転生したら陰謀の中心にいた俺

キック

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6.  アレクとなった俺、伯爵令嬢に会う

―― エミリー嬢と俺 12 ――

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「「どうした?」」
 俺とビルは、アリアたちに同時に声をかけた。
「単純な剣の傷では、ないようじゃ。……治癒魔法が効かぬ」
 なんだって。治癒魔法が効かない――そんな馬鹿な!
 では、エミリー嬢は、助からないのか?

「どういうことなんだ?」
「剣に毒を塗っておったようじゃ」
「……毒だと、治癒魔法は効かないのか?」
 イリアが、あきれた顔で答えた。
「教えたはずじゃぞ。治癒魔法と解毒魔法の違いについて」

 ああ、そうだった!
 この世界では、怪我や病気を直す魔法と、毒を解毒する魔法とは別物だった。
 治癒魔法は、魔力を使い、人為的に造られた毒や、魔物が体内に持つ毒には効かないのだ。解毒魔法なら、人為的に造られた毒、魔物の体内で造られた毒、すべてを分解することができる。
「わしも姉者も、解毒魔法は、苦手なのじゃ」
 イリアは、くやしそうに、横たわったエミリー嬢をみやる。

 イリアがしゃべっているあいだも、治癒魔法を続けていたアリアが、深く息を吐きながら、立ちあがった。
「血は止めたし、身体の内側外側の損傷部分も治癒させた。……じゃが、体内に広がった毒を分解し、排出させることは、無理じゃった」
 俺は、ビルの方を振りむいた。
 ビルは、無言で、首を振った。

「解毒魔法を使えるものは少ないのじゃ。それに、エミリー様のような容態じゃと、レベルの高い解毒魔法でないと、駄目じゃ。宮廷専属の解毒師でも呼んでこないと……」
 アリアも下を向き、つぶやきながら、再びエミリー嬢の前に座りこんだ。エミリー嬢の左腕を慎重につかみ、手のひらを下に向けさせると、手の甲の部分を、こすり始めた。

 それは? と、俺が訊こうとすると、イリアが説明してくれた。
「魔力を、そそいでいるのじゃ。身体全体を活性化させて、少しでも、毒の効果を弱めようとしているのじゃ……」
 イリアの声にも、力がなかった。座りこむと、腹を押さえたまま硬直している彼女の右手の甲を、アリアと同じように、こすり始めた。

 俺は、何もできない自分に腹が立った。
 何もしないよりは、マシだと思い、イリアの隣に座りこみ、手を、エミリー嬢の血で汚れた服の上にあてた。見よう見まねで、魔力をそそぎこむ。
 日頃の練習の成果だろうか? 意外にスムーズに魔力が、あてた手のひらから流れ出した。
 アリアとイリアが、ハッとした様子で、顔をあげた。
 俺は、気にせず、魔力をそそぎ続けた。

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