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第四章:スパイスの旅と異世界の謎
第39話レオンと猫耳たちの大鍋作戦
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「よーし! 今日は――大鍋だ!」
レオンの力強い掛け声と共に、村の広場に集まった猫耳娘たちが一斉に反応した。
「おおーっ! レオンさんの気合、今日もビンビンですねっ!」
テンションMAXのビビが、泥だらけの手で謎の雑草を掲げる。
「……それ、料理に使うやつじゃないぞ、ビビ」
「え!? ちがった!? うそぉ!? じゃあこれ、なに草っ!?」
「見たことない草だな。たぶん、触ると痒くなるやつだ」
「ギャーッ!」
レオンが目を細めて遠巻きにしていると、ミュリがバタバタと駆けてきた。
「レオン! 鍋に入れるスパイスはばっちり準備したにゃ!」
「ミュリが準備……? あー……そっか、うん、ありがとう。あとで確認だけさせてもらっていいか?」
「……あれ? なんで今、ちょっと引いた顔したにゃ……?」
ミュリの耳がしょぼんと垂れ、尻尾もだらんと力なく落ちた。
「いやいや、期待してるんだ。期待……してるよ? うん、ホントだよ?」
「にゃんで疑問形なのにゃ!」
今日のテーマは「村のごちそう大鍋祭り」。猫耳娘たちがそれぞれの得意分野を活かして材料を集め、レオンがまとめて調理するという大イベントだ。
「ノアは調合どうだ?」
「分析完了。ローズマリーとタイムのブレンド比率は理論的に完璧。だが――」
ノアがメガネをクイッと上げ、淡々と続ける。
「ミュリの持ってきた“謎スパイス”は、正直、未知の危険物に等しい」
「それはちがーう! ちゃんと“にゃんこスパイスブレンドNo.9”って名前があるにゃ!」
「名前の問題ではない」
「えー……!」
「ま、まぁまぁ。危険な香りがするってだけで、実際は使ってみないとわからんだろ? なぁ、チャチャ」
「えっ、私!? ど、どうせなら燃える味とか出してほしいけど……焦がすのは私の仕事だから!」
「……お前は火を出しすぎなんだよ、畑を何度焦がしたと思ってる……」
レオンが頭を抱える中、スイがふらりとやってきた。
「……水、入れといた」
「おお、ありがとうスイ! あれ、でも鍋の水量……めっちゃ完璧じゃないか?」
「……見た」
「見た!?」
「……鍋の気持ち」
「こわいこわいこわい! スイって実はめっちゃすごいやつだよな!」
そのとき、リンが木箱を抱えて登場した。例によって目はそっぽを向いている。
「べ、別にレオンのために根菜掘ってきたわけじゃないんだからっ!」
「おおー、ありがとう! リンはほんと頼りになるな!」
「なっ……! ちょ、ちょっと、調子に乗らないでよねっ!」
リンの尻尾がびゅんびゅん振り回されている。ツンデレモード、全開だ。
こうして材料も調ったところで、大鍋に火が入れられた。
「うおおお……でっかい鍋ってだけでワクワクするなぁ!」
「レオン、これはどんな料理になるにゃ?」
「そうだな……いろんな村の味を詰め込んだ、“猫耳鍋”って感じか」
「な、名前がちょっと怖いにゃ!」
「え、ミュリたち、入るの!?」
「いや違うから!」
ワイワイ騒いでいるうちに、いい香りが村中に広がり始めた。
「……いい匂い。……お腹、鳴った」
スイがぽつりと呟き、周囲の猫耳たちの腹も一斉にグゥ~~と鳴り響く。
「さ、盛りつけるぞー! おっと、ミュリ、その“にゃんこスパイスNo.9”はちょっとずつな?」
「わかったにゃー!」
だがミュリは勢い余って、袋をドバァっと全部鍋に――
「ぎゃああああああああ!!?」
「入れたーっ!!?」
「おい、香りが、なんかこう、脳の奥に直接……うわ、目がさめるぅ……」
「うわああ! わ、私の“火加減”じゃ追いつかない~!」
「記録しておく……これは、事件だ……」
混乱の中、ビビが元気に叫ぶ。
「たのしーっ! わけわかんないけど、たのしーっ!!」
しかし不思議なことに、スイがひとしずく水を鍋に垂らすと――
「……味、まとまった」
「おお!? 美味い! なんかめちゃくちゃ奥深い味になってる……!」
「スイ……やっぱお前すごいな……!」
「……うん」
しっぽをぴこぴこ動かしながら、スイは控えめに微笑んだ。
こうして、「スパイス混乱鍋」は見事に“猫耳村伝説の鍋”として完成し、村人たちも巻き込んでの大宴会が始まったのだった。
「やっぱり、料理は――チームプレイ、にゃ!」
「そこまで言えるなら、次は分量守ってくれよな!」
「にゃー! レオン、細かいこと気にしすぎにゃ~!」
──今日も猫耳村は、平和でにぎやかで、お腹いっぱいだ。
レオンの力強い掛け声と共に、村の広場に集まった猫耳娘たちが一斉に反応した。
「おおーっ! レオンさんの気合、今日もビンビンですねっ!」
テンションMAXのビビが、泥だらけの手で謎の雑草を掲げる。
「……それ、料理に使うやつじゃないぞ、ビビ」
「え!? ちがった!? うそぉ!? じゃあこれ、なに草っ!?」
「見たことない草だな。たぶん、触ると痒くなるやつだ」
「ギャーッ!」
レオンが目を細めて遠巻きにしていると、ミュリがバタバタと駆けてきた。
「レオン! 鍋に入れるスパイスはばっちり準備したにゃ!」
「ミュリが準備……? あー……そっか、うん、ありがとう。あとで確認だけさせてもらっていいか?」
「……あれ? なんで今、ちょっと引いた顔したにゃ……?」
ミュリの耳がしょぼんと垂れ、尻尾もだらんと力なく落ちた。
「いやいや、期待してるんだ。期待……してるよ? うん、ホントだよ?」
「にゃんで疑問形なのにゃ!」
今日のテーマは「村のごちそう大鍋祭り」。猫耳娘たちがそれぞれの得意分野を活かして材料を集め、レオンがまとめて調理するという大イベントだ。
「ノアは調合どうだ?」
「分析完了。ローズマリーとタイムのブレンド比率は理論的に完璧。だが――」
ノアがメガネをクイッと上げ、淡々と続ける。
「ミュリの持ってきた“謎スパイス”は、正直、未知の危険物に等しい」
「それはちがーう! ちゃんと“にゃんこスパイスブレンドNo.9”って名前があるにゃ!」
「名前の問題ではない」
「えー……!」
「ま、まぁまぁ。危険な香りがするってだけで、実際は使ってみないとわからんだろ? なぁ、チャチャ」
「えっ、私!? ど、どうせなら燃える味とか出してほしいけど……焦がすのは私の仕事だから!」
「……お前は火を出しすぎなんだよ、畑を何度焦がしたと思ってる……」
レオンが頭を抱える中、スイがふらりとやってきた。
「……水、入れといた」
「おお、ありがとうスイ! あれ、でも鍋の水量……めっちゃ完璧じゃないか?」
「……見た」
「見た!?」
「……鍋の気持ち」
「こわいこわいこわい! スイって実はめっちゃすごいやつだよな!」
そのとき、リンが木箱を抱えて登場した。例によって目はそっぽを向いている。
「べ、別にレオンのために根菜掘ってきたわけじゃないんだからっ!」
「おおー、ありがとう! リンはほんと頼りになるな!」
「なっ……! ちょ、ちょっと、調子に乗らないでよねっ!」
リンの尻尾がびゅんびゅん振り回されている。ツンデレモード、全開だ。
こうして材料も調ったところで、大鍋に火が入れられた。
「うおおお……でっかい鍋ってだけでワクワクするなぁ!」
「レオン、これはどんな料理になるにゃ?」
「そうだな……いろんな村の味を詰め込んだ、“猫耳鍋”って感じか」
「な、名前がちょっと怖いにゃ!」
「え、ミュリたち、入るの!?」
「いや違うから!」
ワイワイ騒いでいるうちに、いい香りが村中に広がり始めた。
「……いい匂い。……お腹、鳴った」
スイがぽつりと呟き、周囲の猫耳たちの腹も一斉にグゥ~~と鳴り響く。
「さ、盛りつけるぞー! おっと、ミュリ、その“にゃんこスパイスNo.9”はちょっとずつな?」
「わかったにゃー!」
だがミュリは勢い余って、袋をドバァっと全部鍋に――
「ぎゃああああああああ!!?」
「入れたーっ!!?」
「おい、香りが、なんかこう、脳の奥に直接……うわ、目がさめるぅ……」
「うわああ! わ、私の“火加減”じゃ追いつかない~!」
「記録しておく……これは、事件だ……」
混乱の中、ビビが元気に叫ぶ。
「たのしーっ! わけわかんないけど、たのしーっ!!」
しかし不思議なことに、スイがひとしずく水を鍋に垂らすと――
「……味、まとまった」
「おお!? 美味い! なんかめちゃくちゃ奥深い味になってる……!」
「スイ……やっぱお前すごいな……!」
「……うん」
しっぽをぴこぴこ動かしながら、スイは控えめに微笑んだ。
こうして、「スパイス混乱鍋」は見事に“猫耳村伝説の鍋”として完成し、村人たちも巻き込んでの大宴会が始まったのだった。
「やっぱり、料理は――チームプレイ、にゃ!」
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──今日も猫耳村は、平和でにぎやかで、お腹いっぱいだ。
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