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第ニ章
三話 辺境の激闘
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「洞窟の中では範囲魔法は使えない。崩れて生き埋めになるかもしれないからね。魔術師の戦力がわからないから慎重にいこう」
「レフト様、探知される可能がありますが、空間把握魔法を使い、敵数と配置を調べますか?」
もはや戦闘以外は全てヴァンに任せたほうがいいのではと思うレフト。
「集落を襲撃するためモンスターを総動員していた。そのためここは手薄だろう」
キバが突然意見する。
「なるほど…一理ある。もし帰還するモンスターがいたとしても、最低三日はかかるわけだし」
「…進んでみようか」
議論したが結果は突撃。
レフトたちは洞窟へ。
見た目の陰気さとは異なり、内部は整備されており清潔感のあるつくりだ。
その異様さがレフトは引っ掛かっていた。
キバの指摘通り、モンスターはいない。静まり返った内部を奥へ進む。
「レフト殿」
「ん、どうしたのキバ?」
「相手になるかわかりませんが、魔術師は私とヴァンが相手をします」
「…ありがとう…二人とも」
目の前に巨大な門が出現しその手前にアレサと魔術師らしき人物がいる。
「…やはりここはただの洞窟ではない……あの門は…シーキヨでも…」
立ち止まった三人にゆっくり近づくアレサと魔術師。
「うふふ……あなたたちには可能性を感じるわよ」
魔術師と思われる人物は大きな耳が特徴的だ。
そして何故かアレサの耳も大きくなっており不気味な感じがする。
「私はレフトーラ、アレサを……妻を返して下さい」
「…ホープは罪な奴だな…」
「えっ…」
魔術師らしき人物はアレサに合図。するとアレサは突如圧縮した闘気を飛ばしヴァンとキバの身動きを奪う。
「くっ…レフト様…」
苦しむヴァン。
剣を落とし抵抗できないキバ。
さらに合図をしようとした瞬間、レフトはその人物に同じような闘気を飛ばし攻撃した。
闘気が直撃した魔術師は吹っ飛び、その隙にヴァンとキバを解放する。
「レフト様、奥様は洗脳されております」
ヴァンがレフトに伝える。
吹っ飛ばされた魔術師は表情を変えず起き上がる。
「レフトーラよ、私たちとともに来れば妹を授けると約束しよう」
「妹…?」
「ホープは……話さなかったか…あいつは本当に罪人だな」
沈黙するレフトたち。
「私たちは三姉妹なのだよ」
「三姉妹?」
「そうだ。アレサは次女でホープは三女だ」
「そうするとあなたは…」
「私は長女のルナ」
するとルナの瞳が妖しく光る。
視界に瞳が入る瞬間、アレサがそれを妨害する。
表情を変えず、いきなり突進してきたのだ。
「…キバ、時間を稼いでくれ、このままだと全滅してしまう…FZFを発動させ、ルナを討つ。奥様の洗脳はレフト様に任せるしか…」
ヴァンが準備しようとした瞬間、キバの刃がヴァンの右肩を貫く。
「ぐあっ…キバ…いったいなにを…」
「こういうことだよ」
キバはルナの隣につく。
そうレフトたちを騙していたのだ。
負傷したヴァンはレフトのそばに転がる。
「も…申し訳…ありません…見抜けなかった…キバを見抜けなかったです」
「くっ…」
レフトの前には無表情のアレサが立っている。
絶体絶命だ。
「詰みという状況だなレフトーラよ。ならばすべきことは一つだろう、さあ手を取るがいい」
レフトは負傷したヴァンに魔法をかける。
「レフト様…?」
「…FZFの準備を」
「…御意」
レフトはルナに手を差し出すと同時に魔法をかける。
ルナは足から徐々に石化していく時限式状態異常魔法だ。
「おのれ、こしゃくな……妹よ、レフトーラを倒せ」
ルナが合図を出すと無表情のままアレサは闘気を解放。その影響で洞窟内が激しく揺れる。
レフトも魔力を解放しキバを吹き飛ばすと二人は相対した。
アレサはさらに闘気を解放してかつてないほどの荒々しいオーラを放つ。
これが…悪魔…。
荒々しさは洗練されていき透き通ったオーラへと変化。
その凄まじい戦闘力に怯むレフト。
「…アレサ…」
石化したルナはそのうち解除される。その前にアレサを正気に戻さねばならない。
戦いが始まった。
アレサは一気に距離をつめ、得意な接近戦を展開。
レフトは攻撃を躱すが、以前とはまるで違うスピードに対応できず何発かは命中している。
反撃してこない、戦わないレフトに気づいたアレサは一旦距離をとった。
…強い。
だが…これでもアレサは確実に手加減をしている…。
アレサが全力を出さないのと、レフトが攻撃を控える理由は同じである。
それはここが洞窟内ということだ。もし洞窟が崩落したらルナ含め、みんな生き埋めになる。
ヴァンがフィールドを発動するまで耐えて、発動した瞬間に魔力を全快にして洗脳を解きここから脱出する、それがレフトの作戦だ。
硬直する二人。
そこでアレサは深く息を吸い込みその場で右手をなぎ払った。
すると地面をえぐりながら進む衝撃波が発生、レフトに直撃した。
「…手堅い攻撃だね…」
さらにアレサは連続で空を切り衝撃波を放つ。
レフトは一旦ヴァンの前に退避した。そして剣を取り出し陣術を展開。
その様子に驚くアレサ。
「レフト様…準備完了です。いつでもイケます」
「わかった、だけど洗脳はどうやって解除すればいい?」
小言で話す二人。
「はい、フィールドが発動すると奥様は一瞬怯むかと思います。そこを攻撃し気絶させて下さい。そしたらすぐに解除魔法をかけます」
「わかった…」
レフトは剣は地面に突き刺した。
そして目を閉じ集中した。
その様子を見て構えるアレサ。
ルナは足元から石化解除が始まった。
「いくぞっ」
「はっ」
掛け声とともにヴァンはFZFを発動した。
本人を中心に黒い稲妻のような閃光が周囲を走り、特殊空間が構成された。
アレサは驚き辺りを見回すが、その一瞬にレフトは剣の柄頭でアレサの腹部を攻撃。
「っ…」
「アレサ…」
そしてレフトの後方よりヴァンが魔法を放つ。
アレサは青い炎に包まれ倒れた。
石化を解除したルナは倒れているアレサを見て驚いている。
「…アレサが…」
フィールドは解除され倒れているアレサを起こすレフト。
ヴァンはフィールドを展開した疲労から座り込んでいる。
そんなヴァンにレフトは回復魔法をかける。
「…くそっ…気絶だけでなく解除もするとは……レフトーラと幻獣を侮った…か…ここは撤退をっ」
ルナは反転し逃亡しようとしたが、突如、刃がルナの身体を貫く。
「…ぐあっ…きさ…ま…裏切る……か」
それはキバによるものだった。
「…助かったよキバ」
キバは裏切った演技をしていた。
ルナは狡猾で形勢が不利になるとすぐに逃亡する。この事をキバは知っていた。裏切った演技で油断させ仕留めるタイミングを狙っていたのだった。
「手を貸すぞヴァン。さあレフト殿撤退しましょう」
「…この門は…シーキヨでも見たような……」
門に近づくレフトだったがその歩みが止まる。
「…二人とも……妻を連れて逃げるんだ…」
「えっ…」
突然の言葉に驚く二人。
だが、レフトはキバにアレサを委ね、剣を構える。
「ちょ…レフト殿?」
すると門は崩れ、ドロリとした液体となる。
それはゆっくりとネズミの姿を形成していく。辺りにある物質を手当たり次第取り込み、負傷したルナをも液体は捕らえ吸収してしまう。
「…こんなところで再開するとはね…」
そう、レフトの前にいるのはシーキヨで戦った悪魔である。
以前とは比べ物にならないくらい巨大化しておりみなぎる憎悪は周囲を破壊し地獄のような光景になる。
そんな状況ではあるがレフトは表情を変えることなくただ左手に剣を持ち立っている。
「…レフトーラ、もはやその力は神の力と呼べるだろう。幻獣を従え、お前は何をするつもりだ」
ネズミはかつての姿を取り戻し、レフトの前に立ちふさがった。
「以前と違い多弁だね。世界を復興させる、それだけよ」
「なるほど。あくまでも人として生きるということか…」
「こちらも問おう、何故シーキヨを襲撃したんだ?」
「シーキヨを襲撃したわけではない。あの時の狙いはお前だ。アレサはもともと我々悪魔側のスパイだ。人間の世界へ紛れ込み、世界の脅威となる存在を調べて始末するのがあいつの役目だった」
「…」
「そうか、あいつは話していなかったか」
すると巨大ネズミは突如縮小していき人の姿へ変化した。
優男である。
「我々と同等かそれ以上の力を持つ者と争う理由はもはや無い」
ネズミは手を振り払った。
すると場の禍々しく地獄のような光景は吹き飛び、静寂な洞窟内に戻った。
「ロード、それが名だ」
レフトはロードから聞かされた事に言葉を失っていた。
アレサがスパイだった…では自分たちの関係は偽りだったのか。
アレサは騙していたのか。
様々な想いが頭をよぎる。
「整理がつかんだろう。それだけアレサがお前の中で大切な存在なのだろう」
何故か一定の理解を示すロード。
悪魔は危険と思っていたレフトだが、アレサを筆頭にホープ先生や目の前のロードと関わり心が揺れている。
「…やめてくれ……」
「ん? 何だ」
「アレサを…失いたくない…もう誰も…」
レフトの瞳から涙が流れる。
「ならば手を取れレフトーラ。きっとアレサはそれを望んでいる」
頷き手を伸ばすレフト。
だが、突然全身に衝撃が走る。
白銀の腕輪
衝撃はそこから発せられた。
これは幻獣の加護が発動したということであり、腕輪の効果はあらゆる状態異常を無効化するというとんでもなく高性能な装飾品であった。
「おのれ…またしても、またしても幻獣かっ。おのれぇぇっ」
激昂するロード。
いちょう我に返ったレフトであったが、アレサの正体に心はダメージを受けており、まともに戦えるかは微妙である。
「不本意ではあるが力で屈服させてもらうぞレフトーラ」
ロードは再び巨大ネズミ化してレフトの前に立ちふさがる。
ロードはレフトを拘束し洞窟を破壊。
上昇し地上へ出た。
「さあ、ここなら遠慮はいらない。全力でかかってくるがいい」
そう言うとロードはレフトを解放し、身構えた。
正々堂々とした、まるで武人ようなロードにレフトはアレサと似たような気質を感じた。
レフトは拳を強く握った。
倒さねばならない。
ロードを倒してアレサに聞かなければ。
ここで屈するわけには……。
「ここで屈するわけにはいかないんだっ」
レフトは魔力を解放した。
その衝撃は凄まじく、さらには暗雲が発生し気候にも影響。
レフトを中心に紫色の魔力が辺りに漂う。
「……化け物め…」
皮肉たっぷりで悪魔に化け物呼ばわりされるレフト。
次回へ続く
「レフト様、探知される可能がありますが、空間把握魔法を使い、敵数と配置を調べますか?」
もはや戦闘以外は全てヴァンに任せたほうがいいのではと思うレフト。
「集落を襲撃するためモンスターを総動員していた。そのためここは手薄だろう」
キバが突然意見する。
「なるほど…一理ある。もし帰還するモンスターがいたとしても、最低三日はかかるわけだし」
「…進んでみようか」
議論したが結果は突撃。
レフトたちは洞窟へ。
見た目の陰気さとは異なり、内部は整備されており清潔感のあるつくりだ。
その異様さがレフトは引っ掛かっていた。
キバの指摘通り、モンスターはいない。静まり返った内部を奥へ進む。
「レフト殿」
「ん、どうしたのキバ?」
「相手になるかわかりませんが、魔術師は私とヴァンが相手をします」
「…ありがとう…二人とも」
目の前に巨大な門が出現しその手前にアレサと魔術師らしき人物がいる。
「…やはりここはただの洞窟ではない……あの門は…シーキヨでも…」
立ち止まった三人にゆっくり近づくアレサと魔術師。
「うふふ……あなたたちには可能性を感じるわよ」
魔術師と思われる人物は大きな耳が特徴的だ。
そして何故かアレサの耳も大きくなっており不気味な感じがする。
「私はレフトーラ、アレサを……妻を返して下さい」
「…ホープは罪な奴だな…」
「えっ…」
魔術師らしき人物はアレサに合図。するとアレサは突如圧縮した闘気を飛ばしヴァンとキバの身動きを奪う。
「くっ…レフト様…」
苦しむヴァン。
剣を落とし抵抗できないキバ。
さらに合図をしようとした瞬間、レフトはその人物に同じような闘気を飛ばし攻撃した。
闘気が直撃した魔術師は吹っ飛び、その隙にヴァンとキバを解放する。
「レフト様、奥様は洗脳されております」
ヴァンがレフトに伝える。
吹っ飛ばされた魔術師は表情を変えず起き上がる。
「レフトーラよ、私たちとともに来れば妹を授けると約束しよう」
「妹…?」
「ホープは……話さなかったか…あいつは本当に罪人だな」
沈黙するレフトたち。
「私たちは三姉妹なのだよ」
「三姉妹?」
「そうだ。アレサは次女でホープは三女だ」
「そうするとあなたは…」
「私は長女のルナ」
するとルナの瞳が妖しく光る。
視界に瞳が入る瞬間、アレサがそれを妨害する。
表情を変えず、いきなり突進してきたのだ。
「…キバ、時間を稼いでくれ、このままだと全滅してしまう…FZFを発動させ、ルナを討つ。奥様の洗脳はレフト様に任せるしか…」
ヴァンが準備しようとした瞬間、キバの刃がヴァンの右肩を貫く。
「ぐあっ…キバ…いったいなにを…」
「こういうことだよ」
キバはルナの隣につく。
そうレフトたちを騙していたのだ。
負傷したヴァンはレフトのそばに転がる。
「も…申し訳…ありません…見抜けなかった…キバを見抜けなかったです」
「くっ…」
レフトの前には無表情のアレサが立っている。
絶体絶命だ。
「詰みという状況だなレフトーラよ。ならばすべきことは一つだろう、さあ手を取るがいい」
レフトは負傷したヴァンに魔法をかける。
「レフト様…?」
「…FZFの準備を」
「…御意」
レフトはルナに手を差し出すと同時に魔法をかける。
ルナは足から徐々に石化していく時限式状態異常魔法だ。
「おのれ、こしゃくな……妹よ、レフトーラを倒せ」
ルナが合図を出すと無表情のままアレサは闘気を解放。その影響で洞窟内が激しく揺れる。
レフトも魔力を解放しキバを吹き飛ばすと二人は相対した。
アレサはさらに闘気を解放してかつてないほどの荒々しいオーラを放つ。
これが…悪魔…。
荒々しさは洗練されていき透き通ったオーラへと変化。
その凄まじい戦闘力に怯むレフト。
「…アレサ…」
石化したルナはそのうち解除される。その前にアレサを正気に戻さねばならない。
戦いが始まった。
アレサは一気に距離をつめ、得意な接近戦を展開。
レフトは攻撃を躱すが、以前とはまるで違うスピードに対応できず何発かは命中している。
反撃してこない、戦わないレフトに気づいたアレサは一旦距離をとった。
…強い。
だが…これでもアレサは確実に手加減をしている…。
アレサが全力を出さないのと、レフトが攻撃を控える理由は同じである。
それはここが洞窟内ということだ。もし洞窟が崩落したらルナ含め、みんな生き埋めになる。
ヴァンがフィールドを発動するまで耐えて、発動した瞬間に魔力を全快にして洗脳を解きここから脱出する、それがレフトの作戦だ。
硬直する二人。
そこでアレサは深く息を吸い込みその場で右手をなぎ払った。
すると地面をえぐりながら進む衝撃波が発生、レフトに直撃した。
「…手堅い攻撃だね…」
さらにアレサは連続で空を切り衝撃波を放つ。
レフトは一旦ヴァンの前に退避した。そして剣を取り出し陣術を展開。
その様子に驚くアレサ。
「レフト様…準備完了です。いつでもイケます」
「わかった、だけど洗脳はどうやって解除すればいい?」
小言で話す二人。
「はい、フィールドが発動すると奥様は一瞬怯むかと思います。そこを攻撃し気絶させて下さい。そしたらすぐに解除魔法をかけます」
「わかった…」
レフトは剣は地面に突き刺した。
そして目を閉じ集中した。
その様子を見て構えるアレサ。
ルナは足元から石化解除が始まった。
「いくぞっ」
「はっ」
掛け声とともにヴァンはFZFを発動した。
本人を中心に黒い稲妻のような閃光が周囲を走り、特殊空間が構成された。
アレサは驚き辺りを見回すが、その一瞬にレフトは剣の柄頭でアレサの腹部を攻撃。
「っ…」
「アレサ…」
そしてレフトの後方よりヴァンが魔法を放つ。
アレサは青い炎に包まれ倒れた。
石化を解除したルナは倒れているアレサを見て驚いている。
「…アレサが…」
フィールドは解除され倒れているアレサを起こすレフト。
ヴァンはフィールドを展開した疲労から座り込んでいる。
そんなヴァンにレフトは回復魔法をかける。
「…くそっ…気絶だけでなく解除もするとは……レフトーラと幻獣を侮った…か…ここは撤退をっ」
ルナは反転し逃亡しようとしたが、突如、刃がルナの身体を貫く。
「…ぐあっ…きさ…ま…裏切る……か」
それはキバによるものだった。
「…助かったよキバ」
キバは裏切った演技をしていた。
ルナは狡猾で形勢が不利になるとすぐに逃亡する。この事をキバは知っていた。裏切った演技で油断させ仕留めるタイミングを狙っていたのだった。
「手を貸すぞヴァン。さあレフト殿撤退しましょう」
「…この門は…シーキヨでも見たような……」
門に近づくレフトだったがその歩みが止まる。
「…二人とも……妻を連れて逃げるんだ…」
「えっ…」
突然の言葉に驚く二人。
だが、レフトはキバにアレサを委ね、剣を構える。
「ちょ…レフト殿?」
すると門は崩れ、ドロリとした液体となる。
それはゆっくりとネズミの姿を形成していく。辺りにある物質を手当たり次第取り込み、負傷したルナをも液体は捕らえ吸収してしまう。
「…こんなところで再開するとはね…」
そう、レフトの前にいるのはシーキヨで戦った悪魔である。
以前とは比べ物にならないくらい巨大化しておりみなぎる憎悪は周囲を破壊し地獄のような光景になる。
そんな状況ではあるがレフトは表情を変えることなくただ左手に剣を持ち立っている。
「…レフトーラ、もはやその力は神の力と呼べるだろう。幻獣を従え、お前は何をするつもりだ」
ネズミはかつての姿を取り戻し、レフトの前に立ちふさがった。
「以前と違い多弁だね。世界を復興させる、それだけよ」
「なるほど。あくまでも人として生きるということか…」
「こちらも問おう、何故シーキヨを襲撃したんだ?」
「シーキヨを襲撃したわけではない。あの時の狙いはお前だ。アレサはもともと我々悪魔側のスパイだ。人間の世界へ紛れ込み、世界の脅威となる存在を調べて始末するのがあいつの役目だった」
「…」
「そうか、あいつは話していなかったか」
すると巨大ネズミは突如縮小していき人の姿へ変化した。
優男である。
「我々と同等かそれ以上の力を持つ者と争う理由はもはや無い」
ネズミは手を振り払った。
すると場の禍々しく地獄のような光景は吹き飛び、静寂な洞窟内に戻った。
「ロード、それが名だ」
レフトはロードから聞かされた事に言葉を失っていた。
アレサがスパイだった…では自分たちの関係は偽りだったのか。
アレサは騙していたのか。
様々な想いが頭をよぎる。
「整理がつかんだろう。それだけアレサがお前の中で大切な存在なのだろう」
何故か一定の理解を示すロード。
悪魔は危険と思っていたレフトだが、アレサを筆頭にホープ先生や目の前のロードと関わり心が揺れている。
「…やめてくれ……」
「ん? 何だ」
「アレサを…失いたくない…もう誰も…」
レフトの瞳から涙が流れる。
「ならば手を取れレフトーラ。きっとアレサはそれを望んでいる」
頷き手を伸ばすレフト。
だが、突然全身に衝撃が走る。
白銀の腕輪
衝撃はそこから発せられた。
これは幻獣の加護が発動したということであり、腕輪の効果はあらゆる状態異常を無効化するというとんでもなく高性能な装飾品であった。
「おのれ…またしても、またしても幻獣かっ。おのれぇぇっ」
激昂するロード。
いちょう我に返ったレフトであったが、アレサの正体に心はダメージを受けており、まともに戦えるかは微妙である。
「不本意ではあるが力で屈服させてもらうぞレフトーラ」
ロードは再び巨大ネズミ化してレフトの前に立ちふさがる。
ロードはレフトを拘束し洞窟を破壊。
上昇し地上へ出た。
「さあ、ここなら遠慮はいらない。全力でかかってくるがいい」
そう言うとロードはレフトを解放し、身構えた。
正々堂々とした、まるで武人ようなロードにレフトはアレサと似たような気質を感じた。
レフトは拳を強く握った。
倒さねばならない。
ロードを倒してアレサに聞かなければ。
ここで屈するわけには……。
「ここで屈するわけにはいかないんだっ」
レフトは魔力を解放した。
その衝撃は凄まじく、さらには暗雲が発生し気候にも影響。
レフトを中心に紫色の魔力が辺りに漂う。
「……化け物め…」
皮肉たっぷりで悪魔に化け物呼ばわりされるレフト。
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