ファンタジー/ストーリー2

雪矢酢

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第一章

二十二話 その身が朽ちようとも

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会場跡地一帯はレフトの魔法で吹き飛んだ。
凄まじい威力のわりには重傷者は無く、圧倒的な魔力を前にした兵たちは皆逃亡した。

爆心地にいたユニオンは行動不能で倒れているが、息はあるようだ。
アレサはレフトの元へいき、倒れそうになっていた彼を受け止めた。

「魔力を調整したのね」

「アレサがリバスの相手をしてくれたおかげで集中できたよ。ありがとう」

「これで再生会はおしまいでしょう」

無防備で魔法が直撃したリバスは、ゆっくりと上空から落下してきた。
ドサっと音を立て、もはや戦闘能力はないようだ。


「…なるほどね…」

「これ…」


落下したリバスをみて驚く二人。

「ふふふ…私の正体に…驚いているようね」

リバスはオメガ同様にアンドロイドであった。
コアの部分には特殊な魔力の器が埋め込まれている。
魔法が使えるアンドロイド、これが聖女リバスの正体だった。
ぎこちない動きでリバスはレフトに手を伸ばす。

「レフトーラさん…私はあなたと一緒になりたかった。本当のことを言うと……魔力がどうこうとか再生会とかはどうでもよかった……あなたは…アンドロイドな私でも…受け入れてくれると思ったのです…そして…二人で…世界を見て回り…たかった…」

その言葉に反応するアレサ。
レフトの根幹にある優しさを知っている彼女はリバスの言っていることがよくわかっていた。

「…」

「レフト…彼女のコアはかつて悪魔がつくったものよ。名前は忘れたけど不老不死を望んだ人間に悪魔が応えたもので、魔力を供給しさえすれば老いからは解放される」

「アレサ…今のでわかったわ。あなたの正体が……勝てない…わけだわ…そもそもあなたと闘うことが…無謀だったわ」

「…」

レフトは黙っている。

「レフトーラさん…人間はそれぞれ違うとか、個性があるとか言うけど…私から見た人間は……皆、同じだと思うの。だから同じやり方で容易に支配することが…できたわ…」

「…」

「支配してからはひたすら観察したのだけれど人間が全くわからなかった。理解することができなかった。そこで復興機関にいるアンドロイドと組むあなたの存在を知り……会ってみたくなった……そして接触したの………短い間だけど……あなたとアレサをみて…私なりに納得できたわ…」

ギシギシとリバスの身体は歪み出す。

「レフト…私は負傷者を探してくる」

そう言うと突然アレサはリバスに手をさしのべてその場を去った。

「…アレサって…不器用なのね……まるで軍人みたいだわ」

レフトはリバスの身体を抱き起こす。
一部身体は朽ち果て、それでもなんとか原型をとどめている。
抱き起こされたリバスの表情は喜びいっぱいで感謝しているようにもみえる。

「ああ…神様って…本当にいるのね」

レフトは優しくリバスの髪を撫でるが一部の髪は抜け落ちてしまう。その様子に恥じらうリバス。

「恥ずかしい…」

「…すまない」

「私こそごめんなさい。きちんと手入れを…」

健気な彼女だが身体の限界がきたようで本格的に壊れ出す。

リバスはもう助からないのだ。

先ほどそれを察したアレサは自分と似た人外の者が、人に恋をする境遇に同情したのだ。


「レフトーラさん」

「ん?」

「怖いわ……」

「大丈夫……そばにいるから」

「私…今度は…人間に…なれるかしら」


リバスはレフトをみて微笑む。
その微笑みはそばに好きな人がいてくれて喜ぶ、人間の女性と何ら変わりはない。

そんなリバスを優しくつつむレフト。


「なれる……きっと…」

「…嬉しい……」


そしてリバスはレフトに身をゆだねる。
レフトは彼女の瞳から流れる涙のようなものを感じた。




そんな二人を突如、魔法の槍が貫く。




「…くっ……あぁ……そん…な…」




リバスの顔を突き抜け、レフトの胸部を貫通した魔法の槍はユニオンが放ったものだった。
顔面が崩壊したリバスはレフトの手の中で朽ちた。
レフトは胸部に相当なダメージがあるようだが、その痛みより突然崩れ落ちてしまったリバスに両手を震わせている。


「…はぁ…はぁ……仕損じたか…」


崩れ落ちたリバスの残骸にはコアがあった。本体を失ったコアは機能を停止し白く固まっている。
突然目の前でリバスが討たれたかなしみでレフトは膝をつきうなだれる。

そこに追い討ちをするユニオン。
今度はレフトを仕留めようと魔法の槍を構える。

「リバスは…誅した……残るは…レフトーラ……」

ユニオン、渾身の魔法槍がレフトを襲う。
無防備な身体に槍は直撃した。だが、槍に怯むことはなくレフトは歩みユニオンの元へ向かっている。

「…バカな…不死身…か」

レフトはあちこちから出血しており重傷者であることは間違いない。だが纏う魔力が身体に限界以上の活動をさせているようである。
そんな特殊な状態はもはやユニオンは言葉を失った。
怒りとかなしみ、決して交わらない感情が魔力を不安定なものとしている。ユニオンはその姿に恐怖を感じている。

「…化けものが……だがっ」

追い込まれたユニオンは何を血迷ったかレフトからリバスのコアを奪う。
その行動に反応しコアを取り返そうとするレフトはユニオンの首を掴み持ち上げる。
バタバタともがき苦しむユニオン。

異変に気づいて戻ってきたアレサは、修羅場のような状況に絶句した。

レフトの状況はいつ暴走してもおかしくない。
近づこうにも強力な防壁陣が展開しており、アレサはまさかの事態に立ち尽くしていた。


何もできない。


「…レフト……だめ………」


「…私たちが本部に戻らねば……過激派が…ヘルゲートの本部で…実権を握る……それが何を意味するか……くっくっくっ…」


ユニオンは苦しみながらもニヤリと笑いリバスのコアを砕いた。


「…人間に…なれるかしら」


レフトはリバスの声を一瞬聞いたような気がした。
彼女の最後の言葉がフラッシュバックしたようだ。
無慈悲にコアを砕れた怒りにより拳を握るレフト。


「……ならばヘルゲートへ……」


レフトはユニオンをつかみ投げ飛ばした。


「レフト…」


アレサはヘルゲートへ向け、歩み始めたレフトを止めるために立ち上がった。

「……」

だが彼女は何もできなかった。
それはレフトが泣いていたからだ。

憎しみ、怒りが全面に出てはいるが、心はかなしみが支配しており、涙が溢れている。
相反する感情は魔力に影響しており、アレサにはどうすることもできなかった。

そんな放心状態のアレサは突如何者かにより救助される。



レフトは歪な魔力、全て身体に押し込んだ。
そして何事もなかったように静まる跡地。

「彼女は純粋だった…ただ人間に憧れていただけだった。なぜ彼女を破壊したんだ……許せない…」



自問するしながらレフトはヘルゲートへ向かう。




シーキヨ支部は二度の異変をさすがに緊急事態とし、オメガとニナ、レンが動き出す。


「レン…あんた本当に大丈夫なの…」

「はい。今度は私がレフトさんを…」

「うむ。最悪レフトと闘うことになるかもしれん…」

「はあ……気が重いわねぇ…」


ニナは完全武装。
皆、やりきれない想いがあるが、最悪戦闘は避けられないと覚悟しているようだ。


ヘルゲートにある再生会本部は統括を失い逃亡者が続出。それを過激派がまとめ、もはや武装した軍隊のようだ。再生会を中心に一部のヘルゲート住民たちや賞金稼ぎはレフトを討ち取るべく立ち上がり跡地へと向かった。
この騒動を終息させれば名声が。
あらゆる人間たちがレフトと止めるためが出撃した。




「ああ…神様って…本当にいるのね」



繰り返されるリバスの言葉。
その言葉は憎悪となり、怒りに身を任せ全てを破壊してしまうのか。


次回へ続く
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