[完結]恋よりモフモフ優先です! でも氷の王子が 離れてくれません

桃源 華

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第13話: 失われた記憶

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「……私、思い出しそう……
自分が何者なのか……」
リリスの言葉が静かな部屋に
響いた。緊迫した空気が私たちを
包み込む中、私はリリスの手を
握り返した。

「思い出せそうって……
どういうことなの?」
 私が尋ねると、リリスは
少し戸惑った表情を浮かべた。

「はっきりとは
思い出せないけれど……
ただ、さっきの“闇の騎士”
の声を聞いたとき、
胸の奥がズキッと痛んだの。
あの人を、どこかで
知っている気がする……」

「知っている? あの男を?」
 ナタンが眉をひそめる。

「ええ……でも、
それがいい記憶なのか、
悪い記憶なのかも
わからないわ……」
 リリスは困惑したように
視線を落とした。

「無理に思い出す必要はないよ」
 私はリリスの肩にそっと
手を置いた。

「今はまだ、
ゆっくりでいいから。
思い出したくなったときに、
少しずつでいいんだよ」

「……ありがとう、アハバ」
 リリスは少し微笑んだが、
その目にはまだ不安が
残っている。

「それにしても……あの男、
一体何者なんだろう?」
 イリーナが腕を組んで
考え込んだ。

「“闇の騎士”なんて名前、
これまで聞いたことがないな」
 エリアスも真剣な表情で
考え込む。

「もしかして、
どこかの国の隠された
存在なのかしら?」

「あり得るな……
王国の外にも、まだ知られて
いない勢力が潜んでいる
可能性はある」
 ナタンが冷静に分析する。

「いずれにせよ、
リリスの記憶が戻れば、
もっとはっきりするはずだ。
焦らず状況を見守ろう」

その後、私たちはリリスを
再びベッドで休ませること
にした。部屋の明かりを落とし、
そっと扉を閉じる。

廊下を歩きながら、
エリアスが口を開いた。
「アハバ、
君は本当に勇気があるな」

「えっ?」
 突然褒められ、
私は驚いて立ち止まった。

「さっきもあの騎士の前で
堂々と立ち向かっていた。
普通なら恐怖で動けなく
なるはずなのに、
君は自分よりリリスのことを
優先した」

「そ、そんなこと……
私はただ、リリスを
守りたかっただけだよ」

「それがすごいんだよ。
君のその勇気と優しさが、
周りの人を引き寄せているんだ」
 エリアスは真っ直ぐな目で
私を見つめてきた。

「……ありがとう、
エリアスさん」

「それに、君の魔力もかなり強い。
もしかしたらリリスの記憶を
取り戻すカギになるかも
しれないな」

「私の魔力が……?」
 そんなことを言われたのは
初めてだった。自分では
特別な力なんて持っていると
思っていなかったけれど……。

翌日、私たちは魔法学園の先生
にも相談することにした。

「リリスさんの
記憶喪失ですか……そして
“闇の騎士”が現れた、と?」
 先生は難しい顔をしながら
話を聞いていた。

「ええ。彼女が何者なのか
調べる方法はないでしょうか?」
 ナタンが尋ねると、
先生は本棚から一冊の古びた
書物を取り出した。

「古い伝承の中に似たような
話があるんです。
『光と闇の戦い』という伝説です」

「光と闇の戦い……?」
 私たちは顔を見合わせた。

「ええ。かつて、
王国を守る“光の巫女”と、
彼女を狙う“闇の騎士”との
戦いがあったと言われています。
もしリリスさんがその巫女に
関係しているのだとしたら、
記憶を取り戻すことで
大きな力を発揮するかも
しれません」

「巫女……まさか、
リリスがその“光の巫女”なの?」
 イリーナが驚きの声を上げた。

「可能性は否定できません。
ですが、彼女の記憶が戻らない
限り真実はわかりませんね」

「記憶を取り戻す方法は
ないんですか?」
 私は焦る気持ちを抑えながら
尋ねた。

「方法はあります。
ただし、リスクも伴いますよ」

「リスク?」

「彼女の潜在意識に
直接働きかける魔法を
使う方法です。ただし、
失敗すれば記憶だけでなく、
精神に影響を及ぼす
可能性もある」

「……そんな危険なこと……」
 私は戸惑った。
リリスのことを考えると、
簡単にその方法を選ぶわけには
いかない。

「無理に記憶を取り戻すのは
やめたほうがいいかも
しれないな」
 ナタンが慎重な口調で言った。

「でも、もしまた闇の騎士が
現れたら……
リリスが危険に晒されるわ!」
 イリーナが強く反論する。

「そうだね……
どちらが正しい選択なのか、
慎重に考えるべきだ」
 エリアスも同意した。

その夜、私はリリスのそばで
寝顔を見守りながら思った。
「リリスが笑顔で過ごせる
未来を守りたい……
そのためにはどうすれば
いいんだろう?」

その時、
リリスが小さく呟いた。
「……アハバ……助けて……」

「リリス?」
 思わず彼女の手を握ると、
リリスの目がゆっくりと開いた。

「アハバ……夢の中で、
光に包まれた場所が
見えたの……そこに行けば、
きっと何か思い出せる
気がする……」

「光に包まれた場所?」

「ええ……でも、
それがどこなのか、
まだはっきりとは
わからないの……」

「大丈夫。
絶対に見つけよう、一緒に!」
 私はリリスに強く頷いた。

「……ありがとう、
アハバ。あなたがいてくれて、
本当によかった……」
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