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第ニ章
番外編 ある日のシーキヨ支部
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アレサとレフトが静養中、シーキヨに駐在していたオメガとニナ。
二人はまずシーキヨの支部へ顔を出し手続きをしていた。
シーキヨ支部はゼットが復帰したことや優秀な人材が加入したおかげで見事に持ち直したようだ。
機関に志願する者も増え、かつての閑散としたロビーは大いに賑わっている。
「ほう」
「悪魔の襲撃や内乱があったと聞いたからもっと暗く沈んでいるかと思ったけど…」
受け付けに向かう二人は予想外の忙しさに驚いていた。
依頼をする市民や説明を受けるチームなど、ロビーは多数の人で溢れている。
「ちょっと落ち着くまで待ちましょうか」
「うむ、そうしよう」
二人は適当なところへ座り状況を確認した。
「皆、良い目をしている」
「えっ」
オメガは周辺のチームを見て言う。
「治安課は身軽な人が多く、派遣課の者がリーダーっぽいな」
シーキヨ支部のチーム構成は土地柄、戦士、剣士職は少なく、身軽で器用なシーフ職が多い。
情報課は大陸最大の図書館があるためとくに優秀な人材が多い。だが、気難しい者や変わり者が多いことが問題である。優れた知者を導き、チームのバランスを整えるのがこの支部の課題である…とオメガは分析した。
「学者連中は実戦に出ると決まってトラブルになるからねぇ」
足を組みぶつぶつぼやくニナ。
そんな二人に受け付けにいたゼットが気付く。
二人に会釈をするとすぐに案内人が二人の前に現れる。
「遠方お疲れ様です。お部屋がございますのでそちらでお休みください」
「うむ、すまぬ」
「忙しいところ申し訳ない」
二人は案内人にお礼を伝え部屋に案内してもらう。
「失礼しました、私は治安課所属のシフと申します」
「シフ殿、私はオメガ、そしてこちらはニナです」
「オメガさんニナさん、かつてレフトさんが話されていました」
「あらレフトの知り合いなの?」
「はい、私が追い剥ぎをしていた頃、レフトさんに出会い改心させられました。私にとっては恩人であり憧れです」
「ほう、レフトがそのようなことを」
「……ってかあなた盗賊っぽく見えないわよ」
「レフトさんにも盗賊などやめて真面目に働けと……」
「うむ、真面目にコツコツ堅実が良い」
「なんかあなたは学者っぽい感じがするのよね。身軽で知識がある諜報活動員ってとこかしら?」
「レフトさんにも…諜報活動を頼まれました」
「ほらやっぱりね。レフトは暗いから基本何考えているかわかんないけど、私たちは部隊編成、戦闘面では抜群の相性なのよ」
「レフトさんって暗いんすか?」
「暗いわよ、天然っぽいとこあるし。たまにくだらん寒いギャグ言うし…」
「ああ…やっぱりそうなんすか…」
「場を和ませようと頑張っている良いリーダーであろう」
オメガがいちょうレフトをフォローする。
ニナやシフはレフトの天然っぽい部分に共感していた。
「えっと…ここになります。後程、ゼットさんなどと伺いますので、それまでゆっくりお休みください」
「うむ、承知した」
「わざわざありがとね、また」
部屋に入る二人を確認しガックと疲労するシフ。
「…凄まじい二人だった…雰囲気が明らかに違うというか…魔力解放したレフトさんがそばにいるような緊張感だった…」
額の汗をぬぐうシフ。
歩きながら思う。
あの二人のリーダーであるレフトさんって…一体何者だよ…。
「さて、この支部の人材を整理しておこう」
オメガは名簿のような書類を広げる。ニナはメガネをかけその書類に目を通す。
「さっきの盗賊…じゃなかったわね、シフは治安課より派遣課のほうが良さそうね」
「うむ、派遣課はミツキという者が突出しているようだ」
「ここは派遣っていっても特別危険なところは存在しないから重要性は低いと思うわ」
「であるな。実力よりも情報課の者とコミニュケーションがとれる人格者がつくべきであろう」
「ああ、専門分野により特化した人って性格がへんちくりんなの多いものね。トラブルばっか起こすし」
ニナは飲み物に口にする。
オメガはぱっぱと書類をめくり支部の人員を一通り把握したようだ。
「クーガはこちらに配属となったようだ」
「クーガって分析が得意な情報課の奴だっけ?」
「うむ、シーキヨに派遣されたことで己の生き方を見つけたようだ」
「生き方を見つけたって…何よ、それ…」
「本部勤めだと分析作業の重要性は低い。やはり彼は現場に出るべき人だった、ということであろう」
「…人に言われる前にせめて自分のことくらいは理解しようよって…言いたいんだけど……」
「ニナの言いたいことはわかる。人員のデータベース整理をしてわかったが、このような適材適所ができていないケースが多い」
「そういえばレフトがシーキヨに飛ばされた時、オメガは本部で事務作業だったわね」
「うむ、本部での待機人員やレフトがヘルゲート支部を離れたことでの補填ができていないのだ」
「だから私はレフトのシーキヨ行きは反対したのよ。でも内乱を仲裁したのはレフトだろうから何とも言えないけど…ただ今度はヘルゲートが動き出すわよ」
「うむ、レフトが抑止になっていた部分があるのだろうが、それが消えれば無数の団体の動きが活発になろう」
「本部の待機人員をまとめて突っ込めばいいのよ」
「いずれにしろ注意すべきであろう」
「んっ…このレンって…カレンのことかしら…聖剣士?」
「洗礼を受けたことにより、原理は不明だが魔法のような力を身に付けたらしい」
「はぁ?何それ…よし受けて立つわ」
ニナは銃を支度し武装を始める。
「待てニナ」
オメガは出撃しようとするニナを止める。
「大丈夫よオメガ、手加減はするわ」
「レンなる人物はこの支部で貴重な剣士職なのだ」
「…わかったわよ…少し気が立ってしまったわ、ごめんなさい」
ニナが冷静になって座った瞬間、
部屋をノックする音が響く。
「ゼットです」
オメガはニナに確認をとる。
ニナはご自由にという感じで入室を許可した。
「うむ、開いている」
「はっ、失礼します」
扉を開けゼット、レン、シフが入室してきた。
「ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
「状況は確認している。業務を優先すべきだろう」
「堅苦しい挨拶はいらないわよ」
「配慮ありがとうございます。また支部のため、シーキヨのためご助力ください」
「承知した」
「わかった。こちらこそよろしくお願いね」
オメガとニナはゼットに頭を下げる。
その様子に絶句するシフとゼット。
「とんでもない。では早速…」
焦ったゼットはすぐに本題に入ろうとするが、レンが突然発言をする。
「私はレンと申します。特殊な生い立ちゆえに無礼をお許し下さい」
するとレンはいきなり聖剣を構えた。
「ふむ、勢いがあるな」
荒々しいレンに冷静なオメガがいい放つ。
ゼットとシフは顔色が真っ青になった。
「生い立ちと無礼は関係ないでしょう。あんた、手合わせしたいんでしょう?」
ニナが立ち上がり一触即発。
「何故かわかりませんが…身体が反応を…お手合わせを…」
レンは言葉をつまらせながらもニナに伝えた。
シフとゼットは頭を抱えている。
ニナはオメガに許可を求めた。
過呼吸で落ち着きのないレンとは対照的に、言葉は荒いがニナは至って冷静である。
「ゼット、広いところへ案内して下さい」
「は、はい」
一行は鍛練場なる訓練所らしきところへ移動。設備は微妙だが、広い空間が確保されている。
ニナはメガネをしまい準備体操をしている。
「ああ、なんということだ…」
シフは無謀なレンに嘆いている。
彼はレフトの力を身近で見ているため、少なくみてもこの二人はレフトに匹敵すると思っている。
勝てるわけがない…。
「レン、私はニナよ。レフトの部下、とでも言っておこうかしら」
「部下…」
「遠慮はいらないから聖剣技とやらを見せてちょうだい」
「なっ…」
聖剣技のことを知っているニナに激しく動揺するレン。
ゼットは回復瓶を大量に準備させ心配そうに二人を見つめる。
オメガが二人の間に立ち、開始の合図をする。
レンは迷いを払い、剣を構えてニナに突撃する。
「お覚悟」
特攻するレンに、ニナは近くにある剣を拾い投げつけた。
凄まじいスピードの剣がレンの横をすり抜ける。
攻撃を避けたことで冷静さを取り戻したレン。だが、ニナは次の一手を構えていた。距離を縮めておりレンは回避不能、ニナの拳がレンの顔面をとらえた。
「うっ…」
強ばるレン。
だがニナは攻撃を寸止めした。
レンはすぐさま距離をとる。
「落ち着いたかしらレン。あんた、そんなんじゃとても生き残れないわよ」
どうやらニナはレンに稽古をつけていたようだ。
「…」
レン、ゼット、シフ、シーキヨ組みは皆、言葉を失った。
「さて、ここはもうよいだろう。我々は別のところで今後について話そう」
オメガはニナに手をふり二人を連れて鍛練場を出た。
「うおぉぉーーーっ」
抑圧されていたレンの感情を解放したニナ。
聖剣技がニナに放たれるが、ニナは拳を強く握り、剣技が発動される瞬間に攻撃することでそれを見事に相殺した。
つまり…。
ニナに聖剣技は効かない。
「はぁ…はぁ…」
息が上がるレン。
対するニナは涼しい顔をしている。
ゼットが置いていった回復瓶を拾いレンに投げる。
「それ飲んで私たちも話し合いに参加するわよ」
「…わかりました。ありがとうございました」
鍛練場を出た二人。
外で待機していた者が話し合いの場所を伝える。
「レン、あんたが鍛えるのは精神。その聖剣技ってのはたくさんの人を守れるし、様々な障害を打ち砕くことだってできると思うわ」
「はい、精進します」
「精進できるようにみっちりと鍛えてあげるわよレン」
「はっはっ……」
「なによ、あんたこの短時間でずいぶんと感情豊かになったじゃないのよ」
「…なんだか私、固い殻を破ったようです」
「ああそうですか、よかったわね」
ニナはそっ気ないが、ひと安心したようだ。
やれやれ。
何とも複雑な気分だわ。
こりゃレフトも相当苦悩しただろうね。
「レン」
「はい、なんでしょうかニナ」
「呼んだだけ」
「…」
まあ私は私なりに付き合っていくわ。
カレン…あんたはゆっくりお休み。
二人はまずシーキヨの支部へ顔を出し手続きをしていた。
シーキヨ支部はゼットが復帰したことや優秀な人材が加入したおかげで見事に持ち直したようだ。
機関に志願する者も増え、かつての閑散としたロビーは大いに賑わっている。
「ほう」
「悪魔の襲撃や内乱があったと聞いたからもっと暗く沈んでいるかと思ったけど…」
受け付けに向かう二人は予想外の忙しさに驚いていた。
依頼をする市民や説明を受けるチームなど、ロビーは多数の人で溢れている。
「ちょっと落ち着くまで待ちましょうか」
「うむ、そうしよう」
二人は適当なところへ座り状況を確認した。
「皆、良い目をしている」
「えっ」
オメガは周辺のチームを見て言う。
「治安課は身軽な人が多く、派遣課の者がリーダーっぽいな」
シーキヨ支部のチーム構成は土地柄、戦士、剣士職は少なく、身軽で器用なシーフ職が多い。
情報課は大陸最大の図書館があるためとくに優秀な人材が多い。だが、気難しい者や変わり者が多いことが問題である。優れた知者を導き、チームのバランスを整えるのがこの支部の課題である…とオメガは分析した。
「学者連中は実戦に出ると決まってトラブルになるからねぇ」
足を組みぶつぶつぼやくニナ。
そんな二人に受け付けにいたゼットが気付く。
二人に会釈をするとすぐに案内人が二人の前に現れる。
「遠方お疲れ様です。お部屋がございますのでそちらでお休みください」
「うむ、すまぬ」
「忙しいところ申し訳ない」
二人は案内人にお礼を伝え部屋に案内してもらう。
「失礼しました、私は治安課所属のシフと申します」
「シフ殿、私はオメガ、そしてこちらはニナです」
「オメガさんニナさん、かつてレフトさんが話されていました」
「あらレフトの知り合いなの?」
「はい、私が追い剥ぎをしていた頃、レフトさんに出会い改心させられました。私にとっては恩人であり憧れです」
「ほう、レフトがそのようなことを」
「……ってかあなた盗賊っぽく見えないわよ」
「レフトさんにも盗賊などやめて真面目に働けと……」
「うむ、真面目にコツコツ堅実が良い」
「なんかあなたは学者っぽい感じがするのよね。身軽で知識がある諜報活動員ってとこかしら?」
「レフトさんにも…諜報活動を頼まれました」
「ほらやっぱりね。レフトは暗いから基本何考えているかわかんないけど、私たちは部隊編成、戦闘面では抜群の相性なのよ」
「レフトさんって暗いんすか?」
「暗いわよ、天然っぽいとこあるし。たまにくだらん寒いギャグ言うし…」
「ああ…やっぱりそうなんすか…」
「場を和ませようと頑張っている良いリーダーであろう」
オメガがいちょうレフトをフォローする。
ニナやシフはレフトの天然っぽい部分に共感していた。
「えっと…ここになります。後程、ゼットさんなどと伺いますので、それまでゆっくりお休みください」
「うむ、承知した」
「わざわざありがとね、また」
部屋に入る二人を確認しガックと疲労するシフ。
「…凄まじい二人だった…雰囲気が明らかに違うというか…魔力解放したレフトさんがそばにいるような緊張感だった…」
額の汗をぬぐうシフ。
歩きながら思う。
あの二人のリーダーであるレフトさんって…一体何者だよ…。
「さて、この支部の人材を整理しておこう」
オメガは名簿のような書類を広げる。ニナはメガネをかけその書類に目を通す。
「さっきの盗賊…じゃなかったわね、シフは治安課より派遣課のほうが良さそうね」
「うむ、派遣課はミツキという者が突出しているようだ」
「ここは派遣っていっても特別危険なところは存在しないから重要性は低いと思うわ」
「であるな。実力よりも情報課の者とコミニュケーションがとれる人格者がつくべきであろう」
「ああ、専門分野により特化した人って性格がへんちくりんなの多いものね。トラブルばっか起こすし」
ニナは飲み物に口にする。
オメガはぱっぱと書類をめくり支部の人員を一通り把握したようだ。
「クーガはこちらに配属となったようだ」
「クーガって分析が得意な情報課の奴だっけ?」
「うむ、シーキヨに派遣されたことで己の生き方を見つけたようだ」
「生き方を見つけたって…何よ、それ…」
「本部勤めだと分析作業の重要性は低い。やはり彼は現場に出るべき人だった、ということであろう」
「…人に言われる前にせめて自分のことくらいは理解しようよって…言いたいんだけど……」
「ニナの言いたいことはわかる。人員のデータベース整理をしてわかったが、このような適材適所ができていないケースが多い」
「そういえばレフトがシーキヨに飛ばされた時、オメガは本部で事務作業だったわね」
「うむ、本部での待機人員やレフトがヘルゲート支部を離れたことでの補填ができていないのだ」
「だから私はレフトのシーキヨ行きは反対したのよ。でも内乱を仲裁したのはレフトだろうから何とも言えないけど…ただ今度はヘルゲートが動き出すわよ」
「うむ、レフトが抑止になっていた部分があるのだろうが、それが消えれば無数の団体の動きが活発になろう」
「本部の待機人員をまとめて突っ込めばいいのよ」
「いずれにしろ注意すべきであろう」
「んっ…このレンって…カレンのことかしら…聖剣士?」
「洗礼を受けたことにより、原理は不明だが魔法のような力を身に付けたらしい」
「はぁ?何それ…よし受けて立つわ」
ニナは銃を支度し武装を始める。
「待てニナ」
オメガは出撃しようとするニナを止める。
「大丈夫よオメガ、手加減はするわ」
「レンなる人物はこの支部で貴重な剣士職なのだ」
「…わかったわよ…少し気が立ってしまったわ、ごめんなさい」
ニナが冷静になって座った瞬間、
部屋をノックする音が響く。
「ゼットです」
オメガはニナに確認をとる。
ニナはご自由にという感じで入室を許可した。
「うむ、開いている」
「はっ、失礼します」
扉を開けゼット、レン、シフが入室してきた。
「ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
「状況は確認している。業務を優先すべきだろう」
「堅苦しい挨拶はいらないわよ」
「配慮ありがとうございます。また支部のため、シーキヨのためご助力ください」
「承知した」
「わかった。こちらこそよろしくお願いね」
オメガとニナはゼットに頭を下げる。
その様子に絶句するシフとゼット。
「とんでもない。では早速…」
焦ったゼットはすぐに本題に入ろうとするが、レンが突然発言をする。
「私はレンと申します。特殊な生い立ちゆえに無礼をお許し下さい」
するとレンはいきなり聖剣を構えた。
「ふむ、勢いがあるな」
荒々しいレンに冷静なオメガがいい放つ。
ゼットとシフは顔色が真っ青になった。
「生い立ちと無礼は関係ないでしょう。あんた、手合わせしたいんでしょう?」
ニナが立ち上がり一触即発。
「何故かわかりませんが…身体が反応を…お手合わせを…」
レンは言葉をつまらせながらもニナに伝えた。
シフとゼットは頭を抱えている。
ニナはオメガに許可を求めた。
過呼吸で落ち着きのないレンとは対照的に、言葉は荒いがニナは至って冷静である。
「ゼット、広いところへ案内して下さい」
「は、はい」
一行は鍛練場なる訓練所らしきところへ移動。設備は微妙だが、広い空間が確保されている。
ニナはメガネをしまい準備体操をしている。
「ああ、なんということだ…」
シフは無謀なレンに嘆いている。
彼はレフトの力を身近で見ているため、少なくみてもこの二人はレフトに匹敵すると思っている。
勝てるわけがない…。
「レン、私はニナよ。レフトの部下、とでも言っておこうかしら」
「部下…」
「遠慮はいらないから聖剣技とやらを見せてちょうだい」
「なっ…」
聖剣技のことを知っているニナに激しく動揺するレン。
ゼットは回復瓶を大量に準備させ心配そうに二人を見つめる。
オメガが二人の間に立ち、開始の合図をする。
レンは迷いを払い、剣を構えてニナに突撃する。
「お覚悟」
特攻するレンに、ニナは近くにある剣を拾い投げつけた。
凄まじいスピードの剣がレンの横をすり抜ける。
攻撃を避けたことで冷静さを取り戻したレン。だが、ニナは次の一手を構えていた。距離を縮めておりレンは回避不能、ニナの拳がレンの顔面をとらえた。
「うっ…」
強ばるレン。
だがニナは攻撃を寸止めした。
レンはすぐさま距離をとる。
「落ち着いたかしらレン。あんた、そんなんじゃとても生き残れないわよ」
どうやらニナはレンに稽古をつけていたようだ。
「…」
レン、ゼット、シフ、シーキヨ組みは皆、言葉を失った。
「さて、ここはもうよいだろう。我々は別のところで今後について話そう」
オメガはニナに手をふり二人を連れて鍛練場を出た。
「うおぉぉーーーっ」
抑圧されていたレンの感情を解放したニナ。
聖剣技がニナに放たれるが、ニナは拳を強く握り、剣技が発動される瞬間に攻撃することでそれを見事に相殺した。
つまり…。
ニナに聖剣技は効かない。
「はぁ…はぁ…」
息が上がるレン。
対するニナは涼しい顔をしている。
ゼットが置いていった回復瓶を拾いレンに投げる。
「それ飲んで私たちも話し合いに参加するわよ」
「…わかりました。ありがとうございました」
鍛練場を出た二人。
外で待機していた者が話し合いの場所を伝える。
「レン、あんたが鍛えるのは精神。その聖剣技ってのはたくさんの人を守れるし、様々な障害を打ち砕くことだってできると思うわ」
「はい、精進します」
「精進できるようにみっちりと鍛えてあげるわよレン」
「はっはっ……」
「なによ、あんたこの短時間でずいぶんと感情豊かになったじゃないのよ」
「…なんだか私、固い殻を破ったようです」
「ああそうですか、よかったわね」
ニナはそっ気ないが、ひと安心したようだ。
やれやれ。
何とも複雑な気分だわ。
こりゃレフトも相当苦悩しただろうね。
「レン」
「はい、なんでしょうかニナ」
「呼んだだけ」
「…」
まあ私は私なりに付き合っていくわ。
カレン…あんたはゆっくりお休み。
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