[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第二章:猫耳チームとハーブ革命

第19話辛すぎた友情と唐辛子

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「にゃぁああああっ! か、か、辛い~~っ!!」

ミュリの叫び声が朝の畑に響き渡った。

「なにごとだ!? 火でもついたか!?」

レオンが鍬を放り投げて駆けつけると、そこには顔を真っ赤にして転がるミュリと、心配そうに見守るビビの姿が。

「レオン! ミュリが、ミュリが唐辛子を……そのまま丸かじりしたにゃ!」

「なぜそんな愚行をっ!?」

「にゃ、にゃんかねっ、赤くて、ぴかぴかしてて、おいしそうに見えたのにゃあ~っ……!」

「いや、色で判断しちゃいかん……あれは“見るからに危ないやつ”だろ」

レオンはため息をつきながら、水筒を取り出してミュリに手渡す。だがミュリは受け取った水を口に含んだ瞬間――

「ぺっ! にゃんでミント水なのにゃああ!? 余計ヒリヒリするぅぅぅ!!」

「わ、悪い! 今朝のハーブ実験で冷やしミント水にしたんだった!」

「ミントで口の中スースー、でも唐辛子でファイヤー! 地獄にゃ!」

「それは……“激辛地獄のミント爆風バージョン”だな」

「そんなバージョンいらないにゃああ!」

ビビはというと、隣で「うわ~、すごい。火ふいてるっぽい~!」と楽しげに見ている。

「ビビ、なんで止めなかったんだ?」

「え? ミュリが“いける気がする”って言ってたし、面白そうだったから☆」

「いや、それで火傷したらどうすんの……!」

そこへスイが、無言でジョウロを持ってやってきた。

「……水、あげた」

「畑じゃないからね!? ミュリの顔に水やるなーっ!」

ジョウロの冷水を思い切りぶっかけられたミュリが、「ふにゃっ!」と奇声を上げながら、しっぽをぶんぶん振り回す。

「スイぃ~! ちょっと冷たいけど、今は感謝にゃ~……!」

「……そう」

スイはそれだけ言ってすたすたと去っていった。無駄なことは一切言わない、ある意味ミュリの正反対の存在である。

「ったく、最近は唐辛子の収穫も増えてきたからって、調子に乗って生食なんて……。誰だよ、あんなに育てたのは」

「わたしにゃ!!」

「元気だな……もう治ったのか?」

「辛すぎて、逆に覚醒したにゃ……!」

「そのまま暴走しそうで怖いわ」

そこへ、白猫耳のノアがやってきた。例によって無表情だが、手には分厚いノート。

「ふむ、ミュリの激辛耐性実験、第一フェーズ完了だな。これは記録しておく」

「ちょっと待て、いつのまに“実験”にされたのにゃ!?」

「観察対象として君ほど優秀なドジっ娘はいない。貴重な研究資料だ」

「研究すなーっ!」

ミュリがじたばたと足をばたつかせると、ノアはひらりと避けながらもメモを取る手を止めない。

「なお、副作用:語彙崩壊。継続観察の必要あり」

「ミュリはサンプルじゃないにゃああ!」

一方その頃、村の片隅ではリンが静かに唐辛子を干していた。

「……まさか、ミュリがまた生で食べるとはね」

「べ、別に心配してるわけじゃないんだからねっ! ……でも、今度はちゃんと辛さ控えめのやつも混ぜておこうかな」

炎の料理担当リンは、内心ミュリの暴走が心配でならなかったが、素直になれないのがツンデレの性。

「“ハーブ・フレア”の制御訓練もしないと……また畑焦がしたら、レオンに怒られるし……」

そう、リンの“火属性ハーブ”調合失敗もまた、しばしば被害を広げていた。

🐈🐾 🐾 🐾

そして夜。レオンの家では、ミュリが唐辛子の反省会を開いていた。

「うう……やっぱり唐辛子は怖いのにゃ。でも……味は嫌いじゃないかも……?」

「またやる気か!? やめとけ!」

「でも、スパイスとしての可能性は無限にゃ……。あ、ビビ! あれ! 唐辛子とハチミツ混ぜたらどうなるか試してみようよ!」

「おお~☆ 甘辛ハニー! いいじゃん、やってみよ~♪」

「おい、また実験か!? レオンの台所を巻き込むなよ!」

「その前に、ノアに副作用予測させる
にゃ! 安全第一!」

「むしろ危険が増してる気がするが……?」

ノアは既にメモ帳を開いていた。

「次の記録:『甘辛スパイス・カオス計画』。これも記録しておく」

「レオン~、今度こそ成功するにゃ~!」

「いやな予感しかしないが……まぁ、また倒れたら、スイに水かけてもらえ」

「にゃっはっは! わたしのしっぽは火も水も恐れないのにゃ~!」

ぶんぶんぶんとしっぽを振りながら、ミュリは新たな辛味スパイスの夢に突き進んでいく――

その背中を、今日もレオンはそっとため息まじりで見守るのだった。
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