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第一章
十三話 ヘルゲート防衛戦
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「うがぁ」
顔面をぼこぼこにされぐったりするデルタ。
だが、潰れた顔からはかすかながらに笑みがみえる。
「ふん」
アレサは手を止めデルタを睨む。
「デルタ……ではないわね、何者よ?」
「くっくっ…さすが…というべきですか」
するとデルタの顔面は溶け、別の顔が形成される。
姿を現したそれは大きな耳と二つの角を持つ者。
そう、悪魔である。そしてその悪魔とアレサは面識があった。
「お久しぶりですなアレサ殿」
「…こうも昔の兵器や人物が登場すると、さすがに因果を感じるわ…」
「驚きました、ずいぶんと穏やかになられたようですね」
「ゼブロン…だったわね。あんた大戦の時、真っ先に逃亡してたわよね」
彼女は消耗している。
ゼブロンはアレサが弱っていることに気づいていた。
「あの時は逃亡が最善策でした。私はもともと戦うという行為は嫌いなのでね」
「ふん、こそこそと教団を盾に生き延びてきたようだけど…それもここまでよ」
威勢がよいアレサだが自分の身体が悲鳴をあげていることはわかっていた。
そんな彼女に手をさしのべるゼブロン。
「何のつもり?」
「ダルガ教に入信するのです」
「…仲間になれと?」
ゼブロンは腕を組みアレサに話す。
アレサは立っていられず、ついに膝をついてしまう。
「あなたの身体は既に限界なのです。教団に協力すれば、あなたの望む身体が手に入ります。そして思う存分戦える」
「…ふふふ」
「あなたは戦いこそが生きがいのはず。さあ」
ゆっくり起き上がるアレサ。
その彼女に歩み寄るゼブロン。
「以前なら喜んで手を取ったでしょうが…」
ゼブロンがアレサの頭に手を置こうとした瞬間、彼女へ向かって小瓶が投げられる。
「なっ…しまった」
小瓶は回復瓶でアレサはそれを飲み闘気を解放。
「もっと周囲に警戒すべきだったわね、ゼブロン。負傷している相手に油断した…それが敗因よ」
「ふごぉっ」
腹部への一撃でゼブロンは倒れた。
アレサに小瓶を投げたのはマーガレットだった。
「ありがとうマーガレット、助かったわ」
「ふふ、奥様。相変わらずムチャをされますね」
「それが私なのよ、さあ外は危険よ。部屋までいきましょう」
カナベルと対峙しているニナをみてアレサたちは内部へ避難する。
飛空艇は無事に動き出しパレスへ向かう。
暴れまわる機械竜にヘルゲートは蹂躙されているようだが、市民の避難は完了しているようだ。多くの者はダークパレスに逃げ込んで防衛に徹している。
「はぁはぁ、まさか浮遊するアンドロイドがいるとは…これは誤算だった」
「投降せよ、命は奪わん」
鳥人は二刀からの素早い動きが強烈ではあるが体力の消耗が激しい。
相手はすぐに疲弊するとみたオメガは動きを最小限とし防御中心に構えていた。
「もう勝負はついた」
メカっぽい外見からは想像できないほど流暢に話すオメガ。
鳥人は自分の無策を認め武器を捨て降参する。
「オメガ、お見事だ。全てを話そう」
「うむ」
着陸しようとした二人。
だが鳥人は後方から放たれた魔法の矢に羽を射ち抜かれてしまう。
「くっ、あ、あなたは…」
「裏切り者は、いらん」
「ドルガっ!」
鳥人は羽が傷つきバランスを失い建物にぶつかり落下する。
矢の飛んできた方向には黒いローブを纏ったドルガが浮遊している。
「早く助けたほうがいいぞオメガ。アローは激突と落下の衝撃で重傷だろうな」
「きさま、復活したのか」
「いや、顔見せにきただけだよ。すぐに帰るさ」
「狙いは何だ?」
「観光だよ、くっくっく」
その言葉にオメガはキューブを弓へ変化させドルガを狙う。
「もう一度言うぞ、狙いは?」
「くどいな、観光だとっ」
ドルガが言葉を発した瞬間、オメガは躊躇なく矢を放った。
矢は彼の顔面に直撃、さらに休むことなくすぐに二撃目を放つ。
「くっ……少々遊びすぎたわ」
猛攻に怯んだドルガは不利と判断するや即座に転移し逃亡。
「仕損じたか…」
オメガは鳥人アローを救助に向かった。
飛空艇が動き出しパレスに向かうのを確認。
「うむ、動き出したようだな」
アローを運びパレスを目指す。
ダルガ教の悪魔ゼブロンと鳥人アローは倒れた。
残るは軍人らしきカナベルだ。
「動き出したわね」
「ゼブロンめ、負傷した相手に負けるとは…」
「あんたアレサを知らないのね、騙して勝てるなら苦労はないわよ」
お互いに対峙したまま一手が出せない緊迫した状態が続く。
二人は銃を射つスピードがはやすぎるため、決闘をしても結果は相討ちになってしまう。
射ったら射つ、射たれる、というこの前代未聞の緊張感がお互いに手を出せない理由である。
「パレスにつけばあんたは逮捕されるわよ」
ニナの言葉は正しい。
事実、飛空艇が動き出したことでカナベルは何らの行動をしなければならない。
そんな彼女は突然ニナに問う。
「ニナ、あなたはなぜ戦うの?」
「…」
「聞いておきたいのだ……話せるうちにな」
するとカナベルは突然銃を捨てた。
そしてニナに向かってゆっくりと歩き出す。
「ふふふ」
笑うニナ。
その様子にカナベルは止まる。
「ムダよ、その腰にあるその小型銃…バレてるわよ」
ニナはカナベルの企みを見抜いていた。
作戦が失敗したカナベルは敵意をむき出しで襲いかかる。
彼女にはそうするしかなかった。
「おのれっニーナーっ」
腰に隠していた小型銃を取り出すカナベル。
だが彼女は銃を捨てた瞬間、既に敗北が決定していた。
ニナは彼女が銃を構える前に両腕を射撃。
「ぐっ…」
「勝負に焦って強引に仕掛けたことがあんたの敗因よ」
「そうね…焦ったらおしまいだわ…認める、私の負けよ」
カナベルは軍人らしく潔い。
そんな彼女に、ニナは答えた。
「質問に答えるわ」
「えっ…」
「私はね、戦いを無くすため戦っているのよ、必死にね」
「ふ…甘いな……まさかそんな返答とはね……無慈悲な者かと思ったが……」
「期待にこたえられずごめんなさいね」
「…」
一瞬沈黙したカナベルは拘束されながら話す。
「人は…なんとも……矛盾した生き物だな…」
「私からみたらあんたら悪魔も同じようなもんよ?」
「……」
カナベルは思った。
…この女…よくわからん。
だが、悪意が全くない…不思議な存在だ…。
刺客を撃退しパレスへ向かう飛空艇。
レフトとフラットは暴れる巨大な機械竜討伐へ向かっていた。
巨大な竜にレフトはどう挑むのか。
「すまないレフトーラ、限界だ」
「フラットさん、十分です」
竜を前に墜落する二人。
フラットの魔力が尽きたのだ。
その時レフトは思わぬ行動をする。
「失礼します」
「んっ!」
落下する二人、レフトは突然フラットを抱きしめた。
思わぬ行動に焦る彼女。
レフトは魔力を解放しその魔力をブレーキにし落下の衝撃を軽減させた。
多少のダメージはあったがひとまず着地はできた。
「危なかった、あの高さはゾッとするわ」
「…おい」
「あっ」
抱きしめられているフラットは顔を真っ赤にしている。
慌てたレフトはすぐに彼女から離れる。
「ご、ごめんなさい」
「気にするな、それより…」
竜は二人を敵と認識したようで火炎ブレスで攻撃をした。
圧倒的な大きさの竜は無慈悲にブレスを放つ。
「くっ」
身をこわばらせるフラット。
「これは…」
「フラットさん、ここは任せてください。あなたはダークパレスへ」
火炎を防壁魔法で容易に防ぐレフト。
「さて…」
目を見開き魔法を解放する。
敵は強大だわ。
市民はいないようだし…ちと強めでいくか…。
紫色の魔力はより色濃くなり時折バチバチと帯電している。
…レフトーラ、凄まじい魔力だ。
こいつは本当に人なのか。
フラットはレフトの魔力に面食らっていた。
「機械だから…雷か…」
レフトが剣に手をかけると、それをみた竜は彼めがけて突進をしてきた。
その様子に焦ることなく抜刀するといきなり剣を上空へと投げる。
「終わりだ」
解放した魔力は激しく帯電し、突進してきた竜は電撃により感電。
凄まじい稲妻が周囲に走り竜の胴や腕は吹き飛び黒焦げになる。
レフトの周囲は上空にある剣の影響で電磁波が発生。機械竜はもはや制御不能となりパーツがバラバラとなる。
「レフトーラっ!」
退避が遅れたフラットは完全にレフトの攻撃に巻き込まれてしまった。
「うわ、フラットさん?」
…ヤバい、やりすぎたか。
っていうかフラットさん、走る力がないみたいだね。
レフトはフラットに回復魔法と防壁魔法を放ち、彼女の手首をつかむ。
「ちょっ…」
レフトの行動に恥ずかしい声を出すフラット。
「危険なので離れないで下さい。途中で攻撃を中止できないんです」
電磁波にもう一体の竜が引き寄せられてくる。
炎を吐き応戦する竜だが、レフトたちに到達する前に無効化させてしまう。
手足がもがれバラバラに分解される竜にもはや勝機はない。
「…なんと……機械竜を…こうもあっさりと……」
フラットは圧倒的なレフトの魔力を前に恐怖していた。
魔力を解くと分解されて舞い上がっていた機械の部品が落下してきた。
「ちょっとやりすぎたかな…すみませんフラットさん」
「えっ…」
「いや、建物を少し破壊してしまって申し訳ないと…」
…なんなんだこの男は…。
純粋というか、天然というか。
不思議だ、こんな男がいたとは…。
それがよりにもよってあのアレサの旦那とは……。
「あの、怒ってます?」
沈黙しているフラットに話すレフト。
「いや、すまない。竜は私の扱う戦力なのでな……機械とはいえ少し考え込んでしまったのだ」
「えっ、倒すの、まずかったですか…」
「いや、ヘルゲートを代表し感謝する。ありがとう救われたよ」
難しい表情から一転、凛々しい感じのフラット。
こうも人間らしい人物だということを改めて知るレフトであった。
…フラットさんなら何かを知っているかも。
ヘルゲートのことを聞いてみるか…。
このタイミングしかない。
「あの、フラットさん」
「ん、どうした?」
「ヘルゲートについてなのですが…」
レフトの真剣な眼差しに何かを察したフラット。
「…なんとなく聞きたいことは…わかったよレフトーラ。ヘルゲートの秘密だね……」
「お話できる範囲でいいんです。ここを守るには知る必要があると……あくまでも個人的なっ」
「ヘルゲートには膨大なエネルギーを放つ花があるのだ」
「えっ、花ですか」
「そのエネルギーがあってこそヘルゲートは発展できたのだ。つまりこの国の頂点に立つことはそのエネルギーを掌握することなんだ」
「ダルガ教はその花を狙っていると?」
「それはわからない。なんせこの花の話はヘルゲートでも私含め三人しか知らない……だが…」
「つまり…情報が漏れることはないと?」
「…」
…間違いない。
ダルガ教はその花を狙っている。
ヘルゲート内部に裏切り者かスパイがいるんだ。
「花の存在を知る人物は誰ですか?」
「…」
「フラットさん…」
「トップオブザワールドといえばわかるか?……あとは…」
「トップオブザワールドって……やはり実在するのか…」
その時、フラットとレフトは背後に殺気を感じた。
「フラットさん、アサシンです」
「うっ」
フラットの胸を突如出現した刀が貫く。
「フラット、おしゃべりはそこまでだ」
「がはっ…ぅう」
奇襲に負傷したフラットは吐血し倒れてしまう。
レフトは周囲を探すが敵の姿が確認できない。
…フラットさんの傷は深い。
早く医者に見せねば……。
「うぅう…レフトーラ……これはテラー、テラー夫人の
刺客だ」
「テラー夫人?」
「ガイア様の…妻だ…」
「ガイア?それは誰ですか…」
「アレサとオメガ殿に……このことを…」
「わかりました」
レフトはフラットに回復魔法をかける。
これで応急措置にはなった。
だけどすぐ医者に見せる必要がある。
「…頼みがあるだ…」
「えっ」
「…オメガ殿に……私の気持ちを…」
その時、またしても刀がフラットの身体を貫く。
右足を貫かれ歩行が困難になる。
「くっ」
レフトは瞳を閉じてフラットに防壁魔法を放つ。
「レフトーラ……やめるんだ…この刺客の狙いは私だ」
レフトは魔力を再び解放する。
…隠れているアサシンはフラットさんを始末し秘密を死守するつもりだ。
つまり……フラットさんがいった、テラー夫人という人物がこの奇襲の黒幕だ。
こんな奴にいちいち正攻法で相手にしている暇はない。
剣を抜刀しレフトは身構える。
「聞け、姿が見えないのなら考えがある」
「おい、レフトーラ…本気か」
「貴様正気か…ここら一帯が吹き飛ぶぞ…」
魔力がレフトの剣に集束する。
「吹き飛ばすんだよ、君や周囲のモンスターも一掃できて一石二鳥というやつだね」
「…くっ…」
「うおぉっ」
レフトは剣を地面突き刺す。
地面は魔法陣が形成され、剣を中心に激しい衝撃波が発生する。
「おのれっきさま……」
突如発した衝撃波に飛空艇はあおられ、建物は破壊される。残存したモンスターは一掃される。兵士や機関の者たちは衝撃波に吹き飛ばされながらもなんとか耐えきったようである。
爆心地にいたアサシンは永遠に見えない存在となりフラットは救われた。
「さあフラットさん」
フラットを支えレフトは倒壊した町中を歩きダークパレスへ向かう。
「他言はしません。フラットさんは機関の保護を受けるか、オメガと一緒に行動したほうがいい、危険です」
「すまないレフトーラ。もう一度、ヘルゲートはやり直す必要があるな…ガイア様の方針通り、花は処分すできなのかもしれん」
「そんなこと考えないでオメガと仲良くすることを考えて下さいよ…きっと楽しいですよ」
「そうだな、こんな気持ちは…はじめてなのだよ…」
フラットは笑顔をみせる。
レフトはフラットのことをよく知らないが、その笑顔は本当に幸せの時にみせる人の笑顔だと確信していた。
次回へ続く。
顔面をぼこぼこにされぐったりするデルタ。
だが、潰れた顔からはかすかながらに笑みがみえる。
「ふん」
アレサは手を止めデルタを睨む。
「デルタ……ではないわね、何者よ?」
「くっくっ…さすが…というべきですか」
するとデルタの顔面は溶け、別の顔が形成される。
姿を現したそれは大きな耳と二つの角を持つ者。
そう、悪魔である。そしてその悪魔とアレサは面識があった。
「お久しぶりですなアレサ殿」
「…こうも昔の兵器や人物が登場すると、さすがに因果を感じるわ…」
「驚きました、ずいぶんと穏やかになられたようですね」
「ゼブロン…だったわね。あんた大戦の時、真っ先に逃亡してたわよね」
彼女は消耗している。
ゼブロンはアレサが弱っていることに気づいていた。
「あの時は逃亡が最善策でした。私はもともと戦うという行為は嫌いなのでね」
「ふん、こそこそと教団を盾に生き延びてきたようだけど…それもここまでよ」
威勢がよいアレサだが自分の身体が悲鳴をあげていることはわかっていた。
そんな彼女に手をさしのべるゼブロン。
「何のつもり?」
「ダルガ教に入信するのです」
「…仲間になれと?」
ゼブロンは腕を組みアレサに話す。
アレサは立っていられず、ついに膝をついてしまう。
「あなたの身体は既に限界なのです。教団に協力すれば、あなたの望む身体が手に入ります。そして思う存分戦える」
「…ふふふ」
「あなたは戦いこそが生きがいのはず。さあ」
ゆっくり起き上がるアレサ。
その彼女に歩み寄るゼブロン。
「以前なら喜んで手を取ったでしょうが…」
ゼブロンがアレサの頭に手を置こうとした瞬間、彼女へ向かって小瓶が投げられる。
「なっ…しまった」
小瓶は回復瓶でアレサはそれを飲み闘気を解放。
「もっと周囲に警戒すべきだったわね、ゼブロン。負傷している相手に油断した…それが敗因よ」
「ふごぉっ」
腹部への一撃でゼブロンは倒れた。
アレサに小瓶を投げたのはマーガレットだった。
「ありがとうマーガレット、助かったわ」
「ふふ、奥様。相変わらずムチャをされますね」
「それが私なのよ、さあ外は危険よ。部屋までいきましょう」
カナベルと対峙しているニナをみてアレサたちは内部へ避難する。
飛空艇は無事に動き出しパレスへ向かう。
暴れまわる機械竜にヘルゲートは蹂躙されているようだが、市民の避難は完了しているようだ。多くの者はダークパレスに逃げ込んで防衛に徹している。
「はぁはぁ、まさか浮遊するアンドロイドがいるとは…これは誤算だった」
「投降せよ、命は奪わん」
鳥人は二刀からの素早い動きが強烈ではあるが体力の消耗が激しい。
相手はすぐに疲弊するとみたオメガは動きを最小限とし防御中心に構えていた。
「もう勝負はついた」
メカっぽい外見からは想像できないほど流暢に話すオメガ。
鳥人は自分の無策を認め武器を捨て降参する。
「オメガ、お見事だ。全てを話そう」
「うむ」
着陸しようとした二人。
だが鳥人は後方から放たれた魔法の矢に羽を射ち抜かれてしまう。
「くっ、あ、あなたは…」
「裏切り者は、いらん」
「ドルガっ!」
鳥人は羽が傷つきバランスを失い建物にぶつかり落下する。
矢の飛んできた方向には黒いローブを纏ったドルガが浮遊している。
「早く助けたほうがいいぞオメガ。アローは激突と落下の衝撃で重傷だろうな」
「きさま、復活したのか」
「いや、顔見せにきただけだよ。すぐに帰るさ」
「狙いは何だ?」
「観光だよ、くっくっく」
その言葉にオメガはキューブを弓へ変化させドルガを狙う。
「もう一度言うぞ、狙いは?」
「くどいな、観光だとっ」
ドルガが言葉を発した瞬間、オメガは躊躇なく矢を放った。
矢は彼の顔面に直撃、さらに休むことなくすぐに二撃目を放つ。
「くっ……少々遊びすぎたわ」
猛攻に怯んだドルガは不利と判断するや即座に転移し逃亡。
「仕損じたか…」
オメガは鳥人アローを救助に向かった。
飛空艇が動き出しパレスに向かうのを確認。
「うむ、動き出したようだな」
アローを運びパレスを目指す。
ダルガ教の悪魔ゼブロンと鳥人アローは倒れた。
残るは軍人らしきカナベルだ。
「動き出したわね」
「ゼブロンめ、負傷した相手に負けるとは…」
「あんたアレサを知らないのね、騙して勝てるなら苦労はないわよ」
お互いに対峙したまま一手が出せない緊迫した状態が続く。
二人は銃を射つスピードがはやすぎるため、決闘をしても結果は相討ちになってしまう。
射ったら射つ、射たれる、というこの前代未聞の緊張感がお互いに手を出せない理由である。
「パレスにつけばあんたは逮捕されるわよ」
ニナの言葉は正しい。
事実、飛空艇が動き出したことでカナベルは何らの行動をしなければならない。
そんな彼女は突然ニナに問う。
「ニナ、あなたはなぜ戦うの?」
「…」
「聞いておきたいのだ……話せるうちにな」
するとカナベルは突然銃を捨てた。
そしてニナに向かってゆっくりと歩き出す。
「ふふふ」
笑うニナ。
その様子にカナベルは止まる。
「ムダよ、その腰にあるその小型銃…バレてるわよ」
ニナはカナベルの企みを見抜いていた。
作戦が失敗したカナベルは敵意をむき出しで襲いかかる。
彼女にはそうするしかなかった。
「おのれっニーナーっ」
腰に隠していた小型銃を取り出すカナベル。
だが彼女は銃を捨てた瞬間、既に敗北が決定していた。
ニナは彼女が銃を構える前に両腕を射撃。
「ぐっ…」
「勝負に焦って強引に仕掛けたことがあんたの敗因よ」
「そうね…焦ったらおしまいだわ…認める、私の負けよ」
カナベルは軍人らしく潔い。
そんな彼女に、ニナは答えた。
「質問に答えるわ」
「えっ…」
「私はね、戦いを無くすため戦っているのよ、必死にね」
「ふ…甘いな……まさかそんな返答とはね……無慈悲な者かと思ったが……」
「期待にこたえられずごめんなさいね」
「…」
一瞬沈黙したカナベルは拘束されながら話す。
「人は…なんとも……矛盾した生き物だな…」
「私からみたらあんたら悪魔も同じようなもんよ?」
「……」
カナベルは思った。
…この女…よくわからん。
だが、悪意が全くない…不思議な存在だ…。
刺客を撃退しパレスへ向かう飛空艇。
レフトとフラットは暴れる巨大な機械竜討伐へ向かっていた。
巨大な竜にレフトはどう挑むのか。
「すまないレフトーラ、限界だ」
「フラットさん、十分です」
竜を前に墜落する二人。
フラットの魔力が尽きたのだ。
その時レフトは思わぬ行動をする。
「失礼します」
「んっ!」
落下する二人、レフトは突然フラットを抱きしめた。
思わぬ行動に焦る彼女。
レフトは魔力を解放しその魔力をブレーキにし落下の衝撃を軽減させた。
多少のダメージはあったがひとまず着地はできた。
「危なかった、あの高さはゾッとするわ」
「…おい」
「あっ」
抱きしめられているフラットは顔を真っ赤にしている。
慌てたレフトはすぐに彼女から離れる。
「ご、ごめんなさい」
「気にするな、それより…」
竜は二人を敵と認識したようで火炎ブレスで攻撃をした。
圧倒的な大きさの竜は無慈悲にブレスを放つ。
「くっ」
身をこわばらせるフラット。
「これは…」
「フラットさん、ここは任せてください。あなたはダークパレスへ」
火炎を防壁魔法で容易に防ぐレフト。
「さて…」
目を見開き魔法を解放する。
敵は強大だわ。
市民はいないようだし…ちと強めでいくか…。
紫色の魔力はより色濃くなり時折バチバチと帯電している。
…レフトーラ、凄まじい魔力だ。
こいつは本当に人なのか。
フラットはレフトの魔力に面食らっていた。
「機械だから…雷か…」
レフトが剣に手をかけると、それをみた竜は彼めがけて突進をしてきた。
その様子に焦ることなく抜刀するといきなり剣を上空へと投げる。
「終わりだ」
解放した魔力は激しく帯電し、突進してきた竜は電撃により感電。
凄まじい稲妻が周囲に走り竜の胴や腕は吹き飛び黒焦げになる。
レフトの周囲は上空にある剣の影響で電磁波が発生。機械竜はもはや制御不能となりパーツがバラバラとなる。
「レフトーラっ!」
退避が遅れたフラットは完全にレフトの攻撃に巻き込まれてしまった。
「うわ、フラットさん?」
…ヤバい、やりすぎたか。
っていうかフラットさん、走る力がないみたいだね。
レフトはフラットに回復魔法と防壁魔法を放ち、彼女の手首をつかむ。
「ちょっ…」
レフトの行動に恥ずかしい声を出すフラット。
「危険なので離れないで下さい。途中で攻撃を中止できないんです」
電磁波にもう一体の竜が引き寄せられてくる。
炎を吐き応戦する竜だが、レフトたちに到達する前に無効化させてしまう。
手足がもがれバラバラに分解される竜にもはや勝機はない。
「…なんと……機械竜を…こうもあっさりと……」
フラットは圧倒的なレフトの魔力を前に恐怖していた。
魔力を解くと分解されて舞い上がっていた機械の部品が落下してきた。
「ちょっとやりすぎたかな…すみませんフラットさん」
「えっ…」
「いや、建物を少し破壊してしまって申し訳ないと…」
…なんなんだこの男は…。
純粋というか、天然というか。
不思議だ、こんな男がいたとは…。
それがよりにもよってあのアレサの旦那とは……。
「あの、怒ってます?」
沈黙しているフラットに話すレフト。
「いや、すまない。竜は私の扱う戦力なのでな……機械とはいえ少し考え込んでしまったのだ」
「えっ、倒すの、まずかったですか…」
「いや、ヘルゲートを代表し感謝する。ありがとう救われたよ」
難しい表情から一転、凛々しい感じのフラット。
こうも人間らしい人物だということを改めて知るレフトであった。
…フラットさんなら何かを知っているかも。
ヘルゲートのことを聞いてみるか…。
このタイミングしかない。
「あの、フラットさん」
「ん、どうした?」
「ヘルゲートについてなのですが…」
レフトの真剣な眼差しに何かを察したフラット。
「…なんとなく聞きたいことは…わかったよレフトーラ。ヘルゲートの秘密だね……」
「お話できる範囲でいいんです。ここを守るには知る必要があると……あくまでも個人的なっ」
「ヘルゲートには膨大なエネルギーを放つ花があるのだ」
「えっ、花ですか」
「そのエネルギーがあってこそヘルゲートは発展できたのだ。つまりこの国の頂点に立つことはそのエネルギーを掌握することなんだ」
「ダルガ教はその花を狙っていると?」
「それはわからない。なんせこの花の話はヘルゲートでも私含め三人しか知らない……だが…」
「つまり…情報が漏れることはないと?」
「…」
…間違いない。
ダルガ教はその花を狙っている。
ヘルゲート内部に裏切り者かスパイがいるんだ。
「花の存在を知る人物は誰ですか?」
「…」
「フラットさん…」
「トップオブザワールドといえばわかるか?……あとは…」
「トップオブザワールドって……やはり実在するのか…」
その時、フラットとレフトは背後に殺気を感じた。
「フラットさん、アサシンです」
「うっ」
フラットの胸を突如出現した刀が貫く。
「フラット、おしゃべりはそこまでだ」
「がはっ…ぅう」
奇襲に負傷したフラットは吐血し倒れてしまう。
レフトは周囲を探すが敵の姿が確認できない。
…フラットさんの傷は深い。
早く医者に見せねば……。
「うぅう…レフトーラ……これはテラー、テラー夫人の
刺客だ」
「テラー夫人?」
「ガイア様の…妻だ…」
「ガイア?それは誰ですか…」
「アレサとオメガ殿に……このことを…」
「わかりました」
レフトはフラットに回復魔法をかける。
これで応急措置にはなった。
だけどすぐ医者に見せる必要がある。
「…頼みがあるだ…」
「えっ」
「…オメガ殿に……私の気持ちを…」
その時、またしても刀がフラットの身体を貫く。
右足を貫かれ歩行が困難になる。
「くっ」
レフトは瞳を閉じてフラットに防壁魔法を放つ。
「レフトーラ……やめるんだ…この刺客の狙いは私だ」
レフトは魔力を再び解放する。
…隠れているアサシンはフラットさんを始末し秘密を死守するつもりだ。
つまり……フラットさんがいった、テラー夫人という人物がこの奇襲の黒幕だ。
こんな奴にいちいち正攻法で相手にしている暇はない。
剣を抜刀しレフトは身構える。
「聞け、姿が見えないのなら考えがある」
「おい、レフトーラ…本気か」
「貴様正気か…ここら一帯が吹き飛ぶぞ…」
魔力がレフトの剣に集束する。
「吹き飛ばすんだよ、君や周囲のモンスターも一掃できて一石二鳥というやつだね」
「…くっ…」
「うおぉっ」
レフトは剣を地面突き刺す。
地面は魔法陣が形成され、剣を中心に激しい衝撃波が発生する。
「おのれっきさま……」
突如発した衝撃波に飛空艇はあおられ、建物は破壊される。残存したモンスターは一掃される。兵士や機関の者たちは衝撃波に吹き飛ばされながらもなんとか耐えきったようである。
爆心地にいたアサシンは永遠に見えない存在となりフラットは救われた。
「さあフラットさん」
フラットを支えレフトは倒壊した町中を歩きダークパレスへ向かう。
「他言はしません。フラットさんは機関の保護を受けるか、オメガと一緒に行動したほうがいい、危険です」
「すまないレフトーラ。もう一度、ヘルゲートはやり直す必要があるな…ガイア様の方針通り、花は処分すできなのかもしれん」
「そんなこと考えないでオメガと仲良くすることを考えて下さいよ…きっと楽しいですよ」
「そうだな、こんな気持ちは…はじめてなのだよ…」
フラットは笑顔をみせる。
レフトはフラットのことをよく知らないが、その笑顔は本当に幸せの時にみせる人の笑顔だと確信していた。
次回へ続く。
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颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
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