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5.You tend to do
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圭に呼び出された直人は、ディライトンプラザの従業員専用通路を抜けると、非常階段を重い足取りで上っていた。
ディライトンプラザは開店前だったため、建物中央にあるエスカレーターはまだ動いていなかったのだ。
「ふわ~ 俺は朝が弱いって知っているのに、何で朝のミーティングなんだよぉ ふわ~」
直人は、眠い目を擦りながら、何度もあくびをした。
郊外に住んでいる直人は、今朝も都内に到着するまでの電車の中で眠りに落ちていた。最近なかなか寝付けないため少し睡眠がとれたようだが、まだ足りない気がした。
圭に会うだけで特に気を遣う事もないと考えていた直人は、睡魔に襲われたままの面持ちで重い非常扉を押し開けると圭の店に向う。
「あ! やっと来たよ! おっそ――――い!」
圭の声が耳に届いた直人は半開きの目で顔を上げた。
【ドクン ドクン】
心臓が口から飛び出しそうになると、全身の血が一気に踊りだし、先程までの眠気が直人の身体から抜ける。
「・・・・よ・・うさん」
直人は、陽一の名前を溢すと圭の店前に辿り着くまでに立ち止まってしまう。
圭は、直人の動揺に顔から血の気が引いていくと、隣に立つ陽一を眺めた。
【まさか】
その場に数秒間の沈黙が流れる。
「・・・・あれ? 社長、橘をご存知なんですか?」
呆然と立ち尽くす直人を見ていた陽一の鼓膜に圭からの質問が響く。
「あ・・そうなんですよ。実は、中学と高校の時のバスケ部の後輩なんです」
圭は、陽一の応えが余りにも予想外だったため愕然とした。
『直人 ・・バスケットって』
「え? あっそうだったんですか? 僕知らなかったな。 ・・それなら前回のコラボイベントの時に教えてくださったら良かったのに」
「・・あ、そうだったね。申し訳ない」
陽一が言葉を選びながら応える姿に、圭の不安が形をなして現れた気がする。
直人は、KEYの店先で陽一が圭と会話をしている事に気が付くと、1つ深呼吸をして二人の元に歩みを進めた。
「遅いよ」
「ごめん。ここ遠いんだよ」
直人は、手を頭の後ろに回すと圭に謝りながらチラリと陽一に目を向ける。
「橘、久し振りだね。まだ実家に住んでいるんだ」
橘と呼ばれた直人は、陽一が圭に後輩だと告げたのだと察知する。
「・・あ・い澤先輩、本当にお久し振りです。でもどうしてここに? 圭と知合いなんですか?」
「え? 僕言ってなかったっけ? ま、僕も直人が結城社長の後輩だって知らなかったけどね。バスケやってたんだって?! そんな痩せぽっちで・・・・」
今、目の前に立つ直人は長身だが痩せ型だ。しかし、圭の脳裏に初めて直人に会った時の姿が浮かんだ。
『そっか・・・・そうだったんだ』
圭は心で呟いた。
「結城? 結城社長? って誰ですか?」
未だ話が読めない直人は尋ねる。
「・・?? え? この方だよ。直人の先輩」
「相澤先輩が結城社長?」
「相澤って?」
直人と圭、二人の頭上に大きなハテナマークが浮かぶ。
「あ、そうだよね。僕の苗字が変わったの知らないよね?」
直人と圭が、陽一に目を向けると同時に首を縦に振った。
「僕の母が再婚したので、相澤から結城に変わったんです」
陽一からの答えに直人と圭は合点のいった面持に変わる。
「そ・・・・そうだったんですか。ゆ・う・き社長・・」
「そう、ここディライトングループの社長だよ。直人ぉ・・このイケメンを雑誌で見た事ないの?」
「ここの社長・・」
「そう、結城社長がこうして、僕達若手アーティストに未来と希望を与えてくれているんだよ」
そう告げると圭は両手を広げ2階フロアーを意味した。
「そ・・・・そうだったんですね」
「そうだったんですよ! 前のコラボ企画も社長が後押ししてくれたから、あんなに大々的にここでイベントが出来たんだよ・・・・ほら、感謝して」
「そんな、田所さん大袈裟ですよ。二人の実力と才能があったからこそです。僕はそれにほんの少し色を付けた程度です」
「またまたぁ―― 僕がここまで有名になれたのも結城社長のお蔭です」
「そう言って貰えると遣り甲斐があります。今度のイベントも共に成功させましょうね!」
陽一は、ぐっと拳を握るとガッツポーズをした。
その姿が直人の脳裏に昔を蘇えらせた。
半袖の学生服に身を包んだ陽一は、校舎の廊下を歩いていた。
「あ―― 陽一、俺やっぱ今日は帰る。授業なんて、ま――――たく頭に入んねぇ。あ――畜生!」
陽一の少し後ろで歩いていた陸は、陽一の肩に手を置くと項垂れた。
「陽一、陸、たっしゃかぁ~」
廊下をダラダラと歩く二人の背後から聞き慣れた声で呼びかけられる。
「夾、徳ちゃん・・・・ たっしゃなわけないよぉ。決勝リーグまで行けたのに! もう少しで全国だったのに、うわ――――」
「陸ぅ・・・・ 俺等頑張ったじゃん。持ってる力全て出し切ったし、悔いはない!」
そう告げながら、バスケット部キャプテン徳田の目にも涙が溜まると、陽一を囲んで陸、夾と共に泣き出したのだ。
そう、陽一が所属するバスケット部は、地区予選の決勝リーグで敗れインターハイ出場を逃したのだ。
一通り泣いた後、スッキリしたように3人は同時に顔を上げる。
「じゃ、俺帰る」
「え、ええ―― 陸。じゃあ俺も帰ろっかな」
「おお、夾、一緒に俺ん家でゲームでもしようぜ」
「いいね~ 陽一と徳ちゃんは?」
廊下を歩き出した陸と夾の背後に陽一と徳田が続く。
陽一は、ふと外を眺めた。
今年は、春からあまり雨が降らず世間が水不足を心配し始めた頃、やっと昨夜から降り出した雨が、未だ止む気配を見せていなかった。
外を見つめる陽一に気付いた陸も窓の外に目を向けた。
「結構降ってんな~ これじゃあ、橘画伯も今日は、お休み―――――してねぇじゃん。あいつは馬鹿か!」
陽一は、陸と目を合わせる。
「ごめん。俺、ちょっと行って来る。陸、夾、帰るんだったら気を付けて。じゃあ、明日~」
そう告げると、陽一は足早に階段を駆け下りて行く。
残された3人は唖然としていたが、暫くして窓から下を覗くと、いつもの場所で傘を差しながら絵を描いている直人に近づく違う傘が見えた。
「陽一と橘っていつから、あんなに仲が良いんだ?」
徳田がポツリと疑問を口にした。
「中学ん時もバスケの後輩だったからな」
陸が応える。
「あいつのスリーポイントって陽一とそっくりだよな」
夾の意見に陸と徳田は同時に深く2度頷いた。
「橘って両刀遣いだよね」
傘を差した陽一がシートの上に座る直人の隣に立つと、直人のペンを動かす手が止る。
「先輩」
傘の下からひょっこりと直人の顔が出る。
「バスケも上手だけど、本当に絵が上手いよな」
「先輩達、今日はお休みだと思っていました」
「何で? あ、昨日負けたから?」
「・・・・ 僕・・本当に残念で・・・・」
直人が悔しさを身体全体に滲ませると、陽一は直人の隣にしゃがみ込んだ。
「徳田も言ってたけど、俺達全力を出し尽くしたし、そりゃあ悔しいけど意外とスッキリしてる・・・・あ、でも陸はまだ駄目みたいだけどね・・ ハハ」
「先輩・・」
「ま、2年生も任せられるくらい成長しているし、橘達1年も良いメンバーが揃っているしね。俺達3年は引退するけどさ、練習には時々顔を出すし、そん時はビシバシ指導するからね。まだまだ一緒に頑張ろうな!」
そう言うと、陽一は満面の笑顔で拳を胸の前に出すとガッツポーツをした。
直人の胸に熱い何かが飛び込んで来ると、心臓の鼓動が陽一の耳にも届くくらい大きく高鳴ったのだ。
「相澤先輩」
ディライトンプラザは開店前だったため、建物中央にあるエスカレーターはまだ動いていなかったのだ。
「ふわ~ 俺は朝が弱いって知っているのに、何で朝のミーティングなんだよぉ ふわ~」
直人は、眠い目を擦りながら、何度もあくびをした。
郊外に住んでいる直人は、今朝も都内に到着するまでの電車の中で眠りに落ちていた。最近なかなか寝付けないため少し睡眠がとれたようだが、まだ足りない気がした。
圭に会うだけで特に気を遣う事もないと考えていた直人は、睡魔に襲われたままの面持ちで重い非常扉を押し開けると圭の店に向う。
「あ! やっと来たよ! おっそ――――い!」
圭の声が耳に届いた直人は半開きの目で顔を上げた。
【ドクン ドクン】
心臓が口から飛び出しそうになると、全身の血が一気に踊りだし、先程までの眠気が直人の身体から抜ける。
「・・・・よ・・うさん」
直人は、陽一の名前を溢すと圭の店前に辿り着くまでに立ち止まってしまう。
圭は、直人の動揺に顔から血の気が引いていくと、隣に立つ陽一を眺めた。
【まさか】
その場に数秒間の沈黙が流れる。
「・・・・あれ? 社長、橘をご存知なんですか?」
呆然と立ち尽くす直人を見ていた陽一の鼓膜に圭からの質問が響く。
「あ・・そうなんですよ。実は、中学と高校の時のバスケ部の後輩なんです」
圭は、陽一の応えが余りにも予想外だったため愕然とした。
『直人 ・・バスケットって』
「え? あっそうだったんですか? 僕知らなかったな。 ・・それなら前回のコラボイベントの時に教えてくださったら良かったのに」
「・・あ、そうだったね。申し訳ない」
陽一が言葉を選びながら応える姿に、圭の不安が形をなして現れた気がする。
直人は、KEYの店先で陽一が圭と会話をしている事に気が付くと、1つ深呼吸をして二人の元に歩みを進めた。
「遅いよ」
「ごめん。ここ遠いんだよ」
直人は、手を頭の後ろに回すと圭に謝りながらチラリと陽一に目を向ける。
「橘、久し振りだね。まだ実家に住んでいるんだ」
橘と呼ばれた直人は、陽一が圭に後輩だと告げたのだと察知する。
「・・あ・い澤先輩、本当にお久し振りです。でもどうしてここに? 圭と知合いなんですか?」
「え? 僕言ってなかったっけ? ま、僕も直人が結城社長の後輩だって知らなかったけどね。バスケやってたんだって?! そんな痩せぽっちで・・・・」
今、目の前に立つ直人は長身だが痩せ型だ。しかし、圭の脳裏に初めて直人に会った時の姿が浮かんだ。
『そっか・・・・そうだったんだ』
圭は心で呟いた。
「結城? 結城社長? って誰ですか?」
未だ話が読めない直人は尋ねる。
「・・?? え? この方だよ。直人の先輩」
「相澤先輩が結城社長?」
「相澤って?」
直人と圭、二人の頭上に大きなハテナマークが浮かぶ。
「あ、そうだよね。僕の苗字が変わったの知らないよね?」
直人と圭が、陽一に目を向けると同時に首を縦に振った。
「僕の母が再婚したので、相澤から結城に変わったんです」
陽一からの答えに直人と圭は合点のいった面持に変わる。
「そ・・・・そうだったんですか。ゆ・う・き社長・・」
「そう、ここディライトングループの社長だよ。直人ぉ・・このイケメンを雑誌で見た事ないの?」
「ここの社長・・」
「そう、結城社長がこうして、僕達若手アーティストに未来と希望を与えてくれているんだよ」
そう告げると圭は両手を広げ2階フロアーを意味した。
「そ・・・・そうだったんですね」
「そうだったんですよ! 前のコラボ企画も社長が後押ししてくれたから、あんなに大々的にここでイベントが出来たんだよ・・・・ほら、感謝して」
「そんな、田所さん大袈裟ですよ。二人の実力と才能があったからこそです。僕はそれにほんの少し色を付けた程度です」
「またまたぁ―― 僕がここまで有名になれたのも結城社長のお蔭です」
「そう言って貰えると遣り甲斐があります。今度のイベントも共に成功させましょうね!」
陽一は、ぐっと拳を握るとガッツポーズをした。
その姿が直人の脳裏に昔を蘇えらせた。
半袖の学生服に身を包んだ陽一は、校舎の廊下を歩いていた。
「あ―― 陽一、俺やっぱ今日は帰る。授業なんて、ま――――たく頭に入んねぇ。あ――畜生!」
陽一の少し後ろで歩いていた陸は、陽一の肩に手を置くと項垂れた。
「陽一、陸、たっしゃかぁ~」
廊下をダラダラと歩く二人の背後から聞き慣れた声で呼びかけられる。
「夾、徳ちゃん・・・・ たっしゃなわけないよぉ。決勝リーグまで行けたのに! もう少しで全国だったのに、うわ――――」
「陸ぅ・・・・ 俺等頑張ったじゃん。持ってる力全て出し切ったし、悔いはない!」
そう告げながら、バスケット部キャプテン徳田の目にも涙が溜まると、陽一を囲んで陸、夾と共に泣き出したのだ。
そう、陽一が所属するバスケット部は、地区予選の決勝リーグで敗れインターハイ出場を逃したのだ。
一通り泣いた後、スッキリしたように3人は同時に顔を上げる。
「じゃ、俺帰る」
「え、ええ―― 陸。じゃあ俺も帰ろっかな」
「おお、夾、一緒に俺ん家でゲームでもしようぜ」
「いいね~ 陽一と徳ちゃんは?」
廊下を歩き出した陸と夾の背後に陽一と徳田が続く。
陽一は、ふと外を眺めた。
今年は、春からあまり雨が降らず世間が水不足を心配し始めた頃、やっと昨夜から降り出した雨が、未だ止む気配を見せていなかった。
外を見つめる陽一に気付いた陸も窓の外に目を向けた。
「結構降ってんな~ これじゃあ、橘画伯も今日は、お休み―――――してねぇじゃん。あいつは馬鹿か!」
陽一は、陸と目を合わせる。
「ごめん。俺、ちょっと行って来る。陸、夾、帰るんだったら気を付けて。じゃあ、明日~」
そう告げると、陽一は足早に階段を駆け下りて行く。
残された3人は唖然としていたが、暫くして窓から下を覗くと、いつもの場所で傘を差しながら絵を描いている直人に近づく違う傘が見えた。
「陽一と橘っていつから、あんなに仲が良いんだ?」
徳田がポツリと疑問を口にした。
「中学ん時もバスケの後輩だったからな」
陸が応える。
「あいつのスリーポイントって陽一とそっくりだよな」
夾の意見に陸と徳田は同時に深く2度頷いた。
「橘って両刀遣いだよね」
傘を差した陽一がシートの上に座る直人の隣に立つと、直人のペンを動かす手が止る。
「先輩」
傘の下からひょっこりと直人の顔が出る。
「バスケも上手だけど、本当に絵が上手いよな」
「先輩達、今日はお休みだと思っていました」
「何で? あ、昨日負けたから?」
「・・・・ 僕・・本当に残念で・・・・」
直人が悔しさを身体全体に滲ませると、陽一は直人の隣にしゃがみ込んだ。
「徳田も言ってたけど、俺達全力を出し尽くしたし、そりゃあ悔しいけど意外とスッキリしてる・・・・あ、でも陸はまだ駄目みたいだけどね・・ ハハ」
「先輩・・」
「ま、2年生も任せられるくらい成長しているし、橘達1年も良いメンバーが揃っているしね。俺達3年は引退するけどさ、練習には時々顔を出すし、そん時はビシバシ指導するからね。まだまだ一緒に頑張ろうな!」
そう言うと、陽一は満面の笑顔で拳を胸の前に出すとガッツポーツをした。
直人の胸に熱い何かが飛び込んで来ると、心臓の鼓動が陽一の耳にも届くくらい大きく高鳴ったのだ。
「相澤先輩」
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