気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにしませんか

岡暁舟

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ボリス様は軽い挨拶をすませて移動した。

彼が去っていくのを確認して、ティアは再び私のところに寄って来た。

「ねえねえ、本当にそんな態度してると、婚約破棄されるかもよ???」

「……だから、私には関係ないでしょう……」

「相手を知りたい???今ね、彼が懇意にしている女性がいるのよ…………」

「はいはい、だったら、その女性と婚約すればいいんじゃないかしら???」

ティアが一々詰め寄って来るのがめんどくさくなって、私はあしらおうとした。

「公爵令嬢のエリス……と言ったらどうかしら???」

エリス……その名前を耳にすると、確かに一瞬立ち止まるきっかけにはなった。

「ほら、緊張してきたでしょう???」

ティアはさっきから楽しんでいるのだろうか???だとすると、相当悪趣味だと思う。でも、今この場で趣味を議論している場合ではないのだ。

「まあ、エリスと婚約するんだったら、それはそれでめでたいことじゃないかしら???」

「あら、本気でそう思っているの???」

実を言うと、我が公爵家とエリスの属する公爵家は政敵として有名なのだ。よりにもよって、その狭間にいる二人の女に関心を持つと言うのは……なんとも皮肉なことだった。

「あなたのお父様はきっと嘆かれるでしょうね。ボリス様の婚約者がエリスになってしまったら……ボリス様は王家中枢とも深いつながりのあるお方だから、エリスの家があなたの家よりもより有利な立場になるってことよね」

ティアの言う通りで、これは私の好き嫌いだけで解決できる問題ではなくなるのだ。そもそも、私が彼と婚約する理由と言うのが、まさにエリスの家を打ち負かして、より有利な立場を築くことだから。

それが達成できないようだったら、私の存在価値が皆無ということになってしまう……。

***********************************************

家に帰ると、お父様は既に情報を得ていた。

「お前、何か仕出かしたのか???」

「いいえ、私は何も……」

「ではどうして、ボリス殿はよりにもよって……あの家の女と懇意にしているのだ???」

「それは、私には分かりませんので……」

「お前、何か隠しているわけじゃないだろうな???」

お父様は私を疑うことしかしなかった。昔と変わってしまった。貴族らしからぬ貴族が、勢いで上り詰めた成れの果てと言うのは……醜聞に塗れた貴族に帰着するようだ。

「このまま婚約が破談してしまったら……どうやって責任を取るんだ???」

つまり、私はもうこの家の人間で無くなることを意味した。なんて身勝手なのか……いやいや、口には出せない。今はぐっとこらえて……とにかく、ボリス様と婚約するしかないと思った。
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