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第三話 蘇我瑞葉のプロローグ
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「うーむ」
とにかく動画を見てみよう。気になるし。
再生ボタンを押す。広告が三十秒流れる。
『皆さん、こんにちは、こんばんは。sogagagaです。《ルンルン・マグネット》第三回です。相変わらずリーグでは4-1、3-2と微妙な戦績を繰り返しているこのデッキですが、一応勝ち越しているので良しとします』
テキスト読み上げソフトの機械音声とともに、デッキのカードを並べたデジタル版《彼方ノ国物語》の画面が表示される。
当たり前の事だが、テキスト読み上げソフトを使っているので、動画の声からこの動画の投稿者が蘇我さん本人かを判断できない。
『はじめての方向けにざっくりこのデッキの解説です。このデッキは《遺構の妖精、ルーン・アル・ルーン》通称ルンルンと、《磁界ロボット》のシナジーに着目したデッキです。ルンルンが発表された時にちょっと話題になったやつですね』
知らないカード同士のシナジー(相乗効果の意。カードゲームでは一枚では使いづらいカードも、後年登場した新カードとシナジーを発揮して途端に強いカードに化ける事がある)を説明しながら、sogagagaさんの動画は進んでいく。
蘇我さんが普段使ってるデッキじゃない。やはり別人なんだろうか。
『この盤面でサーチがあれば逆転できましたね。デップー(【死の賭け】の略)使いたかったですね、デップー。雷鋼デッキですから入りませんけれども』
聞き覚えのあるカード名が聞こえる。【死の賭け】。初対戦の時に使われて逆転されたカードだ。
まあ、この発言だけでは何とも――
『一番好きなカードは【ガルヴァタンガ】ですが、このデッキも回していてかなり気に入ってきました。リアルでも組むべくカード集めています』
あいつだ! わたしの勘がそう叫んだ。初対戦でわたしに止めを刺したカード。【生ける要塞の龍王、ガルヴァタンガ】。
「もうこれ絶対本人でしょ」
画面を見ながらわたしは呟く。
どうしよう。次会った時に聞いてみようかな。
『それでは次回の動画でお会いしましょう。そがががー』
十二分程度の動画は、そんな文言で締めくくられた。
日曜日。
四十分程度電車に乗って、わたしは川崎の駅に着いた。
川崎。実はそこまで馴染みのない街だ。川崎に行くなら新宿か町田のほうが近いし用事も済む。
そういうわけであまり来た事のない川崎駅の改札を出たところにある柱時計の前で、わたしと蘇我さんは待ち合わせをしていた。
『十一時に改札前の時計のところで待ち合わせで! よろしく!』
蘇我さんからのメッセージにはそんな風に書いてあったが……。
わたしは時計を見る。時計の針がちょうど十一時を指していた。
とにかく動画を見てみよう。気になるし。
再生ボタンを押す。広告が三十秒流れる。
『皆さん、こんにちは、こんばんは。sogagagaです。《ルンルン・マグネット》第三回です。相変わらずリーグでは4-1、3-2と微妙な戦績を繰り返しているこのデッキですが、一応勝ち越しているので良しとします』
テキスト読み上げソフトの機械音声とともに、デッキのカードを並べたデジタル版《彼方ノ国物語》の画面が表示される。
当たり前の事だが、テキスト読み上げソフトを使っているので、動画の声からこの動画の投稿者が蘇我さん本人かを判断できない。
『はじめての方向けにざっくりこのデッキの解説です。このデッキは《遺構の妖精、ルーン・アル・ルーン》通称ルンルンと、《磁界ロボット》のシナジーに着目したデッキです。ルンルンが発表された時にちょっと話題になったやつですね』
知らないカード同士のシナジー(相乗効果の意。カードゲームでは一枚では使いづらいカードも、後年登場した新カードとシナジーを発揮して途端に強いカードに化ける事がある)を説明しながら、sogagagaさんの動画は進んでいく。
蘇我さんが普段使ってるデッキじゃない。やはり別人なんだろうか。
『この盤面でサーチがあれば逆転できましたね。デップー(【死の賭け】の略)使いたかったですね、デップー。雷鋼デッキですから入りませんけれども』
聞き覚えのあるカード名が聞こえる。【死の賭け】。初対戦の時に使われて逆転されたカードだ。
まあ、この発言だけでは何とも――
『一番好きなカードは【ガルヴァタンガ】ですが、このデッキも回していてかなり気に入ってきました。リアルでも組むべくカード集めています』
あいつだ! わたしの勘がそう叫んだ。初対戦でわたしに止めを刺したカード。【生ける要塞の龍王、ガルヴァタンガ】。
「もうこれ絶対本人でしょ」
画面を見ながらわたしは呟く。
どうしよう。次会った時に聞いてみようかな。
『それでは次回の動画でお会いしましょう。そがががー』
十二分程度の動画は、そんな文言で締めくくられた。
日曜日。
四十分程度電車に乗って、わたしは川崎の駅に着いた。
川崎。実はそこまで馴染みのない街だ。川崎に行くなら新宿か町田のほうが近いし用事も済む。
そういうわけであまり来た事のない川崎駅の改札を出たところにある柱時計の前で、わたしと蘇我さんは待ち合わせをしていた。
『十一時に改札前の時計のところで待ち合わせで! よろしく!』
蘇我さんからのメッセージにはそんな風に書いてあったが……。
わたしは時計を見る。時計の針がちょうど十一時を指していた。
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