空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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野党(やとう)墓荒らしす

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その日の朝ーー。
永倉新八と孫は、完成したばかりの
近藤さんと土方さんの墓へ参っていた。

ところが


「じ、じっちゃん……
なんや、あの足跡……?」

墓前の砂地に、
ぶっとい足あとが無数に続いている。
まるで猪が二本足で走り回ったような乱れ方だ。

新八は眉をひそめた。

「……野党(やとう)の仕業やな。」

孫が、怖々たずねる。
「あの、山におるっていう……
墓さわったらアカンやつら?」

「そや。
墓金(はかきん)欲しさに荒らす、
あほんだら共や。」

孫は震える声で言った。
「……じっちゃん、どないしよ?」


新八は、
ゆっくりと、しかし確信に満ちて言い切った。

「どないもしとられんわい。」

そして、腰に手を当てて叫んだ。

「どないもこないもあるかいな。
やるしかないやろが!」

ドドドドドッ!
まるで背後に雷が落ちたような気迫だった。

■ 山の奥へ、ドドドドッ!

孫が息を切らせながらついていく。

「じっ、じっちゃん!
は、走るのはえぇ~!」

「当たり前やろ。
新撰組一番の“逃げへん男”やぞ、わしは!」

「その自慢なんの役に立つん……!」

二人が山道を駆け上がると、
木々の奥からガサガサッと物音がする。


現れたのは、

熊みたいにデカい野党の親玉と、
その子分二人。


「へっへっへ……
拝んどる最中に悪いなぁ、新八はん。」

新八はピシッと背筋を伸ばして答えた。

「悪いと思うてへん顔しとるやないか。
あほんだら。」

野党たちが笑う。

「じじいひとりで何ができるんじゃ!」

その瞬間ーー
新八は足元の石につまずいた。

「あっ」

孫が叫ぶ。

「じっちゃん!!」

しかし新八、
つんのめった体をギリギリでふんばり、
そのままツツツーっと滑って
鶴の舞い踊りのような体勢で着地。

野党全員がぽかん。

真之介も口をあんぐり。

「……じっちゃん、なんや今の?」

新八は手をパタパタ払いながら言う

「昔とった杵柄(きねづか)っちゅうやつや。

転ばん極意、まだ体に残っとるわ。」


そんな空気の中でも、
目だけはぎらりと鋭く光る。

■ 野党退治、開始ッ!

新八は一歩、前へ出る。
「墓荒らしは、どついてでも直さなあかん。」

野党が嘲笑う。

「じじいが何を言うかッ!」
親玉が殴りかかる。

真之介が叫ぶ。
「じっちゃん危ない!!」

しかし新八はスッと半歩ずれて、
手刀で相手の手首を軽くはたく。

パンッ!

たったそれだけで親玉はうずくまり、叫んだ。

「いっ……痛ッ……!
な、何をしやが……!」

新八は冷たく言う。

「“相手を傷つけずにとめる”のが、
ほんまの剣の道や。」

子分二人が一斉に飛びかかる。
勇太は木の棒を握りしめ、
震えながらも前へ一歩踏み出した。

「ぼ、ぼくだって……
守るって決めたんや!!」と孫、

新八が目を細めた。

「……来い。真之介。」
二人は背中を合わせ、構えた。

■ じっちゃんと孫の“連携技”!

子分が飛びかかってきた瞬間。
新八が低く叫ぶ。
「真之介、左ッじゃ!」

孫は棒を振る。

子分の膝にコツンと当たり、バランスを崩す。

そこへ新八の杖突きが
ピシャッと手元を打ち落とす。

子分1「い、痛ーッ!」

子分2「なんやこの連携はッ!」

新八は言う。
「家族の息ぴったりさ、舐めんなよ。」

三人の野党は、
ついに戦意を失い、逃げ出した。

「ひぃーーー!!」
真之介は肩で息をしながら言った。

「じ、じっちゃん……
なんとか、勝ったんやな……?」

新八は笑った。

「当たり前やろ。
近藤さんや土方さんの墓や。
なんぼ野党やろうが、触らせてたまるかい。」

■ 墓前に戻り、しみじみと…

ふたりは戻って墓前に手を合わせた。
「じっちゃん……
今日のぼく、ちょっとは役に立った?」

新八は孫の頭をくしゃっとなでる。
「おう。
ようやった。

勇気ちゅうんはな、
“怖くても前へ出る心”のことや。」

そして静かに付け加える。
「わしらの時代より、
ええ世の中にしよな」
頷く孫 真之介。

胸の中には、
新撰組の想いと守袋の願い、

そして“じっちゃんの背中”が
確かに根を下ろしはじめていた。
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