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王城に呼ばれたら、いきなり結婚しようって言われた。私たち婚約してたよね?
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爛爛と煌めくシャンデリアがこの広き謁見の間を照らす。中央には玉座が泰然と位置しておりそこに腰掛ける王はこちらをゆったりと見ている。会議には私を含めた貴族令嬢が大勢集まり、さらにはこの国の重鎮である大臣らが多数出席していた。
既に大勢が集結していたようだが、私は公爵令嬢としての振る舞いの常として、できるだけ会議時間の遅くに馬車でゆっくりと出向いた。今でも不思議ではあるが、この国では位が高くなればなるほど、こういった出席が必要な場面では遅くに出向く、というのが通例であるらしい。
真っ赤に地面に倒れこむ絨毯の弾力を楽しみながら、私は王の方向へ向けて歩き出す。
今日は、落ち着いた黒のロングドレスを着ている。少し、露出が多かったかなとも内心思っていたのだがメイドに異様に褒められたためこれを着ていくしかなかった。
きっと母親から受け継いだこの深紅の髪を目立たせるように、選んでくれたのだろう。
事務的な報告が一段落し、私の婚約者でもある第三王子のエルバートが演壇の上にのる。
毎年の報告会では、このような段取りは存在していなかったはずなのだが何かあったのだろうか。報告会で眠くなり、頭が留守になったようなままエルバートを見る。
美しい翠色の髪を短く刈ったエルバートは今日も美しいな、と思う。その声には凛としていて、しかしそうであるのに貫禄のようなものも感じられる。
あんな声で囁かれたらときめかない婦女子はいないだろう。
そんな声を独占できている私は恵まれている。今日もまた二人でお話しできるだろうか。
そんなことをつらつらと考えていると、いつしか謁見の間にいた多くの人々が私に向けて視線を向けていた。美しい管弦楽器の演奏も止まっている。
話を聞いていなかった。何があったのだろうか。
「話を聞いていましたか公爵令嬢ヘスティア。」
とエルバートから声がかかった。ピンポイントで私に聞いてきたことに驚きつつも、しかし全く話を聞いていなかったために、いかにも聞いていたかのように、
「と、おっしゃいますと?」
と言った。
「申し訳ありません。話が伝わりずらかったですね。」
と嫌味のようにも取れる口調で再度説明してくれた。
「来週にあなたとの結婚式を開きたいと思っています。」
場が静寂に満ちた。いやもう既に満ちていた。私が遅い到着だったようだ。
そのような知らせは聞いていなかったために、思考が止まる。
急に!この場でっ!と驚きつつも、エルバートの方を見る。
「私はずっとずっと待ち望んでいたのです。あなたと結婚することを。つややかに煌めく深紅の髪、まるで一度も陽光を見たことがないかのような白い肌。そしてなによりも美しく私を照らしてくれる優しい心。私はあなたに惹かれました。」
スタスタときれいな姿勢で優雅にエルバートがこちらに歩んでくる。
普段だったら絶対にするべきではない行為なのだが、国の主要人物が集まる中で、エルバートは私の前にひざまずく。
「改めて言わしてほしい。ヘスティア。私は君のことを愛している。あなたが他の男と話している姿を見るだけで胸が痛くなる。どんなことがあっても、私が君を守る。幸せにする。だから、私と結婚してくれないか。」
言葉の最後を言うときにはしっかりと目を私に合わせた。薄萌葱の愛らしい目が私を一心に見つめてくる。
私は一呼吸してから答える。私もしゃがんだ。
「もちろん。私もあなたのそんなところが好きですよ。わざわざこんなところでおっしゃられるなんて…恥ずかしいじゃないですか…うぅ」
不意に涙が出てきてしまった。
エルバートはそんな私を抱きしめながら、また耳元で「今夜は寝かせないからな。」と確かに言った。恥ずかしい。
会場は私たちを気遣うように、またざわざわと音を取り戻していった。
既に大勢が集結していたようだが、私は公爵令嬢としての振る舞いの常として、できるだけ会議時間の遅くに馬車でゆっくりと出向いた。今でも不思議ではあるが、この国では位が高くなればなるほど、こういった出席が必要な場面では遅くに出向く、というのが通例であるらしい。
真っ赤に地面に倒れこむ絨毯の弾力を楽しみながら、私は王の方向へ向けて歩き出す。
今日は、落ち着いた黒のロングドレスを着ている。少し、露出が多かったかなとも内心思っていたのだがメイドに異様に褒められたためこれを着ていくしかなかった。
きっと母親から受け継いだこの深紅の髪を目立たせるように、選んでくれたのだろう。
事務的な報告が一段落し、私の婚約者でもある第三王子のエルバートが演壇の上にのる。
毎年の報告会では、このような段取りは存在していなかったはずなのだが何かあったのだろうか。報告会で眠くなり、頭が留守になったようなままエルバートを見る。
美しい翠色の髪を短く刈ったエルバートは今日も美しいな、と思う。その声には凛としていて、しかしそうであるのに貫禄のようなものも感じられる。
あんな声で囁かれたらときめかない婦女子はいないだろう。
そんな声を独占できている私は恵まれている。今日もまた二人でお話しできるだろうか。
そんなことをつらつらと考えていると、いつしか謁見の間にいた多くの人々が私に向けて視線を向けていた。美しい管弦楽器の演奏も止まっている。
話を聞いていなかった。何があったのだろうか。
「話を聞いていましたか公爵令嬢ヘスティア。」
とエルバートから声がかかった。ピンポイントで私に聞いてきたことに驚きつつも、しかし全く話を聞いていなかったために、いかにも聞いていたかのように、
「と、おっしゃいますと?」
と言った。
「申し訳ありません。話が伝わりずらかったですね。」
と嫌味のようにも取れる口調で再度説明してくれた。
「来週にあなたとの結婚式を開きたいと思っています。」
場が静寂に満ちた。いやもう既に満ちていた。私が遅い到着だったようだ。
そのような知らせは聞いていなかったために、思考が止まる。
急に!この場でっ!と驚きつつも、エルバートの方を見る。
「私はずっとずっと待ち望んでいたのです。あなたと結婚することを。つややかに煌めく深紅の髪、まるで一度も陽光を見たことがないかのような白い肌。そしてなによりも美しく私を照らしてくれる優しい心。私はあなたに惹かれました。」
スタスタときれいな姿勢で優雅にエルバートがこちらに歩んでくる。
普段だったら絶対にするべきではない行為なのだが、国の主要人物が集まる中で、エルバートは私の前にひざまずく。
「改めて言わしてほしい。ヘスティア。私は君のことを愛している。あなたが他の男と話している姿を見るだけで胸が痛くなる。どんなことがあっても、私が君を守る。幸せにする。だから、私と結婚してくれないか。」
言葉の最後を言うときにはしっかりと目を私に合わせた。薄萌葱の愛らしい目が私を一心に見つめてくる。
私は一呼吸してから答える。私もしゃがんだ。
「もちろん。私もあなたのそんなところが好きですよ。わざわざこんなところでおっしゃられるなんて…恥ずかしいじゃないですか…うぅ」
不意に涙が出てきてしまった。
エルバートはそんな私を抱きしめながら、また耳元で「今夜は寝かせないからな。」と確かに言った。恥ずかしい。
会場は私たちを気遣うように、またざわざわと音を取り戻していった。
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