元自衛官、異世界に赴任する

旗本蔵屋敷

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6章 元自衛官、異国での戦いを開始する

九十三話

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     ──☆──

 昼前に終わった討伐劇も、町に帰れば昼過ぎになる。
 道中で俺が料理人を担当して食事を振る舞い、町に着いたらさっさと宿を取る。
 午後はなんだか頭が痛んだので、マリー共々休む事に。
 昼間から寝るのは最高だなと、思いながら頭の中で雑多に転がる情報を整理しながら片付けていく。
 情報が多すぎると思考がとっ散らかって頭が痛くなるし、片付けてしまわないと何だかんだ考えてしまう。

 ……アーニャは、この世界は俺の生きていた世界と似通っているといった。
 確かに、似通っている。似通いすぎている。
 違う事があるとすれば、ここは自分の生きていた時代の遠い未来であり、一度文明が崩壊して──人類が旧人類として消え去ったことだろうか。
 マリーがあのタッチパネル式のディスプレイに触れても反応しなかったのは、多分その人類としての区分が違ったからだろう。
 
 しかし、見た目は同じなのにこの世界の住民とそもそも”種”が違うというのもなんだか変な話だ。
 そういや、遺伝子情報が違うって事は……染色体にも差が有るんじゃないだろうか。
 と言う事は──仮にだ──俺がこの世界で結婚して家庭を設けても、子供が出来ない可能性がある。
 まあ、取らぬ狸の皮算用をしても意味は無いのだが……。

「ふあ……」

 情報の整理をしていると、知識そのものがシステムに記入されていく。
 忘れたり、ボケたりしてもこのデータバンクを閲覧すれば正確に思い出せるわけだ。
 バックログなんかも存在していて、会話が全て読み返せるのも良い。
 瞬間瞬間で判断ばかりしていると、”そちらに居る二つの生命体”という表現のように突っ込みどころがあっても後回しして、そのまま忘れてしまう事もある。

 人間は感情の生き物であると言う言葉の通りに、今こうやって情報に御託を並べて付箋を貼り付けながらしまい込んでいる俺自身が既に間違いを犯している。
 後になって「実はこうだったんじゃね?」となるだろうと思いながらも、頭の痛さを言い訳に片付けしているのだから。
 そして頭の中がスッキリしてくると眠気がやって来て、仮眠を取る事ができた。
 ただ、寝ていた事で身体が不活性状態だったからか胃袋に食事がまだ残っているような気がして、夕食は余り食べないほうが良いだろうなと思う。

「んん……?」

 しかし、俺は寝起きに違和感を覚えた。
 決して生理現象だとか、変な妄想だとかそう言うものではない。
 ただズボンの中でブルブルと震える物が存在していて、不愉快だっただけだ。
 何だろうかと手を突っ込むと携帯電話があるだけで、その携帯電話がブルッブル振動しているのだ。
 
 目覚ましでも設定したっけなとか考えてしまったが、ポケットから取り出して電源ボタンを入れるとロック解除画面になんだか見覚えのある物が。

『おや、ご主人様。どうやらお眠りになられていたようで、失礼を』
「……近い近い」
『ああ、失礼。距離感と言う物が掴めないもので。これで宜しいでしょうか?』
「宜しいも何も……」

 なんでデスクトップマスコットみたいな事になってるの?
 画面の中、まるで画面の向こうに存在するかのように伍長が居る。

「てか、どうやって──」
『電波が届いているので、ビデオレターのように私自身をそちらに見えるように映し出しているだけですとも。当然、電波の届かない場所に行ってしまうと本体である私とは別の存在になってしまいますが』
「消えるんじゃ無いんかい」
『おや、ネットワークに接続されていないコンピューターがウィルスバスターを起動できないとでも? その場合私を複製したような物として携帯電話に残るだけです。当然同期している訳では無いので、情報や判断、思考に関してズレが生じる事を考慮していただければ幸いかと存じます』
「あ~、まあ良いや。それで、何?」
『いえいえ、ただの通信状態の確認をと思いまして。ご主人様が御発ちになられてからそれなりに時間も経過しましたし、念のためにと思った次第でして』
L&C感明良好。お前さんの綺麗なレンズもばっちり見えてるよ」
『お褒めに預かり光栄です、ご主人様。とりあえず様々な状況確認と、新しい行動規則や命令等を終えた所でして、その報告もついでにさせて頂きますが──』
「が、なに?」
『その、非情に申し上げ難いのですが。巡回ロボットの数名が、本日ご主人様が訪れる直前に、ご主人様によって破壊されているとの報告が御座いまして……』

 ……ロボットの癖に申し上げにくいとか、声の抑揚だの妙に人間臭い。
 その言い方から「失礼かも知れないけど、聞かなきゃいけないんだよなぁ……」的な味を感じる。
 ただ、その問いをされたからには俺はヒモ付けて考えなければならない。
 道中、俺がぶっ壊してきた連中はあの建物のロボットだったのだと。

「あの、確かに道中で彼我不明だったから迎撃しちゃったけどさ……。それについては不幸なすれ違いと言う事には出来ない?」
『当時はお互いの関係は不明だったので、それについて私がとやかく言うのは筋違いと言うものです』
「本当、お前は柔軟だな……」
『お褒め頂恐縮で御座います。私の素体となった人も喜ぶ事でしょう』
「素体?」
『企業秘密……と言いたい所ですが、プロテクトが更新されずに外れているのでお教えしますと。公にそういった実験に参加された方々とは別に、病院とも連携して多くの人の情報をスキャンし、保存してきました。かつてのAIとは人間によって定められた事柄から外れた事は出来ない、まさにブリキの玩具と言う他無い程に程度の低いものでしたが、それも既に過去の話です。人間の脳の情報をデータ化……つまり、電脳化と言うものも当時は可能になっていたのですよ。老いによる知能や知性の衰えを克服すると共に、人の自由で柔軟な思考能力をそのまま用いる事で、ロボットを様々な労働力に転換する事が可能になったので』
「じゃあ……お前は人、なのか?」
『元となった人間がいて、その人の複製を人と呼べるのであれば人でしょう。しかし、あまりそのような事を口にされると、ロボット人権愛護団体とその反対派がうるさくなるでしょう』
「そんな人たちも既に居ないよ」

 しかし……なんだ。
 既にそういった文明が滅んだとはいえ、人間の脳をそのままコピーして扱う事ができた時代か……。
 完全にSFの世界だなと思う。
 けれども、ミラノがその時代の施設や設備で生み出されたと考えれば納得が行くし、そのせいでアリアが今まで苦しんだと考えれば納得がいく。
 少し考えてから、尋ねる事にした。

「ネットワークにどれほどの情報があるんだ?」
『さて、気になるだろうと思いまして幾らか調べてはいますが……。主要な場所のデータバンクはどうやら破壊されているようですね。何故世界がこのような暗黒時代にまで戻ったのか、何故ご主人様のようなかつての人類が居なくなってしまったのかは私共の方でも調べては居ますが、何にしてもアクセス権限が低い事もあって中々。許可さえいただければ、ハッキングなども致しますが』
「そんな事まで出来るのか」
『ただし、ハッキングをした場合、その痕跡が発覚し個体を特定されると強制的にショートさせられます。残念な事に、ネットセキュリティーが生きている場所も有りますので』
「リスクは犯せない。今の時代、皆に何か有ったら直す事も作り直すことも出来ない。無難な所から集められる情報のみに留めておいて、破壊や故障のリスクが存在する物はすべて回避するように」
『あぁ、なんとお優しい……。人のように扱っていただけるとは、涙腺モジュールが実装されていたのなら、ハンカチで目頭を押さえていたところです。まあ、流れる涙は御座いませんが』

 何とも良い軽口まで言ってくれる。
 なんだか学生時代やその時の仲間とのやり取りをしているかのような錯覚すら覚える。
 馬鹿を言い合っているとかそんな感じで、気負った所を一切感じさせないから気楽で良い。

『あぁ。ご主人様。もし手間でなければ何か学習書のようなものを見つけてはいただけないでしょうか?』
「学習書?」
『ええ、この世界……いえ、この時代の文字や言葉と言う物を習得する為に必要とします。ご主人様とご一緒だったお二人の言葉が私に理解できなかったように、私の言葉もお二人には理解できていないようでした。コミュニケーションが出来無いと言うのは、非常に、ひっじょ~に私たちにとって不利です。少なくとも、会話ができれば無用な敵意や、不要な戦闘は避けられるでしょうしね』
「あぁ、なるほど。それは……気がつかなかった」
『ご主人様にはご主人様の事情がお有りなようですから、気が回らない事が有ったとしても不思議では有りません。ですが、一考頂けると幸いです』
「ん、了解」

 それでは、という言葉と共に伍長の姿が遠ざかる。
 デスクトップマスコットのような状態になったら『アイドル状態です』と言うことらしい。
 余計に詮索せず、かといって呼びかけには直ぐに答えられるようにしてくれたという事だろうか?
 ありがたいことだ。
 携帯電話をしまおうとすると二度の振動が来て、何事だろうかと思うと伍長からの添付ファイルつきのメッセージが届いた。
 どうやら今理解できている事柄で、俺が興味を持つだろう事柄を纏めてくれた様である。

「え~、なになに……」

 そこに書かれていたのは、ネットワークで拾う事が出来た簡単な旧人類史のようなものだった。
 人類は発展・発達をして様々な技術や科学力を得るに至った。
 しかし、その結果天然資源の枯渇を早め、そのせいで世界中がパニックを起す。
 その中で、どこかの国が核を放ち、それを捉えた他国も私欲や防衛、或いは攻撃の為にミサイルを飛ばしたところ環境が劣悪になり、既存の人類が生活するには地下に逃れるしかなくなった。
 その過程で放射能に汚染された環境でも適応できるように新しい人類を生み出し、或いは自身を改良した。

 様々な核シェルターはそれでも数世紀は持ち堪えたようであったが、相互のネットワークが何かしらの原因で断たれ、変異した生物などによって物資のやり取りも遮断され、反乱や飢餓、或いは男女のどちらかが生まれなくなり滅びた――らしい。

 それでも滅びの直前まで再び人類が地表に出られるようにと足掻いた連中が居たらしく、その結果空気の浄化とナノマシンによる長年の時間をかけた天然資源再生が果たされたらしい。

「まるで壮大な小説みたいだ……」

 魔法というものは、新人類達が地表での突然変異主に対抗できる手段の一つとして『思い描いた物を生成する』と言う技術のようだ。
 つまり、俺が脳内で効果やどのような働きをするか想像してキーワードを言うのも、ミラノ達のように長い詠唱文を唱えてからキーワードを言うのも違いは無いらしい。
 その技術が何世紀もの時間をかけて変容したり、或いは一度は忘れ去られたり、もしくはどのようなものか歪んで伝わったりしたのではないかと言う推測が最後に書かれている。
 中々に優秀なロボットだなと思いながら、携帯電話をしまった。

 そもそも、寝るつもりだったんだよ。
 しかし、伍長との会話や新しい情報のせいで再び脳が動き始めてしまった。

「ゲームじゃない。これは現実、これは現実……」

 再び肩まで毛布を被ると温もりがまどろみを呼んで眠気が来る。
 そして――少しばかりの悪夢を見てから、目を覚ませば夕方間際だった。
 昔のように携帯電話を寝起きに確認するが、当然のように迷惑メールが数十と来ていることもないし、伍長からの連絡などはなかった。

「マリー、マリー……調子は? 体調は悪くないか?」

 もう自衛隊時代の体調不良者の面倒を見るのと一緒だ。
 健康状態の管理は周囲の者が手伝い、不調になれば先輩から後輩にいたるまでが一蓮托生といったように世話を焼いてくれる。
 彼女をゆっくり揺さ振ると、徐々に覚醒してきたようで薄っすらと目が開いてきた。
 そして彼女の目が虚だったものに、神経が通り、脳が映像を取り込み始め、その中心に俺が来るようにピントまであわさるのを見て理解する。

「ん、ん……今、どれくらい?」
「夕方少し前くらい。で、体調とか、気分が悪いとかは?」
「今の所平気……むしろ、貰った薬が利き過ぎな気もする――」
「分量は間違えてないのなら、その身体が生身の人と違うという理由で……薬の影響を受けやすいって考えるしかないな。食欲は? 吐き気や眠気、気だるさは?」
「まるでお医者さまみたいな事を言うのね」
「医者じゃない、こういう細かい所に気を配れないと――兵士ってのはやってられないからな」

 そう言いながら手首に触れて脈拍を測る。
 その脈拍数と正常であるかどうか、回数を腕時計を見ながら確かめて正常であると判断する。

「本当ならこういうのは専門家が見ればいいんだけど、俺には言われた事を同じようにやるくらいしか出来ないから、出来れば医者のようにあてにはしない方が良い。それに――」
「それに?」
「女性は取り扱った事が無いんでね」

 俺がそう言うと、彼女は暫くその意味をかみ締めていたようだ。
 しかし、直ぐに笑みを浮かべながら手を伸ばす。起こせという事だろう。

「それにしては、女性の扱い方がそれなりに上手いみたいだけど」
「だとしたら、父親と母親の教育が良かったんだな――っと」

 マリーを引き起こして、そう言えばヘラが居ないなと気がつく。
 食後、休むと言った俺たちとは別で「出かけてきます」と言ったのは覚えているが……。
 もしかすると御者さんの相手をしに行ったのかもしれない。
 一日送れて帰るので、暇だろうから金を握らせに行ったとかも考えられる。

「で、起したのはそれを聞きたかったから?」
「寝すぎると夜に眠れなくなる。日常の生活リズムが崩れると必要な時にできた事で失敗しかねない」
「生活”りずむ”って?」
「あぁ、えっと……」

 さっきまで伍長と会話をしていて失念していた、英語やスペイン語は変換されない。
 それどころかカタカナも変換されないので、こういった時に意思疎通が出来なくなる。

「一日の流れ。ゴメン、伝わらないのを忘れてた」
「……一つ聞いてもいい?」
「ん?」
「今日出会ったあのワケ分かんないの……信じていいの?」
「まあ、そう思うよな」
「アンタもなんだかワケの分からない言葉で喋ってたし、それで――楽しそうだった」
「楽しそう、か……。まあ、幾らか楽しかったかな。俺の知ってる世界の代物を、何十倍にも進化させたような物が沢山有って。やっぱ、自分の慣れ親しんだものと地続きの物があると少し楽しくなる」

 だって、俺のいた時代でもまだAIだのロボットだのは可能性を感じさせはしたが、それでも活躍の場はそこまでなかった。
 無人偵察機などが導入され始め、救命活動などで使われるようになった操縦型だったのに――ほぼ人間と同じくらいに自律し、思考するロボットが存在する。
 そんなの――『人類は下らないが、その可能性は信じてる』という言葉そのものでは無いか。
 天然資源の再生? 大気汚染の浄化? なんだよそれ、その時代も見てみたかったわ。
 携帯電話で『かつての人類が退避したとされる、地下施設やシェルターの情報を求む』と伍長に送る。
 それくらい夢見たって良いだろうと、久しぶりに正しい携帯電話の使い方をした。

「……やっぱり、自分の居た場所が懐かしい?」
「そりゃ、自分が生まれ育った環境と言うのは、家で慣れ親しんだ料理のように自分の……そうだな、自分の一部や半身と同じだよ。国が違えば考え方も違う、場所が違えば口に出来る食べ物も違う、言葉も何もかも違うこの場所じゃあ――半身が死んだようなものさ。両親の墓や、思い出の品も無いしなあ。まあ、自分にとって不都合な全ても置き去りにしたとも言うけどさ」

 そもそも本来であれば半分以上が脂肪になった筋肉を抱えた身体で、片足を引きずりながら歩いていたのだ。
 なのに、こちらでは若返った上に脂肪が付きまくる前の最盛期の肉体にまで戻してもらえた。
 ゲームのようなシステム画面、豊富な物資、使いきれない金、自分だけステータスが成長して実際に受けたり与える影響が変動する。
 ただ、その上で言わせてもらうのなら――異世界に行った連中で家が懐かしくならない連中や、生活を思わない連中と言うのは……よほど嫌いだったか、それこそ現実逃避異世界行きする程の記憶しかなかったのか。
 かつての自分が居た世界を思わぬものは心が無い。
 しかし――現代に戻りたいと思うものは、脳が無い……のかもしれないが。

「――……、」
「召還された事をいつまでもウダウダ行っても仕方が無い、目の前に敵が現れたのに『なんで戦う事になってるんだ!』なんて考えないだろ? 目の前の状況は悔やんでも、悩んでも変わらない。悔やめば死んだ人は生き返るか? 無いね。悩めば遠い国まで帰れるか? 有り得ない。まあ、そういった心理学って言う奴も……学んだりはしたけどさ」

 とは言え、その”心理学”と言う奴を有効活用出来ている気はしない。
 俺のしている事はキャラクターを、或いは自分自身を二つに分離させただけだ。
 臆病さを可能な限り押し殺し、自他で言う自を圧縮させまくった自衛官の自分。
 感情や思考能力を無駄に回しまくることで、悲観的な上に嘘を吐きまくる臆病な自分。

 そして嘘を吐くにしてもそうじゃないにしても、相手の顔色を窺うというのは便利だった。
 相手の反応、挙動、目の動きや仕草から誘導する事ができるし、隠す事もできる。
 だから――常に嘘を吐いている気がして、他人との溝を深く感じてしまうのだが。

「その心理学って、どういうときに使うの?」
「そうだなあ。相手の感情だとか、心に関わるもので。俺が学んだのは――相手を理解して、落ち着かせたり、宥めたり――時には叱咤激励したり、或いは……吐き出させたりかな」
「吐き出す……」
「色々な事があると、人は割り切ったつもりでも多くの事を悩んだり抱え込んだりする。疲れたり、弱ったり、嫌な事があったり、受け入れられない事があったりした場合の話だけど。それを多くの人は他の事や、或いは時間の経過で癒したりもするけれども――癒せないものもある。命が掛かった場面ではこじ開けたりもするし、時間が許すのなら心につけた殻を少しずつ相手に開けてもらう様にしたりもする。酒のせいで身を崩す連中の中には、そういった人も居るんだよ」

 俺を含めて、な。
 今は手が震えたりはしないが、いぜんなら常に悴んだり震えているかのように手が動いていた。
 アル中真っ只中である、そのせいで心臓発作なんて起して――今、ここに居るのだが。

「それって難しいの?」
「ん~、こういう喩えはあんまりしたくないけど。男女の関係に近いものだと思ってる。心を許した相手なら、何処まで衣服を脱いで素肌を晒せるかと言うのに近い。相手によっては服を脱ぐのに抵抗が無かったり、逆にどうしても晒す事に抵抗を感じるように……同性異性関係無しに――難しい」

 そう言ってから、指を鳴らして一つ思いつく。

「けど、簡単な『相手を理解できてるか』を判断する方法が有るから、意識してみると面白いかもしれない」
「面白い、ね。他人の衣服を剥ぎ取ったり、脱がすのが好きなのかしら。変態」
「お褒めに預かり光栄ですよ。……例えば寝起き、或いは朝の挨拶で返って来る声の色や音で調子や機嫌が良いかを判別するとか」

 相手には拠るけれども、相手によってはこれだけでその日に怒られる事を回避する事が出来たりする。
 ただ、単純に「機嫌悪そうだからゴマすっとけ」ってのが通じるわけでもないし、逆に「機嫌悪いから関わらないでおこう」と言うのが正解と言うわけでもない。
 そう言うのを全てひっくるめて心理学とか、人間性とかになるのだろうが……。

「面白いお話をしてますね」
「あぁ、お帰りヘラ。今まで何処に?」
「御者の方々に事情を説明して、羽根を伸ばすようにと言ってきました。それと、この地の教会に顔を出していたら、すっかり遅くなってしまいました」

 そういったヘラは、それでも中々にいい機嫌をしている。
 むしろ、今回の魔物の巣の掃討に関して八割方空回りに近かったのに、それで良いのかなと思ってしまう。
 まあ、魔物であり被害をばら撒く存在ではなく、俺を経由する事にはなるが無害な上に自分を主人として認めてくれているのでむしろ味方に近い。
 
「お二人とも、ゆっくり出来ましたか?」
「俺は――まあ、落ち着いたかな。マリーの様子も一応見ておいたけど、自分の知識の範囲内では異常は無いと思う。もちろん、マリーが嘘をついてなければだけど」
「ハッ、冗談。なんでそんなつまらない嘘つくのか理解できないんだけど」

 マリーはそう言って、嘲笑った。
 だが、その毒舌染みた対応になんだか本調子になってきたようなものを感じて俺はホッとする。
 しかし、安堵していると何故かマリーの顔が一瞬で驚きに変わり、直ぐに青ざめて萎縮してしまう。
 当然その目線の先に居るのはヘラだけであり、何があったのか見ていなかった。

「あ、や、その……。面倒見ていただき真に有難う御座いました。お身体の方は特に異常なく、むしろ看て頂いたおかげで大分良くなりましたので、大変感謝しております」
「お~い、せめて嘘でもいいから目を見て言おうな?」
「マリー? 世話になったら、ちゃんとお礼をしなきゃダメだよ? タダでさえ自分ばっかり手間かけてるんだから、そういうの……良くないと思うなあ――」
「ごめんなさいゆるしてくださいおこらないでくださいおねがいします」

 ……あれ、マリーとヘラってこんな人間関係だったっけ。
 公爵家では顔面に目に留まらぬ拳を受けて気絶させられたりと、魔法ではなく肉体言語によってヒエラルキーが確定していたような気もするが。
 けれども、こんな風に……なんだろう、異様な感じじゃなかった気はするんだよなぁ。
 マリーは毛布を被って震えだしたし、流石に普通じゃ無いと思う。

「まあ、別にいいよ。そもそも俺のやってる事って、多分ここいらじゃ確立して無い知識だから、その――頭がおかしいとか、もしくは邪教だのなんだのって言われたらどうしようもないし」
「けど、マリーの体調が良くなったのは事実ですし、であれば変であっても間違いでは無いことが証明できていると思いますが」
「――だと良いけどね。まあ、出来る限りの事はするよ。知識は浅いし、狭いけどさ」
「ではでは、私が同じように体調を崩したりしたら看てくれたりするんですか?」
「なんでそこで顔を輝かせるんだ……。出来る範囲で、とだけ。けど、ヘラの場合は偉い人専属の医者とかが居るんじゃないのか?」
「あんなお祈りを捧げて回復を祈るようなのは医者じゃないです、ただの祈祷師です!英霊の身体に触れるのも、薬草などを飲ませるのも恐れ多いとか言ってるんですよ? そんなの、ただ寝てるのと変わりません!」

 どんな医者だ。と言うか、祈祷しかよ。
 唾を付けておけば治るとか、体調を崩すのは気合や根性が足りないからだと言っているようなものだ。
 しかし、医学の程度が魔法のせいで進歩してないっぽいんだよなぁ……。
 薬草を煎じて飲ませたり、或いは蒸らして貼り付けたりする事で回復促進とか、ゲームかよ。
 それでも薬学の程度もあんまり期待できなさそうだしなあ……。

「ヘラも、昔は身体が弱かったんだっけ。それだと医者に対する期待はでかいだろうなあ」
「期待はそんなにしてないですよ? ただ出来る事をやって欲しいのに、それを変な理由を付けてやらないというのが気に入らないだけです。それだったら言葉巧みに誘惑して騙されてみたり、薬だよ~と飲んでみたら寝ている間に悪戯されるほうがまだマシですよ~だ」
「……俺、別にマリーを言葉巧みに誘惑もしてないし、無理やりに眠らせて悪戯しようとは思ってないんだけどなあ」
「本当ですか~?」
「うん」
「本当の本当に~?」
「ラテン人嘘つかない」

「”らてんじん”?」

 正確にはラテンアメリカ人だけれども、それはどうでもいい。
 なんだかヘラがおかしいな~と思っていたが、何かしら疑われているようだ。
 顔を寄せてきて俺の目から、目の奥底から疑える何かを見出そうとしているようだが――甘い。
 それこそ俺よりも顔色を窺ったり、或いはゲーマーでもつれて来い。
 揺さぶり、脅し、言葉遊び、意図的な情報の欠落だのなんだのと好き勝手にやるぞ、連中。
 人生の半分が嘘といってもいい位に自分を偽ってきたのだ、そう簡単に見透かされてたまるか。

 しかし……何が彼女をそうさせたのか理解できない。
 彼女は「えい」という可愛らしい掛け声を上げると、目の前でポムンという音と共に――縮んでいる。
 ダボダボの服から片方の肩が露になり、そのまま脱げてしまうのではないかとさえ危惧してしまう。

「ほら~、これでもそういう気は置きませんか~?」
「止めろ、見える! 見えちゃう!」
「ねえさまこわいねえさまこわいねえさまこわいねさまこわい――」

 唯一のストッパー役になり得ただろうマリーはガクブルと震えているし、ヘラは何故かムキになってしがみ付いてくる。
 ……姉妹ってのは一応本当なんだなと、それでも髪の色などで違うもんだなと思いながら――最終的に強硬手段たる脳天チョップで黙らせた。
 英霊と言うのはみんなこうなのか!? どいつもこいつも押しがゴリッゴリすぎて、常に「相手を押し切ればとりあえずなし崩しであっても勝利」みたいな事ばかりしてる。
 
 その後、ヘラが元に戻るまでワケの分からない禅問答が行われた。
 マリーに手を出せばいいの? それともダメなの?
 欲を解放した方が良いのか、それとも封じ込めたほうが良いのかも分からないやり取りだ。

 そのやり取りは食事中にも幾らか続き、俺が疲弊しきって心のエネルギーを使い果たした所でようやく終わった。
 ……演技する力が無くなり、負の表情になってしまったのだろうと思う。
 鬱屈してしまい、その時初めてヘラが謝罪する。
 
「――すみません、調子に乗りすぎました」
「いや、良いけどさ……」
「私はマリー達と違って、城から出る事ですら中々に自由がありません。遠い昔、病気で床に居る事しか出来なかった事を思い出してしまって、舞い上がってしまいました。すみません――」
「――アイアスやマリー達もそんな事を言ってたなあ。旅とか、歩いてノンビリと野営とか食事をしたりするのが楽しいって」
「それは……私は体験し得なかったことですね。だから、本当は楽しかったんですよ? 歩いて遭遇するのをドキドキしながらも、誰かと一緒に居るという事で一人じゃない安心感を感じやすかったですし。本当ならもうちょっと……私達も一緒に何かをするという事も体験したかったのですが」

 そう言われて、酒が来たのでそれを飲み干してから気分を一新する。
 ……まあ、悪意は無いんだよなぁ。単純に自分が狭量なだけかもしれないが。
 
「――悪かった。別に期待を裏切ろうと思ったわけじゃないんだけど、話が通じて敵対しないで済むのならその方が良いし、その結果敵だと思っていた連中が敵じゃなくなったから簡単に片がついたんだから良い事だと思うけど」
「ええ、個人的な感情の問題です。けど……そっか。戦争じゃなくて、皆はこうやって旅をしてたんだなぁって思うと、少しだけ仲間外れじゃなくなった気がして良かったです」

 成る程なと考えながら、旅だの歩きだので行軍を思い出した。
 辛いけれども、確かに一体感はあるし、後で笑い話にもなる。
 そういった想い出が無いのは寂しさもあるだろう。
 自分だけが病気等で行軍だのに参加しなかったと考えると、申し訳なさが勝りそうだ。
 ふと思い出して、経度緯度情報を携帯電話で伍長へと送る。
 日本付近の情報とか得られないだろうかと思ったからだ。
 そっと携帯電話をしまい、会話に戻る。

「しかし、マリー大人しいな……」
「ん……眠くて、眠くて――。沢山、食べて、飲んだら……眠い」

 そう言いながら、マリーは舟をこぎかけている。
 普段よりも飲酒のペースは遅いし、既におねむな感じに見える。

「薬、まさか先に飲んでないよな?」
「あれ。食べる前……じゃなかった?」
「食べた後だよ、はぁ――」

 薬を飲んだら酒飲むな、酒を飲んだら薬を飲むなといわれてはいるが……。
 彼女の眠気がだいぶ来ているらしく、ジョッキから指を引き剥がすと肩を貸す。

「だって、姉さんが……」
「はいはい。姉さんが一緒で嬉しいのは分かるけど、ゆっくり寝とけ」
「ご飯……」
「二人で分けるから心配するな」

 マリーをベッドに寝かしつけ、口元を綺麗にしてから戻るとヘラは既に会計を済ませた後のようであった。
 この宿は連日商売繁盛だなと思ってしまうほどに羽振りが良い。
 それでもヘラが居ると、相手は御代を拒否しようとする。
 神聖さとか、そこらへんの影響なのだろうか。

「さあ、明日は早いですし、もうお休みしちゃいましょうか~」
「なんでヘラまで……」

 立ち上がり歩いてくるが、フラフラフニャフニャである。
 マリーの姉だからと安心していたが、どうやら酒そのものにはマリーよか弱いのかもしれない。
 ヘラが自前の杖をブンブンと振りながら、寝ようだなんて言っている。
 その姿を見て安心できるわけもないし、すっぽ抜けた杖が天井に突き刺さってしまった。

「あぁ、糞。マジかよ――」

 弁償とかどうするんだろうとか考えながら、マリーに教わった魔法技術を思い出す。
 たしか、包み込むように対象を掴む、だったか――。
 まるでキネシスのようだったが、それで何とか杖を手元にまで手繰り寄せる事ができた。

「あ、有難う御座います~」
「あ~、もういい。姉妹揃って手間がかかるな……」
「手間がかかる子は、嫌いですか?」
「かからないと寂しいし、かかりすぎるとうっとおしいから程ほどが良い」
「は~い」

 は~いじゃないが。
 ただ、自分で言っておきながら俺も相当面倒臭いヒトだなと苦笑するしかない。
 ほっとかれると寂しいし、構われすぎるとストレスで死んじゃうって兎か何かだろうか?
 ヘラをベッドまで連れて行くと、彼女から華の髪飾りを外した。
 こういった時にも寝巻きなどが有れば良いのだがと思ったが、寝巻きの慣習が生じたのって大分後だったような事を思い出す。

「や~、すみませんね~……」
「別に、大した事はしてないから大丈夫だよ」
「優しくしてくれますし、妹にも――皆にも良くしてくれてるって、聞いてます」
「良くしてる、って実感は無いけどなあ。どこまでが当たり前で、どこからが褒められるに値する行為なのかも分からないし。むしろ城での目が無いからって今じゃ無礼千万な言動をしてるような気さえしてる」
「私はやはり、変に崇められたりするよりはこういった対等のような関係の方がずっと落ち着きますね~。……どうして、この国なんかに出ちゃったんだろ。もっと、自由な国だったら良かったなぁ……」

 そう言ってヘラがぼやく。
 何だかんだと、彼女らの一番の負担は『英霊である事で、特別扱いされる事』なのだろう。
 気ままに行動できず、迂闊な事も言えない。
 マリーやアイアス、ロビンなどは公の場に出ていないからか一部の限定された場所での知名度しかないが、ヘラは今までを見ていると国民達にもその顔などを幅広く知られているようである。
 対等で有りたいという願いは、決して叶う事は無いだろう。
 神格化され、神聖視されている状態では、決して。
 そう言う意味ではアイアスやロビンは場を限定されているとは言え自由で、マリーも疎まれているとは言え自由である。
 タケルやファムは分からないが、命を預けあってる兵士を大事に想っている様だし、一方的にこき使われているようでもないようだが。

「だから、私には貴方が必要なんです。対等に振舞ってくれる、私をただの人として扱ってくれる貴方が――欲しいんです」
「――俺なんか欲しがっても、何の意味もない。ただ……ちょっとだけ運が良くて、ちょっとだけ恵まれただけの……臆病で、たまたま上手くいったことが評価されただけの、ヒトだよ」
「そんな事有りません!」

 ヘラが大きな声を張り上げる。
 それに俺は驚いてしまい、咄嗟にマリーを見てしまう。
 彼女は、起きていないようだ。
 ただ、背中を向けているから実際にはどうだか分からないが――身じろぎすらしていないから大丈夫だと思う。

「一人が……孤独が、どれだけ辛いか分かる筈です。独りだから孤独なのではなく、理解者が居ない状態で沢山の人に囲まれている事の方が、ずっと辛いんです……」
「――……、」
「独りでの食事は、どんなに温かくても心が寒いんです。気の置ける相手ではなくて監視のように付き人がいて、何をしても相手は勝手に感謝したり遠慮したりして……。だから、実は今日頭を叩かれた時、嬉しかったんですよ? 何でも受け入れる訳じゃなくて、自分の気持ちや主張をちゃんとしてくれるから――」

 ……たぶん、彼女にとって孤独とは人生の大半だったのだろう。
 身体が弱くて天井と部屋しか知らない平和な時代、病気から回復したら戦いと英雄たる扱いをされだした乱戦期。
 全てを終えて召喚されてみれば神格化され、崇められ、誰とも分かち合ったり理解しあったりすることもできない。
 まるで――まるで、クラスに馴染めなかった時のようだ。
 沢山の生徒が居て、見知った顔や様々な事を見聞きしてきたのに”背景”でしかない。
 片耳にねじ込んだウォークマンの音楽と、机の上に広げた本だけが友達だった――。
 少なくとも、高校二年生になっていまの親友や仲間といえる連中と出会うまでは……そうだった気がする。

「だから、お願いします。独りにしないでください、私を――置いていかないでください……」
「――……、」

 一瞬だけ、思考する。
 しかし――既に腹が決まっていて、以前のように揺らぎはしなかった。
 目の前で泣きそうな人がいたら、その涙を拭ってやれとは何の作品だったか――。
 ただ、回答を告げたりする事はできなかった。
 頬をかき、戸惑っていた俺に彼女は飛びついてきて、その口を奪われる。
 そしてそのままぐるりと立ち位置を入れ替えて、俺をベッドへと押し倒してきた。
 口の中に、僅かな血の味が混じった。

 一瞬、思考の繋がりで悪夢を思い出してしまう。
 ヘラに蹂躙され、陵辱され、様々なものを吸い上げられた夜の夢を。
 しかし、あの時と違うのは――彼女は淫陽な笑みを浮かべていないという所だ。
 痛ましく、苦しく、辛そうな……今にも、泣き出してしまいそうに見えた。

「頭が、おかしく……かき乱されるんです。広すぎて、あの目に見えない牢屋にずっと居ると。頭が……。あの牢屋から、私を、助けて……連れ出してください。もうずっと、頭がおかしくなりそうなんです――」

 彼女は俺に跨りながら、その頭を抱えて蹲る。
 精神疾患でも発祥しているのだろうか? それは……さすがに俺にだってどうしようもない。
 だから――ヘラは俺がこの国に定住する事を望んだのだろうか。
 対等である相手を望み、特別扱いしないでくれて、お互いが相手を尊重しあえて――孤独を、感じさせない事を欲した。
 マリー達は召喚者が居て帰らざるを得ず、となると自然と俺しか居なくなる。
 しかもその俺は状況が許されれば普通に扱い、それどころか相手の「ここはダメだな~」と言うところさえ認識した上で――付き合っている。
 暖簾に腕押し、糠に釘といった今の中で突如として現れた手応えや反応のある相手に――弱っていた心が、乾涸びていた心が潤い、震えたといえるのかもしれない。

「私には、私くらいしか差し上げられるものがありません。それでも……それでも、良ければ――」

 そこまで喋った彼女は、突如俺の上に倒れこんだ。
 頭が痛いといっていたけれども、まさかそのせいだろうか?
 大丈夫だろうかと彼女の肩に触れると、ノソリと……悪寒をまとう動きを見せる。
 そして彼女がその時に浮かべた笑みが、悪夢の時の物と同じ淫陽な物になっている。

「あは……♪」

 そして、俺を見下ろした彼女は舌をチロリと見せ、舌なめずりをしているかのように動かす。
 フラッシュバックのように、あの時の光景が思い浮かぶ。
 ただ――違う事が有るとすれば、体の感覚が有る――と言う事だが。

 彼女の目が、紅く……本当に、赤く光る。
 それは俺の片目のように、或いは使い魔であるカティアのように。
 あるいは――どこかで、見たような……聞いたような。

「そうだぁ……。だったら、ヤクモさんが私から離れられないようにすれば良いんだぁ……。何処にもいけないように、がんじがらめにして……。籠の中の鳥にしちゃえばいいんだぁ……」

 舌を伝い、唾液が艶かしく垂れる。
 それを指一杯に濡らし、その指で俺に触れてくる。

   ――精神汚染を検知――

 システム音が聞こえ、直ぐにマリーから散々叩き込まれた対魔法抵抗を張り巡らせた。
 さながら力を加えて血管を圧迫して止血するような荒業だったが、直ぐに防御が整った。
 システムメッセージが視界から消え失せ、レジストリに成功したと判断する。

「ヤクモさんがぁ……いけないんですよ? 私が弱ってる時に、まるで白馬の王子様のように現れて……。そんなの、好きになっちゃうに決まってるじゃないですかぁ……。なのに、ずっと。ずっとずっとずっとずっとマリーの事ばかり見てて、そんなの――嫉妬するに決まってるじゃないですかぁ……。あんなに構ってもらえて、あんなに優しくされて……マリーはずるいなぁ……」
「――……、」
「けど、それも……終わりだから。これからは、私が――私だけがそうしてもらうの……。弱ったら面倒を見てもらって、優しい声をかけてもらってぇ……。私だけ、私だけ――」

 怖かった、恐ろしかった。
 もしこれが悪夢どおりになってしまうのでは無いかと考えると、確認したくはなかった。
 けれども、震える腕に神経が通っていて、力を込めるとゆっくりと動くのも確認できた。
 なので、俺は彼女の肩を掴むと格闘の要領で立場を入れ替えた。
 ヘラを押し倒し、彼女に半ば跨る姿勢に。
 少しばかり驚いたようだが、彼女はそれですら受け入れた。

「もしかして、その気に……なりましたか?」
「いんや、ぜんぜん? てか――てい!」

 ヘラの顔を掴み、思い切り自分の中指を引っ張る。
 そしてヘラのおでこに目掛けて振り下ろされようとする指が、引っ張る力と拮抗してプルプルしだす。

「あれ……へ?」
「コイツぁ痛いぞ、歯ぁ食いしばれ」
「それって~、どういう……」

 戸惑う彼女を他所に、拮抗していた力を解放させ中指を彼女の額へと思い切りたたきつけた。
 その際に発した音はやった俺ですら若干当時の痛みを思い出し、股間が縮み上がるのを感じる。

「いたたたたぁ~っ!?」
「与えよ、さすれば与えられんって言葉を知らんのか。自分が欲しい欲しいばかりで何かを与えてもらえるとでも? 愛して欲しければ、相手が受け取れる形でまず愛しなさい。こんな……略奪愛は、ゴメンだ」

 涙目になりながら額を抑えるヘラ。
 彼女の額に立派なイチモツ指の跡が出来ているのを見て、申し訳ないが笑ってしまう。
 ただ、やはり見ていると彼女の目の色が違って見える。
 光を反射しているわけでもなく、ピンク色の瞳でもない。
 これは赤色だなと想っていると、そう言えばと手を叩いた。

――洗脳されている人は自分がそうだと気付けないように、当然のように操られてるの――

 そう言えばマリーがそんな事を言っていたなと思い出したが……俺には残念ながらどうする事も出来ない。
 理由も目的も理解できないままに魔導書を出して「洗脳解除の魔法は~」とかやり始めれば、ヘラを操っている相手に伝わってしまう。
 そうなった場合、厄介なのは彼女の立場だ。
 下手なことをして「反逆者です」とか言われたらおしまいなのだ。
 その場合、ヴィスコンティの皆が事情を察知する前に消されておしまいだ。
 
 ただ――害意や悪意を持っているものではないのかもしれない。
 デコピンを喰らって、彼女は涙目になってゆっくりと起き上がっていた。

「ひどいです~……」
「無理をすれば、同じくらいの反発が返って来ると言う分かりやすい教訓にはなっただろ? ただ、孤独や寂しさってのは――少しは、理解できてるつもりだから。その気さえあれば、城を抜け出して好きに国に来たらいいだろう? その時に会えたら、幾らでも相手をするよ。まあ、マリーが……妹がその分構ってもらえてずるいとか、羨ましいとかってのも分かるし」
「嘘です!」
「嘘じゃないさ。実際――弟と妹が居て、俺はあんまり親に構ってもらえなかった口だからさ」

 長男は立派であれ、恥ずべき人になるなかれ。
 ……そんな感じの教えを幼少の頃から聞かされてきたし、それに疑問を抱いた事は無い。
 両親は仕事の都合で、喩え幼稚園に通うような俺たちだとしても、容赦無く家に置いて行った。
 その時に弟の面倒を見ていたのは俺で、それが褒められた事は一度もない。
 妹が生まれれば妹の面倒も満たし、母親の味に涙する二人に苦心して味を再現した小学生時代も思い出す。
 当たり前である事は、感謝すらされない。
 成長しても、進歩しても『長男だから』と斬り捨てられる。
 そして……心が萎え衰えていくのだ。

「羨ましかったよ。同じ事をしても弟は常に褒められるし、妹は可愛がってもらえる。俺は沢山……そう、沢山弟よりも、妹よりもできることが有った――その筈なんだ。けど、気がつけば弟は先を歩んでいて、妹も俺を追い抜かしていった。それでも長男と言う役割を降りる事は出来ないし、有る意味孤独との戦いだった」
「――……、」
「だから、ヘラが……まあ、何だ。構って欲しいとか、孤独を理解してくれるという意味で俺に親近感を抱いてくれるのは理解できる。けど、だからってマリーとの関係を破壊したりしたって何の解決にもならない。他人を引き摺り下ろした所で、自分が優れてる証左にはならないのと同じだ。マリーとは……多分アイアスやロビンよりも密度や時間が長い。なら、マリーと同じかそれ以上に関わってくれれば多分、理解が進んで上手く付き合えると思う。もちろん、今日の夕食の時のように、すこしはしゃぎすぎたら疲れるけどさ」
「けど、けどぉ……」

 そう彼女はグズる。
 多分だけど、この目が怪しく光っている状態だと何かしらの影響下に置かれるのかも知れない。
 目が輝いてからなんだか色々と突拍子も無い事をやりだしたし、そこらへんは「感情増幅」とかもありうるのかもしれない。
 ……帰ったらカティア相手にそこらへん試してみるのも良いかも知れない。
 恐怖克服とか、怒り抑制とかができるのなら役に立ちそうだし。

「……ヘラは、英霊と言う己の成した成果に対する評価がある。けれども、俺はそれでも――特別扱いはしたりしない」
「それは、なんで……ですかぁ?」
「それは――英霊と呼ばれる連中が、俺の思う……人類と言う存在の中で……そう、一番誇らしいほどに”理想”だとか”希望”と呼べるものだからだ」

 一呼吸置いてから、震える口を一度ばかりひき結んだ。
 そして――俺がそう有りたいと思い、願った……自衛隊に入隊する前の、入隊してからもずっと抱き続けてきた言葉を思い出した。

「自らの生まれた国を愛し、共に居た人々を大事に思うその愛情を遺憾無く発揮する。それだけでも眩しいくらいに立派なんだよ。その信念の元に、皆は滅びに抗い、立ち向かい、そして自らを犠牲に差し出して勝ち取った。そこには常に有ったはずだ、今でもアイアスやタケル、マリーやヘラが口にしている、かつて自分が存在していた国を思う気持ちと、それらを誇る気持ち。そして――命や背中を預けあった仲間と言う存在が。自分ではなく、自分の愛するモノの為に、大事なものの為に戦った連中は――ただ、ほんの少し俺たちよりも勇敢なだけなんだ」
「勇敢……ですか」
「だって、そうだろ? 誰かを大事だと思う事を、仲間を大切だと思う事を言葉だけじゃなく、行動で常に示し続けてきた。口だけじゃなく、当然ながら隠す事も無く。そんな皆も、何も無ければ朝は眠い眼を擦って起き上がって、空きっ腹に食べ物を詰め込んで幸せな気持ちになる。親や兄弟、子供と挨拶をして一日を始めて、仕事が終わって家に帰れば子の居る人は子を寝かしつける。ただ、何かあったか、無かっただけでしかない」
「――……、」
「何かあった時に誰かの為に戦ってくれる、そんな”英雄”は敬意を払うに値する存在だ。だって、大人しくしていれば敵意や害意と恐怖に立ち向かわずに、或いは凄惨かつ悲惨な死を迎える事だって無いのに、それらを踏まえた上で立ち上がるんだ。そんな人たちを特別だと……自分らとは違うだなんて言うのは裏切りだ。平凡だといって一般的な生を歩むよりは、そう言う人に敬意を払いながら共に生きていこうとすること……それこそが、一番の恩返しじゃないかと、思うんだ」

 そこまで言ったが、ヘラは考え込んでいるのか……あるいは納得がいかないのか、俯いてしまっている。
 俺はあろうことか悪癖を――弁明や解釈のように、慌てて言葉を付け足してしまう。
 要らないのに。あるいは、さらに状況を悪化させるかも知れないのに。

「そんな英雄たちが目の前にいるのに、偉業にのみ眼を向けるのは、相手をただの記号や書物に変えてしまうのと同じくらいの愚行だ。それよりは、そのような偉業を持って成しえた事に向き合い、それに寄り添い、そこから得られる教訓を大事にする事で僅かにでも近くに立って、いつかは英雄だなんて特別な存在が不要になるようにするほうが……良い」

 英雄とは、一種の隔絶や断絶に近い。
 自分らは違うと特別扱いし、その働きや功績を立派だと口にする一方で、相手を人間で無いかのように扱う。
 そして努力を放棄し、自分らの代では不可能でも、何世代か先で若者達がかつて英雄と呼ばれた人たちと同じくらいの事を当たり前のようにこなし、彼らが特別ではない事の証明をすると言う『最大の恩返し』すら無にしてしまうのだから。

 口の中に広がる血の味でヘラがぶつけるように口付けをしてきたのを思い出して、僅かに恥ずかしさを滲ませて彼女の頭を撫でた。

「俺が英雄じゃないってのは、もっと凄い人達を知っていて、その上で皆を特別扱いしない為に自分に言い聞かせてる点も幾らか有る。今はまだ本当の英雄であるあんた等の足元にも及ばない存在だけど、だからと言って俺も英雄になることは無い。なぜならちょっと勇気があって、ちょっと体験や経験が豊富で、ちょっと優れている箇所が有るというだけで……あんた等も人間なんだから」

 そうでも言わないと、俺は直ぐにでも諦めてしまう愚か者だ。
 天才だから、凄い奴だから真似なんか出来るわけが無いと認識してしまったら――本当は追いつけたとしても、真似できたとしてもその人たちを「崖の向こう側」へと追いやってしまう。
 そんな真似、出来るわけがなかった。

 しかし、目が光っていて何らかの影響を受けている相手にこんな説法かましていて良いのだろうか?
 もしさっき想像した『感情増幅』みたいな作用があったとして、これで「本来なら好感度一ポイント上昇する所、十ポイント上昇しました」みたいな事にならないだろうか?
 
「ヤグモざぁん……」

 あ、これアカンわ。
 俺は周囲を見回して、枕を見つけると彼女の顔に押し付けた。

「ぷわっ――」
「さぁて、寝よ寝よ。明日の朝は早いんだ。お城に帰ったら今回使った装備の整備もしなきゃいけないし、ま~た忙しくなるぞ~」
「えぇ~、もうちょっと相手してくださいよ~」
「馬車の中があるだろ。半日も乗ってれば、飽きるほど話も出来るって。それとも、馬車の中で死んだように寝てるほうが良いかな? 日が昇った時間帯、外は良い景色が広がってるのに皆寝てるとか」
「それは……もったいない、ですが――」
「なら寝る。マリーにも言ったけど、起きる時間と寝る時間がずれるのが一番勿体無い」

 そう言って、俺は自分のベッドにさっさと入り込む。
 一応警戒して、あの状態のヘラが何かするのでは無いかと構えたが――特に何も怒らなかった。
 しかし、洗脳か……隙を見てマリーに相談するしかないよなぁ……
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