探偵尾賀叉反『翼とヒナゲシと赤き心臓』

安田 景壹

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『翼とヒナゲシと赤き心臓』1

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ウミザリガニの化け物が毒を持っているとすれば、すでに噛まれた傷口から毒は体に回っているのではなかろうか。果たして夜明けは訪れるだろうか。
               ――ダークタワーⅡ『ザ・スリー』




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 目を閉じると、視界にはいつも荒野が広がる。
 照りつける陽光に塗りつぶされた、乾いた大地。
 血管を熱せられるかのような気温。石が括り付けられたような体の重み。汗を拭い、朦朧となりながら、俺は荒野を一歩ずつ進む。
 何故歩くのか。それは俺にもわからない。いつも、気が付けば荒野に立っていて、気が付けば荒野を歩いている。眩しく輝く太陽に向かって。
 時間の流れなどわからないが、いつも長く歩く。歩みを止める事はない。不思議な事だが、歩いている間は、辛くても休もうとは思わないのだ。歩く事が何よりも重要に思えて、それ以外の事を考えない。
 そうして歩いていると、いつも出くわす奴がいる。


 そいつは、不意に前方に現れる。捻じくれた枯れ樹に止まり、逆光で姿は影になっている。
 大きな鳥だ。猛禽だろう。羽毛は乱れていて、ひどく荒々しい印象を受ける。樹の上からは微動だにせず、その視線がじっと俺を見つめている。白く、朧に光る二つの目玉。いつも気が付くと現れて、俺の目を覗き込んでくる。
 俺はその目から逃げられない。一度目が合うと、二度と離せなくなる。歩みは止まり、俺の視界は巨鳥の光る目だけに焦点が合う。
 ああ、こいつは何だ。何故俺を見つめているのだ。
俺を取って食らいたいのか。この俺の体を。この俺の魂を。
 気が付くと、俺は不明に陥っている。俺が鳥か、鳥が俺か。足をつけて立っていたはずの荒野は、その時には消えている。俺は自分自身の境界線を見失い、その内に光も闇も見失って――……。


「……っ!」
 目が覚めると、俺はベッドの上で跳び起きている。全身に汗をかいて、呼吸が整わない。
 深呼吸を繰り返す。体に現実感が戻る。窓の外を見ると、空が白け始めている。
 左手で額の汗を拭い、右手で窓に触れようとする。鋭く伸びた猛禽の爪が、こつ、とガラス窓に当たる。俺の右腕。鳶色の羽毛が生え、肌は黄色く骨ばっていて滑らかだ。指先の一本一本から伸びた黒い鉤爪。人間なら掌に当たる部分にあるのは、鳥類のアシユビだ。鳥ならば樹に止まるのに便利だろう。だが人間なら、コップを持つのでさえ苦労する。
 これが《フュージョナー》だ。人間の体に、本来なら必要ない他の生き物の一部を背負った者。今や世の中に蔓延った、出自不明の新人類だ。
 そして俺は、多くのフュージョナーの一人。このナユタの街の片隅で、いつも怯えるように暮らしている。鳥ならば飛べるだろう。飛んで、どこまでも渡っていけるだろう。だが俺に翼はない。あるのは右腕だけ。不自然に鳶の一部を持って生まれた、この体だけ。


 生まれた時から、俺はずっと迷子だった。
 どこへ行ったらいいのか、わかった試しがない。
 今日もまた一日、行き場なくうろつくだけだ。
 自ら迷走を終わらせようとも考えたが、どうしても、この世から飛び立つ事が出来ない。生きて、真っ当に歩みたいという願望はあっても、その能力がない。
 失意のままに俺は寝床を出る。どの道生きるなら、まず食わなくちゃならない。それだけは体が勝手に行ってしまう。
希望が見えないと自己が希薄になる。両親は俺に名前をくれたが、もう随分と人に呼ばれていない。代わりに人は、俺の右腕を見てこう呼ぶ。『ろくでなしのトビ』と。
 だから、それでいい気がする。俺の名はトビ。ろくでなしのトビだ。ただ生きるために食い、食う為に働き、誰とも話さずに眠る。そして。
 こんな朝を、いつも迎える。




 朝食を終えると、俺は支度を済ませて仕事場へ行く。
再開発計画によって生まれた巨大都市ナユタ。その中で、未だ開発が進んでいない区域が旧市街だ。その旧市街の一画にある機械整備請負会社に、俺は勤めている。今の時代、手作業で機械を直す事が出来る技術は貴重だ。高校を卒業してから、俺はしばらく自動車の整備工見習いとして働いていた。結局そっちの道はうまくいかなかったが、見習いの時に機械整備を少し齧っていた事が役立って、ナユタに来てからすぐに、この会社に拾ってもらった。
「潰れた?」


 我ながら間抜けな声だと思いながら、俺は上司にそう問い返した。いつもはこちらが挨拶しても無視するような男だが、今日は一応言葉だけは返してくれた。
「そうだよ。社長は会社の金を持って昨日のうちに夜逃げした。電話もパソコンも、金になる物は全部売っ払ったらしい」
 残された書類を読みながら、上司は淡々と言った。
「元々無理だったよなー。今時ナユタみたいな街で機械整備とか。そもそも人間の手なんかいらないんだから、そりゃ行き詰まりもするわ」


「……何だか、余裕そうですね」
「そりゃあ俺は、次の働き口見つけておいたし。社長にはそれなりに美味しい思いもさせてもらったし? まあ、しょうがねえんじゃねえの。ご苦労様って感じ」
 ぽん、と読み終えた書類を車の後部座席に放り投げると、上司はゴミでも見るかのような目で俺を見た。
「じゃ、俺行くから。君もせいぜい頑張りなよ。ろくでなしのフュージョナー君」
 言うだけ言って、元上司は車に乗り込むと、そくささと会社から去っていった。
 俺は、会社が入っていた小さなビルのドアを開ける。奴が言った通り、中はもぬけの殻だった。机や椅子、ゴミ箱さえなかった。僅かな期待の元、隠し金庫などないかと探してみたが、当然そんな物もない。金目の物など、たぶん、一切残っていないだろう。
 退職金なんて、当然出ちゃいない。
 ろくでなしは、どうやら俺だけではないらしい。



 外にいても良い事はない。そしてたぶん、家で寝ているぶんには悪い事は起きないだろう。一人暮らしを始めてからわかった事だ。俺一人の世界に収まっているなら、世の中は俺に関わってはこない。
 そういうわけで、せっかく朝起きたにも拘わらず、俺はその日一日を家に帰って寝て過ごした。今度は妙な夢も見ない、平穏な眠りだった。
 次に起きた時、窓の外はすっかり暗くなっていた。朝食しか食っていないせいで、起きて早々に腹が鳴った。体は、相変わらず気怠いが、空腹感はなおも強くなるばかりだ。
 仕方なく、行きつけのコンビニで夕飯の買い物をする事にした。仕事で使っていたツナギを着て、俺は外に出る。歩いて、十分といったところか。


 今時、こんな店があるのはナユタの旧市街か田舎くらいだろう。新市街じゃ、大半の人間は買い物を自宅でする。ショップのメニューとリンクした電子立体タブレットを操作するだけで、食料は冷蔵庫に、衣服は棚に、煙草は書斎に、自動で搬入される。
 以前、新市街の高級マンションに仕事で入って、その様子を実際に目の当たりにした時には、自分が暮らす世界との違いに眩暈がした。救いがあるとすれば、そういう設備が整っているのはこの国じゃナユタくらいのもので、国民のほとんどは、まだ買い物かごを片手に買い物するのが普通だという事か。
旧市街はいい。暮らしていて気楽だ。周りの人間――新市街に比べて、フュージョナーが多い――は大抵俺と同じ、真っ当じゃなさそうな風体をしている。おかげで、毎日仕事から家に帰るまでの、ほんの少しの間だが、俺はほっと息をしていられた。家に帰れば自己嫌悪が苛むが、少なくとも街にいる間は、俺だけがろくでなしなわけじゃないんだ、と。


 夜の七時。コンビニに人は少なかった。暇そうにしている店員と、小太りの中年男が一人、痩身の男が一人。知り合いらしく、何やらぼそぼそと話しているのが聞こえる。痩身のほうは見たところ普通の人間だが、小太りのほうは耳が犬のそれだ。
 このコンビニを利用する客はだいたい決まっていて、俺はたぶん、夜の客なら誰でも一度は見た事があると思うが、この二人は初めて見る顔だ。まあ、旧市街には流れ者が多いから珍しい事じゃないが。
見知った顔といえば、ちょうど俺のすぐ近くに二人、よく見る顔ぶれがいた。毎日とは言わないが、二週に一回はこの店で見る顔で、端から見ても随分と変わった取り合わせだと思う。


 一人は子供だ。たぶん、まだ小学生くらい。古着らしい、片方の膝から下が破けたオーバーオールを着た、髪の長い少年だ。頭のほうから二本の触角が伸びているのと、大きさの違う翅がそれぞれ一対ずつ、背中に生えている。フュージョナーだ。しかし、何のフュージョナーかはよくわからない。あんな翅の生やし方をした虫が、世の中にはいるんだろうか。
「だからさあ」
 飲み物の棚へと進みながら、少年が隣に立つ連れを見上げて、呆れたように声を上げた。
「煙草は駄目って言ってるじゃん。お医者さんにも止められたんでしょ? 調子が良くなるまでは止せって」
 自分より一回りも二回りも大きな大人を、まるで年長者のような口調でたしなめている。言う少年も少年だが、言われるほうも相当駄目な奴だ。俺がこの二人のこんなやり取りを見るのは、何もこれが初めてじゃない。
「わかっている。わかってはいるのだが……」
 子供にたしなめられている大人の男に、俺は目を向ける。


 でかい男だ。俺もそれなりに背は高いが、この男は俺の背丈より拳二個分は高い。白いシャツにネクタイ、その上からベストを着て、暗い茶のコートを着ている。二十歳は過ぎているだろうが、まだ若い。向こうが少し上ってとこだろう。何より目を引くのは、腰から生えている大きな蠍の尻尾だ。傍目にも凶悪な毒針が、一見男を近寄り難く見せる。
 だが、実際に男が見せるのは、実に情けない表情だ。
「……禁煙は、どうも好きじゃない。俺の師匠も喫っていたが、止めても聞いてくれなかった。代わりに辞書が飛んできて『いいから一カートン買って来い、小僧』、と」
「知らないよ、そんな話。だいたい止めた本人がニコチン中毒じゃ意味ないよ。よく出来た『ミイラ取りがミイラ』じゃないか」
「そうは言っても、喫う事自体はそれなりに役に立つ。昔から人は秘密の話を喫煙所で漏らし……」
「はいはいタバコミュニティって奴ね。喫煙者はホント好きだよな、それ」
 男のほうは眉根を寄せたまま、少年の言葉を聞いている。


「そんな事言ってると、今に変な病気になって後悔するよ、サソリ」
 少年が少しだけ真面目そうな声で男に言う。男のほうは聞いているのだろうが、顔の向きを変えたせいで、その表情は見えない。
 サソリ。どうやらそれが、この男の呼び名らしかった。本名なのかあだ名なのか、それはわからない。だがまあ、一応昨今の学校では、フュージョナーをその特徴で呼んではいけない、などという教育がされる。ようするに蠍の尻尾がある奴をサソリと呼ぶなとか、鳶の腕を持つ奴をトビと呼ぶな、とか。確かに、俺だって知らない奴から急に鳶野郎などと呼ばれたら気分は良くない。即座にこの右手で反撃に出るだろう。
 この男と少年がどういう関係なのかは知らないが、少なくとも少年は侮辱の意味で、男をサソリと呼んでいるわけではなさそうだった。


 入口のほうで古びた自動ドアが、部品を擦らせながら開く音がした。誰かが駆け込んできた。普段なら誰が入って来ようが別に頓着しやしないのだが、つい自動ドアの不快な音に反応して、そっちのほうを見てしまった。
 当たり前の事だが、知らない顔だった。
 外人の女だ。人目を引く、燃えるような赤色をした髪、膝に手をつき、息を切らせている。左手に、古い映画で見るようなジェラルミンのケースを持っていた。
「いらっしゃいませー」
 多少戸惑った様子だが、店員が言った。女は勢いよく顔を上げた。
「匿って!」
「は?」
「でなきゃ裏口から逃がして!」


 一字一句聞きたがえる事のない、はっきりとしたこの国の母国語だった。店員が面倒そうな顔を隠さず、手で頭を掻いた。女が不意に表情を変えた。その瞬間だった。
 けたたましい炸裂音と共に、入り口のガラス戸が粉々に吹き飛んだ。気付いた瞬間には女の体が俺に向かって突っ込んできた。俺は突き飛ばされた形になって、瞬時に店の床を転がる。女の床に伏せるように体を投げ出していたが、すぐに姿勢を起こした。
「嘘、何でここが……」
言葉の終わりに舌打ちが混じる。女の顔に困惑が浮かんでいた。何かが起きていた。尋常な事態じゃない、何かが。


「ごめんなさい」
 口早に女が俺に言った。女の赤い髪の右側に、直に挿したような小さな花が揺れていた。綺麗なブルーの瞳がはっきりと見て取れて、返事をしようとした俺は思わず言葉に詰まる。再びの爆音がして、俺は反射的に身を伏せた。本棚の裏側のガラスがまとめて砕け散る。飛び散ったガラス片が音を立てて床に落ちた。
 小さな悪態が聞こえた。英語のようだ。どうやら女が言ったらしかった。
 派手にガラスを踏む音がした。ちらと、顔を上げる。破壊され尽くしたドアを踏み躙って、誰かが入ってきた。一人じゃない。二人だ。喪服よりは品のあるダークスーツに、黒いサングラス。前時代的な格好だった。一人は手にマシンガンみたいな銃を持っている。


 女が身を起こした。ダークスーツの男達に背を向ける格好だった。マシンガンを持つ手が置き上がった。狙いは、たぶん――
「止せッ!!」
 腹から飛び出すように俺は叫んでいた。マシンガンを持っていないもう一人の男が俺のほうを見た。マシンガンのほうに変化はなかった。視界の中で、物事はひどくゆっくりと動いた。
 何かが放物線を描いて男達の足元に落ちる。ごん、という重たい音。赤いラベルの飲料缶だと判別した瞬間、はためきと共に黒い影が宙を舞った。


 衝撃に店が揺れた。長身の男が放った跳び蹴りがマシンガンの男の胸元に飛び込んでいた。引き金が引かれ、重機めいた銃声と共に天井に勢いよく穴が空く。もう一人の男が反応するより早く、その顔に拳がめり込む。暗茶のコートが翻り、蠍の尻尾が身震いするように揺れる。
 ダークスーツの男達が、瞬く間にタイルの床に伏せていた。素早く身を返し、男が相手の手からマシンガンをもぎ取る。
「動くな」
 両手で構えたマシンガンの銃口を、サソリは倒れているダークスーツに向けた。男達が僅かに呻く。まだ意識があるようだ。
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