ファンタジー/ストーリー4

雪矢酢

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第一章

八話 暗黒を支配する者

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「いくぞ、エターナル」

再びエターナルに近接攻撃を仕掛けるアレサ。

「ちっ」

ジウの連続攻撃とは比べものにならないその動きにエターナルは防戦一方。

「ふふ、あなたの相手は私ですよ」

三本の剣で戦うスタイルは人ならざる者と呼ぶにふさわしい。
死角からの急襲や変則攻撃をくり出すソード。
そのありえない角度からの斬撃は恐ろしい。
しかしマーガレットは可憐な動きで攻撃は躱している。その動きは独自のステップによるもので、ソードは踊るような彼女に翻弄され骨格パーツが破損。
右足がねじれて機能を失った。

「ナラバ、これはドウだ」

動きが制限されたソードは聖剣を地面に向けて、切り札である聖剣技を放つ。

「アイス」

すると地面は凍りつきマーガレットの足は固まり、ソード同様に動きが止まる。

「ふふ」

「もらッた、かくゴ」

足を引きずりながらもマーガレットに襲いかかるソード。
バチバチと聖剣が帯電する。

「敵を見誤ったな、エクソシストよ」

マーガレットは左手で帯電した聖剣を受け止める。
素手で剣を受け止めた彼女の行動にソードの思考は白煙を上げショート。
かろうじて立っているが右足からも白煙があがっている。

「ソードっ!! 離れろ」

交戦中のナルはソードに指示する。

「オメガ殿、少し離れましょう」

「うむ」

マーガレットはニヤリと笑う。
すると真下から黒い物体が出現し自身を飲み込む。
側にいたソードは巻き込まれ、聖剣と腕は物体が飲み込み消滅させた。

「…データなシ……なにもノだ」

肉声と機械音が混在する不気味な音声を発するソード。

「ふふ、何者かしらね」

マーガレットは左手をソードに向けると自分の目の前から、巨大な狼の影みたいな物体が現れソードを丸飲みにする。
抵抗する間もなくソードは一瞬で消滅した。

「うむ、闇の力か。暗黒に蝕まれることなくコントロールするとは…マーガレット殿、お見事だ」

「マーガレットはヘルゲートの守護者であり、ガイア様の懐刀。さすがだ」

マーガレットはアレサと交戦中のナルに視線を向ける。
アレサはソードを撃破したマーガレットの側に寄る。


残るは二人。


「マーガレット…きさまは脅威だ、まさか暗黒を支配し闇の力を使う者が実在するとは…」

驚くナル。
だがマーガレットはそんな彼を無視しアレサに話す。

「本腰入れるのはここからです、ふふ」

「そうね…少し戦ったけど…こいつの正体は全くわからない」

「はい、私もわかりません…ですが一つだけはっきりしていることがあります」

「えっ」

「エターナルは目が見えない、つまり全盲です」

「…まあわかるわ、あの包帯だからね」

二人が話している様子を見て、ナルはゆっくりと話す。

「全盲ですか?否定はしませんが、それだけでは私には勝てないですよ」

「くっ」

その時、二人は後方から攻撃を受ける。
小石を投げられたような衝撃が二人を襲う。

「ど、どうなっている?」

「奥様、とにかく動いてエターナルを抑えてください。行動しないと一方的にやられてしまう、活路は私が見つけます」

手を出し暗黒を召喚しようとするマーガレットだったが、その手に小型のナイフが刺さり召喚を妨害される。

「…いったいこれは…」

怯むマーガレット。
顔が歪む彼女をみて笑うナル。

「暗黒は危険すぎるからね」

二人を相手にしても有利に立ち回るエターナル。
だがその時、凄まじい闘気が放出される。
ナルのシルクハットは吹き飛び、ミイラのような頭部が晒される。
顔は本当に口しかない。

「アレサ……その闘気は…厄介だ…」

「何者か知らないが、もう加減はしない」

アレサは構えナルに再度近接攻撃を仕掛ける。

「厄介だけどね、ムダなんだよ、君の攻撃は決して当たらないからさ」


…ありえないわ、どうなってんのよ。
全盲相手に攻撃が当たらないってどういうこと?
このままだと疲労して…こっちがやられるわ。


ん?
だけど、あいつはどうやって攻撃しているんだ…。
攻撃のタイミングは?


何かを閃いたアレサは突然、闘気散布させマーガレットに歩み寄る。


「ん、諦めたか」


ナルはひとまず二人から離れ警戒する。


「…マーガレット、これから私は相手の攻撃をわざと受けるわ」

「奥様?」

「私は大丈夫、あいつの動きをよく見て…そして正体を見破ってほしい」

「…」

「おそらくこの会話も筒抜けよ。だけど会話に集中している時は何故か攻撃してこないわ」

アレサはエターナルを睨む。
その鋭い眼光に怯むエターナル。

「全盲っぽいけどあいつは何故か私たちの動きや会話の全てが見えている……見えすぎているのよ…」

アレサは拳を握りエターナルに近づく。

「この謎を解明せねば…私たちは勝てないわ…」

振り返りマーガレットに話す。
それを聞きマーガレットは考え込む。

「見え…すぎて…いる?…ということは…」

その時マーガレットはあることが脳裏にうかんだ。


「…ふふ……奥様、さすがですわ」


再び対峙するアレサとエターナル。


「あんた、その力をなんで邪教なぞに使うの?」

「ほう、これはお仲間のために時間稼ぎですか」

「そうかもね…」

大きく息を吸い込むアレサ。
闘気を解放しない様子に戸惑うエターナル。

「ほら、先に攻撃していいわよ」

「……」

黙り込むエターナル。
アレサの構えからカウンターを狙っているのはひと目でわかる。
さらにマーガレットの視線を感じるエターナルは迂闊に攻撃をできない。


「無様ね、最初は危険かと思ったけど…冷静になればあんたの秘密はきっとわかる。さあ今がその時だわ」


微動だにしないエターナル。
アレサはペラペラとしゃべってはいるが、常に集中し構えている。


「ふふ」


その時、マーガレットは地中に這わせた黒く鋭い暗黒でエターナルを後方から急襲する。

「しまっ…」

アレサに気をとられ、一瞬マーガレットと自分の後方がおろそかなった。
彼女はその隙を狙った。
スバ抜けた二人の集中力に絶句するエターナル。


「崩れたわねエターナル」


そしてその隙にアレサも動いていた。

「エターナル様」

だが神官のフェイスも動いていた。



彼女は杖で解呪魔法を放ちマーガレットの暗黒を消滅させた。

「頭部、とらえたわ」

アレサは絶句しているエターナルの頭部に強烈な一撃を放つ。

「ぐはあっ」

頭部を打ち抜かれたエターナルは吹き飛び、その衝撃で包帯はボロボロになった。

「うっ」

エターナルを沈めたアレサだったが、フェイスの召喚した光の矢に四肢を封じられる。

「これで動きは封じた、後ろでおとなしくしていろ」

フェイスは魔力を解放。
エターナルが崩れたことで試合は終了、この場はカオスになる。

「…のろまが…エターナルはもう終わりだ、ざまあ…悔しかったら私を攻撃してみな…」

身動きができないアレサだがフェイスを挑発している。
それは少しでも相手の攻撃をフラットやマーガレットに見せるためだ。

「そんなに攻撃してほしいのか…ならばつぶれるがいいわ」

フェイスはアレサを急浮上させ一気に落下させる。

「これで終わりだ」

絶体絶命のアレサだがフラットが彼女を受け止める。
そしてその竜剣にて四肢の封印を解除する。

「休め、後は任せろ」

「ふん、そうさせて…もらうわ」

フラットはオメガに向けてアレサを投げる。


「うむ、後方で休むんだ。後は二人に託そう」

「…なかなかハードだったわ」

「うむ、エクソシスト相手によく戦ってくれた。そしてあのエターナル、おそらくは千里眼だろう」

「千里眼……千里眼か…なんで…言ってくれないのよ…」

オメガはエターナルを看破していた。

「うむ、さっき包帯が破れた時、額に眼が見えたのだ。マーガレット殿も気づいただろう」

「……そうですか…」

「うむ、我々の目的は時間稼ぎだ。二人のおかげで十分稼げただろう。そろそろレフトとニナが到着するやもしれん」

力が抜けて座るアレサ。

「…ちっ…フラットはオメガとレフト、ニナに施設の内部制圧を託したってことかしらね…」

「うむ」

「あんた、フラットをきちんと見張っときなさいよ、あの神官は強い。彼女がバカなマネしたら…」

「うむ、わかっている」



対峙するフェイスとフラット。

「先程はお見事です」

「だまれ、神官が戦闘に参加するなど許されぬことだ」

「神官?こんな身形ですが私は神官ではありません」

「マーガレット、大丈夫か」

「フラット様ついに参戦ですか…ふふ、お待ちしておりました」

「アレサがずいぶん頑張ってくれた」

「はい、奥様の功績は大きいですね、ふふ」


マーガレットはフラットの横につく。


「まったく…これでしばらくはこのままだ。君たちは許さないよ」


「なっ」

「ふふ、第三の…ですか」

顔面の包帯がとれたエターナル。
両目は潰れ陥没し、額には神々しい第三の眼がある。

「フェイス下がれ、こいつらは直々に切り刻む」

「はっ、エターナル様」

エターナルは前に出てコートのボタンを取る。

「フラット様、あれはおそらく千里眼。ふふ、正体が分かればこっちのものです」

フラットはマーガレットの左手に回復魔法をかける。
傷が回復した彼女は身体をほぐし前に出る。

「ありがとうございますフラット様。あの偽善者フェイスにはご注意下さい」



四天王は既に二人が再起不能。
アレサが戦闘不能だが、オメガを残し、フラットとマーガレットが残りのエターナル、フェイスと戦う。
エターナルの千里眼を用いた戦闘スタイルは不明だが、マーガレットもまだ能力の全てを見せていない。





ヘルゲートでは…。


「レフトーラさん、お目覚めですか」


「ソロモン…状況はどうなっているのかな」

「えっと…そ、その…」

「ん」

医務室で目覚めたレフト。
ソロモンは恐る恐るレフトの後ろを指差す。
後ろをみたレフトは絶叫する。


「ぎゃあぁ」

「うるさいわね、さっさと支度しなさいよ」


レフトの後ろには銃を持ったニナがいた。
ニナは無事回復し状況を把握。
すぐにでもアジトへ向かうつもりだ。


「おかえり…ニナ…」

「うん、ただいまレフト…ゆっくりとしたいとこだけど…」

「ニナさんにはオメガさんたちの援軍を頼みました。レフトーラさんも一緒に…」

事態が緊迫しているようで気を引き締めるレフト。

「一緒に行くよ」

「良かった」

ニナはレフトを無理やり起こす。

「ちょいちょい、ニナ…」

「さあいくわよレフト。起きてちょうだい」

「…」

二人のやり取りを見て無言になるソロモン。
…なんだこの二人は…。
非戦闘時は…まるで家族みたいだぞ…。


「オメガが言うにはその組織はかなり危険な集団みたいよ。だから早く助けにいきましょう」

「わかった、すぐに着替えるね」

「えと…ミミズクさんには伝えておきますね」

話がまとまると医務室に情報課の者とガルシアが入ってくる。


「おうレフト、ようやく起きたか。んでニナ、迎えの飛空艇が来たぞ、いけるか」

「もちろん」

「飛空艇で行くのか…」

「なんだよ、さっさと支度しろよ?」

「はいはい、わかったわかった」

「…」


ソロモンは思った。
レフトーラさんって人が良いというか、本当、みんなから頼りにされているんだなぁ。
正直、天然っぽいし、なんか暗くてぱっとしなかったけど…。


「どうしたのソロモン、君もいくのかい?」

「行かないですよ」


次回へ続く。
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