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「どうして私から逃げたんだい?」
スティーブンは……私の知っているスティーブンではなかった。女好きで……私のことなんか眼中にない色男だった。そんなスティーブンが私の横で愛を囁くだなんて……想像出来なかった。
「いや、待って。どういうことですか?」
「どういうことって……まさか、私のことを忘れたわけではあるまいね……」
「ええっと、誰でしたっけ?」
「……本気で言ってる?」
もちろん本気ではない。この男がスティーブンであることを私は知っている。でも、正直に言うと、私が知っているスティーブンとは明らかに別物だった。好きになった女に振られたのか……失恋のどん底で喘いでいるようなみすぼらしい男の成れの果てのような感じだった。スティーブンに限って、そんな運命を辿るとは正直考えにくいのだが。
「ねえ、私から逃げたのはどうして?」
スティーブンが段々私の方に寄って来る。待って待って……と言うことも出来ずに。スティーブンは私とキスしたがっている。
「そんなことがあってはいけないよね……君は私に愛を囁き、私は君に愛を囁いたじゃないか……」
めんどくさい。こんな男のために自分の人生が狂ったと思うと、我慢できなかった。もう、どうにでもなってしまえ、と私は思った。
「あなたが他の女に目を向けるから……私が婚約破棄されたんでしょうが!!!」
声は病院に響いた。関係ない……この世界には私とスティーブンしかいなかった。
「おいおい、アンナ、声がでかい……」
「あなたに私を責める権利なんてない……私の人生を滅茶苦茶にした責任をとれっ!!!」
力と勢いに任せて、私はスティーブンを殴った。自分の拳がすごく痛かった。人は苦しみを分かち合うもの……殴ってはいけない理由が、これでもかというほど身に染みるのだった……。
スティーブンは……私の知っているスティーブンではなかった。女好きで……私のことなんか眼中にない色男だった。そんなスティーブンが私の横で愛を囁くだなんて……想像出来なかった。
「いや、待って。どういうことですか?」
「どういうことって……まさか、私のことを忘れたわけではあるまいね……」
「ええっと、誰でしたっけ?」
「……本気で言ってる?」
もちろん本気ではない。この男がスティーブンであることを私は知っている。でも、正直に言うと、私が知っているスティーブンとは明らかに別物だった。好きになった女に振られたのか……失恋のどん底で喘いでいるようなみすぼらしい男の成れの果てのような感じだった。スティーブンに限って、そんな運命を辿るとは正直考えにくいのだが。
「ねえ、私から逃げたのはどうして?」
スティーブンが段々私の方に寄って来る。待って待って……と言うことも出来ずに。スティーブンは私とキスしたがっている。
「そんなことがあってはいけないよね……君は私に愛を囁き、私は君に愛を囁いたじゃないか……」
めんどくさい。こんな男のために自分の人生が狂ったと思うと、我慢できなかった。もう、どうにでもなってしまえ、と私は思った。
「あなたが他の女に目を向けるから……私が婚約破棄されたんでしょうが!!!」
声は病院に響いた。関係ない……この世界には私とスティーブンしかいなかった。
「おいおい、アンナ、声がでかい……」
「あなたに私を責める権利なんてない……私の人生を滅茶苦茶にした責任をとれっ!!!」
力と勢いに任せて、私はスティーブンを殴った。自分の拳がすごく痛かった。人は苦しみを分かち合うもの……殴ってはいけない理由が、これでもかというほど身に染みるのだった……。
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