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ないか!突然のことに動揺していると耳元で囁かれたので思わずドキッとしたがなんとか平静を装って聞き返すことにしたのだった。すると予想外の答えが返ってきたので更に驚くことになった。「お前が好きだ、付き合ってくれ」
一瞬、何を言っているのか理解できなかったが徐々に頭が追いついてくると途端に顔が熱くなるのを感じた。まさかそんなことを言われるなんて思ってもみなかったからである。恥ずかしさのあまり俯いて黙り込んでいると再び声を掛けられた。
「返事はどうした?」
急かすように言われてしまい余計に焦ってしまう私だったが意を決して答えることにした。「わ、私も好きです」消え入りそうな声ではあったもののどうにか伝えることができたようだ。それを聞いた彼女は嬉しそうな表情を浮かべると私に抱きついてきた。「ありがとう、嬉しいぞ」と言いながら頬擦りしてくる彼女を受け止めつつ、これからどうなるのか不安を感じていたのであった。
それからというものの、毎日のように魔王が遊びに来るようになっていた。しかも決まって夜遅くにやって来るものだから最初は迷惑していたものだが今ではすっかり慣れてしまった自分がいることに気付いて愕然としたものである。それに最近では彼女と過ごす時間が楽しく感じるようになってきており、我ながら単純だなぁと思うと同時にこれが恋というものなのかなと考えるようになっていったのだ。
そんなある日のこと、いつものように畑仕事をしている最中にふと視線を感じて振り返るとそこに立っていたのはリリィールだった。どうやらずっと見ていたらしいが一体何の用だろうか?不思議に思っていると彼女は近づいてきて言った。「あのですね、今度一緒にお出かけしませんか?」唐突に誘われたことに驚きつつも断る理由もないので承諾することにした。それから数日後、待ち合わせ場所にやってきた私を見た彼女は笑顔で出迎えてくれたのだがその姿を見た瞬間、胸が高鳴るような感覚を覚えたことからやはり自分はこの子に惚れているのだということを自覚することとなった。
そんなことを考えている間に目的地に到着したようで馬車が止まったので降りることにする。そこは森の中にある小さな泉だった。水面には青空が映っており、周囲には色とりどりの花が咲き乱れている光景は非常に美しいものであったため感動してしまったほどだ。しばらくの間、見惚れていたがいつまでもこうしているわけにもいかないので声をかけることにした。
「綺麗ね……」私が呟くように言うと彼女も同意するように頷いていた。それからしばらく二人で景色を眺めていたのだが不意に彼女が口を開いたかと思うと思いがけない言葉を口にしたのである。その内容とは「そろそろ帰りましょうか」というものだったのだ!その言葉に耳を疑った私は聞き間違いではないかと疑っていたがどうやら本当だったようだ。困惑する私を他所にさっさと歩き始める彼女を慌てて追いかける羽目になったのは言うまでもあるまい……まったく自分勝手なんだから困ったものだよ全くもう……ぶつぶつ文句を言いながら歩いているうちにいつの間にか村の入口付近まで戻ってきていたのでそこで別れることにしたんだ。別れ際、手を振ってくれた彼女の顔を思い出しながら家路につくことにした私は幸せな気分に浸っていたせいか自然と笑みが溢れていたことに気づくことはなかったのである。
あれから数日が経過したある日のこと、いつものように畑仕事をしていたら突然声をかけられたので振り向くとそこにはリリィールが立っていたのだ!驚いて固まっていると彼女が話しかけてきたので我に返ることがで
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