婚約破棄した悪役令嬢を退治する

王子の決意

「マリアンヌ！貴様というやつをこれ以上許すわけにはいかない！婚約破棄だ！」

婚約をした王子は聡明であると有名であった。しかしながら、恋に関しては全く何も知らないと言うことだった。

そこで、王子は婚約破棄を提案したが、令嬢マリアンヌは、

「あなたの一方的な婚約破棄は認められません」

と言い返した。

実は、マリアンヌは悪役令嬢だった。王子との婚約は偽装で、この後、王子を殺して王家の財宝を奪うつもりだった。

だが、聡明な王子は、いち早くこのことに気がついた。

王子は、悪役令嬢マリアンヌを退治する方法を極秘のうちに研究した。

そして、導かれた答えは毒殺だった。

王子は、自分の手下である薬師を呼び出し、なるべく自然な形で死を迎えることのできる薬の開発を依頼した。

薬師は、

「人を死に至らしめるような薬の開発はできません」

と最初は断った。しかし、王子の必死な訴えに負けて、この国の将来のためにやむなく決断した。


薬師の開発した薬を、披露宴でマリアンヌの食事に混ぜた。

マリアンヌは、しかし、非常に慎重だった。王子が何か企んでいると察した。

「王子様？これを食べると私は死にますか？」

マリアンヌは、王子に直接質問した。

「そんなことあるわけないじゃないか。何を言っているんだ君は」

しかしながら、王子は冷静を貫き通した。

「それならば王子様が食べてください」

マリアンヌは勝ち誇った顔をしていた。王子は一瞬慌てた。

「どうしたのですか?食べられないのですか？」

畳み掛けるマリアンヌに対し、王子は薬師に助けを求めた。

一方、薬師は遠くから王子に対してウインクをした。マリアンヌは当然気がつかなかった。

一か八か、王子は自らの運命を薬師に託した。マリアンヌの皿に盛られた食い物を全て飲み込んだ。

「あら、どうやら大丈夫みたいですね！それでは私が王子様のお食事を……」


安心しきったマリアンヌが王子の食事に手をつけた瞬間、マリアンヌは何も言葉を発せず静かに息絶えた。

のちに、薬師はこう語った。

「まずは味方から、と言いますから」

こうして、悪役令嬢の退治劇は幕を下ろすことになった。