婚約者の不倫相手は妹で？

12（アンナ視点）

　でもね、エルヴィン様の気持ちを理解することはやっぱり難しかった。最初はブツブツと文句を言っていたが、次第に肉体的な苦痛を伴うようになっていった。

「どうして…子供が出来ないんだ！」

「それは…すぐには難しいでしょう…」

　なるべくエルヴィン様のメンタルを傷つけないようにフォローするつもりだった。でもね…エルヴィン様はそれが嫌だったのか、私に暴力を振るうようになった。

「うるさい！君は黙っていろ！というか…全て君のせいじゃないのか、こうなってしまったのは？」

　エルヴィン様は私のことを時々殴るようになった。

「僕は悪くない…何も悪くないんだ！」

　まるで駄々をこねる子供…そう思うと滑稽だった。同時に、今の私って幸せなんだろうか…なんて、ついつい考えてしまった。幸せ…第一王子様の婚約者という肩書は確かに凄い。自称ではないが、美しさに多少の自信があった。そんなのは関係ない。社交界では常に一番真ん中でい続けることが出来る。単なる公爵令嬢という肩書から随分と進化したもの…これでお姉様を見返すことが出来る…。


　それで満足？何か得るものがあった？本当に愛されているの？

　考えれば考えるほど疑問が湧いてくる…やっぱり、こんなのって変なのかしら？

　1週間、2週間…1か月と行為は続いたが兆しは全くなくて…エルヴィン様の暴力はエスカレートしていき、美しさの自信を失った。全身が傷だらけで社交界に顔を出すことも出来なくなった。


　そうなると、周囲は段々と私のことを「役立たずな妃」と噂するようになった。その噂はエルヴィン様のお父様、即ち皇帝陛下の耳にも届いていた…。