[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

文字の大きさ
58 / 61
第五章:畑と未来と、ちょっぴり成長

第47話:ミュリ、料理再チャレンジ!?レオン、また胃痛

しおりを挟む
「見ててにゃ、レオン! 今日こそ、
あたしが主役にゃ!」

朝、村の台所に高らかに響き渡る
猫耳少女ミュリの声。
しっぽをブンブン振り回し、
気合はMAXだ。

「ミュリ……またか……」

レオンは、そっと胸のポケットから
胃薬を取り出した。
過去の料理戦績――惨敗、激痛、
謎の発光物。今回も不安しかない。

「今回はにゃ、ひみつのスパイス
も使うにゃ!」

「それ、どこから拾ってきた!? 
いや、なんで発光してる!?」

「安心にゃ! 昨日スイの畑で採れた
謎のキノコにゃ!」

「だから不安だって言ってんだよ!!」

ミュリは鍋にその“キノコもどき”を
ポンッと投入。
ジュワァァ……と怪しげな音が鳴った
かと思うと、鍋の中から泡がブクブク。

「レオン、いい匂いしてきたにゃ! 
あと三分で完成にゃ!」

「三分後、台所が爆発するフラグ
やめろ……!」

レオンが静かに後ろへ下がろうと
すると、

「逃げたらしっぽで引っぱたく
にゃっ!」

「完全に猫らしい暴力宣言だな!?」

🐈🐾 🐾 🐾

そして三分後。

「できたにゃあああああっ!」

ミュリが鍋のフタを取った瞬間――

ボワッ!! と紫の煙が立ち込めた。
その中から、なにやらぬるりと出てくる……謎の粘体。

「……今、鍋から生き物出なかったか?」

「それが“うま味くん”にゃ!」

「名前つけてるぅ!?!? いや、
そいつ動いてるんだけど!?」

「きっとスパイスの精霊にゃ。
スイが言ってたもん。“水やると
元気になる”って」

「野菜じゃねぇからそれ!!」

🐈🐾 🐾 🐾

そして問題の料理が、レオンの前
に出された。

……黒い。しかも……うっすら光っている。

「さぁ、食べるにゃ。今日はレオンに、ミュリの成長を見せるにゃっ!」

「見せなくていいよぉおお……って
顔が完全に期待に満ちてる!! 
逃げられないパターンだこれ!!」

観念したレオンは、
スプーンで一口……。

もぐもぐ。

……ピリリッとした辛味。
かと思えば甘み。そして謎の……
“跳ねる”ような食感。

「……なんだこの味……?」

「成功にゃ!?」

「いや、胃が……胃が……
うおおおおっ!?!?」

レオン、崩れ落ちる。

「レオーーーン!? にゃあああ、
毒だったのかにゃ!?」

「毒じゃ……ない……たぶん……。
でも胃袋が今、マジで反乱起こし
てる……」

そのとき。

「おぉ……なんか、力が湧いて
きた……!?」

レオンの顔色が戻り、むしろ
テンションが上がってくる。

「なんだこれ!? 腹は痛いけど
元気が……!?」

そこへノアがふらっと現れた。

「ふむ、スパイス性覚醒型
強化食品か……。これは記録して
おく」

「待て待て! これを“強化食品”
と呼ぶのは誤解を生むぞ!」

「レオン、元気になってるから
セーフにゃ!」

「全然セーフじゃないのよ!? 
胃は今、戦場だよ!? 
現在進行形で胃壁がヒリヒリ
言ってるんだよ!?」

🐈🐾 🐾 🐾

一方その頃、チャチャがキッチン
に駆け込んできた。

「なにこの香り!? ハーブなの!? 
それとも事故!?」

「両方にゃ!」

「まじか!! ちょっと食べてみる!!」

「チャチャ!? 待て、止め――」

もぐもぐ。

「……ぴぎゃああああっ!? なにこれ!? でも元気でるーーーっ!?!?」

「やっぱり副作用付きだったーーーっ!!」

🐈🐾 🐾 🐾

夕方、ミュリはしょぼんとした顔で、
耳をぺたんと垂らしていた。
しっぽもだらんと床に。

「やっぱり、料理向いてないのか
にゃ……」

「……ミュリ」

レオンはそっとミュリの頭に手を置く。

「確かに……味は、胃に来た。でも」

「でも?」

「ちょっとだけ、元気にはなった。
お前の料理でな」

「……にゃっ……」

「それって、すごいことだよ。
ちゃんと“ミュリのスパイス”が
効いたってことだ」

「レオン……」

「……だから今度は、ちゃんと
火通してな? 生き物が出て
こないように」

「う、うんっ!」

ミュリの耳がピンと立ち、
しっぽが再びブンブン回り始めた。

🐈🐾 🐾 🐾

その夜、村の掲示板にはまた
一枚の試食レポートが追加されて
いた。

『ミュリの料理・第33号』
・鍋から生き物出た
・胃は死んだ
・でも気力はみなぎった
→謎の復活効果あり。
次回作に期待(by レオン)

こうして、ミュリの料理修行は、
まだまだ続くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。

黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた! 「この力があれば、家族を、この村を救える!」 俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。 「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」 孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。 二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。 優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

追放勇者の土壌改良は万物進化の神スキル!女神に溺愛され悪役令嬢と最強国家を築く

黒崎隼人
ファンタジー
勇者として召喚されたリオンに与えられたのは、外れスキル【土壌改良】。役立たずの烙印を押され、王国から追放されてしまう。時を同じくして、根も葉もない罪で断罪された「悪役令嬢」イザベラもまた、全てを失った。 しかし、辺境の地で死にかけたリオンは知る。自身のスキルが、実は物質の構造を根源から組み替え、万物を進化させる神の御業【万物改良】であったことを! 石ころを最高純度の魔石に、ただのクワを伝説級の戦斧に、荒れ地を豊かな楽園に――。 これは、理不尽に全てを奪われた男が、同じ傷を持つ気高き元悪役令嬢と出会い、過保護な女神様に見守られながら、無自覚に世界を改良し、自分たちだけの理想郷を創り上げ、やがて世界を救うに至る、壮大な逆転成り上がりファンタジー!

処理中です...