探偵尾賀叉反『翼とヒナゲシと赤き心臓』

安田 景壹

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『翼とヒナゲシと赤き心臓』2

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「――……っ、サソリ」
 小さな声が、静まった店内に響く。少年の声だ。
 飛び込んできた光景に、俺は息を呑んだ。
 翅を持った少年の顔が強張っていた。その蟀谷に、黒い凶器が力任せに押し付けられている。太い指に握られた、拳銃。
「銃を捨てろ。お前の負けだ、探偵オガサソリ」
 店内にいた二人組の一人、小太りの男が言った。俺は、暴力沙汰にはついさっきまで関わりがなかった。だが、少なくとも今、少年を人質に取っているこの男が、事によってはその引き金を引くだろうという見当くらいは、容易についた。


 サソリが両手を上げていた。二人組のもう片方、痩身の男がその手からマシンガンを奪い取る。ダークスーツの二人組が、ゆっくりと起き上がった。
「ったく、情けねえ。探偵如きに遅れを取りやがって」
 小太りの男がぶつぶつと言った。ダークスーツ達は答えなかった。受け取ったマシンガンの銃口をサソリに向ける。痩身の男も、懐からすっと拳銃を取り出した。
「やめなさい」
 女が立ち上がった。ブルーの目が、小太りの男を睨み付けていた。
「投降する。狙いは私一人でしょう? その子は関係ない。放してあげて」
「最初からそう言えばいいんだよ、お嬢さん。おかげで店を一つぶっ壊しちまった」
「黙りなさい。暴力屋め」
「はっ。いい気なもんだな」
 太い指が、少年に突き付けた拳銃の突起に触れた。カチ、という音がいやに大きく聞こえた。女の顔色が変わった。


「何をするの!?」
「決まっているだろう。顔を見られたんだ。このガキも探偵もそこの男も、生かしておけねえ」
 たるんだ肉が笑みで歪んだ。その瞬間、俺の頭の後ろに固い物が押し付けられた。何を、なんて考えるまでもない。横目に痩身の男の顔が見える。
「やめなさい!! 彼らを殺すなら私も死ぬから!」
「馬鹿な真似は止せ。元をただせば、お前がこいつらを巻き込んだんだ。恨むなら、頭が回らなかった自分を恨むんだな、学者先生」
 胃の中に刃物を直接突っ込まれた気分だった。俺みたいな屑は、どうせそのうち野垂れ死ぬんだろうと、ずっと他人事みたいに思い描いていた。それがどうだ。銃を頭に突き付けられるなんて、今の今まで考えもしなかった。


「――わかった。こうしましょう」
 女が意を決したように言った。
「先に荷物を渡す。だから、その子は助けてあげて。まだ子供だし、貴方達の顔を知ったところで、何も出来ないはずでしょ」
 手に持ったジェラルミンケースを掲げる。少なくとも、あの子の命だけは助けようって事らしい。賢明な判断って奴なんだろうが、俺とサソリの探偵の命は危険に晒されたままだ。
 小太りの男は、しかし、いい顔をしなかった。
「どうかな。このガキはさっき探偵が動くのを察して、注意を逸らすために物を放り投げた。咄嗟の機転にしちゃいい判断だ。土壇場で動ける奴は始末するに越した事はねえ」
「貴方、本気で子供を殺す気?」
「自分を守るためだ。少しでも不安を覚える事は潰しておくのさ。……だが、そうだな。先生が自分で証拠を示すって言うなら、考えてやってもいいだろう」
「……何が言いたいの?」


 小太りの男が楽しげに笑みを漏らし、左手を後ろに回してから何かを放り投げた。
 物体は女の少し手前に落ちて、そこから二、三、緩やかに回転した。
「お前の手で、そこにいる探偵を始末するんだ。そうしたら、ガキの命は助けてやる」
 男が自ら放った物を顎で指した。黒い拳銃が、そこに転がっていた。
「何て事を……」
 青ざめた顔で、それでも女は毅然と男を睨みつけた。
 小太りが気にした様子はない。
「どっちでもいいんだぜ、先生。一人を殺して一人を助けるか。何もせずに三人死ぬのを見届けるか。好きなようにやってくれ。ま、探偵は逃げないだろうが」
 男の言葉に、探偵は何も答えなかった。さっきから無表情のまま、じっと目の前の出来事を見つめている。
 女が目を閉じる。小さく息を吸って、微かに吐き出す。
「ごめんなさい」


 はっきりとそう言って、彼女は床に手を伸ばした。動きは早かった。銃を掴んで、振り返りながら立ち上がり、銃口を相手に向ける。顔色は変わってはいない。体が小刻みに震えている。
「探偵を近付けさせろ。絶対に外さないようにな」
 小太りが乱暴に指示を出した。ダークスーツの一人が押し出すように探偵を前に進める。蠍尾の男は抵抗しなかった。女と探偵の距離が縮まり、銃口がベストの上から押し付けられた。
「妙な真似はするなよ、探偵。大人しくしているんだ。最期までな」
 小太りの言葉に、マシンガンの銃口が探偵のほうを向く。
 ふと、それまで黙っていた探偵が、静かに口を開いた。
「ぴったり心臓の辺りだな」


 一瞬、誰もがその言葉に反応出来なかった。小太りでさえ意味が取れないようだった。奇妙な沈黙がやってきて、しかし、すぐに去っていった。
「慣れているから」
 直に銃を突き付けた女が、律儀に返答した。
「ちっ。さっさと撃ちやがれ! レベッカ・アンダーソン!」
 小太りの男が前のめり気味にがなった。覚悟を決めるかのように女が大きく呼吸をして、その引き金にかかった指が動く。咄嗟に俺は目を逸らした。
 銃声は、聞こえてこなかった。そっと、俺は視線を元に戻す。状況は全く変わっていなかった。指は引き金にかかったままだ。
「……引けない」


 小さな声で、女がマシンガンを持った男に言った。女の指が、何度も引き金を引こうとするが、強い力で止められているかのようにそれが動く気配はない。
「おい。セイフティがかかったままだぞ」
 ダークスーツが非難がましい声で言った。そのままマシンガンを下げて女へと近付く。
 ――その、僅か数秒――
「この馬鹿野郎!!」
 小太りの怒声が響いた瞬間、ジェラルミンケースがマシンガンを持つ手に叩き付けられる。握りが解かれ、長い銃は男の手から離れる。苦悶の声が上がるのと同じく、もう一人のダークスーツが俺の目の前に投げ飛ばされた。
「っ、こいつら!」
 俺の後頭部から銃が離れた。痩せ男が狙いを変えたのだ。男の銃が動くのが見えた。それがきっかけとなった。


 体を駆け巡った電流の命ずるまま、鳶の右腕が裏拳紛いに男の顔面に振るわれた。人を殴った経験なんて、ガキの頃の喧嘩くらいしかない。骨ばった俺の手が、相手の鼻っ柱を打ったのがわかった。
 反撃は一瞬だった。怒り狂った痩せ男の拳が俺を顔面ごと殴り飛ばした。浮遊感。痛み。飛んだ体が床に投げ出され、情けない声が喉から漏れた。
「舐めた真似しやがって!!」
 痩せ男が俺に狙いを定めた。銃口が向けられたその瞬間、真横からでかい拳が男に叩き込まれる。まるで隙間に挟まったボールのように、男の顔が商品棚に突っ込んで動かなくなった。
 男の顔から拳を引き戻す探偵が俺の顔を見た。黒い、無表情な目。
「大丈夫か」
「……ああ」


 探偵の言葉に、俺はそんな返答しか出来なかった。見れば、女が残ったダークスーツに、拳銃を突き付けていた。悠然とした足取りで、探偵はそのまま前に進み、床に落ちたマシンガンを拾い上げた。
「形勢逆転だ。ジンを放してもらおうか」
 素早くマシンガンを構えて、探偵が小太りに告げた。男の犬耳がひくついた。
「調子に乗るんじゃねえぞ! こっちにはガキがいるんだ。てめえらこそ銃を下しやが――」
 言葉はマシンガンの轟音によって遮られた。拳銃を持つ男の右腕がだらりと下がり、肘の辺りが激しく出血していた。苦悶の声が、男の口から漏れていた。少年が男の腕を振り払い、探偵の元へと駆け寄る。男にそれを止める力はない。膝をつき、目を見開いている。
「お前の負けだ」
 探偵が静かに言った。
「……俺の負け?」


 俯いたまま、男の口から喉を鳴らすような笑い声が聞こえた。笑うと傷に響くのか、すぐにその声は呻きに変わる。
「……そうか、俺の負けか。それじゃあ仕方がねえ」
 男が上着のポケットに手を入れた。マシンガンが再び男を狙った。
「抵抗は無駄だ。大人しくしていれば撃ちはしない」
「馬ぁ鹿。俺はもう負けてるんだ。こっから先は場外乱闘だよ」
 太い指で摘んで、男はポケットから何かを取り出した。銃じゃない。太めの、一言では言い表しづらい器具だ。上下を銀色の蓋で塞がれた容器。中に入っているのは、エメラルドに近い色の液体だ。男の掌に握られていて全容は見えないが、俺はその緑の液体の中を、白い何かが泳いでいるのを見た。
「モンストロ……」


 女の声が聞こえた。銃はダークスーツの至近距離に近付けているが、目は完全に男が持つ容器に捉われていた。次の瞬間、女は探偵に向かって叫んだ。
「あれを撃って! 早く!」
「はっ。もう遅えよ」
 探偵が答えるより早く、男は容器を口に銜えた。男の鋭く尖った犬歯が見えた。小さく、何かが割れる音がした。
 緑の液体が、ぽた、と床に落ちた。
「逃げて」
 女が口早に言った。少年が女の顔を見る。女は周囲の顔を見て言った。
「全員よ。死にたくなかったら、今すぐ全力で!」
 一拍の間が空いて、ダークスーツが悲鳴を上げて駆け出した。小太りの男は床に突っ伏している。俺は妙な事に気が付いた。今しがた銃弾が貫いたはずの男の右肘から、出血が止まっている。
「ジン。彼らと逃げろ」
 探偵が言った。その目つきがさっきよりきつくなっている。


「逃げろって……」
「いいから彼女達と逃げろ。そこの人、あんたもさっさと行くんだ」
「いやでも――」
 俺が思わずそう言いかけた時だ。
 しゃ、しゃ、しゃと裂けるような音が続いて、小太りの影が大きくなっていた。
いや、それはもう、小太りの男じゃなかった。その腕は幹のように膨れ上がり、墨のような動物めいた毛で覆われていた。どういう原理か、体のそこかしこから稲妻が走り、体の膨張に伴って放電していく。肘が砕けたはずの右腕が、再生しながら獣の前足のようになり、まるで生まれつきそうだったかのように地に着いている。
足はもっと凄かった。目に見える電流と共に何本もの筋肉が次々と切れ、骨がへし折れて形状が変わっていく。関節は完全に逆転し、体毛が猛スピードで生えていく。


 それはもう人間の足じゃなかった。巨大な黒犬。俺達の目の前に現れたのは、そんな怪物だった。
「急げ!!」
 探偵が怒号を発した。女が少年の手を取り、俺の顔を見た。
 迷っている暇はない。立ち上がり、飛び散ったガラスを飛び越え、俺は女達の後を追う。背後で、獣の咆哮と共にマシンガンが放つ銃声が聞こえてきた。
 振り返るわけにはいかない。俺は女達に追いつくと、言った。
「どこへ逃げる?」
「ここから少し行ったところに探偵の事務所がある」
 答えたのは少年だ。
「下手に変なところに隠れるよりは安全だよ。鍵は預かってるから」
「意外と冷静だな……。お前」
「別に落ち着いているわけじゃないよ」


 言いながら、少年はちらと後方を振り返った。
「なら、二人でそこへ行って。私は探偵を助けてくる」
 女が足を止めた。踵を返し、来た道を引き返しだす。俺は慌てて、その肩を掴んだ。
「待てって! あんたが行ってどうにかなるもんなのか? あんな奴を相手に」
「策はある。それに、このままだと彼が死ぬわ」
「……なら、せめて俺も一緒に――」
「残念だけど、出来る事は何もない。来るだけ無駄よ」
 俺には目を合わせずに、女が言った。
「ごめんなさい。私があそこへ行かなければ、こうはならなかったのにね。貴方達はちゃんと逃げて。私が彼を助けてみせるから」


 女が走り出そうとした。髪の間の小さな花が揺れる。白い四枚の花弁。あれは、確かヒナゲシだったか。
「おい待――」
 言葉は最後まで言えなかった。
 頭蓋骨を叩き壊されるような衝撃が、突然俺に襲い掛かった。冗談みたいに目の前が光り、頭がくらくらする。食った物が胃からせり上がり、堪えきれず吐き出した拍子に体の力が抜ける。地面に転げれば、アスファルトの感触が冷たい。
「おじさん!?」
 少年の声が聞こえた。その声が急にくぐもった。黒いスーツの足が、少年の腹を蹴り飛ばしていた。痛みを堪えるように、少年が腹を抑えてうずくまる。
「……にしやがって。馬鹿にしやがって」
 誰かが、ぶつぶつとそんな事を呟いていた。視界もだいぶ悪い。ぼやけてやがる。だが俺は、俺の事を襲った奴の顔を判別する事が出来た。さっき一目散に逃げ出した野郎、ダークスーツの片割れだ。
「動くんじゃねえ! レベッカ・アンダーソン。動くとガキとこの男を殺す」


 ダークスーツが興奮した様子でまくし立てる。どこから持って来たのか、手に持った消火器を俺の頭のすぐそばに叩き付けた。
「銃を捨てて両手を上げろ。一緒に来てもらうぞ。博士のところまでな!」
 男の言葉に女が頷くのが、辛うじて見えた。両手を上げて女は銃を手放す。
 立ち上がらなきゃ。今すぐ女と少年を助けなきゃいけない。だが、足に力が入らない。どころか、全身の感覚さえ無くなってきている。
 ダークスーツが女を拘束するのが見えた。近くには、他に誰もいない。
 視界が混濁する。首筋にぬるりとした物が垂れてくる。足を下に引っ張られるみたいに、意識が保てなくっていく。視界が暗く、暗く……。
 ……ああ、くそ。ろくでもない事になりやがった。
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