MEAL GAME -ミール ゲーム-

双守桔梗

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第四章 記憶の返還と

第49話 創造のカミとの契約と共闘

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 イツキとれつさんに他の生徒の手助けをお願いし、三人と別れた後。めぐるは強制的にまたに抱えられ、そのままミドリを基調とした神殿まで連れて行かれた。

「あの……なんかごめんね。それから、ありがとう。腕とか大丈夫?」
「ふふっ……幼馴染やお兄様より軽かったので大丈夫ですわ。それに良いトレーニングにもなりましたし、こちらこそありがとうございます」
 莉愛は優雅に微笑みながら優しく旋を下ろすと、ペコリとお辞儀をする。『お兄様』と口にした際、旋の目には莉愛が悲しげな表情をしたように見えた。だが、あまりにも一瞬だった為、気のせいかもしれないと思った。

おとなしさんが神殿の中へ入った後、わたくし達は他の方々の加勢に向かいますわ」
「分かった。気をつけてね」
「えぇ。鳴無さんも……契約後であっても、あまり無茶はしないでくださいね」
 少し困ったような表情の莉愛にそう言われ、旋は先程の自分の行動を振り返った後に本気で反省し、力強く頷いた。

「じゃあ、また後で」
「えぇ。また会いましょう」
 一礼する莉愛に旋は、同じようにお辞儀をしてから小さく手を振った後、神殿の扉の方を向く。
「よし……」
 旋は一息ついてから、神殿の扉の穴に鍵をさして開錠する。扉を開けば、歌劇場と同じように外から見るより明らかに広い空間が、旋の視界に飛び込んできた。

 高い天井を見上げながら旋が神殿に足を踏み入れると、下駄が床を踏み鳴らす音が彼の耳に届く。その音に反応して旋が正面を向くと、金髪の男性が近づいてきているのが見えた。男性は旋の目の前まで駆け寄ってくると、彼の手を取って安堵の表情を浮かべる。

「よかった……」
 背の高いその男性は屈んで旋と目線を合わせると、手をぎゅっと握って微笑んだ。
「えっと……」
「おっと、いきなりすまんの。嬉しくてつい、手を握ってもうた」
 旋が戸惑っている事に気がついたのか、男性は申し訳なさそうな……それでいて少し恥ずかしそうな表情で手を離す。
「いえ、歓迎してもらえて、ジブンもうれしいです」
 そう言って旋が微笑むと、男性もつられるように「それなら良かった」と笑う。

「自己紹介がまだじゃったな。俺はファシアス・リヤン・シャッフェン。これでもカミ族の長をしておる。これからよろしく頼む」
「ジブンは鳴無旋です。こちらこそ、よろしくお願いします、ファシアスさん」
「敬語もさん付けも堅苦しいから不要じゃ。ファシアスで良い」
「わかった。よろしく、ファシアス」
 その言葉にファシアスは満足そうな顔で「うむ」と返事をし、旋の肩をポンポンと軽く叩いた。

「ところで、扉が閉まる直前にフェンと人の子の姿が少し見えたが……もしや契約の事などは既に聞いておるのか?」
「うん。バッチリ聞いてるよ」
「では早速、俺と契約を結んでくれるかの?」
「うん!」
 旋は元気よく返事をした後、ファシアスに差し出された手を握る。すると、彼らの手は淡い緑色の光に包まれ、数秒程でその輝きは消えた。

「これで契約は完了じゃ。俺は……旋と共に全力で戦い、御前さんを絶対に卒業まで導くと誓う。だから旋は全てのゲームをクリアし、生きてこの学園を卒業すると誓ってくれんか?」
 ファシアスは真剣な表情でそう言い、旋の手を握る力を僅かに強めた。
「うん! 分かった!」
 ファシアスの真摯な言葉と眼差しを受け、旋は力強く頷いてから笑った。するとファシアスは少し泣きそうな顔をしたが、すぐに「約束じゃぞ」と言って微笑み、ゆっくりと手を離した。

 その後、旋はファシアスから『想像したモノを具現化する能力』の使い方を教わり、頭の中に思い描いた大剣を作り出す事に成功する。
「おぉ! 最初からここまでしっかりした物を作り出せるとは……なかなかやるのぉ旋。しかも、御前さんでも使いこなせるように軽くしておるな? おまけにテンシを斬る時のみ、殺傷能力を発揮する大剣なのではないか?」
「うん、なんで分かったんだ?」
「ふっふっふっ……特に理由はない! なんとなくの勘じゃ!」
「なんとなくで分かるのか! カミサマはすごいな~。ちなみにこの大剣は、テンシだけを吸い込む竜巻も作り出せるんだ」
「なに!? それは気づかんかった! とても良いアイデアじゃな、旋!」
「へへっ……ありがとう」
 旋はファシアスに頭を撫でられ、少し照れくさい気持ちもあったが、それよりも嬉しさが勝った為、自然と笑みがこぼれた。そんな彼をファシアスは目を細め、じっと見つめる。

「そうじゃ旋、このマントを身に着けておくといい」
 ファシアスはふと思い出したように、旋に合ったサイズのフード付き黒マントを作り出し、彼の肩にかけてボタンを留める。旋は「ありがとう」とお礼を言うと、不思議そうにマントをヒラヒラさせた。

「人の体は脆いからのぉ……。急ごしらえの防護服のような物だが、ないよりはマシじゃろ。御前さんの身を護るきちんとした衣服はまた後日、渡すから今はそれで我慢してくれんかの」
「うん。いろいろとありがとな、ファシアス」
「うむ。では共に行こう、旋」
 ファシアスはそう言うと深緑を基調とした大剣を作り出し、扉の方へと歩き出す。そして勢いよく扉を開いて外に飛び出すと、豪快に大剣を横一線に振った。

「甘い! この俺にそう何度も同じ手が通用する訳がなかろう!」
 ファシアスの後ろにいた旋には何が起こったのか、直ぐには理解できなかった。けれどもテンシの叫び声が聞こえ、斬られた身体の一部が見えると、いきなり襲撃されたのだと理解する。
「ファシアス!」
「心配するな、旋! 俺はこの程度では負けん!」

 駆け寄ってきた旋を後ろに隠すようにファシアスは手を広げると、蜂と蝶型の小さなロボットのような物を作り出して周囲に飛ばす。そのロボットはテンシの体を貫通したり、切り裂いたりして縦横無尽に飛び回る。少し離れた場所にいるテンシの元へ飛んでいったロボットは、まるで花火のように爆発した。接近してきたテンシはファシアスが大剣で斬り裂き、確実にダメージを与えていく。

 ファシアスに守ってもらうだけではダメだ。そう思った旋はファシアスと背中合わせになり、彼が僅かに捌き切れなかったテンシの攻撃を大剣で防ぐ。
「すまぬ! ありがとう! しかし、あまり無理はするでないぞ!」
「うん! でも、ジブンもちゃんと戦いたいんだ。『共に全力で戦う』って約束したしさ!」
 旋はそう言って大剣で竜巻を作り出してから、ファシアスの方を見てニッと笑う。ファシアスもチラリと旋の方を見て、彼と目が合うとどこか嬉しそうに口元を緩めた。
「そうじゃな。共に戦おう、旋」
「うん!」
 それだけ言葉を交わすと彼らは互いに背中を預け合い、正面を見据えてテンシとの戦いを繰り広げる。

「くっ……!」
「大丈夫か、旋!」
「うん、ありがとう」
 旋がテンシからの巨大ハサミでの攻撃を大剣で弾いた際、よろけて転びそうになった。だが、ファシアスが旋を受け止め、尚且つ隙をついてきたテンシの攻撃も飛び回るロボットで防いだ。

 初めて戦うが故に、旋は他にも危なっかしいところがあったものの、必ずファシアスがフォローして事なきを得る。旋もまた、たどたどしくはあるが、何度もファシアスの背中を守った。守りきるために複数のナイフを作り出し、ファシアスに倣って自由自在に飛ばしたりもした。

 テンシの素早い動きはファシアスが捌き、彼の視界に入らない攻撃は旋が大剣とナイフで防ぎ続けた。そんな風に初対面とは思えない程、旋とファシアスは息の合った動きでテンシを倒しつつ、他の参加者の手助けもした。

 それからしばらくして不気味な音の鐘が鳴り、ゲーム終了のアナウンスが流れる。
 旋がファシアスと共に広場へ向かうと、多くの生徒とその相棒が集まっており、莉愛やイツキ達三人組の姿もあった。

「ご無事で良かったですわ」
「うん。さんとたかはじくん達も無事でよかった」
「おうよ! おれ達の大勝利だな!」
「やっぱり正義は勝つんだよ~!」
「烈とイツキがヒーローの世界観で騒いでごめんね……」

 烈とイツキが笑顔で握り拳を旋に向けて突き出すと、燦也は二人を呆れたような目で見つめながら謝罪した。彼らの言葉に旋は穏やかに笑い、烈とイツキと順番に拳を合わせていく。

「莉愛ちと燦也も!」
「へ……こ、これで合っていますか?」
「うん! いえーい!」
 少し戸惑っている様子の莉愛もイツキ、それから烈と旋とも同じように拳を合わせる。その後、旋達に一斉に見つめられた燦也も渋々、四人と順番に拳を合わせていった。

 そんな風に彼らは互いの無事を喜び合い、これからも協力し合ってゲームをクリアしていこうと約束する。

 やり取りを一通り終えると、旋はファシアスの方を見て拳を突き出す。
「たくさん助けてくれてありがとう。いつかはジブンもファシアスのことを助けられるように頑張る」
「ふっ……何を言う。御前さんも助けてくれたではないか。本当に感謝する。ありがとう」
 ファシアスが拳を合わせてニッと笑うと、それにつられるように旋の口元も緩んだ。

「改めてよろしく、ファシアス」
「あぁ。よろしく頼む、旋」
 二人がそう言葉を交わし合った直後、生徒に向けたアナウンスが流れ始めた。
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