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第1話:転生おっさん、異世界へ
しおりを挟む「……は?」
目を開けた瞬間、
俺は思わず声を漏らした。
視界に広がるのは、
見たこともない異世界風の
街並み。石畳の道、レンガ造り
の建物、行き交う人々の服装
もまるでファンタジーの世界だ。
いやいや、俺、確かに昨日まで
ブラック企業で働いてたよな?
終電で帰って、風呂にも入らず
ベッドに倒れ込んだはず……え、
ここどこ?
慌てて自分の手を見下ろす。
小さい。いや、細い。
肌もやたらツルツルしている。
胸に手を当てると、鼓動が
異様に軽い。
「……まさかとは思うが……」
道端にある水桶を覗き込む。
そこに映ったのは、
金色の髪をした12歳くらい
の少年の顔だった。
誰だお前!? いや、俺か!?
「ちょっと、何してるの?」
後ろから、可愛らしい声が
した。振り向くと、そこには
猫耳の少女が立っていた。
「……猫耳?」
「は?」
彼女は、ピクリと耳を
動かしながら、俺をじっと
見つめてきた。
「えっと、お兄ちゃん、
もしかして……
頭、大丈夫?」
「いや、待て、落ち着け。
まず自己紹介をだな……」
俺は混乱しつつも、
深呼吸して頭を整理する。
異世界っぽい街、幼い体、
猫耳の女の子……つまり、
俺は転生したらしい。
「……俺はレオン。君は?」
「ミュリ。ここで雑貨屋を
やってるの」
ミュリと名乗った少女は、
俺をジロジロと観察して
くる。
「レオンって、そんな
ボロボロの格好して、
どこから来たの?」
「え、えっと……」
どうする?
転生しましたーなんて
言えるわけないよな。
「……気づいたら、
ここにいたんだ」
「ふーん。記憶喪失?」
「ま、そんなところ」
ミュリは俺を疑いながらも、
「まぁいいか」と小さく肩を
すくめた。
「お腹、空いてる?」
「……ああ、実はかなり」
そういえば、腹が減って
いる。最後に食べたのが
いつかも分からない。
「仕方ないなぁ。じゃあ、
うちに来る?」
ミュリは尻尾をふわりと
揺らしながら、俺を連れて
いった。
ミュリの雑貨屋は、
小さな路地の奥にあった。
店内は狭いが、整然として
いて、色とりどりの瓶や
袋が並んでいる。
「はい、パンとスープ。
あと、昨日作った
肉のパイもあるよ」
俺の前に置かれたのは、
素朴なパンと香ばしい
スープ、そして
美味しそうなパイ。
「ありがとう」
一口食べてみると、
予想以上に美味かった。
「うまい!」
「ふふっ、よかった」
ミュリは嬉しそうに
微笑んだ。
「ところで、ミュリは
どうしてこんなところで
一人で?」
「あたし? 両親が昔、旅に
出たっきり帰ってこなくてね。
だから、一人で頑張ってるの」
なるほど、孤児みたい
なもんか。でも、明るいな……。
「レオンは? 家族とかいるの?」
「……いや、俺も一人だ」
正確には、前世では家族が
いたけど、異世界に来た
今は完全に一人だな。
ミュリは「そっか」と
少し寂しそうに呟いたが、
すぐに明るく笑った。
「だったら、しばらく
ここにいたら?」
「え?」
「だって、行くところない
でしょ? あたしの店、
手伝ってくれるなら
泊めてあげるよ」
おいおい、
こんな親切な子がいるのか?
いや、でも確かに助かる……。
「……いいのか?」
「もちろん!」
こうして、俺は異世界転生
初日にして、猫耳少女の
雑貨屋で世話になることに
なった。
次の日、朝から店の手伝い
をすることになった。
「お兄ちゃん、ちょっと
商品並べるの手伝って!」
「分かった」
俺は瓶を並べながら、
商品のラインナップを
確認する。スパイス、
ハーブ、保存食……どれも
シンプルだが、なかなか
使えそうなものばかりだ。
「これ、もっと売れるように
できるんじゃないか?」
「え?」
「たとえば、このハーブ、
風邪予防にいいって書いて
あるけど、もっと目立つ
ようにポップを作ったら?」
「ぽっぷ?」
俺は紙に「風邪予防に最適!
特価セール中!」と大きく
書いて、目立つ場所に貼った。
「なるほど!
そんな風に宣伝するのか!」
「あと、このスパイス、
肉料理に合うなら、
簡単なレシピを書いた紙を
添えたら?」
「すごい! お兄ちゃん、
頭いいね!」
いや、ただの社会人の知恵
なんだけどな……。
すると、さっそく
おばちゃん客がポップを
見てハーブを手に取った。
「このハーブ、本当に
風邪予防にいいの?」
「はい! 風邪の初期症状に
効きますよ!」
ミュリが元気に説明すると、
おばちゃんは満足そうに
買っていった。
「すごい! お兄ちゃんの
アイデア、大成功!」
「はは、まぁな」
異世界でも、現代の知識は
役立つらしい。
これは……案外、
やっていけるかもしれないな。
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