不吉な双子と呼ばれた妹ですが、巫女になって兄をざまぁします〜迷信を打ち破ったら、なぜか溺愛されました〜

桃源 華

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第1章 双子の呪いと兄妹の運命

第8話 「25年後の断絶」の囁き

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神殿で古文書を読んでから、
胸の奥のざわめきが止まらなかった。
 “二十五年後の断絶”──あの言葉が、
耳の奥に棘のように残っている。

☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

 その数日後、私は神殿の廊下を
歩いている時、ひそやかな声を耳
にした。
 壁の向こうで、神官たちが
囁き合っている。

「……領主の家も、やはり二十五年目
には滅びるのか」
「双子が生まれた以上、避けられぬ
定めだろう」

 息を呑んだ。
 まるで私の存在そのものが、
滅びの刻印だと決めつけるような声。
 背中に冷たい汗が流れる。

☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

 その噂は、神殿だけでなく街にも
広がっていた。
 市場で祈りを捧げようとすると、
女たちの視線が突き刺さる。

「ねえ、あれが“あの娘”よ」
「二十五年後、領地は断絶するん
だって……」

 囁きは噂から嘲笑へ、やがて
恐怖の視線へと変わっていく。
 私は足早に神殿へ戻るしかなかった。

☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

 一方、兄様──アルトリウスの
もとにも、その囁きは届いていた。
 領民との謁見の場で、壮年の農夫
が膝をつき、声を震わせた。

「領主様……わしらは噂を聞いて
おります。
 二十五年後、この家が滅びると……
それが本当なら、子や孫にどんな
未来が残るのですか」

 広間は凍りついた。
 兄様は強い瞳で農夫を見据え、
声を張り上げた。

「くだらぬ迷信だ! 私が領主で
ある限り、この家も、この地も
滅びはせぬ!」

 その言葉に歓声はなかった。
 人々の瞳には、不安と疑念の色
が消えずに残っていた。

☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

 夜、兄様は神殿の庭で私に言った。
「セレナ……奴らは、迷信ごときで
私を揺さぶろうとしている。領民も、
家臣も、皆が囁いているのだ」

 私は震える手を胸に当てた。
「兄様……古文書には、確かに
『二十五年で断絶』と書かれて
いました。けれど……“絆で揺らぐ”
とも」

 兄様の瞳がわずかに揺らいだ。
「揺らぐ……か。だが、私が信じる
のは迷信ではない。妹よ、お前だけだ」

 その言葉に、胸が熱くなった。
 けれど同時に、囁きは闇のように
広がり続けている。

☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

 そしてその影の中で──重臣エル
ドランが、密やかに口元を歪めていた。
「二十五年後に断絶……ふむ、
ならば“その時”を早めるのも
悪くない」

 彼の囁きは、まだ誰も知らない。
 だが、双子を取り巻く運命の糸が、
確かにきしみ始めていた。

♊️キャラクター紹介♥:.。
≡目次からどうぞ🗝
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