MEAL GAME -ミール ゲーム-

双守桔梗

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第二章 ゲリラゲーム

第9話 ゲリラゲーム

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めぐる~」
 中庭の自販機近くでペットボトルの抹茶ラテを飲んでいる旋に、F組の男子生徒……りょうの窓から声をかけてきた。

 稜と旋は第一ゲームで出会ったばかりだが、すぐに仲良くなって昼休みや放課後、休日もよく一緒にいる。

 旋は友人の声に反応し、笑顔で手を振った。すると、稜は窓から身を乗り出して、手を振り返してくれる。

「ちょっ……! あんまり身を乗り出したら危ないって!」
「大丈夫だって~。旋はホント、心配性だな~」
 旋は船の上でリツの事を心配した時のように、ヒヤヒヤしながら稜に声をかける。けれども稜が天真爛漫な笑顔で言葉を返してきたので、彼につられるように旋も口元を緩めた。

「そうだ! 今日の放課後さ――」
 稜がそう何か言いかけた瞬間、空から旋の背後に向かって何かが迫ってきた。それに気づいたレイは姿を見せ、旋の背中を守るように立つと、を剣で斬り払う。

 その直後、旋を狙った時よりも素早く、真っ赤な棘が空から伸びてきて――稜の背中から胸を貫いた。間髪入れずに、稜は更に三本の棘で上半身を突き刺され、ズルリと窓の外に引っ張り出される。

 容赦なく下半身も串刺しにされ、逆さまの状態で吊り上げられる稜の血液がボタボタと地面に赤い水溜まりを作る。それと同時に、稜のズボンのポケットからが落ちた。

「稜っ……!!」
 旋は限界まで目を見開き、友人の名を叫んだ。旋の手を離れたペットボトルの中身が、地面に緑色の染みを作る。

 稜は『何が起こったのか分からない』と言いたげな表情のまま絶命し、空を飛んでいるテンシの元へと引き上げられていく。

 突然の事に旋は酷く動揺し、『とにかく稜を助けよう』と地面を蹴った。だが、いつの間にか張られていたドーム状のバリアに行く手を阻まれ、倒れそうになったところをレイに抱きとめられる。それでも諦めず、バリアに殴りかかるが、レイに全力で阻止されてしまう。

「レイ! 離してくれ……!」
「落ち着け、旋。丸腰で飛び出すのは危険だ。それに……あれではもう、彼は……」
 レイの言葉に旋は体を強張らせ、「ジブンのせいで稜は……」と呟いた。

「旋、何を言って――」
「キョフキョフ……キョフキョフ……」
 レイの言葉を遮るように、恐怖のテンシの笑い声が響く。

 旋とレイが睨むように空を見上げると、他の個体より一回り大きい恐怖のテンシのボス……ドロモス・ロート=ファミーユがいた。

「キョフキョフ……タッタ今、ゲリラゲームヲ開始シタ!」
 ドロモスは彼岸花のような真っ赤な翼を広げ、愉快そうに大声で宣言する。

「内容ハ、至ッテ、シンプル。中等部、高等部、大学……ノ三ヵ所ノ、エリア内ニ放ッタ、俺様ノ分身達カラ、逃ゲ切ルダケダ。日ガ沈ンダラ、ゲームハ終了」
 トゲトゲの体を少し開いてドロモスは鳥のような顔をニュッと出し、ニタニタ嗤いながらルール説明をしている。

 一方、旋は怒りの感情が強過ぎて、ドロモスの言葉があまり入ってこない。

「モチロン、逃ゲズニ、戦ッテモ構ワナイ。合計三百体ノ、俺様ノ分身達ヲ、倒セルモノナラナァ!」
 その言葉を合図に、校舎や上空に恐怖のテンシが大量に出現する。『合計三百体』と言うからには、目に見える範囲のテンシを倒してもまだまだ上空から降ってくるのだろう。

「尚、エリアノ移動ハ、禁ズル。デハ、生キ残レルヨウ、精々、頑張ルトイイ」
 ドロモスは勝ちを確信しているかのような口調で最後にそれだけ言うと、「キョフキョフ」と嗤いながらその場からスゥーと消えた。その次の瞬間、テンシ達が一斉に暴れ出し、校舎などを破壊していく。

「……レイ、ここから出してくれ。ジブンは逃げずに戦う」
「……大丈夫なのか、旋」

 旋はミドリの大剣を作り、パーカーのフードを被って戦闘態勢に入る。彼が身に着けている緑色のパーカーと制服は、レイが作ってくれた防護性の高いものだ。とは言え、大量のテンシを相手に戦うとなると、この服もどれだけ持つか分からない。

 何より旋は、目の前で友人を失ったばかりで、戦える精神状態ではないと判断したレイは相棒をバリアの外に出すのを躊躇う。

「大丈夫。テンシの笑い声を聞いて冷静になれたから……それに――」
 旋はそこで一旦、言葉を区切り、大剣で内側からバリアを破壊する。その後、レイの方をチラリと見て、切なげな笑みを浮かべた。

「――レイが拒否しても、勝手に出ていくつもりだったし」
 それだけ言うと旋は地面を蹴った。レイはその背中を見て、即座に旋のサポートに回る事を決め、めっ一色の刀を作り出す。

 跳躍力が上がるスニーカーを履いている旋は、一体のテンシの元へ空高く飛び上がる。そのテンシは稜を手にかけた個体カタキだ。カタキのテンシは旋を煽るように、ずっと彼を見下ろしている。

 テンシは旋に向かって棘を伸ばす。旋は棘を斬り払い、複数のナイフを作り出すと、それを投げた。ナイフは自動で飛び回り、テンシの棘を次々に斬り落とし、回復の余地を与えない。

 テンシに接近した旋は、大剣を片手で振り下ろす。テンシは体を開き、大剣をハサミで受け止めて炎を放つ。旋は空いている方の手を前にかざし、バリアを作り出すと、炎の火力を倍にして跳ね返す。その炎に焼かれて脆くなったハサミに、棘を斬り落としていたナイフが突き刺さる。

 旋は再び大剣を振り下ろし、バリアごとテンシを一刀両断する。

 第一ゲーム終了から約一ヵ月間、旋は勉強だけをしてきた訳ではない。レイやリツ達と共に、テンシと戦えるよう鍛錬を積んできた。それなのに結局、レイにまた守られた上に、目の前で友人を死なせてしまった自分ジブンの事が、旋は許せない。

 真っ二つの状態で、テンシが地面に落ちていく。その近くに着地した旋は、回復の余地を与えぬよう、何度もテンシを斬りつける。

「――る……旋!」
 レイに手を掴まれ、旋はハッとする。正気を取り戻した旋の目の前には、羽を全て失い、動かなくなったテンシの残骸が転がっていた。
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