空想時代小説 晩年 永倉新八物語

新雪小太郎

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生かす剣の教え

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新八じっちゃんは、縁側に腰かけて湯呑を置くと、しんのすけと仲間たちをしっかり見据えて語りだした。


「ええか、剣ちゅうのはな……切るだけが能(のう)ちゃうんや。
 切るは本筋やけど、払う、引く、突く。全部そろって“剣の道”や。」
しんのすけたちは真剣にうなずいた。
じっちゃんは柄を握る手を空に掲げ、ゆっくり動かす。
「ほれ、払うんは相手の勢いをそらすため。
 引きは自分の間合いへ誘い込むため。
 突きは……最後の線やな。」
そしてじっちゃんは、急に柔らかい口調になる。
「けどな……“あかん”と思ったら、逃げんのも勇気や。
 命いうんはたったひとつ。しんのすけ、お前も仲間も、
 生きてなんぼや。」
若い子らは息をのんだ。
「せやから、仲間と力合わせて退くんも立派な戦いや。
 ひとりで勝つ剣なんて存在せえへん。
 皆で命をつなぐんや。」
新八じっちゃんは、遠い昔を思い出すように目を細めた。
■ “生かす剣”こそ剣の極意
「最後にな……剣で一番難しいんは、
 “とどめを刺さんこと”や。」
しんのすけが思わず尋ねた。
「じっちゃん……それって、ほんまにできるん?
 相手も本気で向かってくるのに……。」
「できるかできへんかやない。
 “そうせなあかん”と決めるんや。」
じっちゃんは胸をトンと叩いた。
「わしらは殺し屋ちゃう。
 斬るんやなく、“戦意を奪う”。
 心を折るんやなく、“心を止める”。
 これが生かす剣や。」
しんのすけたちの胸には、じんわり熱いものが広がった。
■ 修行はまだまだつづく
「よっしゃ、ここからは“生かす剣”の稽古に入るで。
 構えは低く、呼吸は浅く。
 心は……相手より静かにや。」
「はいっ!!」
若者たちの声が境内に響く。
新八じっちゃんは一歩下がり、ニヤリと笑った。
「ほな若いもん、わしが相手したるわ。
 今日も気ぃ抜いたら……尻もちつくで?」
しんのすけたちは身を引き締め、
じっちゃんの前に、すっと横一列に並んだ。
――ここから“本物の剣の稽古”がはじまるのだった。
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