4 / 57
4.Recalling
しおりを挟む
「え― 皆集合!」
体育館では、バスケット顧問、成宮忠司の号令が響き渡った。
「1年は、ここに整列」
「はい!」
バスケットの新入部員である1年生7人が整列する。
「徳田、1年に自己紹介させろ」
「あ、はい・・・・え―― 今年キャプテンを務める3年の徳田要です。ここに並んでるのが3年、そっちが2年だ」
顧問に指名された徳田は、部員の前に立つと少し照れながら自分自身と仲間を紹介する。
「キャプテ――ン なんだその簡単な紹介は~」
「アハハハ」
陸の言葉に2、3年のバスケ部員が一斉に笑った。
「いいだろ、一遍に覚えれないし、お前らが後で自己紹介しとけよ」
「へ――い」
陸が口を尖らせると、嫌味ぽく応える。
「じゃあ、まぁ、1年生諸君。出身中学とポジションを言ってくれ」
「名前は~?」
「な、名前はあったりまえだろうが!」
「ハハハ」
体育館にバスケット部員達の笑い声が木霊した後、1年生がそれぞれ自己紹介を始めた。
そんな中、1年生を眺めていた陽一に、隣に立つ陸が肩を寄せると話掛けた。
「なぁ~ あいつどっかで見た事ないか?」
「あ、ああ。多分・・・・」
陽一が陸に応えようとした時、1年生で最後の人物が声を出す。
「橘直人、青葉第一中学出身、ポジションはシューティングガードです。宜しくお願いします!」
「あ、ああ! そうだ。青一中の橘」
陸は両手を合わせると合点のいく面持ちで直人に声を掛けると、直人はそれに応えるように陸と陽一に視線を向ける。
「竹ノ内先輩。相澤先輩」
「お前めっちゃ背が伸びたな。分かんなかったわ― まぁ、まだ俺達よりチビだけどな、陽一」
「ああ」
陽一と陸も青葉第一中学校の出身で、バスケット部に所属しており、彼等が3年の時に直人が入部してきた。
当時の直人は、小柄で俊足でもなくバスケに向いているとは言えなかった。それでも1日も部活を休まず熱心に練習をしていたのが印象的な部員だったのだ。
1年の紹介が終わると顧問の指示で部員達は、キャプテン徳田を先頭に近くの河川敷でランニングを始めた。
少し暖かくなった空気に部員達の掛け声と足音が広がる。
直人は背後から、先頭で走る陽一の後ろ姿を目で追うと身体が火照り始めた。
陽一は、昨日と同様に昼休み中、校庭の木下で絵を描く生徒を廊下の窓から眺めていた。
〈橘直人〉
陽一は、覚えていた。華奢な体格に似合わず根性のある努力家だったが、当時はレギュラーに選ばれる事は無かった。そして絵を描くのが好き。
陽一が得意とするスリーポイントシュートを、熱心に見ていた姿が記憶に残っていた。
「陽一」
違うクラスだが同じバスケ部の桜井夾が背後から陽一に声を掛ける。
「夾。昼練の時間?」
「うん、そうだけど・・・・何見てんだ? あ、あいつって昨日バスケに入部して来た奴じゃね? 陽一と同じ中学だったんだよな? 橘・・どっかで聞いた事あるって思ってたら、青葉第一中学の橘って確か、去年の全中で得点王の上位だったって聞いたぜ。もっと強豪に入れただろうに、なんでここなんだろうな。ま! 頼もしい後輩が出来て良い事だけどな」
「へぇ~ 本当に努力家なんだね」
夾の話を聞いた陽一の心が少しだけ、ざわめいた。
バスケット部は、インターハイ予選に向けて日々練習に励んでいた。
「おい、相澤」
陽一がキャプテンの徳田と1on1の練習をしていると顧問に呼ばれる。
「成宮先生何ですか?」
成宮の元に行くと、直人がバスケットボールを抱えて彼の隣に立って居た。
「相澤、橘のスリーポイント見てやってくれ」
「え? あ、はい」
「相澤先輩、宜しくお願いします」
キラキラと目を輝かせ犬の様に尾っぽを振る直人が陽一を見つめる。
「じゃあ、1本打ってみて」
得点ランキング上位の実力。それは直人が努力を積み重ねてきた証拠。そして、陽一が得意とするスリーポイントシュートを体得した直人に、興味からか不思議と陽一の心が揺れる。
直人はドリブルで陽一から離れると、スリーポイントラインに立った。そして、静かにジャンプした時には手から既にボールは飛び立っており、ゴールネットをくぐり抜けていた。
体育館内が一瞬声を失い、直人の放ったボールが床を刎ねる音だけが響いていた。
バスケ部員の意識が直人の放つシュートに集中していた。何故なら、その姿が陽一と瓜二つだったからだ。
陽一のジャンプには、静かに飛び上がるが驚異的な高さがあり、空中で右膝を少し曲げたままの状態にする癖があった。そして、真っ直ぐ伸ばした腕を少し後ろに反ると長い指でボールを放つ。それはまるで丹頂鶴の様に美しい姿なのだ。
空中で舞い踊る直人に、陽一の心が大きなうねりを上げる。
【ドクン】
ボールを拾い上げた直人が陽一の元に満面の笑みで戻って来る。
「相澤先輩、どうでしたか? 決まってよかった~ 先輩に見られてたんで凄く緊張しました」
「・・うん。良いんじゃないか? 特に俺が教える事、何もないよ」
「そんな事ないです! 僕、すっごく練習しました。けど、まだまだ先輩みたいなフォームにならないんです・・・・相澤先輩のシュートは本当に凄いから」
「・・・・あ、ありがとう」
「はい!」
直人の輝く眼差しに陽一は思い出していた。中学の時、直人から仔犬の様に慕われていた事を。
「橘は変わらないね・・でも、あの頃よりもずっと上手になった。一杯努力したんだね」
「はい! 相澤先輩」
目の前に立つ無垢な直人の姿に、陽一は無意識に彼の頭を撫でてしまう。
「相澤先輩、僕、また先輩と一緒にバスケが出来て嬉しいです!」
頬を若干ピンクに染めた直人の笑顔に、陽一の心が暖められた気がした・・・・・・
僅かな朝の光が差す部屋で、小さな子供二人が陽一の枕元で囁くように話している。
「パパ~ 今日はお眠さんですね~」
「そうでちゅね」
「あ、起きた! パパぁ~ おはよう」
「おひゃよう、パパ」
小さな手がペタペタと陽一の顔を叩く。
「う――――ん。美来、悠人、もう起きたのか?」
そう告げながらまだ眠い眼で上半身を起こすと両手を天高く伸ばした。
「おはよう。僕のプリンセス、プリンス」
ベット上で起き上がった陽一に美来と悠人が同時に飛びつく。
昨夜、直人との電話を終えた後、陽一は昔を思い出していた。それは、8年もの間、封印をしていた愛おしい記憶。
「まだまだダメだなぁ~」
陽一は、無意識に呟いてしまう。
「パパ何がダメなの?」
「・・・・」
「パパ、ダメぇ~ ダメぇ~ キャキャキャ」
そう言いながら、悠人が陽一の上で飛び跳ねる。
「アハハハ、悠人パパを潰さないで―― で、今何時なの?」
陽一は、時計を見てビックリする。
「5時半だよ~ 2人とも朝起きだなぁ・・・・ママと同じだね」
「ママ!」
美来が嬉しいそうに叫ぶ。
「? マ・・マ?」
悠人は首を傾げた。
【もっと強くならないと】
陽一は、可愛い子供達を眺めながら、少し弱りそうになった心を引き締めると、いつもの呪文を唱えた。
体育館では、バスケット顧問、成宮忠司の号令が響き渡った。
「1年は、ここに整列」
「はい!」
バスケットの新入部員である1年生7人が整列する。
「徳田、1年に自己紹介させろ」
「あ、はい・・・・え―― 今年キャプテンを務める3年の徳田要です。ここに並んでるのが3年、そっちが2年だ」
顧問に指名された徳田は、部員の前に立つと少し照れながら自分自身と仲間を紹介する。
「キャプテ――ン なんだその簡単な紹介は~」
「アハハハ」
陸の言葉に2、3年のバスケ部員が一斉に笑った。
「いいだろ、一遍に覚えれないし、お前らが後で自己紹介しとけよ」
「へ――い」
陸が口を尖らせると、嫌味ぽく応える。
「じゃあ、まぁ、1年生諸君。出身中学とポジションを言ってくれ」
「名前は~?」
「な、名前はあったりまえだろうが!」
「ハハハ」
体育館にバスケット部員達の笑い声が木霊した後、1年生がそれぞれ自己紹介を始めた。
そんな中、1年生を眺めていた陽一に、隣に立つ陸が肩を寄せると話掛けた。
「なぁ~ あいつどっかで見た事ないか?」
「あ、ああ。多分・・・・」
陽一が陸に応えようとした時、1年生で最後の人物が声を出す。
「橘直人、青葉第一中学出身、ポジションはシューティングガードです。宜しくお願いします!」
「あ、ああ! そうだ。青一中の橘」
陸は両手を合わせると合点のいく面持ちで直人に声を掛けると、直人はそれに応えるように陸と陽一に視線を向ける。
「竹ノ内先輩。相澤先輩」
「お前めっちゃ背が伸びたな。分かんなかったわ― まぁ、まだ俺達よりチビだけどな、陽一」
「ああ」
陽一と陸も青葉第一中学校の出身で、バスケット部に所属しており、彼等が3年の時に直人が入部してきた。
当時の直人は、小柄で俊足でもなくバスケに向いているとは言えなかった。それでも1日も部活を休まず熱心に練習をしていたのが印象的な部員だったのだ。
1年の紹介が終わると顧問の指示で部員達は、キャプテン徳田を先頭に近くの河川敷でランニングを始めた。
少し暖かくなった空気に部員達の掛け声と足音が広がる。
直人は背後から、先頭で走る陽一の後ろ姿を目で追うと身体が火照り始めた。
陽一は、昨日と同様に昼休み中、校庭の木下で絵を描く生徒を廊下の窓から眺めていた。
〈橘直人〉
陽一は、覚えていた。華奢な体格に似合わず根性のある努力家だったが、当時はレギュラーに選ばれる事は無かった。そして絵を描くのが好き。
陽一が得意とするスリーポイントシュートを、熱心に見ていた姿が記憶に残っていた。
「陽一」
違うクラスだが同じバスケ部の桜井夾が背後から陽一に声を掛ける。
「夾。昼練の時間?」
「うん、そうだけど・・・・何見てんだ? あ、あいつって昨日バスケに入部して来た奴じゃね? 陽一と同じ中学だったんだよな? 橘・・どっかで聞いた事あるって思ってたら、青葉第一中学の橘って確か、去年の全中で得点王の上位だったって聞いたぜ。もっと強豪に入れただろうに、なんでここなんだろうな。ま! 頼もしい後輩が出来て良い事だけどな」
「へぇ~ 本当に努力家なんだね」
夾の話を聞いた陽一の心が少しだけ、ざわめいた。
バスケット部は、インターハイ予選に向けて日々練習に励んでいた。
「おい、相澤」
陽一がキャプテンの徳田と1on1の練習をしていると顧問に呼ばれる。
「成宮先生何ですか?」
成宮の元に行くと、直人がバスケットボールを抱えて彼の隣に立って居た。
「相澤、橘のスリーポイント見てやってくれ」
「え? あ、はい」
「相澤先輩、宜しくお願いします」
キラキラと目を輝かせ犬の様に尾っぽを振る直人が陽一を見つめる。
「じゃあ、1本打ってみて」
得点ランキング上位の実力。それは直人が努力を積み重ねてきた証拠。そして、陽一が得意とするスリーポイントシュートを体得した直人に、興味からか不思議と陽一の心が揺れる。
直人はドリブルで陽一から離れると、スリーポイントラインに立った。そして、静かにジャンプした時には手から既にボールは飛び立っており、ゴールネットをくぐり抜けていた。
体育館内が一瞬声を失い、直人の放ったボールが床を刎ねる音だけが響いていた。
バスケ部員の意識が直人の放つシュートに集中していた。何故なら、その姿が陽一と瓜二つだったからだ。
陽一のジャンプには、静かに飛び上がるが驚異的な高さがあり、空中で右膝を少し曲げたままの状態にする癖があった。そして、真っ直ぐ伸ばした腕を少し後ろに反ると長い指でボールを放つ。それはまるで丹頂鶴の様に美しい姿なのだ。
空中で舞い踊る直人に、陽一の心が大きなうねりを上げる。
【ドクン】
ボールを拾い上げた直人が陽一の元に満面の笑みで戻って来る。
「相澤先輩、どうでしたか? 決まってよかった~ 先輩に見られてたんで凄く緊張しました」
「・・うん。良いんじゃないか? 特に俺が教える事、何もないよ」
「そんな事ないです! 僕、すっごく練習しました。けど、まだまだ先輩みたいなフォームにならないんです・・・・相澤先輩のシュートは本当に凄いから」
「・・・・あ、ありがとう」
「はい!」
直人の輝く眼差しに陽一は思い出していた。中学の時、直人から仔犬の様に慕われていた事を。
「橘は変わらないね・・でも、あの頃よりもずっと上手になった。一杯努力したんだね」
「はい! 相澤先輩」
目の前に立つ無垢な直人の姿に、陽一は無意識に彼の頭を撫でてしまう。
「相澤先輩、僕、また先輩と一緒にバスケが出来て嬉しいです!」
頬を若干ピンクに染めた直人の笑顔に、陽一の心が暖められた気がした・・・・・・
僅かな朝の光が差す部屋で、小さな子供二人が陽一の枕元で囁くように話している。
「パパ~ 今日はお眠さんですね~」
「そうでちゅね」
「あ、起きた! パパぁ~ おはよう」
「おひゃよう、パパ」
小さな手がペタペタと陽一の顔を叩く。
「う――――ん。美来、悠人、もう起きたのか?」
そう告げながらまだ眠い眼で上半身を起こすと両手を天高く伸ばした。
「おはよう。僕のプリンセス、プリンス」
ベット上で起き上がった陽一に美来と悠人が同時に飛びつく。
昨夜、直人との電話を終えた後、陽一は昔を思い出していた。それは、8年もの間、封印をしていた愛おしい記憶。
「まだまだダメだなぁ~」
陽一は、無意識に呟いてしまう。
「パパ何がダメなの?」
「・・・・」
「パパ、ダメぇ~ ダメぇ~ キャキャキャ」
そう言いながら、悠人が陽一の上で飛び跳ねる。
「アハハハ、悠人パパを潰さないで―― で、今何時なの?」
陽一は、時計を見てビックリする。
「5時半だよ~ 2人とも朝起きだなぁ・・・・ママと同じだね」
「ママ!」
美来が嬉しいそうに叫ぶ。
「? マ・・マ?」
悠人は首を傾げた。
【もっと強くならないと】
陽一は、可愛い子供達を眺めながら、少し弱りそうになった心を引き締めると、いつもの呪文を唱えた。
0
あなたにおすすめの小説
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる