深夜の散歩、鳥居前にて。

双守桔梗

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後日談

深夜二時、集合場所は鳥居前

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 深夜一時半過ぎ。居酒屋のバイトが終わったはやかわイツキは店を出ると、家とは反対方向に歩を進める。途中でコンビニに寄り、チューハイとカップ酒を買ってから、あの鳥居を目指した。

「遅いぞ! 早河イツキ!」
 目的地に着くと、長身の男が鳥居の上で、イツキを待ち構えていた。男は大正時代を思わせる格好をしており、独特の雰囲気を纏っている。

「いつも通り、二時には間に合っただろ」
 鳥居から降りてきた男に、イツキはスマホの画面を見せた。『2:00』の表示を目にした男は「む……確かにそうだな」と言い、大人しく引き下がる。

 イツキは少し呆れながらスマホを仕舞おうとしたが、男にひょいっと抱き上げられてしまい、それは叶わなかった。男はイツキを抱きかかえたまま、軽やかに飛び上がり、高い鳥居の上に立つ。

「……あのさぁカミサマ、何も言わずに抱きかかえるのだけはやめてくれって、いつも言ってるよな?」
 鳥居の上に座らされたイツキはジト目で、男に……カミサマにそう訴えかける。自称・鳥居のカミサマである男はイツキの隣に腰掛け、「何か問題でもあるのか?」と首を傾げた。

 カミサマのいつも通りの反応にイツキはため息をつき、背負っていたリュックにスマホを仕舞うと、袋を取り出した。その中には、気前のいい居酒屋の店主からもらった、パック容器に詰められた串の盛り合わせが入っている。イツキはパック容器から輪ゴムを外し、自分とカミサマの間に置く。それからコンビニで買ったカップ酒をカミサマに差し出し、イツキは缶チューハイを開ける。 

「うむ、本日の供物も悪くないな」
 カミサマはそう言いながら、嬉しそうに焼き鳥串を口にし、カップ酒を呷る。それを見たイツキは小さく笑うと、焼き鳥を頬張ってからチューハイを飲んだ。

 このカミサマに絡まれた日、イツキは面倒事に巻き込まれたと思っていた。しかし、定期的に鳥居へ通い続けた事で、いつしかカミサマに絆されてしまったらしい。その証拠に、バイトが終われば必ずここを訪れ、休みの日でもたまに手作り料理を持ってカミサマに会いに来ている。彼と過ごすこの時間が、不思議と心地の良いものだと、感じるようになったのだ。





 朝日が昇る少し前、イツキはカミサマに鳥居から降ろしてもらった。

「また来るが良い」
「おう! またな」

 イツキはご機嫌なカミサマに手を振ると、帰路につく。
 少し歩いて振り返ると、カミサマの姿は薄くなっており、朝日が昇り始めると彼は完全に消えてしまう。

 ──次もまた、深夜二時に、集合場所は鳥居前だからな。

 なんとなく不安になったイツキが心の中でそう呟くと、『あぁ』と返事が聞こえてくる。
 いつもと変わらないその声に、安堵したイツキは朝日を背に再び歩き出した。
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