『神霆戦機 カミナギル』美人フェミさんが 巨大ロボで大暴れするそうです

cyanP

文字の大きさ
35 / 62
勝者は敗者におもねらない

第35話 これは陽動だろう、常識的に考えて

しおりを挟む

「いやいやいやいや」
「どう考えても陽動だろう、これ」

 元CIAアナリスト、米国務省対テロ局の専門家、リチャード・ジョンソンは
 アメリカ政府、アメリカ軍の浮足立った動きに苦々しく言葉を漏らした。

 なぜ敵のロボットがたった1機単独で行動してると思うんだ? 
 その発想が分からん。
 まさか日本人の言う「勝手に湧いて出た」を真に受けてるんじゃないだろうな???

 現在の原子力空母の直接的な建造費そのものだけで約130億ドル,(約1兆4000億円)、50年の運用が総額で5兆円と言われているが。

 あのロボット兵器……、
『動力』も『装甲素材』も、あの推力を生み出す『ロケットモーター』も、とんでもない新技術の固まりにしか思えない。
 ──どう見積もっても一機で兆は超えるだろう?
 開発費も合わせたら数十兆円クラスのカネが動いているはずだ、いやもっとするのか?

『原子爆弾の開発』
 世界を一変させた、歴史のターニング・ポイント。
 いわゆるマンハッタン計画であるが、当時のレートでおよそ20億ドル,(2200億円)。
 21世紀現在の資産価値に換算するとおよそ600億ドル(約9兆4000億円)もの費用が投入されている。
 件のロボットの複合的な技術群は、間違いなくあれ以上の計画規模で開発・建造されたと考えるのが妥当だろう。

 そうなると、アメリカ最新の予算で、核兵器関連が約3.54兆ドル,(約112兆円)、アメリカ宇宙軍で2630億ドル,(約33兆5000万円)

 それに匹敵するレベルの話になってくる。
 世界的巨大企業でも、なりふり構わずカネを突っ込む覚悟で関わらなければどうにもならん額だ。

 誰がその金を出したんだ?
 そんだけ高価な兵器を一機だけ作り出して、こんな訳の分からん使い方をするか?
 こんなハデな、悪目立ちする使い方を。

 おかしい……
 おかしすぎる……!
 どう考えてもこれは『陽動』だ。

 つまり、これは敵の本当の目的ではない。
 あるいは、目的であるが本命の狙いではないと見るべきか。

 なんにせよ
 この一箇所だけに集中し過ぎるのは良くない。

 もし『陽動』なら敵の思うつぼだ。
 壊滅した第7艦隊のカバーに来るのはどこだ?
 とりあえずグアムを拠点としている
 第1海軍特殊戦部隊(Navy Special Warfare Unit One, NSWU-1)あたりか。

 東経160度線以東の東太平洋を担当している
 第3艦隊(Third Fleet)が引き継ぐか。
 それらの担当海域が手薄になることを狙っている可能性は無いか?

 敵の手はずに乗ってないか?
 これでいいのか?
 そもそも敵組織が何なのか一切掴めていないのがヤバすぎるだろ。

 ああああああ、神よ!
 なんてこった。
 出来ることならばこの状況で大部隊は動かしてほしくない。

 何も分かってないのに慌てて動かしてほしくない。
 慌てたらやられるぞ。落ち着いてくれ。
 霧の中を敵の罠に進んでいくようで気が気でならない。

 もし…………。
 もし日本が絡んでたとしたら相当ヤバい。
 何も情報を掴んでないぞ──。

 ……だが、個人的には日本が中心となって開発した可能性が濃厚だと思っている。

 それは兵器というものは、思いのほかその外観等にお国柄が出るものだからだ。
 今までにない新兵器ならなおさらだ。

 例えば、アメリカが同じ技術でロボット兵器を作るにしても、決して二足歩行にはデザインしないだろう。するにしても、ああはならない。もっとマッシブ,(重厚、いかつい)な形状となるはずだ。
 中国にしても、むしろアメリカやロシア兵器の影響がモロに分かるデザインとなる。
 隠そうともしない。先に中国が開発してたぐらい言ってのける。
 あれはそうした方が共産党上層部の受けが良いとか、そういう事情があるのだろう。

 だが、あのロボットのデザインにはそういう忖度が感じられない。
 無駄に凝ったマニピュレータ,(手)の精緻な構造といい、ああいう、いちいち細かい所にこだわったことをやりたがる国民性、職人気質に思い当たるのは一つしか無い。

 日本だ……。

 だいたい、世界の常識を覆すような科学革新的な兵器。
 イノベーションな新技術兵器は、進んだ科学の知識によって作られてると思われがちだが大きな間違いだ。

『原子爆弾』の製造だって、あれは『科学技術』で成功したんじゃない、アメリカの『工業力』が成し遂げたんだ。

 実際に原爆開発の予算の80パーセントは工場建設等に使われている。純粋な研究費用なんてわずか4パーセントだ。

『もしドイツが先に原子爆弾の開発に成功していたら……』なんてよく聞くif,(もし~ならば)も。そんなことは100パーセント起こらない。

 なぜならドイツには原子爆弾を製造可能な工業力が無かったからだ。
 ドイツの原爆製造に関する科学的理解がいくらか深くても些細な違いでしかなく、工業力の方がよほど大きな問題だ。

『ピラミッド』あれと同じだ。
 ピラミッドの建造には高い土木技術や数学的計算能力が求められるが、もっとも必要とされるのは頭脳労働ではなく、巨石を運ぶ肉体労働だ。誰だって分かる。そういう問題だ。実現させるのは膨大なパワーだ。労働力なしでピラミッドは完成し得ない。

 そもそも原子爆弾の基礎的な物理学的知識なんて戦前から世界中の科学者の知るところであり、必要だったのはエンジニアリング的ノウハウなのだ。

 そして世界有数の工業力をもった国として
 リチャード・ジョンソンの頭に浮かぶのは……

 ──日本かぁ……。
 あいつらスパイ防止法もない情報筒抜けのマヌケだと思ってたから
 アメリカ国防大学だって日本の要人なんかマークしてないだろう。
 ろくな情報が無いはずだ。

 日本政府がやってるのか、日本企業がやってるのか。俺の勘では確実に日本なんだが、それをやる動機もカネの流れも特定できない。まるで尻尾がつかめない。

 まずいぞ……。
 どこから接触して良いかも見当がつかない。
 どんだけ隠蔽してたんだっつーの。

 さっさとロボットを殺っちまうか、とっ捕まえてくれれば話が早いんだが、逃げた痕跡すら追えてないそうじゃないか。

 思ったよりやばい事態になってきたな……
 どうすんだこれ?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...