10 / 63
第二章 ゲリラゲーム
第9話 ゲリラゲーム
しおりを挟む
「旋~」
中庭の自販機近くでペットボトルの抹茶ラテを飲んでいる旋に、F組の男子生徒……稜が二階の窓から声をかけてきた。
稜と旋は第一ゲームで出会ったばかりだが、すぐに仲良くなって昼休みや放課後、休日もよく一緒にいる。
旋は稜の声に反応し、笑顔で手を振った。すると、稜は窓から身を乗り出して、手を振り返してくれる。
「ちょっ……! あんまり身を乗り出したら危ないって!」
「大丈夫だって~。旋はホント、心配性だな~」
旋は船の上でリツの事を心配した時のように、ヒヤヒヤしながら稜に声をかける。けれども稜が天真爛漫な笑顔で言葉を返してきたので、彼につられるように旋も口元を緩めた。
「そうだ! 今日の放課後さ――」
稜がそう何か言いかけた瞬間、空から旋の背後に向かって何かが迫ってきた。それに気づいたレイは姿を見せ、旋の背中を守るように立つと、真っ赤な棘を剣で斬り払う。
その直後、旋を狙った時よりも素早く、真っ赤な棘が空から伸びてきて――稜の背中から胸を貫いた。間髪入れずに、稜は更に三本の棘で上半身を突き刺され、ズルリと窓の外に引っ張り出される。
容赦なく下半身も串刺しにされ、逆さまの状態で吊り上げられる稜の血液がボタボタと地面に赤い水溜まりを作る。それと同時に、稜のズボンのポケットから何かが落ちた。
「稜っ……!!」
旋は限界まで目を見開き、友人の名を叫んだ。旋の手を離れたペットボトルの中身が、地面に緑色の染みを作る。
稜は『何が起こったのか分からない』と言いたげな表情のまま絶命し、空を飛んでいるテンシの元へと引き上げられていく。
突然の事に旋は酷く動揺し、『とにかく稜を助けよう』と地面を蹴った。だが、いつの間にか張られていたドーム状のバリアに行く手を阻まれ、倒れそうになったところをレイに抱きとめられる。それでも諦めず、バリアに殴りかかるが、レイに全力で阻止されてしまう。
「レイ! 離してくれ……!」
「落ち着け、旋。丸腰で飛び出すのは危険だ。それに……あれではもう、彼は……」
レイの言葉に旋は体を強張らせ、「ジブンのせいで稜は……」と呟いた。
「旋、何を言って――」
「キョフキョフ……キョフキョフ……」
レイの言葉を遮るように、恐怖のテンシの笑い声が響く。
旋とレイが睨むように空を見上げると、他の個体より一回り大きい恐怖のテンシのボス……ドロモス・ロート=ファミーユがいた。
「キョフキョフ……タッタ今、ゲリラゲームヲ開始シタ!」
ドロモスは彼岸花のような真っ赤な翼を広げ、愉快そうに大声で宣言する。
「内容ハ、至ッテ、シンプル。中等部、高等部、大学……此ノ三ヵ所ノ、エリア内ニ放ッタ、俺様ノ分身達カラ、逃ゲ切ルダケダ。日ガ沈ンダラ、ゲームハ終了」
トゲトゲの体を少し開いてドロモスは鳥のような顔をニュッと出し、ニタニタ嗤いながらルール説明をしている。
一方、旋は怒りの感情が強過ぎて、ドロモスの言葉があまり入ってこない。
「モチロン、逃ゲズニ、戦ッテモ構ワナイ。合計三百体ノ、俺様ノ分身達ヲ、倒セルモノナラナァ!」
その言葉を合図に、校舎や上空に恐怖のテンシが大量に出現する。『合計三百体』と言うからには、目に見える範囲のテンシを倒してもまだまだ上空から降ってくるのだろう。
「尚、エリアノ移動ハ、禁ズル。デハ、生キ残レルヨウ、精々、頑張ルトイイ」
ドロモスは勝ちを確信しているかのような口調で最後にそれだけ言うと、「キョフキョフ」と嗤いながらその場からスゥーと消えた。その次の瞬間、テンシ達が一斉に暴れ出し、校舎などを破壊していく。
「……レイ、ここから出してくれ。ジブンは逃げずに戦う」
「……大丈夫なのか、旋」
旋は翠の大剣を作り、パーカーのフードを被って戦闘態勢に入る。彼が身に着けている緑色のパーカーと制服は、レイが作ってくれた防護性の高いものだ。とは言え、大量のテンシを相手に戦うとなると、この服もどれだけ持つか分からない。
何より旋は、目の前で稜を失ったばかりで、戦える精神状態ではないと判断したレイは相棒をバリアの外に出すのを躊躇う。
「大丈夫。テンシの笑い声を聞いて冷静になれたから……それに――」
旋はそこで一旦、言葉を区切り、大剣で内側からバリアを破壊する。その後、レイの方をチラリと見て、切なげな笑みを浮かべた。
「――レイが拒否しても、勝手に出ていくつもりだったし」
それだけ言うと旋は地面を蹴った。レイはその背中を見て、即座に旋のサポートに回る事を決め、滅紫一色の刀を作り出す。
跳躍力が上がるスニーカーを履いている旋は、一体のテンシの元へ空高く飛び上がる。そのテンシは稜を手にかけた個体だ。仇のテンシは旋を煽るように、ずっと彼を見下ろしている。
テンシは旋に向かって棘を伸ばす。旋は棘を斬り払い、複数のナイフを作り出すと、それを投げた。ナイフは自動で飛び回り、テンシの棘を次々に斬り落とし、回復の余地を与えない。
テンシに接近した旋は、大剣を片手で振り下ろす。テンシは体を開き、大剣をハサミで受け止めて炎を放つ。旋は空いている方の手を前にかざし、バリアを作り出すと、炎の火力を倍にして跳ね返す。その炎に焼かれて脆くなったハサミに、棘を斬り落としていたナイフが突き刺さる。
旋は再び大剣を振り下ろし、バリアごとテンシを一刀両断する。
第一ゲーム終了から約一ヵ月間、旋は勉強だけをしてきた訳ではない。レイやリツ達と共に、テンシと戦えるよう鍛錬を積んできた。それなのに結局、レイにまた守られた上に、目の前で友人を死なせてしまった自分の事が、旋は許せない。
真っ二つの状態で、テンシが地面に落ちていく。その近くに着地した旋は、回復の余地を与えぬよう、何度もテンシを斬りつける。
「――る……旋!」
レイに手を掴まれ、旋はハッとする。正気を取り戻した旋の目の前には、羽を全て失い、動かなくなったテンシの残骸が転がっていた。
中庭の自販機近くでペットボトルの抹茶ラテを飲んでいる旋に、F組の男子生徒……稜が二階の窓から声をかけてきた。
稜と旋は第一ゲームで出会ったばかりだが、すぐに仲良くなって昼休みや放課後、休日もよく一緒にいる。
旋は稜の声に反応し、笑顔で手を振った。すると、稜は窓から身を乗り出して、手を振り返してくれる。
「ちょっ……! あんまり身を乗り出したら危ないって!」
「大丈夫だって~。旋はホント、心配性だな~」
旋は船の上でリツの事を心配した時のように、ヒヤヒヤしながら稜に声をかける。けれども稜が天真爛漫な笑顔で言葉を返してきたので、彼につられるように旋も口元を緩めた。
「そうだ! 今日の放課後さ――」
稜がそう何か言いかけた瞬間、空から旋の背後に向かって何かが迫ってきた。それに気づいたレイは姿を見せ、旋の背中を守るように立つと、真っ赤な棘を剣で斬り払う。
その直後、旋を狙った時よりも素早く、真っ赤な棘が空から伸びてきて――稜の背中から胸を貫いた。間髪入れずに、稜は更に三本の棘で上半身を突き刺され、ズルリと窓の外に引っ張り出される。
容赦なく下半身も串刺しにされ、逆さまの状態で吊り上げられる稜の血液がボタボタと地面に赤い水溜まりを作る。それと同時に、稜のズボンのポケットから何かが落ちた。
「稜っ……!!」
旋は限界まで目を見開き、友人の名を叫んだ。旋の手を離れたペットボトルの中身が、地面に緑色の染みを作る。
稜は『何が起こったのか分からない』と言いたげな表情のまま絶命し、空を飛んでいるテンシの元へと引き上げられていく。
突然の事に旋は酷く動揺し、『とにかく稜を助けよう』と地面を蹴った。だが、いつの間にか張られていたドーム状のバリアに行く手を阻まれ、倒れそうになったところをレイに抱きとめられる。それでも諦めず、バリアに殴りかかるが、レイに全力で阻止されてしまう。
「レイ! 離してくれ……!」
「落ち着け、旋。丸腰で飛び出すのは危険だ。それに……あれではもう、彼は……」
レイの言葉に旋は体を強張らせ、「ジブンのせいで稜は……」と呟いた。
「旋、何を言って――」
「キョフキョフ……キョフキョフ……」
レイの言葉を遮るように、恐怖のテンシの笑い声が響く。
旋とレイが睨むように空を見上げると、他の個体より一回り大きい恐怖のテンシのボス……ドロモス・ロート=ファミーユがいた。
「キョフキョフ……タッタ今、ゲリラゲームヲ開始シタ!」
ドロモスは彼岸花のような真っ赤な翼を広げ、愉快そうに大声で宣言する。
「内容ハ、至ッテ、シンプル。中等部、高等部、大学……此ノ三ヵ所ノ、エリア内ニ放ッタ、俺様ノ分身達カラ、逃ゲ切ルダケダ。日ガ沈ンダラ、ゲームハ終了」
トゲトゲの体を少し開いてドロモスは鳥のような顔をニュッと出し、ニタニタ嗤いながらルール説明をしている。
一方、旋は怒りの感情が強過ぎて、ドロモスの言葉があまり入ってこない。
「モチロン、逃ゲズニ、戦ッテモ構ワナイ。合計三百体ノ、俺様ノ分身達ヲ、倒セルモノナラナァ!」
その言葉を合図に、校舎や上空に恐怖のテンシが大量に出現する。『合計三百体』と言うからには、目に見える範囲のテンシを倒してもまだまだ上空から降ってくるのだろう。
「尚、エリアノ移動ハ、禁ズル。デハ、生キ残レルヨウ、精々、頑張ルトイイ」
ドロモスは勝ちを確信しているかのような口調で最後にそれだけ言うと、「キョフキョフ」と嗤いながらその場からスゥーと消えた。その次の瞬間、テンシ達が一斉に暴れ出し、校舎などを破壊していく。
「……レイ、ここから出してくれ。ジブンは逃げずに戦う」
「……大丈夫なのか、旋」
旋は翠の大剣を作り、パーカーのフードを被って戦闘態勢に入る。彼が身に着けている緑色のパーカーと制服は、レイが作ってくれた防護性の高いものだ。とは言え、大量のテンシを相手に戦うとなると、この服もどれだけ持つか分からない。
何より旋は、目の前で稜を失ったばかりで、戦える精神状態ではないと判断したレイは相棒をバリアの外に出すのを躊躇う。
「大丈夫。テンシの笑い声を聞いて冷静になれたから……それに――」
旋はそこで一旦、言葉を区切り、大剣で内側からバリアを破壊する。その後、レイの方をチラリと見て、切なげな笑みを浮かべた。
「――レイが拒否しても、勝手に出ていくつもりだったし」
それだけ言うと旋は地面を蹴った。レイはその背中を見て、即座に旋のサポートに回る事を決め、滅紫一色の刀を作り出す。
跳躍力が上がるスニーカーを履いている旋は、一体のテンシの元へ空高く飛び上がる。そのテンシは稜を手にかけた個体だ。仇のテンシは旋を煽るように、ずっと彼を見下ろしている。
テンシは旋に向かって棘を伸ばす。旋は棘を斬り払い、複数のナイフを作り出すと、それを投げた。ナイフは自動で飛び回り、テンシの棘を次々に斬り落とし、回復の余地を与えない。
テンシに接近した旋は、大剣を片手で振り下ろす。テンシは体を開き、大剣をハサミで受け止めて炎を放つ。旋は空いている方の手を前にかざし、バリアを作り出すと、炎の火力を倍にして跳ね返す。その炎に焼かれて脆くなったハサミに、棘を斬り落としていたナイフが突き刺さる。
旋は再び大剣を振り下ろし、バリアごとテンシを一刀両断する。
第一ゲーム終了から約一ヵ月間、旋は勉強だけをしてきた訳ではない。レイやリツ達と共に、テンシと戦えるよう鍛錬を積んできた。それなのに結局、レイにまた守られた上に、目の前で友人を死なせてしまった自分の事が、旋は許せない。
真っ二つの状態で、テンシが地面に落ちていく。その近くに着地した旋は、回復の余地を与えぬよう、何度もテンシを斬りつける。
「――る……旋!」
レイに手を掴まれ、旋はハッとする。正気を取り戻した旋の目の前には、羽を全て失い、動かなくなったテンシの残骸が転がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる