王城に呼ばれたら、いきなり結婚しようって言われた。私たち婚約してたよね?

サリア

文字の大きさ
1 / 1

王城に呼ばれたら、いきなり結婚しようって言われた。私たち婚約してたよね?

しおりを挟む
爛爛と煌めくシャンデリアがこの広き謁見の間を照らす。中央には玉座が泰然と位置しておりそこに腰掛ける王はこちらをゆったりと見ている。会議には私を含めた貴族令嬢が大勢集まり、さらにはこの国の重鎮である大臣らが多数出席していた。

既に大勢が集結していたようだが、私は公爵令嬢としての振る舞いの常として、できるだけ会議時間の遅くに馬車でゆっくりと出向いた。今でも不思議ではあるが、この国では位が高くなればなるほど、こういった出席が必要な場面では遅くに出向く、というのが通例であるらしい。

真っ赤に地面に倒れこむ絨毯の弾力を楽しみながら、私は王の方向へ向けて歩き出す。
今日は、落ち着いた黒のロングドレスを着ている。少し、露出が多かったかなとも内心思っていたのだがメイドに異様に褒められたためこれを着ていくしかなかった。
きっと母親から受け継いだこの深紅の髪を目立たせるように、選んでくれたのだろう。



事務的な報告が一段落し、私の婚約者でもある第三王子のエルバートが演壇の上にのる。
毎年の報告会では、このような段取りは存在していなかったはずなのだが何かあったのだろうか。報告会で眠くなり、頭が留守になったようなままエルバートを見る。

美しい翠色の髪を短く刈ったエルバートは今日も美しいな、と思う。その声には凛としていて、しかしそうであるのに貫禄のようなものも感じられる。
あんな声で囁かれたらときめかない婦女子はいないだろう。
そんな声を独占できている私は恵まれている。今日もまた二人でお話しできるだろうか。

そんなことをつらつらと考えていると、いつしか謁見の間にいた多くの人々が私に向けて視線を向けていた。美しい管弦楽器の演奏も止まっている。
話を聞いていなかった。何があったのだろうか。

「話を聞いていましたか公爵令嬢ヘスティア。」

とエルバートから声がかかった。ピンポイントで私に聞いてきたことに驚きつつも、しかし全く話を聞いていなかったために、いかにも聞いていたかのように、

「と、おっしゃいますと?」

と言った。

「申し訳ありません。話が伝わりずらかったですね。」

と嫌味のようにも取れる口調で再度説明してくれた。

「来週にあなたとの結婚式を開きたいと思っています。」

場が静寂に満ちた。いやもう既に満ちていた。私が遅い到着だったようだ。

そのような知らせは聞いていなかったために、思考が止まる。

急に!この場でっ!と驚きつつも、エルバートの方を見る。

「私はずっとずっと待ち望んでいたのです。あなたと結婚することを。つややかに煌めく深紅の髪、まるで一度も陽光を見たことがないかのような白い肌。そしてなによりも美しく私を照らしてくれる優しい心。私はあなたに惹かれました。」

スタスタときれいな姿勢で優雅にエルバートがこちらに歩んでくる。

普段だったら絶対にするべきではない行為なのだが、国の主要人物が集まる中で、エルバートは私の前にひざまずく。

「改めて言わしてほしい。ヘスティア。私は君のことを愛している。あなたが他の男と話している姿を見るだけで胸が痛くなる。どんなことがあっても、私が君を守る。幸せにする。だから、私と結婚してくれないか。」

言葉の最後を言うときにはしっかりと目を私に合わせた。薄萌葱の愛らしい目が私を一心に見つめてくる。

私は一呼吸してから答える。私もしゃがんだ。

「もちろん。私もあなたのそんなところが好きですよ。わざわざこんなところでおっしゃられるなんて…恥ずかしいじゃないですか…うぅ」

不意に涙が出てきてしまった。
エルバートはそんな私を抱きしめながら、また耳元で「今夜は寝かせないからな。」と確かに言った。恥ずかしい。





会場は私たちを気遣うように、またざわざわと音を取り戻していった。







しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です

ワイちゃん
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

処理中です...