[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日～

第五章：畑と未来と、ちょっぴり成長

第42話:ビビ、草むしりで村を半壊させる

「草は友だち！　いや、敵かも！　
いや、どっちでもいい！　とにかく
抜くーっ！」

朝から村に響く奇声。お馴染み、
テンション高めのベンガル猫耳・ビビが、雑草との戦争を開始していた。

「ビビ、ちょっと落ち着いて！　
それ作物だから！」

「えっ！？　えぇええ！？　でも
この葉っぱ、雑草の親玉みたいな顔
してたよ！」

「どんな顔だ、それ……って、
やっぱりニンジン抜いてるじゃ
ねぇかぁ！」

レオンの絶叫が響く中、畑の一角が見るも無残な姿に変貌していた。

🐈🐾 🐾 🐾

事の発端は、ミュリの提案だった。

「ねぇレオン、村の畑、ちょっと草がボーボーしてない？」

「お前の部屋の床が“ちょっと”どころじゃないくらい荒れてるのと似てるな」

「なっ……！　今日はその件は見逃してあげるから！」

「誰が何を見逃すんだよ……」

結局、草むしりチームが結成された。

メンバーはもちろん、ビビ・スイ・チャチャ。

そして、監督役のレオンである。

「では、我が軍は“作物を守りつつ雑草を討つ”のだー！」

「わかったー☆　でもスイ、何してるの？」

「……水、あげた」

スイは相変わらず、黙々と苗に水をやっている。というか、もうそれしかしてない。

「おい、ビビ！　今度はナスを抜こうとするな！」

「これはナス！？　色がちょっと怪しかったから！」

「泥まみれで見えねぇだけだ！」

🐈🐾 🐾 🐾

30分後──

「わぁあああああ！？　レオンさーん！　畑が爆発したーっ！」

「なにやったビビ！？　どうやったら草むしりで爆発するんだよ！？」

現場は悲惨だった。どうやら、ミュリがこっそり試作していた“スパイス発芽爆弾”を、ビビが雑草と勘違いして全力で引き抜いたらしい。

「これ……埋めとけば土がふかふかになるって……ミュリが言ってたような……」

「爆発した時点でアウトだよ！！」

しかも、その爆風はスパイスの香りを村中に拡散させ、村長が「またレオンか！？」と怒鳴り込んでくる始末。

「ち、違います村長！　今回はミュリの……いや、ビビのせいです！」

「えっ！　えっ！？　私！？　私が悪いの！？　雑草のせいじゃなくて！？」

「黙れ！　敵を草にするな！」

🐈🐾 🐾 🐾

修復作業が始まる中──

「チャチャ、火使って整地するのやめて！　畑が焦げる！」

「べ、別にレオンのためじゃないし！　効率がいいだけだから！」

「その効率が焼畑レベルなんだってば！！」

🐈🐾 🐾 🐾

その夜。

「……というわけで、今日の晩ごはんは、被害に遭ったニンジンとナスの煮物だ」

「おお、被害者をいただくスタイルですね！」

「やかましい！　反省しろ、少しは！」

スイは静かに煮物を見つめながら一言。

「……水、足りなかった」

「料理中にも気を配るあたり、マジで尊敬するわスイ！」

レオンは料理鍋を見つめながら、頭を抱えた。

「なんだろう……この村、どんどん騒がしくなってないか？」

「それがスローライフだよ、レオン！」

「いや、爆発はスローじゃない！」

🐈🐾 🐾 🐾

こうしてまたひとつ、ビビの「やっちまった伝説」が村に刻まれたのだった