ファンタジー/ストーリー2

雪矢酢

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第一章

二十三話 ヘルゲート混合部隊

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ヘルゲートの混合部隊は、レフトを迎撃するため陣を展開した。
迎え撃つことで自分たちが有利に立ち回れると判断したようだ。
名声を得るには復興機関が動き出す前に決着をつける必要があったのだ。


「しっかし、たかが一人にこの人数は異常でしょう」

部隊の人々はこの布陣に疑問を感じていた。
平地のど真ん中におよそ五百人ほどが陣を構えているその様は、凶悪なモンスターを相手にするかのような光景だ。

「少々ヤりすぎてしまうかもしれないが…復興機関への牽制にはなるだろう」

この部隊の指揮官は再生会副統括ライフ。
その彼を支えるのは過激派のリーダーアーク。

「私はこの戦いで再生会の名を世界に知らしめて表舞台に立つつもりだ」

「副統括は復興機関と争うおつもりですか」

「争うというか…再生会が復興機関を取り仕切る」

「つまり…傘下にすると」

「アーク、お前はリバス様と話したことがあるか?」

「はい、武力行使したら……除名すると…」

「ふっ…あの方らしい。アークよ、私はリバス様とは考え方が真逆なのだよ」

「真逆ですか」

「そうだ、武力が全て。強い者が支配する。それこそ真理であろう」

「我々、過激派の活動よりも……副統括の今の発言は危険ですよ…」

「ヘルゲートをみるがいい。あれが答えだ」


周囲が急に慌ただしくなり陣が崩れる。部隊の者達は急に何かから逃げ出すが二人はそれに気づかず雑談を続けている。
そこへ一人の兵士が報告にくる。


「失礼します。報告が…」

「なんだ?」

「部隊が…陣形が…レフトーラを前にして崩壊……間もなくここへ…」


二人は言葉を失った。


残る武装集団が辺りを警戒しているが、そこへレフトが登場する。



「迎撃とは都合が良い。過激派の頭を出してもらおうか」


レフトは部隊へ告げる。
しかし集団はそんな言葉は無視してレフトを包囲した。


「私は副統括のライフである。レフトーラ、投降せよ」

「投降?」

「復興機関の者が好き放題暴れるなど許されるべき行動ではない」

「…」

それを黙って聞いているレフト。

「おい、ごたくはいい。はやいこと始末させろ」

ライフは統括者として未熟であった。
部隊を奮い立たせることができず、ならず者や無法者に引っ込めコールを連呼された。
現場を知らない上役の末路といったところだ。
その様子を無感情で静止するレフト。


「くっ…アーク、なんとかしてくれ…」

「いや…俺にはどうすることも…」

「野郎ども、無能な指揮官の命令なぞ無視してレフトーラを討ち取るんだ」


一斉に皆、抜刀しレフトに襲いかかる。笑いながらレフトは、魔力を解放した。以前の魔力とは異なり、おぞましく禍々しいリバスのような魔力だ。

その姿にやはり多くの者が逃げ出す。だが一部、魔力に怯まず攻撃する者がいた。
盲目の女剣士アイズと退魔士ドラだ。

「魔力を解除しないと斬撃は…無意味。一瞬だけでも解除してくれれば…」

アイズはレフトの魔力を肌で感じ、これを解除せねば勝機はないと進言する。

「わかった。構えていろ、私が解除してみせる」

ドラは呪符でレフトを攻撃するがレフトに到達することもなく焼け落ち、効果はない。

「ちっ…防壁魔法を展開してたか…」

ドラは臨機応変に闘える優秀な退魔士だ。的確に相手を分析することもできる。

「少しは戦えるようだが…」

レフトは右手をなぎ払う。
すると一帯が氷りつき、多くの者が自由を奪われ行動を制限された。

「…くっ…こんなのを相手にするなど…」

ドラはすぐに氷りを砕いたが、なんと目の前には既にレフトが立っていた。

「…」

圧倒的な戦闘能力に戦意喪失したドラは膝をつき降伏した。
チャンスを狙っていたアイズだが、氷により動きを封じられてしまいどうすることもできない。

「…何があった?」

「アイズ…武器を捨てよ…」

「…くっ……」

事態を察したアイズはゆっくりと武器を置き降伏した。

その状況にライフはついに気づいた。

復興機関の戦力を見誤った…いや、レフトーラとは戦うべきではなかったと。

「悪夢だ…」

「私が戦います。副統括はその間に撤退を」

「どこに…撤退するのだ…奴はヘルゲートの本部を攻撃するのだぞ…」

「だからこそヘルゲートに戻り…危機を伝えるべきかと…正直、我々だけでは…」

「…」

「では…後は頼みます」

アークは抜刀しレフトのもとへ。
投降したアイズとドラは魔法で気絶させれており命に別状はない。

「私はアーク、再生会の者だ。レフトーラ殿、お相手願う」

「…下がれ」

レフトはアークに手を向けて衝撃波を放つ。
アークは何が起きたのか理解できず吹き飛ぶ。

「…くそ…いったい何が…」

さらに連続して衝撃波を放つレフト。アークはなす術もなく連打を受け倒れた。

「…ぐふ…」

その様子を見たライフは恐怖を感じ硬直してしまった。

「レフトーラ…」

自分の名を呼ぶ方向に構えるが恐怖で怯えた様子をみて攻撃を中止した。

「私は再生会、現在のトップ、ライフ。リバスの後を継ぐ者である」

「…リバス…」

震えながらも自分の言葉で必死に伝えるライフ。

「数々の無礼を許してほしい。再生会は今後、復興機関と…」

突如ライフは会話の途中で何者かに討たれてしまう。

「うぐ…私は……」

ユニオンの放った魔法槍のようなものがライフの身体を貫いた。
そう、リバスの時と同じように…。

槍が飛んできた方向には高貴な身形の女性が立っていた。

スラリと細身の女性…。
レフトはどこかで見たことがある。

「うふふ、再生会はこれで終わりね。どう? 気が済んだかしら」

「…あの時の三人組みの……一人…か」

レフトは魔力を解除した。
得たいの知れない人物を前にして、冷静さを取り戻したようだ。

「……理解した…これがヘルゲートのルールということ…か」

「へえ驚いたわ、ずいぶんと冷静じゃないの。それにヘルゲートのことを理解しているのね」

レフトはこの人物が強者であることを知っていた。
魔力を解除し戦意がないことを伝えた。その様子を見た女性も微笑みながら武装を解除した。

「ふふ、さすがは世界の復興を担う者。話がわかるようで助かるわ」

お互いに思うことはあるが、ここで戦えば負傷者はさらに増える。
それはどちらも望まない。

「ヘルゲートは力ある者が支配する。再生会は力がなかった…それだけよ」

淡々と話す女性。
そこへ復興機関が到着する。


「あら、お仲間かしら」


復興機関はオメガとニナ、それにレンが多数の医療班を引き連れている。

「…レフト…」

ニナがレフトを見つける。
駆け寄ろうとするがオメガはそれを止める。

「ちょっとオメガ…どうみてもレフトは重傷者よ」

「…うむ」


女性はレフトに手をふりその場を去った。
レフトは今までの反動が一気に身体を襲う。
ガクっと倒れ吐血する。
オメガを振り払いニナはレフトの元へ。


だが、致命傷を受けたはずのライフがいきなり立ち上がる。


「…ニナ、あいつはアンドロイドだ」



次回へ続く
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