婚約破棄された令嬢の細やかな異世界生活

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「きゃあああっ」とカレンが悲鳴を上げた。無理もない。いきなり大男を目の前にしたら誰だってそうなる。私はその男の顔を見て、すぐに正体に気づいた。だから、結論から言うとそれほど驚かなかったのである。

「アーガイル様、そんなに女子を驚かせない方がいいですよ・・・」

「おお、カナエ殿。久しぶりだなっ！」

　カレンは首を傾げて、「カナエ様。この男を知っているのですか？」と尋ねた。

「ええっ、まあ知っていると言えば知っているわね・・・」

　私は短く答えた。

「こんな男と知り合いだなんて、カナエ様は随分と多趣味なんですね・・・」

「この男、どこかで見たことがある・・・」

　シュトルツが男を指差した。

「こらっ、王族に指差すとは無礼であろうっ・・・最も今はもう王族から離れているわけだがな・・・」

　男は言った。

「王族？またまた、ご冗談を。こんな危なっかしい大男が王族にいるわけないでしょう・・・」

　カレンは一瞬立ち止まった。

「まさか・・・このお方は？」

「ええっ、第二王子のアーガイル様よ・・・」

「こらこら、カナエ殿。別に正体をバラさなくてもいいではないかっ！」

　第一王子クロビッツ様とは違った意味あいで変わり者である第二王子アーガイル様。そんなアーガイル様が私の前に現れたと言うことは・・・世界がまた大きく動こうとしている予兆を感じ取った。