『神霆戦機 カミナギル』美人フェミさんが 巨大ロボで大暴れするそうです

cyanP

文字の大きさ
21 / 62
港の凛子・ヨコハマ・ヨコスカ

第21話 開国シテ下さァァァい!

しおりを挟む


『巨大ロボット在日米軍基地連続襲撃事件』当日────。

 横須賀本港はなにごともなく
 いつもと変わらぬ様子だった。


 ──『横須賀本港』
 東京から南へクルマでおよそ1時間、神奈川県三浦半島中央部
 東京湾の南西側に面しており、複雑な海岸線は多数の入り江を形成し、天然の良港。
 しかも、まわりをぐるりと囲む山が外界との視界を遮る天然の要塞。
 都心から最も近い場所にある現役の軍港である。

 1853年 (嘉永6年)
『開国して下さいヨぉぉ~』『捕鯨基地作りたいヨぉぉぉ~』でおなじみの
 アメリカ海軍 ペリー提督ら(後に子孫が日本に反捕鯨をわめきまくる)がこの半島の突端部の浦賀に来航。

 それからわずか12年後。
 1865年(慶応元年)
 まだ日本におサムライさんがいた頃。
 徳川幕府の勘定奉行とフランス人技師が製鉄所を建設。

 やがて、軍港に適した立地から明治政府による大規模開発が行われ。
 戦後はアメリカ海軍と海上自衛隊の基地が隣接する重要な港として近代史を歩み
 現在は国内外問わず数多くの艦艇が見られる港としても、マニアの間では有名になりました。

 まぁ、米軍基地のある所はやっぱりそうなるのねというか。
 むかしは米兵による日本人への暴行やレイプ、殺人が横行する、大変治安も悪いしガラも悪いという…。地元の子供達は、繁華街である『ドブ板通り』には決して近づくなと言われて育つような場所でした。

『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』というご当地ヒットソングには、当時のそんなやさぐれた雰囲気がよく現れてます。
(「アンタ、あのコのなんなのさ!」というセリフが非常にカッコイイ)

 近年でこそ取り締まりや見回りが行われてマシになりましたが。
 長い間、結構最近まで少なくない数の地元の人達が泣き寝入りを強いられ、そういう無法地帯な事件が日常的に起こっていたことを日本人の多くは知らなかったりします。

 っていうか、ちかごろ日本も外国人観光客が増えて、そのマナーの悪さやポイ捨ての問題がシャレにならなくて、京都なんか立ち入り禁止区域が設定されちゃったりしているけど。
 マナーどころのさわぎじゃない、そんなレベルじゃない。
 殺人やらレイプやらをたびたび行うアメリカ軍には強く言えないの。
 世知辛いねぇ。

 その辺、日本社会はどう思ってるんだろう?
 なんとなく流行歌なんかでガラの悪さは聞いていても、それはそういうもんだろうという諦めがあったのかもしれない。
 何にでも慣れてしまうものだ。

 しかし、沖縄の米兵による婦女暴行なんかはことあるごとに話題になるし、有名なのになんでだろうね? 事件の件数が沖縄のほうが圧倒的に多いからかな?
 それとも沖縄基地の存在が都合が悪くて気に食わなくて仕方がない、とあるお国の力添えとかあったりするのかな???

 まぁ、なんにせよ弱肉強食、武力とお金、米兵の経済効果で繁栄した地域では言いたいことも言えない。
 そんな光と影のあるエキゾチックなジャズとロックな街なのです。


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


『横須賀軍港わくわくツアー』
 それがわたくし、浜崎ミナ(はまさきみな:25歳)の職場です。

 遊覧船が出発する。

 それに乗っているアタシたちを岸壁に並んだお客さん達が
「はぁ?」って顔で見てる。
 アタシは目を合わさない。

 中には「この女ぁ、こっち見ろォォォォ」みたいな憤怒の顔の人もいるから。
 うわー、くらばらくわばら。そりゃこういう週末は混雑して行列してるからねぇ。
 お客も乗せずに出発したら「え!?」ってなるよねぇ。

「おいおい、こら、乗せろぉー!」
 って声には出さないけど、浮足立っちゃう人がいるのも仕方ないよね。

『横須賀軍港わくわくツアー』とは
 普段立入禁止で陸上からは見られない海上自衛隊の護衛艦や潜水艦に補給艦。
 アメリカ海軍のイージス艦、揚陸艦、運が良いと巨大な原子力空母や、はたまた南極観測船(砕氷船しらせ)なんて変わり種まで、バラエティー豊かな艦艇ラインナップをぐるっと見て回れる人気の遊覧船サービスです。

 でもごめんなさいね。
 今日のこの船は修理から帰った試運転を兼ねた新人研修のクルーズなのです。
 お客さんは乗せられません。

 アタシは新人案内人のご案内スピーチを、ビデオ撮影する係として乗り込んでいるのです。船室も展望デッキも乗り込んでるのはスタッフだけ、当然ガラガラの貸切状態だ。

「ハイっ!たいへんみなさまお待たせ致しましたぁぁぁぁ~!」
「本日これより、とっておき! 横須賀軍港わくわくツアーへと参ります!」

「本日案内は、『わくわくツアーの くまのプーさん』こと本田豊太(ほんだとよた)でございます」
「どうぞ宜しくお願いしまぁぁぁ~す!」

「パチパチパチぃ~~~!」

 さっそく新人案内人のスピーチが始まった。のだが。

 …………なんなのこの人。
 なにこの初々しさのカケラも無い、場馴れしきったスピーチは。

 いや、良いんだけどさ、仕事に慣れてて良いんだけどさ、キミほんとに23歳?
 なんか「本田くん」って呼びにくい感じなんだよね。

 どう見ても「本田さん」なんだよね、オッサンくさい日焼けした恰幅のいい風貌といい、脂ぎった肌といい。ディップでなでつけたツヤツヤの真っ黒い髪型といい。

 なんかニカニカした笑顔の下で(なめんじゃねーぞ小娘)みたいな空気出してくるような気がするし。

 苦手だこの人、というか、ニセおじさん。

 大体なんだその名前。『ホンダ トヨタ』って
 ハリウッドの日本人の名前が分からん馬鹿な脚本家が、適当丸出しで付けた奇天烈すぎる名前じゃあるまいし。そんな名前のやついないでしょ。

 本名?
 ホントに本名?

 風貌と相まって非常に怪しい人物に見える、年齢も疑わしいし、今までなにやってたんだこの人。とても23歳の若者には見えない。

「みなさんお足元にはくれぐれもご注意を!」
「そしてもしも! 海に! 落ちてしまった場合はですね!」
「ハイこちら、右手がアメリカ合衆国横須賀基地」
「左手側が日本国横須賀市となっておりますので
 くれぐれも左側へと泳いでくださぁ~~い」

 右へ~!
 左へ~!
 と話に合わせて柔らかい腰つきで、インド舞踊っぽくシャナリシャナリと手をかざしながら案内するニセおやじ。

 ──── うわ、このオヤジ、無駄な動きなのに無駄が無い! 
 なにかの使い手か!?

 ダンスには、ちょっとうるさいミナは、ホンダトヨタのこの動きにだけはただならぬ何かを感じて目を見張った。


「アメリカ側へと泳がれますと、パスポートが必要になるかもしれません!」
「持ってますかぁ? パスポート! パスポート大事ですよぉ~!」

 ここで息を吸い込み
 指揮者が演奏者と呼吸を合わせる感じで、サン・ハイっと目をむくと、満面の笑みで声を大にして吟じるニセおやじ。

「でかけルゥ 時はぁ~ 忘れぇずニぃぃぃ~!」

 渾身のオヤジギャグがぶちかまされた!
 何がギャグなのかサッパリ分からないが、わざわざ外人っぽいアクセントで言っているのだからおそらくアレはギャグなのであろう。

 ちなみにアメリカ軍基地への立ち入りは身分証明やら許可手続きやらが必要だが、まちがいなく日本の領域であり。日本政府が米国に対しその使用を許しているものであって、別にパスポートは必要ありません。

 このアドリブギャグが営業的に良いか悪いかはわからないが、
 それは、アタシが撮影したこのビデオを見て上が判断するんだろう。
 そのための撮影だ。
 お客さんには結構ご年配の方も少なくないのでこれはこれでアリなのかもしれない。

 しかしペリー提督も200年後に、こんなわけわからんオヤジギャグが垂れ流される海になるとは予想もしてなかっただろうなぁ。

 自衛隊の潜水艦の上から自衛隊員の人たちが、遊覧船で行き過ぎるアタシたちに手を振ってくれていた。

 アタシの気分は、とある出来事でいまいち晴れなかったが
 いつもと変わらぬ平和な景色だった。

 まさかあんな暴風の塊みたいなものが刻一刻と近づいてきてるとは
 この時はまだ、誰も想像すらしていなかった…………。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...