『悪役令嬢は平民になってもモテすぎて困ってます!~地味ライフのはずがイケメンだらけの薬草店になりました~』

みなこん。@イラストレーター

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第11話:アレクシス様、ついに“ライバル”を意識する

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昼下がり。薬草店の裏庭。

 薪を割る規則的な音と、ハーブを煎じる香り。
 その日常の中に――珍しく、わたくしの胸はざわついておりました。

「……彼女、随分と手慣れておりましたわね」

 エステル=ミリアン嬢。
 昨日から村に滞在している完璧令嬢。笑顔と気品と、微妙に刺してくる言葉のトリプルコンボ。

「わたくし、正直言ってあまり関わりたくありませんの……」

 そう呟きながら、わたくしは裏庭に出て、斧を振るう“彼”の背に声をかけました。

「アレクシス様」

「……ん」

「昨日のエステル嬢、ご覧になっていかがでした?」

「……王都らしい女だ」

「ええ、それはもう完璧に……」

 

 するとアレクシスは、少しだけ斧を止め、ぽつりとこぼした。

「……ああいうタイプ、苦手だ」

「……あら。貴族の方としては珍しいお言葉ですわね?」

「……上っ面の笑顔と、剣より鋭い言葉。あれは戦だ」

「ええ、わたくしも同意ですわ」

 

 アレクシスは、ふとこちらを見た。
 その目は、斧を握る時よりもずっと鋭く。

「――彼女は、お前に興味がある」

「……そ、それは、薬草の視察とかで……」

「違う。そういう目じゃなかった」

 

 胸が、どくん、と鳴る。

 彼の目はいつも冷静で、鋼のように強くて。
 けれど今は、かすかに……かすかに熱を帯びていた。

「……アレクシス様。もしかして……」

「……意識、している」

 言葉が落ちる。重く、静かに。

「お前を。……そして、あの女も。あれは、“敵”だ」

 

 この男は、本当に不器用で、真っ直ぐで。
 そして、恋においても、恐ろしいまでに“剣の構え”を崩さないのですわね。

「……わたくしが、他の誰かに心を傾けたら?」

「止める」

「仮にそれが……昔の婚約者であっても?」

「……そのときは、斬るかもしれない」

「それは犯罪ですわよアレクシス様!!!」

「比喩だ」

 

 薪がぱしんと割れる音が、妙に爽快に響いた。

 でも、わたくしの胸の中は、まるで炎を入れられたように、熱くて落ち着かなくて。

(……わたくし、やっぱりこの人に……)

 

 夕暮れの空の下、無口な騎士が初めて“ライバル”を意識したその日。
 わたくしの心の天秤も、ゆっくりと――けれど確実に、傾き始めていたのかもしれません。
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