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第12話: 闇の騎士
しおりを挟むリリスを助けた翌日、
彼女は私たちの寮で目を
覚ました。
「……ここは?」
ベッドの上で目を
こすりながら、リリスは
ゆっくりと周囲を見渡す。
「おはよう、リリス。
もう大丈夫?」
私は彼女の枕元に
座りながら、優しく声を
かけた。
「アハバ……?
ええ、なんとか。でも、
まだ少し体が重いわ」
「無理しないでね。
昨日までずっと地下書庫に
閉じ込められてたんだから」
「ありがとう。アハバが
助けてくれなかったら、
私はずっとあの場所に
いたかもしれない……」
リリスは申し訳なさそうな
顔をしたが、私は微笑んで
首を振った。
「そんなことないよ。
リリスはこれから自由だよ!」
「ふふっ……アハバって、
本当に優しいのね」
リリスがほっとしたように
微笑むと、部屋の扉がノック
された。
「お邪魔するよ」
入ってきたのはナタンと
エリアスだった。
「調子はどうだい?」
ナタンが優しく尋ねると、
リリスは少し緊張した様子で
頷いた。
「ええ、だいぶ楽になったわ」
「よかった。それで……
リリス、君は一体何者なんだ?」
エリアスが少し真剣な表情で
尋ねた。
「……ごめんなさい。
私、自分の記憶が曖昧なの」
「記憶が?」
「ええ。私はただ、
地下書庫のあの部屋にいたこと
しか覚えていなくて……。
なぜそこにいたのか、
どうして封印されていたのかも、
全くわからないの」
「なるほど……」
ナタンとエリアスが顔を
見合わせる。
「とにかく、もう少し休んだ
ほうがいい。記憶が戻るかも
しれないしね」
「ありがとう、ナタン」
その日の夜。
私はリリスを休ませた後、
寮の屋上に出て夜風を
浴びていた。月が静かに輝き、
星々が美しく瞬いている。
「……アハバ?」
振り向くと、
そこにはエリアスが立っていた。
「エリアスさん……?」
「君がここにいると思ってね。
リリスのことが気になって
いるんだろう?」
「うん……彼女がどうして
封印されていたのか、
考えれば考えるほど
不思議で……」
「確かに、
あれは普通の封印では
なかった。
おそらく強い魔力を持った
誰かが仕掛けたものだろう」
「強い魔力……」
「それに、
気になることがもう一つある」
「気になること?」
エリアスは少し真剣な顔
になり、夜空を見上げながら
言った。
「……地下書庫の封印が解かれた
と同時に、王国の結界に異変が
起きたらしい」
「異変って……?」
「結界の力が少し弱まったんだ。
つまり、何か外部からの干渉を
受けている可能性がある」
エリアスの言葉に、
私は息をのんだ。
「まさか、それって……
リリスの封印と関係が?」
「可能性は高い。だから、
彼女の記憶が戻るまでは
慎重に動いた方がいい」
「うん……」
私が考え込んでいると、
突然――
「アハバ!!」
イリーナの叫び声が
寮の方から響いた。
「イリーナ!?」
私とエリアスはすぐに
駆け出した。
寮の部屋に戻ると、
そこには黒いローブを纏った
男が立っていた。
リリスのベッドの傍らで、
彼女をじっと見下ろしている。
「……誰?」
私は思わず身構えた。
「フッ……お前がアハバか」
男はゆっくりと私を見た。
その目は暗闇のように冷たく、
底知れない力を感じさせた。
「誰なの!?
ここで何をしてるの!」
「私は“闇の騎士”……
リリスを迎えに来た」
「迎えに?」
「彼女はもともと
王国の者ではない。
封印が解けた今、
彼女を元の場所に
戻さなければならない」
「元の場所……?
それってどこ?」
「それを知る必要はない。
お前たちには
関係のないことだ」
男はリリスの腕を
掴もうとする。
「待って!!」
私はすぐに前に
立ちはだかった。
「リリスはまだ記憶を
取り戻していないの!
彼女が何者なのかも
わからないのに、
勝手に連れて行くなんて
許さない!」
「愚かな……」
男は低く呟き、
次の瞬間――
ズンッ!
圧倒的な魔力が放たれ、
私は吹き飛ばされそうに
なった。
「くっ……!」
「アハバ!!」
エリアスが
素早く私を支えた。
「こいつ……
只者じゃないな」
「エリアス、アハバを頼む」
ナタンが男の前に
立ちはだかった。
「ほう、お前がこの王国の
“白銀の騎士”か」
「称号などどうでもいい。
ただし――」
ナタンは鋭い目を
しながら剣を構える。
「リリスを連れて行かせる
わけにはいかない」
「フッ、面白い……」
闇の騎士は黒い剣を
取り出し、ナタンと対峙した。
次の瞬間、激しい剣撃が
交わされた。
「ナタンさん……!」
私は息をのむ。
ナタンは冷静に攻撃を
受け流しながら、確実に
カウンターを狙っている。
だが、闇の騎士もまた
強敵だった。
「これ以上、
手間をかけるわけには
いかんな」
闇の騎士がそう呟くと、
突然、空間が歪んだ。
「な、何!?」
次の瞬間、
リリスの体が浮かび上がった。
「やめて!!」
私は咄嗟に彼女の手を掴んだ。
「……アハバ……」
リリスの目が一瞬光ったかと
思うと――
ドンッ!!
強烈な光が部屋中に広がり、
闇の騎士が弾き飛ばされた。
「ぐっ……!?」
男は苦しげに唸りながら、
歯を食いしばった。
「なるほど……やはり、
貴様は……!」
そう言い残すと、
男は闇に溶けるように
姿を消した。
私はリリスの手を
しっかりと握りしめたまま、
彼女を見つめる。
「リリス……?」
「……アハバ、ありがとう。
でも、私……」
彼女の表情は悲しげだった。
「私、思い出しそう……
自分が何者なのか……」
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