ファンタジー/ストーリー2

雪矢酢

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第一章

十一話 恐妻家

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「う…ん…おはようアレサ」

「おはよ」

ベットから起き上がるレフト。

「また寝てしまったようで……」

「いいのよ。身体はどうかしら?」

「調子は良さそうだ。ゆっくり休ませてくれてありがとう」

「良かったわ。ちょっと待ってね」

荷物を片付けてぱぱっと清掃するアレサ。
レフトは手際よく朝食を準備した。
小さなパンと飲み物のシンプルな食事だ。

「あら、座ってていいのに」

「ああ、たまにはね」

「ふふ」

レフトは座り飲み物を手に取る。
すぐにアレサも座り二人で朝食の時間だ。

「そういえば…」

「ん、屋敷の件?」

「うん、レオさんたちやモンスターはどうなったのかと…」

「レオならそろそろここへ来るわ」

「えっ」

「人間お得意のややこしい人間関係よ。でも解決したわ」

「人間関係?」

アレサはむしゃむしゃとパンを食べている。
ため息をつきレフトもパンに手を出すと、ドアをノックする音が響く。

「…」

「…」

「…」

「…わかった…」

レフトは玄関に向かう。
来客はアレサの言う通りレオである。

「レフトさん、お身体は大丈夫ですか?」

「大丈夫です。みんなのおかげでよく寝れました」

「ははぁ…アレサさんもいます?」

「ああ、ごめん、中へどうぞ」

「はい、失礼します」

すたすたと入りアレサに深々お辞儀するレオ。

「おはようございますアレサさん」

「ちょっとなによ、普通に挨拶なさいよ」

「…えっ」

「し…失礼しました…」

「と、とりあえず座ってちょうだい」


椅子に座るレオとレフト。
レフトは何がなんだかわからないようだ。
レオはアレサから圧倒的な闘気を感じて以来、ずっとこんな調子だ。

「すまん…何があったか説明してくれるかい?」

レフトが二人の顔をみて話す。
レオはアレサの顔を確認した。

「話したいならあなたから伝えればいいじゃない」

「ありがとうございます」

レオは満面の笑みで話し始めた。
アレサは勝手にどうぞっといったとこだろう。
仮に彼女が話した場合…。

この集落には幻獣の加護がある。
そしてダグは幻獣を始末しようとしたが阻止された。

以上。
簡潔に伝達する軍人らしい報告書にもなるような内容だ。

「では…」

レフトは興味津々だ。


「アレサさんが全部片付けた」


…。


「ん…」


…。



沈黙。



圧倒的な沈黙とはこの事だろう。


「レオさん?」

思わず聞き返すレフト。

「はい、なんでしょうか」

「片付けた?」

「はい、全てを片付けました」

「全て?」

「はい、そうですよねアレサさん?」

アレサの目付きが変わる。
レオはそれにすぐ気づいたのだが…。

「なんで私にふるのよ。あんたが話すって言ったんでしょうが……まさかこうくると思わなかったわよ」

「すみません…ですが…俺は事実を……」

「もういいわ…ありがとレオ」

一気に疲労を感じるアレサ。

「なんだか最近、私ばかり忙しいわね…」

「…アレサ…ごめんね」

レフトがアレサの手をにぎり抱きしめる。

「ちょっと…レフト…人前で…」

「ああ…」

「お構い無く」

その時レオは悟った、レフトさんはアレサさんのことを心底理解している。これが…愛と…。


「何かもう聞かなくていいかな…」

レフトは今、平和が戻ってきているので詮索はやめた。

「それじゃあ支度ができたら昼過ぎに上流の小屋でお願い致します」

「わかったわ。レフトも連れていくわ」


そういうとレオは去った。

「上流の小屋か」

「ええ、支度して行きましょう」


次回へ続く
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