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第6話
最悪の置き土産
しおりを挟むカズは二時間という長い時間上位魔物のハイビュレッテと交戦していた
リリィの魔法による爆裂音と木々の倒れていく音
小型の魔物は我先にと逃げ出し、逃げ遅れたトレントという魔物は苦しみの声を上げながら倒れていく
(トレントに至っては知能がとても低く、獲物を横取りしようとしてハイビュレッテの巻き添いを受けてる為、自業自得だった
その証拠としてまた一体また一体とハイビュレッテに手を出そうとして土台としてへし折られている)
ハイビュレッテは正確には中位魔物だがこのハイビュレッテの強さは上位魔物に該当するほどの強さがあった
木々を飛ぶようにして前後左右から直線的だが死角のない攻撃を繰り出していた
そんなハイビュレッテと互角に戦うカズはまだBランク冒険者であった
Bランク冒険者がここまでの成果を普通出すことは出来ない
今回カズがここまで生き残れたのはある意味優秀な新人が居たからであった
後衛役の魔法使いリリィも魔力ポーションを飲んで魔力を回復しつつ、カズの傷を癒し、尚且つ敵がスキをついてカズに攻撃しようものなら即座にアシスト
そして自らが危険に陥れば即座に後退し、地面の土で目くらましをして幻影魔法の囮を置いてカズの後ろに隠れる
ここまでの事が出来るのはリリィの恩師ベイクリートの訓練の成果と、リリィの心配性が合わさったからであろう
魔力ポーションは下級の物でも一本銀貨三枚もする高価なものだ
普段使うのは銅貨・小銅貨・大銅貨であり銀貨を使うのは日常ではほとんどない程
しかしそれを惜しげも無く買い、用意周到な貯金崩し。その数およそ三十本
本当はここまで用意している冒険者はそうそういない
高価な物を三十買うぐらいなら飯を買うかギルドに預けるのどちらかである
二時間
そう。たった二時間は俺にとってはそのリリィのサポートこそが命綱である事は理解していた
だからこそ安心して目の前の敵と遠慮なく戦える
『グガァァァアア!!!!』
ハイビュレッテは咆哮を上げカズに突っ込んだ
躊躇のない攻撃と横からの支援に冷静さを失っていくハイビュレッテ
しかし、それこそハイビュレッテの大きな隙を生んだ原因となる
カズはスっと目を光らせると上段から斬りかかった。無論ハイビュレッテは立ち止まり鋼鉄の爪によって剣を受け流そうとした
「そこっ!!」
しかし、ハイビュレッテは目の前のカズに集中しすぎて戦いながら足元に設置したリリィの罠を作動させてしまう
次の瞬間茨の蔓が足にまとわりつき、棘が一気に生え貫通する程深く突き刺さる
『ナニッ!?』
驚くのは罠だけではなかった。
その棘は自身の魔力を吸い取り術者に魔力を供給しているのだ
魔力とは力の源でありそんなもの吸われるという感覚に脱力感を覚え片膝をつくのは当たり前である
『ローズマジック....ダト?...アノ小娘....!』
リリィを憎そうに恐ろしい形相で睨みつける。戦闘中のリリィでさえ思わず息を飲んだ程の恐ろしい顔である
しかし、そんな隙だらけのハイビュレッテをカズが見逃すはずもない
「よそ見すんな!!剣闘士スキル!エアスラッシュっっ!」
いくらよそ見はしていてもハイビュレッテはその受け流しやすい上段を受け流せ無いはずがないのだ
ハイビュレッテは半ば慣れ親しんだ作業のようにその剣先に右手で鋼鉄の爪を合わせた
爪で重点をずらし、横へと受け流し、反撃でもう一方の鋼鉄の爪でその柔らかな首を狙う
無論これにはハイビュレッテの反射速度と技量の方が上であった
(モラッタ...)
極限状態まで高めたハイビュレッテの思考回路により時間がゆっくりとしたものに感じる
その1秒は引き伸ばされ、まるで時が止まったかのようにも錯覚するほどだった
しかし、その鋭い爪はゆっくりとだが首元へと引き寄せられるかのようだった
それはカズも同じであろう
受け流されたあと体勢を立て直そうと全くしない
カズほどの技量の者が体勢を立て直せないということは受け流されるとは思っていなかった。予想外の出来事で頭の思考が追いついていないということだろう。
ハイビュレッテはこの男が完全に受け流された事で敗北を味わっているのだと勝手にそう捉えていた
のだが......。
「馬鹿めどこを見ている」
耳元でカズが呟いた
血飛沫と共に舞い上がったのはカズの頭ではなく、ハイビュレッテの左腕であった。
ハイビュレッテは困惑と苦痛に顔を歪め状況を整理するため距離を取ろうとした。
「逃がすかよ」
上段からの────下から上へと切り上げる素早い剣筋
(クッ.......ハヤィッ!)
ハイビュレッテは仕方なくもう片方の手を犠牲にし回避した
あのまま体を捻って回避しなければ腕どころか、体が真っ二つになっていただろう。
距離をとりつつ、状況を把握する
『クッ...受ケ流シタハズダガ ....
ケントウシ、ト言ッテイタナ』
ハイビュレッテはある結論にたどり着いた
エアスラッシュ───
発動前に時間がかかり尚且つ上段攻撃でしか発動しない、中距離の敵に剣の軌跡を魔力化することで攻撃するスキル
威力は大きいが、その隙の多さと軌跡は低速度で持っていても使わない上にいらないスキルと言われているスキルでもあるのだがそれにやられたのは確実である
エアスラッシュは発動から時間がかかる為それを利用し、受け流した後に後に出現した魔力の軌跡によって片腕を切り落とす
なんとも悪知恵の働く戦い方だとハイビュレッテは思った
いや...
これが本来の使い方なのかもしれない
ハイビュレッテはニタリとカズとリリィを見やる
『確カニ、オ前ラハ強イト分カッタ
ダガ、マダ弱イ
知識ガ足リナイ』
「ほざけ、両腕が無くなってまだやるつもりか?大人しくやられとけ
クソ猿」
剣を構え、牽制するカズ
(なにか隠してるな......)
リリィに目配せすると、リリィも意図を汲んでくれたらしく風魔法を放った
魔力が杖の先へと収束し、形を成した
「血よ舞踊れ....!エアパレード!」
吹き荒れる暴風
風の一つ一つが風の刃となり前方のハイビュレッテに向かっていた
回避は━━━━━━━
不可能である
エアパレードの恐ろしい所はその攻撃範囲の広さと、その速さにある
風魔法は速度特化と言ってもいい程、詠唱時間が短く、魔法の到達速度が群を抜いて早い
エアパレードは風魔法の中級魔法に位置しており、他の属性の中級魔法に比べると威力はあまり無いが、この魔法は発動すれば確実に当たる
とまで言われる程、回避が困難であると有名である
避けようとしても、その圧倒的な速さと範囲攻撃で体力を削り
受け流そうもしくは別の魔法で迎撃しようとしても、風の魔法特徴である不規則な風の刃を見切るのは至難の業である
だからこそ勝ちを確信した
見たところハイビュレッテは瀕死状態
あと一撃もすれば倒せる
勝ちを意識したその瞬間、ハイビュレッテは最後の力で耳を貫くような奇声を張り上げた
『キィィィイイイイイイイイイイ!!!』
その声に堪らず耳を塞ぐリリィとカズ
ハイビュレッテはエアパレードを受けて完全に消滅するがその声だけは森を反響し、二人の脳裏に焼き付いた
「......なんですか...?今のは」
「......どう考えてもコボルト特有の仲間を喚ぶ声に似てはいるが、コボルト以外が使えるようなスキルではなかったはずだ
コボルトは生まれながらにしてスキルを持っているが、ビュレッテに関してはそういうスキルを会得したという話は全く聞かないな」
そう言いつつもカズは大剣を地面に突き刺し、耳を当てた
索敵の際によく使うスキル[揺感]であり、このスキルは地面の揺れを起こしたり感じたりできるB級スキルであり使用には魔力も必要ない誰でも習得可能なスキルである
極めると戦闘でも使える万能スキルな為、高レベル冒険者の中では習得必須スキルのひとつとして数えられている
実はハイビュレッテと戦っている間も使っていたのだが全く効果は無かった
原因としてはハイビュレッテは自身の力が増大故に気づく事も無ければ影響も受けることがなかったのだ
カズは耳を澄ました
地面の揺れを掌で感じ地面のさらに奥を意識し、感じる─────
(スキル……揺感……)
ド......ドドド......
カズは目を見開いた
地面を伝う足音ではおよその数しか分からないが、その数は百は超えているはずだ
つまり、ハイビュレッテは本当に仲間を呼んだという事だ
足音はバラバラで様々なモンスター
コボルトの固有スキル【呼叫】に似たスキルであることは分かるがコボルドの固有スキル【呼叫】は同じ種族
つまりはコボルトしか呼ぶことができないスキルのはずだった
となると別のスキルと考えるが正解だ
しかし、問題はそのモンスターの大群がいる方向である
「.....囲まれてる!?」
逃げ道は無かった
モンスターの包囲網があの一瞬で出来上がっていたのだ────
『あのクソ猿がぁぁぁあ!!!』
カズは剣を構えて咆哮をあげた
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