私が死ねば幸せですか?

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アリス14

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アリス14

「アンジェラは、自分の出生の秘密なんて知らなかった。私が隠していたからなお前はそれを知っていたはずだと言い。そしてなんと言った?」

 コリー公爵は、私が捜査官に言ったことを知っているのか、そんなことをほじくり出してきた。
 私は怖くて何も言えなかった。

「家の乗っ取りだっけ?凄い発想だね。小説家でもそんな事なんて考えられないよ。アンジェラ嬢を陥れたくて作った罪だよね?」

 それに答えたのはブレンダンで、信じられないと言わんばかりだ。

「違います!私はそうだと思ったのです!」

 認めることはできない。認めてしまったら、私はどうしようもない悪人になってしまうから。
 確かに、あの時は「そう」だ。と思ったのだ。
 だから私は間違っていない。

「その理論を当てはめれば、お前はお前の両親と共に家の乗っ取りをしたわけになるな」

 確かにあの時、アンジェラが乗っ取りをしたと信じて疑わなかったが、だからといって今の私をそれに当てはめるのは間違っている。
 私は両親に騙されたのだ。だから、何も悪くない。
 
「ち、違うわ!私は知らなかった!騙されたのよ両親に!」
「それなら、本来の立場に戻るべきなのでは?」

 本来の立場に戻るとはどういう意味なのか。
 
「え?」
「君は平民だ。だから、平民に戻るべきなのでは?」

 なぜ、私が平民に戻らないといけないのだ。
 両親に騙された可哀想な私から、公女の立場を奪うなんてあまりにも酷いのではないか。

「わ、私は、被害者で可哀想だから公女のままであるべきよ」
「自分の立場を考えてみろ」

 コリー公爵の叱責に、私はブレンダンに助けを求める。

「お願いよ。お兄様!私を助けて」
「いや、なんで助けなきゃいけないの?いきなりその地位を奪われるのは気の毒だとは少し思ってたけど、君に手を差し伸べたいと少しも思えないんだ。あと、兄とか言わないでくれる?気持ち悪いから」

 ブレンダンはあまりにも酷い言葉を私に返した。
 兄なら私を助けるべきなのではないか。

「……酷い」
「あぁ、でも、僕たちは君のような人でなしではないから、君を殺したり拷問したりなんてしないよ。自分の手を汚すのも嫌だから」

 ブレンダンは恐ろしいほどに冷めた目を私に向ける。
 これが貴族の恐ろしさなのか。

「そういえばね。いい知らせがあるんだ。僕は正式にアイネス公爵になれたんだ。それと同時に、君たち家族の除籍も終わったんだよね」
「え?」

 それってつまり。私はただの平民になった。という事なのか。

「だから、今日から囚人牢に入ろうね」

 囚人牢という言葉にゾッとした。
 アンジェラが今に死にそうな顔をして、あそこにいたのを思い出したのだ。

「いやよ!」

「そういえば、アンジェラには、貴族の籍がまだある状態で囚人牢に入れて食事もまともに食べさせてなかったようだな」

 コリー公爵の指摘に、同じことをされると思い私は恐怖した。

「……っ」

「大丈夫だよ。僕たちはそこまでの人でなしじゃないからね」

 ブレンダンは、大丈夫だとにっこりと笑った。
 でも、それが怖い。

「ああ、そうだ。貴族ではなくなったから次から手荒な取り調べになるからな。覚悟しておけ」
「そんな」

 けれど追い討ちをかけるようにコリー公爵が恐ろしい事を言い出す。
 手荒なこととは何をされるのか。

「早く家の乗っ取りを家族ぐるみで計画していたのを認めた方がいいよ。一人くらいなら助けてあげられるから」

 ブレンダンは、ある道を提示する。
 つまり、それは両親を売ることだ。

「私は……っ!」

 でも、私は怖かった。
 親ならば、私を助けるために売られてもきっと嬉しいはずだ。

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