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ないということだったので言われた通りにやってみることにした。目を閉じて意識を集中していると何やら温かいものが身体の中を流れているような感覚を覚えたのでそれを手繰り寄せるようにイメージしてみると次第にハッキリとした形となっていき最終的には球体のような形に落ち着いたところで目を開けてみると目の前に光の玉のようなものが浮かんでいるのが見えたため驚いてしまったがどうやらこれが魔力というものらしいということが理解できたため一安心することが出来た。ちなみに、これを操ることが出来るようになれば初級の魔法なら簡単に扱うことができるようになるということだったので気合を入れて練習することにしたのである。その結果、数日のうちにある程度思い通りに動かせるようになった上に威力の調整も可能になったため満足のいく結果を得ることができたのであった。
そんな生活を続けること数週間が経過した頃のことだっただろうか?ある時を境に突然、リリィールが姿を見せなくなったと思ったらしばらくしてから手紙が届いたので読んでみるとそこにはこう書かれていた。
『拝啓、セリア様へ 今までお世話になりました。どうかお元気で……』
それを見た瞬間に涙が溢れてきたことで止まらなくなってしまった私だったが何とか泣き止むと気持ちを切り替えて前を向くことに決めた。そして、これからは自分一人の力で生きていくことを決意したのである。
それからというもの、畑仕事に精を出しつつ食料を手に入れるために狩りをしたりしているうちに少しずつではあるが生活にも余裕が出てきてきたのでそろそろ本格的に仕事を探そうかと思っていた矢先のことである。突然、玄関の扉がノックされたことで来客が来たことを悟った私は慌てて外に出るとそこには一人の女性が立っていた。その女性は私と目が合うなりニッコリと笑ってみせるとこう言った。
「初めまして、あなたがセリアさんかしら?」
いきなり名前を呼ばれたことに戸惑いつつも頷くと彼女は嬉しそうな表情を浮かべてから言った。
「やっぱりそうだったのね!会えて嬉しいわ!あ、自己紹介がまだだったわね。私は魔王の娘であるリリスっていうのよろしくね!」
そう言って握手を求めてきた彼女に応じる形で私も手を伸ばすとその手を握り返しながら言った。
「えっと、こちらこそよろしくお願いします。それで、今日はどのようなご用件でしょうか……?」
恐る恐る尋ねると彼女は笑顔のまま答えた。
「あのね、お父様があなたに会いたがっているのよ!だから迎えに来たってわけなんだけど来てくれるわよね!?」
その言葉に戸惑う暇もなく強引に手を引かれた私はそのまま連れて行かれることになったのだが道中で聞いた話によると彼女の父親は今代の魔王だということだった。道理で強引だと思ったよ……と思いながらも大人しく従うことにするしかなかったわけで仕方なくついていくことにしたのだが辿り着いた先は王城だったので流石に緊張を隠しきれなかった私は唾を飲み込みながら見上げているとそこでふとあることを思い出したので聞いてみることにした。それは、どうして私が選ばれたのかということだ。確かに私は魔法を使うことはできるがそれ以外は普通の一般人と変わらないし特別な能力があるわけでもないただの人間だ。それなのに何故わざわざ呼びつけたりしたのだろうかと考えていたのだが答えは意外なものだった。なんでも、私の作る野菜がとても美味しいらしく是非とも食べてみたいと思ったらしく直接お願いしに来たということらしかった。そこまで言われて悪い気はしないので引き受けることにしたのだがそ
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