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第四章 記憶の返還と
第55話 気持ちと決意
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「『妹』って聞くと反射的に動くクセをどうにかしたい……」
噴水があるフリースペース内のベンチに座っている旋は、両手で顔を覆って項垂れた。彼の隣に座るファシアスは「ふっふっふっ……」と、どこか微笑ましそうな声を出し、旋の肩をポンポンと優しく叩く。
――これは旋がジュンに「ジブンと友達になろうよ」と言った後の事。
困惑顔のジュンに「意味分かんない」と手を振り払われた事で、旋はハッと我に返った。
ジュンは近くを浮遊していた二体の宇宙人のぬいぐるみに触れると、素早くソファベッドの後ろに隠れた。そのぬいぐるみ達は見る見るうちに大きくなり、驚く旋とファシアスはそれぞれお姫様抱っこされてしまう。そのまま有無を言わさず、今いるフリースペースまで運ばれ、二体のぬいぐるみは職員寮へと帰っていった。
ぬいぐるみに運ばれている最中、旋は『やってしまった』と思い、大人しく反省していた。職員寮へと帰っていく二体のぬいぐるみの背中が見えなくなると、先程の自分の言動を思い返して恥ずかしくなり、その場に蹲る。
豪快に笑うファシアスにしばらく頭を撫でられ、その後ベンチに座るよう促された為、旋は一度立ち上がってフラフラと移動した。そして何故、自分があのような行動に出てしまったのかなどを、ファシアスに語った――。
「さっきも言ったけどさ。糸樹くんに友達になろうって言ったことに関しては本当に、後悔はしていないんだ。けど、糸樹くんのあの反応からして、嫌われてしまっただろし……。ジブンと友達になってくれないだろうなぁと思って……」
旋は顔を上げて、ファシアスの目を見ながら落ち込んだ声を出す。
ファシアスは「ふむ……」と呟いて少しの間、空を眺めた後、ニッと笑って旋の顔を見た。
「案外、嫌われていないかもしれんぞ? 返事は拒否の言葉ではなく、『意味分かんない』だったじゃろ? 表情も困惑一色じゃったし、俺達をあんなに優しく運んでくれたではないか。だから友になれるかは分らんが、嫌われてはない筈じゃ」
「……もし、ファシアスが言うように、嫌われてはなかったとしてさ……。それでも、糸樹くんと友達になるのは諦めた方がいいのかな……?」
旋はジュンの言葉を冷静に思い返し、ファシアスの目をじっと見つめて恐る恐る問いかけた。旋にはジュンの事情は分からない。だが、ジュンの言葉から彼の優しさや覚悟は感じ取れた。だからいくら友達になりたくても、彼の邪魔にならないように、諦めるべきだと解っている。
できる事なら、彼にも生きていてほしい。ジブンも一緒に彼の目的を果たしたい。けど、優しい彼はきっとそれを望まず、ジブンを遠ざけるだろう。だからファシアスに『諦めろ』と言ってほしかった。そうすれば諦められるから。本当は背中を押してほしい気持ちを、心の奥底に隠して……。
そんな旋の考えが、ファシアスに届いたのだろうか。ファシアスは一瞬だけ目を見開いた後、優しい表情で旋の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ファシアス……?」
「旋よ、俺の話を聞いてくれるか? 『ルーザー』と呼ばれる人の子……ジュン達の話を……」
「え……もちろん構わないけど……それってジブンが聞いてもいい話なのか……?」
「うむ。俺にも深く関係のある事じゃからな。だから俺の身の上話も込みになるが……それでも旋が良ければ聞いてほしい。その話を聞いた上で、旋には改めてジュンと友になりたいか考えてほしいんじゃ」
ファシアスは少し泣きそうな顔で、真剣に旋にそう言った。
「……わかった。ジブンも知りたい。ファシアスと糸樹くんのことを」
そう言って旋は姿勢を正すと、ファシアスの目を真っすぐ見つめ返した。
ファシアスの瞳が僅かに揺れる。彼は一瞬だけ視線を逸らした後、また旋の目を見てから敗者について話し始める。
旋はその残酷な内容に心を痛めながらも、決して目を逸らさずにファシアスの話を聞き続ける。
「――俺は敗北した側のリーダーである海斗……那々折家の次男の相棒だったんじゃ。最終ゲームで……彼は命を落とし、那々折家側の敗北が決まった。俺は海斗を守れんかった。俺の所為で彼らは……」
「それは違う……! ファシアスの所為じゃない……! 誰かの所為とかじゃなくて……そんなの全部テンシが悪いのに……だから、自分を責めないでくれ……」
苦しそうなファシアスの言葉を旋は勢いで否定するが、自分の気持ちを上手く説明できずもどかしくなる。それがファシアスにも伝わったのか、彼は小さく笑って「ありがとう」と言いながら旋の頭を撫でる。
「だがな旋、違わなくはないんじゃよ。……その前に相棒だった人の子も、俺は守れなくて……その事を引きずっていた。運営同士の戦いの最中もずっと、立ち直れないままで、俺が海斗の足を引っ張ってしまった。だから那々折家側の敗北は俺の所為なんだ……」
ファシアスは空を見上げながらそう言った後、唇を強く噛みしめた。今にも泣き出しそうな彼の横顔を見て、旋は思わずファシアスを勢いよく横から抱きしめる。
「旋……?」
「それでも……ジブンはファシアスの所為じゃないって言い続ける……。ファシアスの所為じゃない」
旋はファシアスの左肩に額をくっつけ、ぎゅっと力を込めて彼を抱きしめ、微かに震える声ではっきりとそう伝えた。
しばらくの沈黙が流れた後、ファシアスは消え入りそうな声で「ありがとう」と言った。
「……本当にそんなつもりはなかったんじゃが……心の奥底では『罪滅ぼし』のつもりだったのかもしれんな……」
不意にファシアスがそう口にした為、旋は身体を離して彼の顔を見る。するとファシアスは申し訳なさそうな表情で、旋の顔を見ていた。
「運営に彼ら……ルーザーの人の子と相棒になりたいと頼んだが、今は相性の合う者がおらんからと断られた。カミ族の長が相棒でもない人の子の肩を持つなと叱られもした。他の者達に示しがつかなくなるからと。だったらせめて、彼らの事を静かに見守ろうと思っておったのじゃがな……」
ファシアスの言葉に旋は時々、小さな声で相槌を打ちながら真剣に話を聞く。
「彼らにも希望があると分かった途端、余計な願望まで抱くようになってしまった。正直、友の相棒だからと、贔屓目に見ているのもあるのじゃろうな。おまけにジュンは昔のレイによく似ておるからか、ついお節介を焼きたくなってしまうんじゃよ」
ファシアスは『昔のレイ』の部分で一瞬だけ笑った後、どこか愁いがこもった表情で話を続ける。
「それ故、ゲームから解放された後も共に進んでゆける、心許せる友をジュンにも作ってほしいと思った。だからジュンと気が合いそうな旋を紹介したんじゃが……」
そこまで話すとファシアスは一旦、言葉を切って「ふぅー……」と息を吐く。それから自分の頬を掻きながら眉毛を八の字にして笑った。
「ジュンの言う通り、どこかで償いの心があったのかもしれん。自分自身でも気づかぬ、心の奥深くにあった感情が、ジュンには伝わっていたのかもしれないと思おてな。だから旋、この度は本当に……」
「まって! もしかして今、謝ろうとしてる……?」
旋はファシアスの言葉を遮り、食い気味に問いかける。そして、ファシアスが目を丸くしつつ「その通りじゃが……」と答えると、旋は小さく首を横に振る。
「この件に関してはファシアスに謝ってほしくない。だって仮に、本当に償いの心があったとしても、ジブンはそれを悪いことだとは思わないから。それに何より、糸樹くんと出会えてよかったって、ジブンは思ってるから」
最後の言葉は少しだけ照れくさくて、旋の声は徐々に小さくなっていく。
「……やはり旋は誠実で優しくて愛いのぉ」
「ちょ、またそれ~?」
旋はファシアスに頭を撫でられながら褒められて、照れから口元が緩む。けれどもすぐに表情を引き締め、ファシアスの瞳を真っすぐ見つめる。
「ファシアスが言ってた『テンシを殲滅しようとしている人の子』の話、実はジブンも心当たりがあってさ。もしかしたら、その計画にジブン達も協力できるかもしれない」
旋は莉愛と煌寿の会話を思い出し、ファシアスにそう伝える。すると、ファシアスは明らかに困ったような顔をした。
「その件に関してじゃが……それには旋を巻き込む気は……」
「え、糸樹くんと友達になってほしいと思いながら、そこは有耶無耶にしてジブンの事だけ遠ざけようとしてたってこと?」
「うっ……まぁ、そういう事じゃな……」
どこか気まずそうなファシアスの言葉に、旋は思わず唇を尖らせる。
「流石にそれはジブン達に都合が良過ぎだと思う。それにジブンが参加しないと、ファシアスだって協力できないんじゃないのか?」
「それは……そうなんじゃが……そこはどうにかして俺だけでも……」
「ダメだ! 糸樹くんと友達になるからには、ジブンだって協力したいんだ」
「しかし、それは余りにも危険……ん……? 今、ジュンと友になると言ったか?」
旋の怒りがしっかり伝わっているようで、ファシアスは若干たじろいでいる。だが、ふと旋の言葉が引っかかったのか、きょとんとした顔になる。
「うん。あの部屋を見た瞬間さ、糸樹くんと気が合いそうだと直感したし。妹を大切にしているのも分かって、ますます仲良くなりたいと思ったんだ。だからやっぱり今すぐには諦めずに、糸樹くんに友達になってほしいって、改めて伝えに行こうと決めたんだ」
旋がそう言ってはにかむと、ファシアスはどこか嬉しそうに笑い、けれども少しだけ躊躇い気味に「応援しておるぞ」と言った。
噴水があるフリースペース内のベンチに座っている旋は、両手で顔を覆って項垂れた。彼の隣に座るファシアスは「ふっふっふっ……」と、どこか微笑ましそうな声を出し、旋の肩をポンポンと優しく叩く。
――これは旋がジュンに「ジブンと友達になろうよ」と言った後の事。
困惑顔のジュンに「意味分かんない」と手を振り払われた事で、旋はハッと我に返った。
ジュンは近くを浮遊していた二体の宇宙人のぬいぐるみに触れると、素早くソファベッドの後ろに隠れた。そのぬいぐるみ達は見る見るうちに大きくなり、驚く旋とファシアスはそれぞれお姫様抱っこされてしまう。そのまま有無を言わさず、今いるフリースペースまで運ばれ、二体のぬいぐるみは職員寮へと帰っていった。
ぬいぐるみに運ばれている最中、旋は『やってしまった』と思い、大人しく反省していた。職員寮へと帰っていく二体のぬいぐるみの背中が見えなくなると、先程の自分の言動を思い返して恥ずかしくなり、その場に蹲る。
豪快に笑うファシアスにしばらく頭を撫でられ、その後ベンチに座るよう促された為、旋は一度立ち上がってフラフラと移動した。そして何故、自分があのような行動に出てしまったのかなどを、ファシアスに語った――。
「さっきも言ったけどさ。糸樹くんに友達になろうって言ったことに関しては本当に、後悔はしていないんだ。けど、糸樹くんのあの反応からして、嫌われてしまっただろし……。ジブンと友達になってくれないだろうなぁと思って……」
旋は顔を上げて、ファシアスの目を見ながら落ち込んだ声を出す。
ファシアスは「ふむ……」と呟いて少しの間、空を眺めた後、ニッと笑って旋の顔を見た。
「案外、嫌われていないかもしれんぞ? 返事は拒否の言葉ではなく、『意味分かんない』だったじゃろ? 表情も困惑一色じゃったし、俺達をあんなに優しく運んでくれたではないか。だから友になれるかは分らんが、嫌われてはない筈じゃ」
「……もし、ファシアスが言うように、嫌われてはなかったとしてさ……。それでも、糸樹くんと友達になるのは諦めた方がいいのかな……?」
旋はジュンの言葉を冷静に思い返し、ファシアスの目をじっと見つめて恐る恐る問いかけた。旋にはジュンの事情は分からない。だが、ジュンの言葉から彼の優しさや覚悟は感じ取れた。だからいくら友達になりたくても、彼の邪魔にならないように、諦めるべきだと解っている。
できる事なら、彼にも生きていてほしい。ジブンも一緒に彼の目的を果たしたい。けど、優しい彼はきっとそれを望まず、ジブンを遠ざけるだろう。だからファシアスに『諦めろ』と言ってほしかった。そうすれば諦められるから。本当は背中を押してほしい気持ちを、心の奥底に隠して……。
そんな旋の考えが、ファシアスに届いたのだろうか。ファシアスは一瞬だけ目を見開いた後、優しい表情で旋の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ファシアス……?」
「旋よ、俺の話を聞いてくれるか? 『ルーザー』と呼ばれる人の子……ジュン達の話を……」
「え……もちろん構わないけど……それってジブンが聞いてもいい話なのか……?」
「うむ。俺にも深く関係のある事じゃからな。だから俺の身の上話も込みになるが……それでも旋が良ければ聞いてほしい。その話を聞いた上で、旋には改めてジュンと友になりたいか考えてほしいんじゃ」
ファシアスは少し泣きそうな顔で、真剣に旋にそう言った。
「……わかった。ジブンも知りたい。ファシアスと糸樹くんのことを」
そう言って旋は姿勢を正すと、ファシアスの目を真っすぐ見つめ返した。
ファシアスの瞳が僅かに揺れる。彼は一瞬だけ視線を逸らした後、また旋の目を見てから敗者について話し始める。
旋はその残酷な内容に心を痛めながらも、決して目を逸らさずにファシアスの話を聞き続ける。
「――俺は敗北した側のリーダーである海斗……那々折家の次男の相棒だったんじゃ。最終ゲームで……彼は命を落とし、那々折家側の敗北が決まった。俺は海斗を守れんかった。俺の所為で彼らは……」
「それは違う……! ファシアスの所為じゃない……! 誰かの所為とかじゃなくて……そんなの全部テンシが悪いのに……だから、自分を責めないでくれ……」
苦しそうなファシアスの言葉を旋は勢いで否定するが、自分の気持ちを上手く説明できずもどかしくなる。それがファシアスにも伝わったのか、彼は小さく笑って「ありがとう」と言いながら旋の頭を撫でる。
「だがな旋、違わなくはないんじゃよ。……その前に相棒だった人の子も、俺は守れなくて……その事を引きずっていた。運営同士の戦いの最中もずっと、立ち直れないままで、俺が海斗の足を引っ張ってしまった。だから那々折家側の敗北は俺の所為なんだ……」
ファシアスは空を見上げながらそう言った後、唇を強く噛みしめた。今にも泣き出しそうな彼の横顔を見て、旋は思わずファシアスを勢いよく横から抱きしめる。
「旋……?」
「それでも……ジブンはファシアスの所為じゃないって言い続ける……。ファシアスの所為じゃない」
旋はファシアスの左肩に額をくっつけ、ぎゅっと力を込めて彼を抱きしめ、微かに震える声ではっきりとそう伝えた。
しばらくの沈黙が流れた後、ファシアスは消え入りそうな声で「ありがとう」と言った。
「……本当にそんなつもりはなかったんじゃが……心の奥底では『罪滅ぼし』のつもりだったのかもしれんな……」
不意にファシアスがそう口にした為、旋は身体を離して彼の顔を見る。するとファシアスは申し訳なさそうな表情で、旋の顔を見ていた。
「運営に彼ら……ルーザーの人の子と相棒になりたいと頼んだが、今は相性の合う者がおらんからと断られた。カミ族の長が相棒でもない人の子の肩を持つなと叱られもした。他の者達に示しがつかなくなるからと。だったらせめて、彼らの事を静かに見守ろうと思っておったのじゃがな……」
ファシアスの言葉に旋は時々、小さな声で相槌を打ちながら真剣に話を聞く。
「彼らにも希望があると分かった途端、余計な願望まで抱くようになってしまった。正直、友の相棒だからと、贔屓目に見ているのもあるのじゃろうな。おまけにジュンは昔のレイによく似ておるからか、ついお節介を焼きたくなってしまうんじゃよ」
ファシアスは『昔のレイ』の部分で一瞬だけ笑った後、どこか愁いがこもった表情で話を続ける。
「それ故、ゲームから解放された後も共に進んでゆける、心許せる友をジュンにも作ってほしいと思った。だからジュンと気が合いそうな旋を紹介したんじゃが……」
そこまで話すとファシアスは一旦、言葉を切って「ふぅー……」と息を吐く。それから自分の頬を掻きながら眉毛を八の字にして笑った。
「ジュンの言う通り、どこかで償いの心があったのかもしれん。自分自身でも気づかぬ、心の奥深くにあった感情が、ジュンには伝わっていたのかもしれないと思おてな。だから旋、この度は本当に……」
「まって! もしかして今、謝ろうとしてる……?」
旋はファシアスの言葉を遮り、食い気味に問いかける。そして、ファシアスが目を丸くしつつ「その通りじゃが……」と答えると、旋は小さく首を横に振る。
「この件に関してはファシアスに謝ってほしくない。だって仮に、本当に償いの心があったとしても、ジブンはそれを悪いことだとは思わないから。それに何より、糸樹くんと出会えてよかったって、ジブンは思ってるから」
最後の言葉は少しだけ照れくさくて、旋の声は徐々に小さくなっていく。
「……やはり旋は誠実で優しくて愛いのぉ」
「ちょ、またそれ~?」
旋はファシアスに頭を撫でられながら褒められて、照れから口元が緩む。けれどもすぐに表情を引き締め、ファシアスの瞳を真っすぐ見つめる。
「ファシアスが言ってた『テンシを殲滅しようとしている人の子』の話、実はジブンも心当たりがあってさ。もしかしたら、その計画にジブン達も協力できるかもしれない」
旋は莉愛と煌寿の会話を思い出し、ファシアスにそう伝える。すると、ファシアスは明らかに困ったような顔をした。
「その件に関してじゃが……それには旋を巻き込む気は……」
「え、糸樹くんと友達になってほしいと思いながら、そこは有耶無耶にしてジブンの事だけ遠ざけようとしてたってこと?」
「うっ……まぁ、そういう事じゃな……」
どこか気まずそうなファシアスの言葉に、旋は思わず唇を尖らせる。
「流石にそれはジブン達に都合が良過ぎだと思う。それにジブンが参加しないと、ファシアスだって協力できないんじゃないのか?」
「それは……そうなんじゃが……そこはどうにかして俺だけでも……」
「ダメだ! 糸樹くんと友達になるからには、ジブンだって協力したいんだ」
「しかし、それは余りにも危険……ん……? 今、ジュンと友になると言ったか?」
旋の怒りがしっかり伝わっているようで、ファシアスは若干たじろいでいる。だが、ふと旋の言葉が引っかかったのか、きょとんとした顔になる。
「うん。あの部屋を見た瞬間さ、糸樹くんと気が合いそうだと直感したし。妹を大切にしているのも分かって、ますます仲良くなりたいと思ったんだ。だからやっぱり今すぐには諦めずに、糸樹くんに友達になってほしいって、改めて伝えに行こうと決めたんだ」
旋がそう言ってはにかむと、ファシアスはどこか嬉しそうに笑い、けれども少しだけ躊躇い気味に「応援しておるぞ」と言った。
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