私が死ねば幸せですか?

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アリス13

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アリス13

「怖がってますよ」

 いつのまにか私は震えていたようだ。
 ブレンダンが、苦笑いしてコリー公爵に注意している。

「だからどうしたんだ」
「少しくらい配慮しても」
「お前にすら配慮したくないのにそれを言うのか?」

 コリー公爵はブレンダンが窘めても、気にした様子は見せない。

「言い過ぎじゃないですか?」
「お前の潜伏先を探したり別の戸籍を用意して隣国に住まわせたり。私がどれだけ水面下で動いたのか知っていてそれを言うのか?」

 もしかしたら、ブレンダンを助けた時からすでに私たちを捕まえるつもりで、コリー公爵は動いていたのかもしれない。

「まあ、それは、はい。すみません。でも、僕は悪くないですよ」
「そうだな。お前と一緒に潜伏して、まともな連絡すら取れなくてアンジェラが死にかけたが」
「……」

 コリー公爵の刺すような視線をブレンダンは気がつかないふりをした。

「お前は成人したし、アイネス公爵を継げる。それに、このバカも成人したから保護する必要もない」

 二人がずっと潜伏していたのは、私が成人するまで待っていたからだったようだ。

「待って、じゃあ、私が成人するまで泳がせていたって事なの?」
「ああ、やっと気がついたか。それに、成人したから、した事への責任も取れるだろう?」

 責任。その一言に私の背中に一筋の汗が流れた。
 今までは、公女という地位があったから自分に責任なんてあってなかったようなものだった。
 何をしても許されたから。
 それでも、公女でなくなったらどうなるのだろう。

 わ、私は家の乗っ取りに関わっていない!
 関わっていると思われたら、私は間違いなく処刑されてしまう。
 貴族を偽ることは重罪だから。

「わ、私は知らなかったわ。お父様が、夫人を殺そうとしたなんて」
「知らなくても薄々勘付いていただろう?」

 私が何も知らなかった。と、言ってもコリー公爵は、それをまったく信じてくれなかった。
 それどころか、何か知っているに決まっている。と、言わんばかりに疑いの視線を向けてきた。

「気がつかなかったわ。全く全然。それに、私だって被害者よ。知らなくて公女になったんだもの!」

 そう、私は被害者なのだ。
 両親が家の乗っ取りをした事で、私まで罪人にされてしまったらたまったものではない。
 騙された被害者の私には保障が必要だ。

「だから、公女として生きる義務があるわ!」

 騙された私はあまりにも可哀想だから、本物の公女として扱われるべきだ。

「……」
「頭が悪いのもここまで来ると哀れだな」

 二人は驚いた顔をして、すぐに顔を見合わせた。

「アンジェラが私の娘じゃないと知った時、お前はなんて言った?」

 なんと言ったのだろうか。
 正義感に駆られていったことだから、私は間違ってはいないなずだ。
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