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婚約は回避できない。とかなり早い段階で私は気がついた。
その理由として、夫になる予定のネイトのアボット家との繋がりが互いにとってうまみがあるからだ。
けれど、家格も同等の伯爵家のため、解消も比較的しやすいのではないかと考えている。
ネイトがゲームでヘスティアと婚約解消しなかったのは、家のためだろう。
「ネイトに興味なさそうにしてれば、巻き込まれずにすみそうよね」
私は楽観的にそう考えていた。なぜなら、ネイトを好きになる理由がないからだ。
ゲームでは語られていないが、ヒロインのために涙を飲んで身を引いて、ヘスティアとの婚姻も自分にとっての罰だと思ってやっているように思えて、独りよがりで気持ち悪い男にしか見えないのだ。
というか、とても鼻につく。
「友達のような関係を作って、他に好きな人ができたら婚約解消しようって言い続けるのが無難そうよね」
ゲームの内容を何も変えずに、自分も面倒な事をせずにうまくフェードアウトする方法はそれしかない。
しかし、実際にはそんなに世の中はうまくいかないもだった。
私たちの婚約が決まったのは12歳になった時だ。
「初めまして」
明らかにブスッとした顔で挨拶をしてきたのはネイトだ。
婚約が決まり初の挨拶の場でこれとは如何なものか。
「初めまして、仲良くしましょうね」
なんなんだ、コイツ。と思ったが、大人な私は大人の対応としてにこやかに挨拶を返した。
あわあわとしているのは、お互いの両親だ。
気持ちはわかる。顔合わせくらいは穏便に終わらせたい。
しかし、ネイトは空気がよほど読めないのか爆弾を投下してきた。
「こんなにも冴えない人が婚約者だなんて最悪だ」
ネイトの両親の顔色がなくなっていくのが見える。
「地味な婚約者がいるなんて嫌だ!婚姻はしてやるから公式の場で婚約者だからとすり寄ってくるのだけはやめてくれ」
スーッと心が冷めていくのがわかった。
友人として仲良くやっていこうと考えていたけれど、これではそれ以前の問題だ。
「婚姻はちゃんとしてやるから関わってくるな!なんで、勝手に婚約者を決められないといけないんだ」
ネイトの不満が爆発した。そういえば、彼の両親は恋愛結婚だった記憶がある。
自分もそれができると思ったのに、引きあわされたのが私だから不満なのだろう。
「この婚約が不満ですか?」
「当たり前だ!」
ネイトは声を張り上げた。
「私もですよ?何で自分だけが被害者面するんですか?」
「は?だってお前は僕と婚約できるんだぞ」
自分と婚約できることが幸せだと信じて疑わない様子に、鼻で笑ってしまいそうになる。
「だから何?初対面でこんなにも無礼なことを平気で言うような男を誰が好きになれますか?人として無理ですよ」
私がにっこりと笑うと、視界の端で両親が酸欠の鯉のように口をパクパクさせるのが見えた。
「うちの家格が下なら靴先でも舐めて必死に媚でも売ってたでしょうけど、そんな必要もありませんよね」
ここまで、苛立ちを露わにさせるのが初めてだからかもしれない。
「……」
ネイトは、私の吐いた毒に呆然とした顔をしていた。
攻撃してそれを返されるとは思ってもいなかったのだろう。
「契約書、書きます?」
私はすぐに、紙を取り出してペンを滑らせ始める。
周りはそれを止める様子もなく呆然と見ているだけだった。
その理由として、夫になる予定のネイトのアボット家との繋がりが互いにとってうまみがあるからだ。
けれど、家格も同等の伯爵家のため、解消も比較的しやすいのではないかと考えている。
ネイトがゲームでヘスティアと婚約解消しなかったのは、家のためだろう。
「ネイトに興味なさそうにしてれば、巻き込まれずにすみそうよね」
私は楽観的にそう考えていた。なぜなら、ネイトを好きになる理由がないからだ。
ゲームでは語られていないが、ヒロインのために涙を飲んで身を引いて、ヘスティアとの婚姻も自分にとっての罰だと思ってやっているように思えて、独りよがりで気持ち悪い男にしか見えないのだ。
というか、とても鼻につく。
「友達のような関係を作って、他に好きな人ができたら婚約解消しようって言い続けるのが無難そうよね」
ゲームの内容を何も変えずに、自分も面倒な事をせずにうまくフェードアウトする方法はそれしかない。
しかし、実際にはそんなに世の中はうまくいかないもだった。
私たちの婚約が決まったのは12歳になった時だ。
「初めまして」
明らかにブスッとした顔で挨拶をしてきたのはネイトだ。
婚約が決まり初の挨拶の場でこれとは如何なものか。
「初めまして、仲良くしましょうね」
なんなんだ、コイツ。と思ったが、大人な私は大人の対応としてにこやかに挨拶を返した。
あわあわとしているのは、お互いの両親だ。
気持ちはわかる。顔合わせくらいは穏便に終わらせたい。
しかし、ネイトは空気がよほど読めないのか爆弾を投下してきた。
「こんなにも冴えない人が婚約者だなんて最悪だ」
ネイトの両親の顔色がなくなっていくのが見える。
「地味な婚約者がいるなんて嫌だ!婚姻はしてやるから公式の場で婚約者だからとすり寄ってくるのだけはやめてくれ」
スーッと心が冷めていくのがわかった。
友人として仲良くやっていこうと考えていたけれど、これではそれ以前の問題だ。
「婚姻はちゃんとしてやるから関わってくるな!なんで、勝手に婚約者を決められないといけないんだ」
ネイトの不満が爆発した。そういえば、彼の両親は恋愛結婚だった記憶がある。
自分もそれができると思ったのに、引きあわされたのが私だから不満なのだろう。
「この婚約が不満ですか?」
「当たり前だ!」
ネイトは声を張り上げた。
「私もですよ?何で自分だけが被害者面するんですか?」
「は?だってお前は僕と婚約できるんだぞ」
自分と婚約できることが幸せだと信じて疑わない様子に、鼻で笑ってしまいそうになる。
「だから何?初対面でこんなにも無礼なことを平気で言うような男を誰が好きになれますか?人として無理ですよ」
私がにっこりと笑うと、視界の端で両親が酸欠の鯉のように口をパクパクさせるのが見えた。
「うちの家格が下なら靴先でも舐めて必死に媚でも売ってたでしょうけど、そんな必要もありませんよね」
ここまで、苛立ちを露わにさせるのが初めてだからかもしれない。
「……」
ネイトは、私の吐いた毒に呆然とした顔をしていた。
攻撃してそれを返されるとは思ってもいなかったのだろう。
「契約書、書きます?」
私はすぐに、紙を取り出してペンを滑らせ始める。
周りはそれを止める様子もなく呆然と見ているだけだった。
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