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第一章
二話 暴走する魔力
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「あれ、レフトーラさんお久しぶりですね」
「やあ、ニナの件を聞いたのよ。彼女は医務室かな?」
レフトたちは朝一番でヘルゲートに転移していた。
ヴァンは用事があるらしくアレサに転移の札を渡しホープの診療所へ向かった。
「はい、後でソロモンさんやミミズク様が様子を見に伺うと思います」
「分かった、ありがとう」
「ソロモン、ミミズク?私はそんな人物知らないわよ」
「ソロモンはニナの上司よ。ミミズクさんはこの支部を仕切っている女性ね」
「ふーん」
医務室へ向かう二人。
早朝で人もおらず二人の足音だけが通路に響く。
ガラガラと扉を開けるとニナは起き上がっており不気味な魔力を放っていた。
見るからに様子がおかしい異常事態といえる。
「ちょっとニナ…あんた…」
不気味な雰囲気に身構えるアレサ。
「ニナっ!」
後から入室したレフトもただならぬニナの状態に身構える。
「レフト、看護師を。これは危険よ」
レフトは近くにあったコールを押す。
すぐに看護師がかけつけ、鎮痛薬を注射するが防壁魔法が発動し薬を受けつけない。
するとニナはそれを攻撃されたと誤認し魔力を収束する。
「危ないっ」
アレサは看護師を守るためニナを殴り吹き飛ばす。
部屋の壁をぶち破り外へ飛び出すニナ。
「うわ…」
「ちょっとあなた、患者になんてことを…」
看護師はアレサにつめよるが、そんな看護師を振り払う。
「やらなきゃここは消滅していたわよ」
「…」
言い返せない看護師たち。
そこへ騒ぎを聞きソロモンとミミズク、さらにはバイオが駆けつける。
「おいお前、ニナさんに何をした?」
アレサの肩を掴むソロモン。
「その手を離しなさい…」
凄まじい形相でソロモンを睨むアレサ。
「うふふ、ソロモンさん、ここは我々に任せて下さい。そして大変申し訳ないですが隣りの宿舎にオメガ様がいますので呼んできていただけますか?」
「…わかった」
ソロモンは支部の幹部であるバイオの言う通りに宿舎へと向かった。
「看護師の皆さんも避難を。ここは危険です」
バイオとミミズクは周辺の人に避難を指示。
事の異様さを瞬時に理解した。
「あら感心、やはりここの者たちは一味違うわね」
アレサはその迅速な行動に驚く。
「うふふ、何故でしょう、ニナさんからは魔力を感じます。ミミズクさんも一時退避したほうがいいわ」
「承知しました、皆様、ニナさんをお願いします」
ミミズクはレフトに一礼し去った。
「ニナは鏡に触れた。原因はそれだ」
「うふふ、レフトーラ様、ニナさんは女性ですよ?」
「え、えっと…そ、その魔力がある鏡…というか…」
「ニナは心身とも限界だったのね。そんな状態で強大な魔力が宿った鏡に触れたもんだから……」
アレサは状態をバイオに伝える。
「うふふご丁寧にありがとうございます奥様」
「…」
その言葉に笑顔でかえすアレサ。
…なんだなんだ。
この二人。
性格が絶対合わないと思ったけど…相性が良いのか…。
レフトがぶつぶつ言っていると、ニナは起き上がりゆっくりと目を開く。
瞳は赤く光り、不安定で危険な魔力を纏っている。
「レフト、ニナを助ける方法は二つよ」
アレサが前に出てニナと対峙する。
「うふふ、奥様、時間をかせいで下さい。私が合体魔法含めレフトーラ様にお伝え致します」
「へえ…あなた……分かったわ」
アレサはバイオに会釈し、ニナに殴りかかる。
ニナはアレサの攻撃を受け止めて魔法で反撃する。
表情を変えることがないニナの異様さが不気味である。
「…ニナ…」
「レフトーラ様、ニナさんは現在生命活動をしていません」
「…やはり…そうか…」
淡々と話すバイオ。
「奥様が言ったようにニナさんを救う方法は二つ」
「…くっ…」
「一つは合体魔法で人工的に心臓をつくり、それを器として生存させる方法です」
「…それではニナの意識が…」
「はい、記憶は全て失います。ただこの方法は確実にニナさんを生存させられます」
拳をにぎるレフト。
二人が話している間もニナとアレサの戦いは続く。
アレサは被害や建物を破壊せぬようコンパクトに立ち回っている。
「ニナ…あんたと戦う日がくるとはね…」
「…」
ニナは返答することはない。
「ふふ、無口なあんたは気持ち悪いわ…」
二人の戦闘を見ながらバイオは話を続ける。
「もう一つは、これも合体魔法ですが、強力な破呪魔法をニナさんの身体に放ち、宿っている魔力を払います」
「それではニナの肉体が…」
「その通りです、最悪、肉体は消失します。ニナさんの精神力頼りの荒業ですが成功すれば魔力の後遺症はなく無事に彼女を救えます」
「くっ…」
バイオは杖を召喚、禍々しい杖で不思議な文字の魔法陣を描いている。
「レフトーラ様」
「はい…」
「つらい選択となりますが決断せねばなりません。みたところ奥様は躊躇や迷いがない、私たちが決断できなければ……自分でケリをつけるでしょう」
「…バイオさん」
「はい」
「ニナを…信じましょう」
その言葉にうつむくバイオ。
人らしい表情をはじめてみせる。
「戻ってきます。ニナは…負けず嫌いですから…きっと自分で…戻ってきます」
「…」
「バイオさん?」
「……信じる…ですか…」
「えっ…」
「うふふ、私も…あの時……信じる覚悟があれば…」
…バイオさんの目付きが変わった。
過去に同じようなことでもあったのかな。
「ニナさんが魔法陣の中に入ったら解呪の魔法をフルパワーで放って下さい。中途半端だと解呪は失敗し、魔力を押し返されて私たちが大ダメージを受けます。荒れ狂う魔力で建物が壊れようが気にしないで下さい」
「魔法陣ね」
「私がさらに解呪魔法を併せ合体魔法としてニナさんに放ちます。その後魔力が消えたら彼女を受け止めて下さい」
「分かりました」
…ん、レフトが魔法陣に入ったわね。
まったく…あやうく私がニナを…。
「奥様はこの方法を理解しております。準備ができたら私が合図をします」
「よく分かったよ」
レフトは剣を地面に刺し集中する。
バイオはレフトの後方に移り魔法陣周囲に札をばらまく。
いつの間にか周辺は防壁魔法が展開されており厳戒態勢だ。
オメガとソロモンも駆けつけ防壁に手をついて様子をみている。
「……なっ…」
「うむ、こうなっては中の三人にニナを任すほかない」
「そ、そうですね…」
バイオがアレサに合図らしき仕草をする。
するとアレサは強烈な一撃をニナの肩に放つ。
肩が外れたニナは怯むがすぐに反撃すべくアレサに突撃。
誘導に成功したアレサはレフトの前を通過する。
「レフトーラ様っ!」
ニナの身体が魔法陣に侵入した瞬間、バイオはレフトに叫ぶ。
「ニナ」
レフトは魔力を解放。
凄まじい魔力が放たれ防壁にヒビが入るがミミズクが合図をして多数の魔術師が一斉に補強をする。
レフトは魔法陣に手をつき解呪魔法を放つ。
陣からは白い煙りのような魔力が吹き出しレフトが放った青い解呪魔法、バイオがばら蒔いた札と混ざる。
混合した魔力がニナの魔力に反応し彼女の動きは止まり身体を拘束していく。
「はっあああっ!」
ニナの動きが止まったのを確認したバイオはレフト同様に魔力を解放する。
その黒く禍々しい魔力に支部は激しく揺れ衝撃を受けた。
「…この魔力……レフトに匹敵するかもね……」
アレサはバイオを見て呟く。
バイオの魔力解放にニナの魔力は反応、激しく抵抗をする。抑え込もうとするレフトの魔力も加わり周囲は激しい魔法戦を展開。ミミズクは魔術師を増やし、さらには結界士なども駆けつけ強大な防壁補強でなんとか耐えている。
「破魔の力よ、我が呼びかけに応え、さらなる力を発揮せよ」
バイオが放った合体魔法は即座にニナをつつむ。
彼女は動きが止まり全身の力が抜けたように無気力に立っている。
周囲の魔力が一気に弾け、バイオはその衝撃を受け片膝をついてしまう。
支部を覆っていた防壁も限界を超え砕け散った。
「レフトーラ様、ニナさんを受け止めて下さい」
「レフト、今よ、あなたしかニナを連れ戻せないわ」
二人の言葉に崩れ落ちるニナをレフトは受け止め抱きしめた。
次回へ続く。
「やあ、ニナの件を聞いたのよ。彼女は医務室かな?」
レフトたちは朝一番でヘルゲートに転移していた。
ヴァンは用事があるらしくアレサに転移の札を渡しホープの診療所へ向かった。
「はい、後でソロモンさんやミミズク様が様子を見に伺うと思います」
「分かった、ありがとう」
「ソロモン、ミミズク?私はそんな人物知らないわよ」
「ソロモンはニナの上司よ。ミミズクさんはこの支部を仕切っている女性ね」
「ふーん」
医務室へ向かう二人。
早朝で人もおらず二人の足音だけが通路に響く。
ガラガラと扉を開けるとニナは起き上がっており不気味な魔力を放っていた。
見るからに様子がおかしい異常事態といえる。
「ちょっとニナ…あんた…」
不気味な雰囲気に身構えるアレサ。
「ニナっ!」
後から入室したレフトもただならぬニナの状態に身構える。
「レフト、看護師を。これは危険よ」
レフトは近くにあったコールを押す。
すぐに看護師がかけつけ、鎮痛薬を注射するが防壁魔法が発動し薬を受けつけない。
するとニナはそれを攻撃されたと誤認し魔力を収束する。
「危ないっ」
アレサは看護師を守るためニナを殴り吹き飛ばす。
部屋の壁をぶち破り外へ飛び出すニナ。
「うわ…」
「ちょっとあなた、患者になんてことを…」
看護師はアレサにつめよるが、そんな看護師を振り払う。
「やらなきゃここは消滅していたわよ」
「…」
言い返せない看護師たち。
そこへ騒ぎを聞きソロモンとミミズク、さらにはバイオが駆けつける。
「おいお前、ニナさんに何をした?」
アレサの肩を掴むソロモン。
「その手を離しなさい…」
凄まじい形相でソロモンを睨むアレサ。
「うふふ、ソロモンさん、ここは我々に任せて下さい。そして大変申し訳ないですが隣りの宿舎にオメガ様がいますので呼んできていただけますか?」
「…わかった」
ソロモンは支部の幹部であるバイオの言う通りに宿舎へと向かった。
「看護師の皆さんも避難を。ここは危険です」
バイオとミミズクは周辺の人に避難を指示。
事の異様さを瞬時に理解した。
「あら感心、やはりここの者たちは一味違うわね」
アレサはその迅速な行動に驚く。
「うふふ、何故でしょう、ニナさんからは魔力を感じます。ミミズクさんも一時退避したほうがいいわ」
「承知しました、皆様、ニナさんをお願いします」
ミミズクはレフトに一礼し去った。
「ニナは鏡に触れた。原因はそれだ」
「うふふ、レフトーラ様、ニナさんは女性ですよ?」
「え、えっと…そ、その魔力がある鏡…というか…」
「ニナは心身とも限界だったのね。そんな状態で強大な魔力が宿った鏡に触れたもんだから……」
アレサは状態をバイオに伝える。
「うふふご丁寧にありがとうございます奥様」
「…」
その言葉に笑顔でかえすアレサ。
…なんだなんだ。
この二人。
性格が絶対合わないと思ったけど…相性が良いのか…。
レフトがぶつぶつ言っていると、ニナは起き上がりゆっくりと目を開く。
瞳は赤く光り、不安定で危険な魔力を纏っている。
「レフト、ニナを助ける方法は二つよ」
アレサが前に出てニナと対峙する。
「うふふ、奥様、時間をかせいで下さい。私が合体魔法含めレフトーラ様にお伝え致します」
「へえ…あなた……分かったわ」
アレサはバイオに会釈し、ニナに殴りかかる。
ニナはアレサの攻撃を受け止めて魔法で反撃する。
表情を変えることがないニナの異様さが不気味である。
「…ニナ…」
「レフトーラ様、ニナさんは現在生命活動をしていません」
「…やはり…そうか…」
淡々と話すバイオ。
「奥様が言ったようにニナさんを救う方法は二つ」
「…くっ…」
「一つは合体魔法で人工的に心臓をつくり、それを器として生存させる方法です」
「…それではニナの意識が…」
「はい、記憶は全て失います。ただこの方法は確実にニナさんを生存させられます」
拳をにぎるレフト。
二人が話している間もニナとアレサの戦いは続く。
アレサは被害や建物を破壊せぬようコンパクトに立ち回っている。
「ニナ…あんたと戦う日がくるとはね…」
「…」
ニナは返答することはない。
「ふふ、無口なあんたは気持ち悪いわ…」
二人の戦闘を見ながらバイオは話を続ける。
「もう一つは、これも合体魔法ですが、強力な破呪魔法をニナさんの身体に放ち、宿っている魔力を払います」
「それではニナの肉体が…」
「その通りです、最悪、肉体は消失します。ニナさんの精神力頼りの荒業ですが成功すれば魔力の後遺症はなく無事に彼女を救えます」
「くっ…」
バイオは杖を召喚、禍々しい杖で不思議な文字の魔法陣を描いている。
「レフトーラ様」
「はい…」
「つらい選択となりますが決断せねばなりません。みたところ奥様は躊躇や迷いがない、私たちが決断できなければ……自分でケリをつけるでしょう」
「…バイオさん」
「はい」
「ニナを…信じましょう」
その言葉にうつむくバイオ。
人らしい表情をはじめてみせる。
「戻ってきます。ニナは…負けず嫌いですから…きっと自分で…戻ってきます」
「…」
「バイオさん?」
「……信じる…ですか…」
「えっ…」
「うふふ、私も…あの時……信じる覚悟があれば…」
…バイオさんの目付きが変わった。
過去に同じようなことでもあったのかな。
「ニナさんが魔法陣の中に入ったら解呪の魔法をフルパワーで放って下さい。中途半端だと解呪は失敗し、魔力を押し返されて私たちが大ダメージを受けます。荒れ狂う魔力で建物が壊れようが気にしないで下さい」
「魔法陣ね」
「私がさらに解呪魔法を併せ合体魔法としてニナさんに放ちます。その後魔力が消えたら彼女を受け止めて下さい」
「分かりました」
…ん、レフトが魔法陣に入ったわね。
まったく…あやうく私がニナを…。
「奥様はこの方法を理解しております。準備ができたら私が合図をします」
「よく分かったよ」
レフトは剣を地面に刺し集中する。
バイオはレフトの後方に移り魔法陣周囲に札をばらまく。
いつの間にか周辺は防壁魔法が展開されており厳戒態勢だ。
オメガとソロモンも駆けつけ防壁に手をついて様子をみている。
「……なっ…」
「うむ、こうなっては中の三人にニナを任すほかない」
「そ、そうですね…」
バイオがアレサに合図らしき仕草をする。
するとアレサは強烈な一撃をニナの肩に放つ。
肩が外れたニナは怯むがすぐに反撃すべくアレサに突撃。
誘導に成功したアレサはレフトの前を通過する。
「レフトーラ様っ!」
ニナの身体が魔法陣に侵入した瞬間、バイオはレフトに叫ぶ。
「ニナ」
レフトは魔力を解放。
凄まじい魔力が放たれ防壁にヒビが入るがミミズクが合図をして多数の魔術師が一斉に補強をする。
レフトは魔法陣に手をつき解呪魔法を放つ。
陣からは白い煙りのような魔力が吹き出しレフトが放った青い解呪魔法、バイオがばら蒔いた札と混ざる。
混合した魔力がニナの魔力に反応し彼女の動きは止まり身体を拘束していく。
「はっあああっ!」
ニナの動きが止まったのを確認したバイオはレフト同様に魔力を解放する。
その黒く禍々しい魔力に支部は激しく揺れ衝撃を受けた。
「…この魔力……レフトに匹敵するかもね……」
アレサはバイオを見て呟く。
バイオの魔力解放にニナの魔力は反応、激しく抵抗をする。抑え込もうとするレフトの魔力も加わり周囲は激しい魔法戦を展開。ミミズクは魔術師を増やし、さらには結界士なども駆けつけ強大な防壁補強でなんとか耐えている。
「破魔の力よ、我が呼びかけに応え、さらなる力を発揮せよ」
バイオが放った合体魔法は即座にニナをつつむ。
彼女は動きが止まり全身の力が抜けたように無気力に立っている。
周囲の魔力が一気に弾け、バイオはその衝撃を受け片膝をついてしまう。
支部を覆っていた防壁も限界を超え砕け散った。
「レフトーラ様、ニナさんを受け止めて下さい」
「レフト、今よ、あなたしかニナを連れ戻せないわ」
二人の言葉に崩れ落ちるニナをレフトは受け止め抱きしめた。
次回へ続く。
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