[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第三章:村祭りと屋台戦争

第22話:試作その1:甘くてしょっぱくて辛い菓子

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「にゃにゃにゃーん!! 完成したにゃー!!」

朝から台所に響くミュリの叫び。
いや、雄叫び。

「……また何か作ったのか」

俺ことレオンは、朝のコーヒーを淹れていた手を止めた。どうせ、ろくでもない。

「ふっふっふ。レオン、ついにあたし、究極の味を生み出したにゃ!」

「お前の“究極”って、たいてい胃薬付きなんだが」

「失礼なっ! 今回のは違うにゃ。テーマは……」

ミュリが目をキラーンと光らせた。

「甘くて! しょっぱくて! 辛いお菓子!!」

「ぜんぶ足しただけじゃねーか!」

🐈🐾 🐾 🐾

猫耳たちがぞろぞろと居間に集合してきた。すでに異臭が漂っている。

「……また何か暴走してるな」

チャチャが呆れ顔で腕を組む。

「レオン、逃げるなら今よ。あたしはドアを開けておくから」

「いや、逃げるなよ! 応援してくれてもいいにゃ!」

「ミュリ、お菓子って、ふつう甘いだけじゃないの?」

ビビが鼻をひくひくさせながら首をかしげる。すでに口元にチョコレートらしきものがついている。

「ビビ、それもう食べたのか!?」

「うん! なにこれ、おいし……くないけど……クセになるかも☆」

「おいしくないんかい!!」

「……しょっぱかった。あと、のどの奥がピリってした」

スイがぽつりと呟く。

「ピリ!? スイが言うって、相当だぞ!?」

「いやいや、だってね、これよ?」

ミュリが誇らしげに皿を差し出した。

そこには謎の三層構造スイーツが乗っていた。

一層目:キャラメル。
二層目:塩昆布らしき黒いなにか。
三層目:赤いペースト(たぶん唐辛子)。

「……何がしたいんだよ、これは」

「甘じょっぱ辛い革命菓子にゃ!」

「革命起きる前に滅びる味だぞ」

🐈🐾 🐾 🐾

ノアが眼鏡を押し上げて、皿をじっと見ていた。

「ふむ……この三味の融合、理論上は面白い。興味深い」

「おお、ノアが食いついた!」

「ただし、味の安定性とバランスが壊滅的だ。摂取後の副作用も未知数」

「それは評価じゃなくて警告だぞ!」

「……チャチャ、食べてみて」

「えっ!? な、なんであたしが!?」

「一番リアクションが面白いからじゃない?」

ビビがにこにこしながら追い打ちをかける。

「ほ、本当に食べるわよ!? ほら、べ、別に怖くなんてないんだから!」

チャチャはフォークでひとかけらを取り、勢いよく口に放り込んだ。

――数秒後。

「……ぶへっ!! な、なにこれ!? 脳が甘いのか辛いのか混乱して爆発しそうなんだけど!!」

「成功だにゃ!」

「いや失敗だろコレ!!!」

🐈🐾 🐾 🐾

「というわけで、試作その1、レオンにも食べてほしいにゃ!」

「断る」

「えええぇぇ!? せっかくレオンのために作ったのにぃぃ!」

「俺に恨みでもあるのかお前は」

「このお菓子が広まれば、村の名物になるにゃ! “三位一体ねこみみ菓子”って名前も考えたにゃ!」

「三つの味で戦争が起きそうなネーミングだな」

ノア:「“ねこみみ菓子”の響きは悪くないが、商品化は難航するだろう。特に胃腸的に」

「胃腸的ってなんだよ!」

「スパイスも配合したし、ビタミンもあるし、もしかして……完全栄養食では!?」

「食べやすさをまず考えようぜ!」

「じゃあ改良案出してにゃ。どうしたら、これをもっとおいしくできるか!」

🐈🐾 🐾 🐾

「キャラメルと塩昆布がまず合わないと思うんだが」

「えっ……そこ?」

「いや、そこがすべての原因だと思うが」

「じゃあ昆布をチーズに?」

「いっそ昆布を取って、チーズとキャラメルにして、唐辛子を……外そうか」

「全部変わってるにゃああああ!」

🐈🐾 🐾 🐾

数時間後――

「できたにゃ! 『ふつうにうまい甘じょっぱスナック』完成にゃ!」

「ようやく“普通”になった……!」

「うまい! ちゃんとおいしい! 普通ってすごい!」

「ふっふっふ……これが“試作その2”にゃ!」

チャチャ:「待って、結局、試作その1は黒歴史扱い!?」

スイ:「……でも、ちょっとクセになった」

ノア:「記録しておく」

ビビ:「ふへへ、また食べたいー☆」

レオン:「もう、誰か止めてくれ」

こうして、「甘くてしょっぱくて辛い菓子」は、村の“伝説”として封印されたのだった。
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