたも……あの人の血を継いどるんか。」
若者
「永倉さま……
ありがとうございます。
祖を祀ってくださり、
心より……感謝いたします。」
新八は深く頷き、
墓石に手を置いた。
「近藤さん……
あんたの血は、
ちゃんと未来へ残っとるで……」
孫はその光景に胸が熱くなった。
■最後は全員で静かに黙礼
新八、孫、会津の老人、若き縁者、
そして“まる”。
誰も言葉を発さず、
ただ静かに墓へ頭を下げた。
新八は心の中でそっと呟く。
「兄弟よ……
わしの務めはまだ続いとる。
けど、今日のこれは……
ほんまにええ日や。」
京の春の風が、優しく墓の周りを吹きわたった。
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