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その15
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私は王子様がいる場所を知っておりました。それは湖畔の小さな高台のベンチでした。王子様はいつもベンチに腰掛けて、湖とその先に広がるこの世界を見ておりました。私たちの歩んできた道のりと通過してきた全ての世界を一望できて、とても見晴らしのいい場所でした。思い返せば、今まで味わってきた過去というものは全て幻想ではなかったのか、と思うようになりました。つまりは全てが悪夢……そして今、私は妹のタバチエールとともに、この場に立っているのです。次の幸せをつかむために、私たちはここにいるのです。ああ、なんて素晴らしいことではありませんか。ようやく、私たちにも安寧の地が約束されたのでございましょう。素晴らしい話です。
「あの……王子様???」
私はおもむろに声をかけてみました。
「ああ、ベーラー殿。いらっしゃっていたのですか。どうぞ、おかけください。ああ、それにタバチエール殿もどうぞ……」
王子様はそう言って、私たちもベンチに腰掛けました。
「この景色は……昔から変わらないのですか???」
私は王子様に質問してみました。
「ええ、何も変わっておりませんね。この世界の美しさは。そして、あなた方がはるばる進んでこられた世界との違いというのは、年を経るにつれて、ますます明らかになっていくという具合なのでしょう……」
王子様はそう言いました。なるほど……私は妙に納得してしまいました。でも、王子様の言っていることは多分そうだろうと思いました。
「新参者の私が述べるのも恐縮ではありますが……どうして、これほどまでに美しい世界を実現することができたのでしょうか???」
「そうですねえ……それはなかなか難しいのですが……私たちが何かをしているというよりかは、あなた方の経験してきた世界が少しずつ闇の中に落ちていく、とでも考えたほうがいいのでしょうか……」
なるほど、ますます説得力のある話だと思いました。
「ねえ、王子様???この世界の美しさは……少なくとももう少しは続くのでしょうね???」
私がこう尋ねますと、王子様は、
「ええ、そうなるように努力しております」
と答えました。その答えを聞いて、私はますます安心するわけでございました。
「ああ、そうなのですね。よかったです。ああ、これで本当に素晴らしい世界が実現するわけですか……」
「ええ、努力しております……」
王子様はそう言ってにっこりと微笑みました。その微笑みがまた美しく、私はこっそりと感動したわけでございました……。
「あの……王子様???」
私はおもむろに声をかけてみました。
「ああ、ベーラー殿。いらっしゃっていたのですか。どうぞ、おかけください。ああ、それにタバチエール殿もどうぞ……」
王子様はそう言って、私たちもベンチに腰掛けました。
「この景色は……昔から変わらないのですか???」
私は王子様に質問してみました。
「ええ、何も変わっておりませんね。この世界の美しさは。そして、あなた方がはるばる進んでこられた世界との違いというのは、年を経るにつれて、ますます明らかになっていくという具合なのでしょう……」
王子様はそう言いました。なるほど……私は妙に納得してしまいました。でも、王子様の言っていることは多分そうだろうと思いました。
「新参者の私が述べるのも恐縮ではありますが……どうして、これほどまでに美しい世界を実現することができたのでしょうか???」
「そうですねえ……それはなかなか難しいのですが……私たちが何かをしているというよりかは、あなた方の経験してきた世界が少しずつ闇の中に落ちていく、とでも考えたほうがいいのでしょうか……」
なるほど、ますます説得力のある話だと思いました。
「ねえ、王子様???この世界の美しさは……少なくとももう少しは続くのでしょうね???」
私がこう尋ねますと、王子様は、
「ええ、そうなるように努力しております」
と答えました。その答えを聞いて、私はますます安心するわけでございました。
「ああ、そうなのですね。よかったです。ああ、これで本当に素晴らしい世界が実現するわけですか……」
「ええ、努力しております……」
王子様はそう言ってにっこりと微笑みました。その微笑みがまた美しく、私はこっそりと感動したわけでございました……。
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