6 / 56
6
しおりを挟む
6
その日、ライザは寝込んだ。当然のように私の食事は抜かれて、気が滅入っていた。
数日後、私に追い討ちをかけるような事が起こった。
「フレディ様が会いにしました」
クラリスに声をかけられて私は戸惑った。
フレディと会う約束なんてしていないからだ。
「約束はしていないけど」
「ですが、顔を出しに来てください!無視だなんて失礼にもほどがあります」
キツくそう言われて、嫌だとは言えなかった。
最近の、使用人の私への扱いを見ていると、故意に手紙を破棄している可能性もあり、それを考えると無視するわけにはいかなかった。
「……わかったわ」
応接間に行くと、フレディとライザの声が聞こえてきた。
いつものように二人で会っている様子だ。
「ライザ、元気を出してくれ」
フレディの口ぶりから、ライザを励ましているようだ。
いつもの事だ、フレディは婚約者の私がいるのに、優先するのはライザだ。
何か話をしようとすると、ライザは必ず咳き込み。心配したフレディが彼女を部屋へと連れていく。
婚約発表の話し合いをする時ですらそうだった。
気がつけば、まともな話し合いすらしないままに、誕生パーティーまで一ヶ月を切っていた。
挨拶だけをして早く帰ろう。
軽く扉を叩いても、二人はそれに全く気が付かない。だから、私は少しだけ扉を開けた。
応接間の二人は隣り合うように座り、そして、抱きしめ合っていた。
その様子はどう見ても愛し合う恋人同士にしか見えない。
心臓を針で刺されたように痛い。
あそこに座っているのは、本来なら私のはずなのに、なぜ、ライザがいるのだろう。
ライザはいつも私の大切なものを平気で取り上げていく。
「私、お姉様が羨ましい。フレディ兄様のような人がいて」
ライザはフレディの腕の中でうっとりと微笑む。
その様子にフレディが息を呑むのが見えた。
「ライザ」
見つめ合いしばらくの沈黙の後、ライザは躊躇いがちに口を開いた。
「……フレディ様、どうか聞き流してもらえますか?」
そして、ライザは何かと葛藤するような苦しげな表情を浮かべて、しばらく沈黙した。
フレディは、それを咎める事を一切ぜずにライザが口を開くのを待ち続けた。
ライザが何を言うのか、私にはすぐに予想ができた。
互いにあれほどに好意を持っているのは、客観的に見てもよくわかるから。
止めないといけない。わかっているのに、身体は石のように固まり動かない。
永遠のような長い沈黙の後、ライザの表情が和らぎ、大輪の花が綻ぶような笑みを浮かべた後、口を開いた。
「フレディ様を……愛しています」
~~~
お読みくださりありがとうございます
感想、エールありがとうございます
もらえるととても嬉しいです(`・ω・´)
その日、ライザは寝込んだ。当然のように私の食事は抜かれて、気が滅入っていた。
数日後、私に追い討ちをかけるような事が起こった。
「フレディ様が会いにしました」
クラリスに声をかけられて私は戸惑った。
フレディと会う約束なんてしていないからだ。
「約束はしていないけど」
「ですが、顔を出しに来てください!無視だなんて失礼にもほどがあります」
キツくそう言われて、嫌だとは言えなかった。
最近の、使用人の私への扱いを見ていると、故意に手紙を破棄している可能性もあり、それを考えると無視するわけにはいかなかった。
「……わかったわ」
応接間に行くと、フレディとライザの声が聞こえてきた。
いつものように二人で会っている様子だ。
「ライザ、元気を出してくれ」
フレディの口ぶりから、ライザを励ましているようだ。
いつもの事だ、フレディは婚約者の私がいるのに、優先するのはライザだ。
何か話をしようとすると、ライザは必ず咳き込み。心配したフレディが彼女を部屋へと連れていく。
婚約発表の話し合いをする時ですらそうだった。
気がつけば、まともな話し合いすらしないままに、誕生パーティーまで一ヶ月を切っていた。
挨拶だけをして早く帰ろう。
軽く扉を叩いても、二人はそれに全く気が付かない。だから、私は少しだけ扉を開けた。
応接間の二人は隣り合うように座り、そして、抱きしめ合っていた。
その様子はどう見ても愛し合う恋人同士にしか見えない。
心臓を針で刺されたように痛い。
あそこに座っているのは、本来なら私のはずなのに、なぜ、ライザがいるのだろう。
ライザはいつも私の大切なものを平気で取り上げていく。
「私、お姉様が羨ましい。フレディ兄様のような人がいて」
ライザはフレディの腕の中でうっとりと微笑む。
その様子にフレディが息を呑むのが見えた。
「ライザ」
見つめ合いしばらくの沈黙の後、ライザは躊躇いがちに口を開いた。
「……フレディ様、どうか聞き流してもらえますか?」
そして、ライザは何かと葛藤するような苦しげな表情を浮かべて、しばらく沈黙した。
フレディは、それを咎める事を一切ぜずにライザが口を開くのを待ち続けた。
ライザが何を言うのか、私にはすぐに予想ができた。
互いにあれほどに好意を持っているのは、客観的に見てもよくわかるから。
止めないといけない。わかっているのに、身体は石のように固まり動かない。
永遠のような長い沈黙の後、ライザの表情が和らぎ、大輪の花が綻ぶような笑みを浮かべた後、口を開いた。
「フレディ様を……愛しています」
~~~
お読みくださりありがとうございます
感想、エールありがとうございます
もらえるととても嬉しいです(`・ω・´)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6,752
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる